プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
「さて、まずは…ペコリーヌ、君も剣を納めてくれないか?彼女はリマ、私の知り合いだ」
「えっ?あ、す、すみません、つい…こういった人に出会うのは初めてでして…その…失礼しました!!」
ペコリーヌは私の言葉の後すぐに剣を納め、頭を下げる。
「い、良いのよ、私そういう態度されるのは慣れてるし、初めての人なら無理もないわ、むしろ黎斗くんみたいに初対面の時から好意的に接して来てる方が異常なんだから」
「へ〜黎斗くんって感性がねじ曲がってるんですね〜」
ペコリーヌは時たまに毒を吐いてくる、失礼な奴だ。
「そこは好奇心があるといって欲しいものだ、まぁ良い、それよりもリマ、状況はどうなっている、ここの住人はあらかたあの厩舎にいるようだが…マヒルやシオリの姿が見えない」
この牧場には後2人、経営主であるマヒルとリンと同じく
「マヒルちゃんは牛さんや羊さん達が心配だからって飛び出して行っちゃったわ、マヒルちゃんは強いから平気かもしれないけど…」
「そ、そうだよ!マヒルはともかくしおりんは!?しおりんは病弱なんだよ!?」
リンが慌てて叫ぶ。シオリ…彼女は護衛で雇われているリンとは違う、体が弱く療養の為にこの牧場にいる。
「シオリちゃんはこの魔物の襲撃はもしかしたらニャットちゃんを取り返しに来たんじゃないかって言ってニャットちゃんを連れてどこかに…」
ニャットちゃんというのは以前この牧場に迷い込んだ猫型の魔物の子供。それを彼女達が保護し以降は飼っているのだが…ふむ、彼女の性格ならそう考えるのも無理はない、しかし
「い、いやいや、どう考えたってそれは無いって、ここにいる魔物全部統一性が無いし…ニャットちゃんの親っぽい種族の魔物1匹もいないしさ」
「…彼女の体力では既に魔物に…」
「ち、ちょっとやめてよ黎斗くん!冗談でもそんなこと言わないでね!?」
冗談ではなく客観的事実として言ったまでだ。
「お〜い!そこにいるのはリマリマとリンリンでねぇでべか?」
そこにやって来たのは小さいリンよりも更に体躯の小柄な少女…のように見えるのだが彼女は20歳の成人した女性だ。
リアルな牛というよりは牛のぬいぐるみのようなフードを身に付け、手にはピッチフォークと呼ばれる三又槍のようなものを持っている。
「ん?なんだべかこの女の人と黒い人は」
「私です、マヒルさん」
「その声…黎斗でねぇでべか!いやー驚いたべそんな姿になれるなんてな!」
一応この憑依した少年の年齢は10代後半、ちゃんと目上の人間には敬意を表さなければね、私にもそれくらいの良識はある。
「ってマヒルの背中に乗ってるのしおりんじゃん!!」
「そうだべ、この子魔物のど真ん中で寝てたけんろ、よく踏みつぶされなかったべよ」
「にゃーん」
更にマヒルの頭のフードから猫型魔物であるニャットが顔を出す。
「ごめんなさい…けほっけほ…わたし…体が弱いのに無理しちゃって…」
「別に良いんだよ、シオシオが正義感あふれる良い子だって事は分かってるべ」
シオリはマヒルの背から下ろして貰い何とか立ち上がる。それにしてもマヒルは小さな体格で魔物が複数存在するこの現場で彼女をここまで運んできたというのだから驚きだ。
「それに…私は体が弱くて、いつ死ぬか分からないから…だったら死ぬ気でみんなを守って死んだ方がマシだって思ったから」
「もう!そんなこと言わないで!そんな事をして死んだって誰も喜ばないわ!」
「私もリマに同意見だな、シオリ、私はそういう考えは嫌いだ。2度と口にするな」
私はそう言ってシオリの頭を1度ポンと軽く叩く。
「…すみません、あまり考えないで言ってしまいました。もう…そういうことは言いません」
「黎斗くん…えへへ、やっぱり優しいですね、あなたは…」
私と永夢やドクターの面々は命の価値観が違った。彼らはひとつしかない命を懸命に守る事に必死になっていた。
私は命がひとつである必要がないと考えた。だからこそ命という概念そのものを変え、データにし蘇らせることが出来るのなら多少の犠牲も厭わなかった。
この2つの価値観は正反対に見えるが別に私は命が大切でないと思ってはいない。
むしろ私程、命というものを考えている存在はいないだろう、だからこそシオリのように死んでも良い、などと浅はかな考えをするのは好まない。
「えーと、これで生存者は全員いるってことで良いですか?」
「おうよ!オラ達で全員だ、それにしても変だよな〜?魔物達の動きが不自然だべ、オラはさっき牛さ逃してる時、魔物達の様子を見てたんだけんどもなんつーか手当たり次第って感じだったべ」
