プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
さて、スズメが庭に向かってから数分、ガチガチに震えている子供達は私にぴったりとくっ付き動かない。
「スズメさま大丈夫でしょうか…」
「まぁ彼女はドジだからな…君の心配も分かる」
「うぅ…お化けとかじゃないよね…?」
「お化けは嫌ですぅ…」
そんな時だった、背後に気配を感じ、私は両サイドに張り付くクルミとアヤネを抱えて、回転しながら半歩程後方に下がる。
「きゃぁぁぁぁぁっ…!!」
それと同時にクルミが叫ぶ、それもそうだ、目の前を煌く刃が通り抜けたのだからな。
「えっ…ま、ママ…サレン…?」
アヤネが呟く、目の前にはサレンの姿があった、刃を振り下ろし私達を見据える。
「…あ、主さま…これは…一体…?」
「…やはり、私の推測通りか…」
いや、しかし…何故こんなにもシャドウが…?庭にはアヤネのシャドウもいるのだろう?ここまで大量発生している事など今まで経験したことはない。
「だ、大丈夫ですか!?な、何があったんですか!?」
走って息を切らせながらこちらに向かってきたのはスズメ、先程のクルミの叫び声で飛んで戻ってきたのだろう。
「や、やめてぇ…ママ・サレン…っ…!」
涙目で訴えるクルミを無視しジリジリと剣を構えて迫るサレンのシャドウ。
「なっ…えっ!?お、お嬢様!?どうしてここに…それに剣を構えて…それではまるで…っ」
「ち、違う!違うよ!スズメ!コイツはママ・サレンなんかじゃない!偽物!外にいたあたしと同じ偽物なんだよ!!」
「偽物って…でも、どうして子供達を…」
ユラリと動くシャドウサレンは剣を振り上げ私達に振り下ろそうと駆け足で近寄ってくる。
「お手並拝見と行こうかしら?」
そんなことを呟きながらな、さて…このチャンス、見逃す訳にはいかない。
『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!!マ〜イティアクショ〜ンエェックス!!』
「きゃっ…!!お、お兄ちゃん…?」
「アヤネ、クルミ、君達はコッコロとスズメの後ろに行け、コイツの相手は私がする」
私は振り下ろされた剣を右腕にある籠手部分で受け止めながら彼女達を下げさせる。
「…ふん!」
私はまず籠手で受け止めていた剣を弾き、前蹴りで胸部を蹴り込む、シャドウサレンは怯み三歩程後退。
「あう……ううぅっ…!!」
「それで攻撃のつもりか?」
シャドウサレンが二度程斬り付けくる、私はそれを一度目は左に軽く体を逸らし回避、次に振られる横薙ぎは右手で上から叩く事で弾き落とす。
そしてワンツーの拳を顔面と胴体に打ち込み、更に回し後ろ蹴りを腹部に決める事で大きく吹き飛ばし転倒させる。
「ひうっ…ま、ママ・サレンが…っ…」
「く、黎斗さん!相手は偽物とはいえお嬢様なんですよ!?子供達の前なんですからもう少し手心というか…」
「…何を言っている、コイツがサレンではないと分かっているだろう?なら手心も何もない」
私はそう言って倒れ込むシャドウサレンにゆっくり近寄る。その間も四肢をプルプルと震えながら立ち上がろうとするシャドウサレン。
「あ、主さまは一応手心はしております、普段なら剣をお使いですが今は素手でございますし…」
コッコロが精一杯のフォローをしてくれているが別にそういうつもりで素手なのではない。シャドウは脆くあまりダメージを与えすぎると消滅してしまう、それだけは避けなければならない。
私はちゃんとダメージ計算をしている、そろそろ準備に入ろうか。
「…スズメ、ここから先、子供達に見せるには少しショッキングな光景になる、クルミとアヤネの目と耳を塞げ」
「へ?」
「いいから早くしろ、コイツが立ち上がり再び動き出すと面倒だ」
「は、はいぃ…!!」
スズメは彼女達に指示をして耳を塞ぎ目を閉じる様に促す、更にスズメは自身の両手で彼女達の目を隠すという万全の用意だ。
「く、黎斗さん!準備ができましたよ!!」