確かに、この魔物達の動きは不自然、目の前にあるものを破壊しようとするだけで特に目的も見えない。
更に言えば、魔物達の暴れている場所、それがてんでバラバラ、数が多い場所もあればここのように少ない場所もある…
これは…考えられるとすれば暴走状態、だとすると…キャルの奴が何か失敗したと考えるべきか…
「どうかしましたか、黎斗くん?」
「ああ、いや…」
私は推測でキャルがいると思われる方角を見つめているとペコリーヌに察せられる、その為、私は話を逸らすようにシオリに問いかける。
「ところでシオリ、君が魔物の群れに突っ込んでいる間、何か不自然な事に気がつかなかったかい?」
「不自然なこと…ですか…?えーと…そうですね…魔物達は何か…『行動を制限されている』ような感じがするんです」
「行動を制限…?あ〜言われてみれば確かにここら辺は魔物全然いないのにあたし達が来た方角にはめちゃくちゃな数がいたよね」
シオリの言葉にリンが反応を示す、そう、恐らくこれはキャルの力により操られた魔物達、その為、彼女を中心として魔物が暴走していると考えて良いだろう。
だからこそキャルから離れれば離れる程、効果は薄くなっていく。
「つまりどういうことだべ?」
「多分ですけど…魔物達が暴走する中心となるものが何かあると思うんです」
「…中心ですか…それがどこだか…分かりますか?」
「え?あ、はい…えっと…」
シオリに訊ねたペコリーヌはシオリからおおよその位置を教えて貰い、何かを決意したかのように1度目を瞑る。
「…わたしはその中心となる場所に行ってみようと思います、その間に皆さんは逃げてください」
「逃げてくださいって…危険よ!いくら貴方が強いからといって凄い数の魔物よ!?」
「えへへ…わたし、日頃から魔物に狙われてるから慣れてるんです、だからここはわたしがやります」
ペコリーヌの判断にリマが止めようと必死になっているが…ここで彼女を止めるのは無粋か…キャルがペコリーヌのことを狙っているという事はいずれバレる事なのだからな。
ここまで本格的な動きがあるとなると、上からの圧力が強くなったと考えるべきだろう。キャル自身は無害な存在といってもいい。
彼女は正直、暗部で働くには純粋過ぎる、だとすると上にいる存在の闇の大きさが窺い知れる。
「黎斗くん、そっちをお願いしても良いですか?」
「…構わないよ、君も十分気をつけると良い」
「はい!」
私は今まで彼女達を甘やかしてきたらしい、そろそろ現実を知っても良い頃だ。
「んじゃ、その方向で行くだべよ、みんなオラに付いて来い!この牧場はオラの庭みたいなもんだ!どこにどんな凸凹があるかだってよく分かる!」
「うう〜あんまり魔物がいなければ良いんだけどな〜…」
「みんなの命を預かってるだから、ほら!リンちゃん!シャキッとする!」
私とペコリーヌは軽く視線を交わし、お互いに背を向け走り出す。
私は爆走バイクをスロットから取り出し代わりにタドルクエストを挿入しレベルアップする。
ガシャコンソードを出現させ装備し、前方に見える魔物の群れを片っ端から蹴散らしていく。
「魔物が大暴れしてる中心ってとこから離れると言えどもやっぱ数が多いべな〜っ!!」
マヒルはそんなことをぼやきながらピッチフォークを巧みに操る。クルクルと片手で何回も回転させ構えをとる姿はさながら歴戦の槍術師。
迫り来る魔物はその巧みな槍捌きで撃破していく、本当に酪農業だけをやっているのか不思議だ。
先陣を切っているのはリマ、彼女の耐久力とスタミナ、そして腕力はこの中ならば随一だろう。
どうやって持っているのか原理は不明なのだが彼女は蹄で剣を持っている、それを使い魔物を吹き飛ばしながら切り裂いて行く。
その力強さはペコリーヌと変わらないほどの威力だ、俊敏性もありアクロバティックな攻撃方法もしている。それは跳躍し空中で縦一回転をしながら叩き斬るという重めの斬撃だ。
回転の遠心力と全体重を乗せた縦切りは魔物を骨ごと切断する威力。
「リマさん!後ろ!…えーい…っ!」
そして援護を担当するのはシオリ、彼女は弓使いでエンチャントと呼ばれる魔法で矢に特殊な力を宿し撃つという戦術をしている。
エンチャントの効果により力の弱い彼女でも矢は真っ直ぐに飛び、威力もそれなりだ。矢の正確性も高い評価に値する。
「ありがとうシオリちゃん!!ほら!リンちゃんも頑張って!!」
「あたしは頑張ってるよ〜!それでもこの程度なの!!」
リンは牧場の従業員数名と動物達の周りを守りながら戦っている、ただしリン1人ではカバーしきれない為、私も同じく周囲の敵を掃討する担当だ。