「主さま…一体何を…」
スズメとコッコロが燻しげに見てくるも説明している余裕はない、既にシャドウサレンは立ち上がろうと四つん這い体勢になっている。
「……君は立ち上がるな」
立ち上がりとするシャドウサレンの背中を片足で踏みつけ無理やり這いつくばらせる、そして次に彼女の右足を両手で持ち上げる。
「ふん」
パキャッという音と共にシャドウサレンの右足をへし折る、これで満足に動けないだろう。
シャドウは痛覚がないのか痛みに悲鳴を上げる事はない、更に手応えが無いというか骨を折ったり肉を切断したりしても血液も流れなければダメージを与えたという感覚もあまり無い。
「あう…あ…」
「ん?」
そんな状態になりながらも左手を伸ばしてきた為、私は右手でその左手を掴み取り、その後すぐに両手を使って腕関節部分を折る。次に私はこちらに顔を向けるシャドウサレンの頭頂部を鷲掴みにして顔面を地面に叩きつける。
「な…何をしてるんですか…黎斗さん…」
スズメの声色は恐怖に染まっていた、流石に悪いことをしてしまったか、偽物とはいえ彼女の慕うお嬢様の姿をしているのだからな。
「悪いが今は問答している暇はない、ここまでダメージを与えてしまうと消滅するのも時間の問題だ」
かといって機敏に動くコイツらをノーダメージの状態でハッキングをかけるのは不可能、その為、最小限のダメージで尚且つ行動不能にさせる手足を折るという選択を取った。
私はすぐにシャドウサレンにハッキングをかける、マイティアクション以外の他のガシャットやガシャコンアイテムなどのデータを送り込んでいく。
「よし…順調だ…次はデンジャラスゾンビガシャットを……っ…!!」
ポシュンという音と共にシャドウサレンが煙の様になり消滅する。
「ちっ…やはりデンジャラスゾンビの様な容量の大きなガシャットデータは雑魚シャドウ程度では消滅してしまうか…」
デンジャラスゾンビが無理だという事はゴッドマキシマムなど夢のまた夢、仕方がないか。
私は立ち上がり、スズメ達の方へ振り向く、するとピクリとスズメが怯える様に反応する。
「もう目を開けさせてもいいぞ……悪かったよスズメ、気分を害したか?」
「い、いえ…そんな…助かったのは事実ですし…」
「今回の主さまは子供達への配慮が行き届いておりました、はなまるを差し上げます」
これで配慮をしていなかった場合、コッコロからかなり叱られていた事だろう、コッコロの叱責は長い、前に一度叱責された時、公衆の面前で何度も指切りゲンマンをやらされた時は流石の私でも堪えた。
「しかし、あのサレンさまは何なのでしょう、姿形を真似る魔物…でしょうか?」
「その認識で良いだろう、あれはシャドウと呼ばれる存在らしい」
「知っているんですか?黎斗さん」
スズメは子供達の視界を確保させつつ私に聞いてくる。
「知っている、という程でもない。実際に見るのは数える程度でしかないし情報という情報は街でささやかれている噂程度だ」
「その噂とは?なんでしょうか主さま」
「コッコロの推察通りの事でしかないよ、姿形を真似、行動や発言は真似した人間の反復しかしない魔物の様な存在、という事だけだ」
幽霊だとも言われているな、確かにシャドウは不安定な存在、ここまで維持し更に襲いかかってくるなど稀だ、大概は出現から数分で自然消滅する為、幽霊と噂されても仕方がない。
「…黎斗お兄ちゃん、姿が変わりましたよぉ?」
「凄い…何それ!」
「これは私の鎧のようなものだ……とにかくコッコロ、スズメ…まだ戦いは終わっていない、気を引き締めろ」
私の言葉にスズメ達が反応し窓から外を見るとそこには
「なっ…アヤネちゃんやお嬢様の姿のシャドウだけではありませんよ!?」
「とてつもない数のシャドウの群れ…この救護院は取り囲まれています、主さま」
「…どうやらその様だな…しかし妙だ、本当に何故こんなにも大量にシャドウが…」
この様な事象は見た事も聞いた事もない…私達は一体何に巻き込まれているというんだ?
「き、今日だけで何度の修羅場に巻き込まれればいいんですかぁ〜」
「とにかくスズメは寝ている子供達を全員起こしてこい、それまで私とコッコロで時間を稼ぐ」
「そうでございますね、スズメさま達の準備が出来次第、この救護院からの脱出を図りましょう」
その言葉を皮切りに私とコッコロが動く、コッコロが前に右手を突き出すと優しい風が吹き荒れ槍が出現する。
それぞれが武器を構え、迫りくるシャドウの群れに前進していく。
「す、すぐに子供達を起こしてきます…!それまで頑張ってください!!…行きましょうアヤネちゃん、クルミちゃん」
スズメが二人を連れて急いで階段を駆け上がっていく、その姿を見送った後、私達もまた駆ける。
「主さま、わたくしは右陣を迎撃いたします」
「了解した」
私の武器は未だ素手だ。理由としてはまだハッキングを諦めていない、この大量発生したシャドウを利用しない手はない。
私の目の前には数にして20体程はいるだろう、サレンやアヤネ、クルミと見慣れた存在もいれば全く知らない人間の姿をしたシャドウもいる。
とにかく捌き切る事が先決だ、迫りくるシャドウ共に次々と拳を当てる、シャドウの手にはそれぞれ武器を持っており、冒険者の姿を借りたシャドウはもっぱら剣を持っている。
縦に振られた剣を右手で受け止め、すぐにカウンターとして左拳で顔面を殴り吹き飛ばす、更に歩きながら、迫るシャドウに右腕で裏拳をぶちかます。
殴られたシャドウは大きく回転しながら転倒、私はすぐに後ろから気配を感じ、即座に中段後ろ蹴りを剣士シャドウの胴体に打ち込む。
「コッコロ!すまないが私はまた先程のようにシャドウに細工をする!その間無防備な私を援護してくれ!」
「了解しました主さま!!」
倒れ込んだシャドウには間髪入れずにハッキングを掛ける、1体に掛ける時間は長くても5秒、それ以上はコッコロへの負担を考えればやる必要はない。
ハッキングが成功してようがしてまいが5秒以上は決してやらない、そして少しでも成功確率を上げる為、送るデータは1体につき1つに制限する。
私がハッキング中、コッコロが槍と風魔法を使い周りに蔓延るシャドウ共を蹴散らしていく。
それを何度か繰り返し5分程度の時間が過ぎた所で
「黎斗さん!子供達を起こし終えました!!」
「主さま…!!」
「分かっている、スズメ!ここから退避する!!会合をしているサレンの元へ急ぐぞ!!」
私とコッコロは未だ迫るシャドウの群れを迎撃しながら後退しスズメ達の元へ向かう。
「コッコロ、大技で目眩しと退路を作る、そこから皆を避難させるぞ」
「承知しました主さま」
私はガシャットをキメワザホルダーに、コッコロは槍を構え魔力を練り上げる。
『キメワザ!マイティクリティカァル!ストライク!!』
「精霊達よ、わたくしの声に答えてくださいまし…ウィンドストーム!!」
コッコロが発生させた風の竜巻と私のライダーキックが炸裂し右前方が爆発と暴風で吹き荒れシャドウの群れを一部吹き飛ばす。
「スズメ!!」
「は、はい!!さぁ、皆さん、こっちについて来てください!!」
スズメ、アヤネ、クルミはそれぞれ自身よりも年が下の子供と手を繋ぎ退路を駆ける。
「主さま…!!」
「コッコロ、君も先に行け、残るシャドウが未だに追いかけてくる、私はそれの足止めをする」
私の言葉に不安そうな顔でこちらを見つめるコッコロ。
「安心しろ、私もこの数をまともに相手するつもりはない、安全が確保でき次第そちらに向かう、私を信じろ」
「…っ分かりました…信じます!」
信じろ、という言葉にコッコロは弱い、かなり不服そうな顔をしつつも私の目をまっすぐ見て信じていると目で訴えている。
「お怪我だけはどうか…なさらずに…!」
その言葉を最後にコッコロもまたスズメ達の方向へと向かっていく。
キメワザやコッコロの大技であれだけ吹き飛ばしたというのにまだ30体近く残っている。
子供達の歩行速度も考えれば最低でも4分か5分程度、コイツらを足止めする必要がある、その間に自然消滅してくれれば楽ではあるのだが…
次の瞬間、私に迫りくるシャドウ達、前後左右全ての角度から襲いかかってくる。
「あまり私を舐めて貰っては困る」
私はその場で360度回転蹴りを浴びせ距離を取る。
「もう十分データは送らせてもらった…手加減無用で行くぞ」
そう言って私は地面に突き刺しておいた剣を引き抜き構える、安全が確保できたら?いや違う、私の才能なら5分あれば殲滅出来るだろう。
私はそうタカを括って一気に連撃を打ち込んでいく、シャドウ自体大した耐久力はない、本気で攻撃すれば一撃または二撃で消滅する程だ。
2分程戦闘は続き、かなりの数を減らす事が出来た、この数を相手に立ち回るとなるとかなり体力を消費する、この後退避する体力の事も考えなければ…
その時だった、不意に背後から剣撃が横薙ぎに振られる、私はそれに気付きギリギリで回避して距離を取る。
今のは完全に油断していた、全くあまり思考に割いている暇はないという……こと…か
私は驚きで目を見開いた、なぜならば…
「…そうか、確かにその可能性も考慮しておくべきだったな…」
目の前には『私』がいた、否私が憑依している少年の姿というのが正確だが。
「私のシャドウか…面白い…ん?」
「…変身」
私のシャドウはなんとガシャットとゲーマドライバーを持ち、ドライバーを腰に当て、ガシャットのスイッチを入れドライバーのスロットに挿入する。
『マイティジャンプ!マイティキック!マ〜イティアクショ〜ンエェックス!』
奴は目の前でゲンムの姿となりこちらを見据える…まさかそこまでコピーされるとは予想外だ。
「…不正なガシャットは削除するぅ…!!」
ゲンムシャドウはそう呟きながら突っ込んでくる。
「…それは…こちらのセリフだァ…!!」
この言葉と同時に2体のゲンムが衝突する。
…
わたくし達は走り続け、ようやくサレンさまがいると思われる会合を行なっているギルドハウスに辿り着きました。
「はぁ…はぁ…す、スズメさま、皆さまもお怪我などはありませんか?」
「は、はい…大丈夫です…子供達も…全員いますね…!」
わたくし達が逃げている最中も何度かシャドウの襲撃に遭いました、ここまで来ればもう追っては来ないと思いますが…
「…5分は経過致しましたね…そろそろ主さまがこちらに向かってくる頃だと思いますが…」
「…大丈夫ですよ!コッコロちゃん!黎斗さんならきっと!それより早く中に入りましょう、お嬢様達にも状況を説明しないといけませんし、子供達だって本来は寝ている時間帯ですしね」
そうでございます、まずは子供達のことを優先に考えましょう、もう既に日付が変わっている時間です、そんな時間に子供達に過酷な運動をさせてしまいましたからね。
…主さま…どうかご無事で…
オリジナル展開とか書けたらいいんですがね…