「黎斗くんが来てくれて本当に助かったわ!それにその姿、中々かっこいいわよ!」
「ほう、君は見る目があるな、流石はリマだ」
彼女には是非マイティアクションやタドルクエストをプレイして欲しいものだ。
さて…ペコリーヌと分かれてから1時間、ようやく魔物達の少ない地点まで降りてくる事に成功した。
「ぜぇ…ぜぇ…つ、疲れたぁ…リマァおんぶ…」
「ちょっとリンちゃん、まだこれからよ?やっと魔物達が少なくなってきたってところに来ただけでちゃんと山を降りて麓まで行かなくちゃ」
「え〜この時間じゃ麓まで降りたら日が落ちて真っ暗になっちゃうよ〜」
既に夕刻、空は赤く染まり、遠くの方は紫がかっている。
「黎斗、もうオラ達は大丈夫だ、オラ達だけでも下山できるべ」
「何?」
「分かってるだよ、あのお嬢ちゃんのこと心配だど?」
…余計なお世話ではあるが、そうだな…どういう結末になったのか興味はある。
「分かりました、では私は彼女を探しに出ます、あなた達のご武運を祈っていますよ」
私はそう言って彼女達に背を向け歩き出す、また魔物の群れに飛び込んでいくというのは正直気が引けるが…
キャルとペコリーヌ、どちらかが倒れていると考えるといてもたってもいられない、どう物語が転ぶのか楽しみでな。
私が牧場の皆と離れて数十分、荒れた牧場付近まで戻ってきたのだが。
「魔物の気配が少なくなっているな…恐らくキャルの奴が魔力切れを起こした事により魔物とのリンクが途切れたか…」
シオリが示した中心点、そして以前ユイがキャルを見つけた時に感じた魔力の不規則な流れ、魔物の痕跡、それらを辿りキャルの居場所を正確に判別する。
牧場付近の森を進んでいくと、どこからともなく叫び声が響く、私はその声がする方へと走り向かう。
すると
「くそっ!こっちくんな!!この!!」
「ブモォォォ!!」
キャルがハイオークに襲われていた、リンクの切れた魔物は操れない、キャル自身魔力切れを起こし魔法を撃てない状況だ、彼女の身体能力は皆無に等しい、このままでは確実に追い詰められ殺されるだろう。
「全く、自身の魔法でそうなるとはな…自業自得だ」
私は瞬時に近寄り、ガシャコンソードでハイオークの膝裏を斬り裂く。
「ブモォ!?」
ガクンと膝から崩れ落ちるハイオークに私はすぐにエックス字に斬り裂き絶命させる。
「く、黎斗…っ?…ってうわぁぁぁ!?」
「っ…!!」
安心したのも束の間、彼女は背後にある崖から滑り落ちる、私は間一髪で彼女腕を掴み、なんとか崖から引き上げることに成功する。
「う…うう…何やってんだろ…あたし」
「…全くだ」
『ガッシューン…』
変身を解除し、私は一息つく、ここまでろくに休んでいなかったからな。
「はぁ…魔力も底をついちゃったし…これからどうしよ…」
「……ペコリーヌの姿が見えないが…きっちり殺したのか?」
「っ!?」
私の言葉に絶句するキャル…この様子、ペコリーヌを殺してはいないな、だとするとどうやってかは分からないが彼女の事を撒いたようだな。
「なんであんた…その事を…」
「気づかないと思っていたのか?」
「…いつから?」
「初めからだ」
その言葉に再び絶句する。
(初めから…それじゃあコイツ…分かってて…)
彼女が何を考えているか分からないが、恐らくなぜ私が何もせずに見守っていたのか疑問に思っているのだろう。
「どうして…あたしと仲良くしてくれたの?」
「理由などない、何故理由が必要なんだ?」
「…そりゃあ…あたしは……あたしには…あんた達と仲良くなる資格なんてないから…」
今日のキャルは妙に素直だな、魔力切れの影響かはたまたキャルの上司による圧のせいか…
「ふん、それなら最初からそうしていろ、今更そんな事を言っても、私はともかくコッコロやペコリーヌには効き目がないぞ」
「…そうかもね」
罪悪感、彼女の心の中には今それで埋め尽くされているのだろう。
難儀な立場だな、精神的にも肉体的にも未熟な少女が善意と悪意の狭間に板挟みの状態とは、まるでゲームのキャラクターのようだな。
「君の事情など知らない、だが君はそれで良いのか?誰かの掌の上で転がされる人生など、私はまっぴらごめんだがな」
「…あんたは何も知らないからそんな事を言えるのよ」
「そうだ、言ったじゃないか私は君の事情など知らないと…だが君自身の人生だ、だったら時には人生とやらを見つめ直す必要があるんじゃないか?」
「あんたに何が……っ!?」
その時だった、私達を中心に魔法陣のようなものが地面に描かれる、見たことのない不可思議な図形だ、これは一体…?
「なに…これ…きゃっ!?」
「くっ…今度は何なんだ…!!!」
私とキャルはその魔法陣から発生させられた光に飲み込まれ……
バグスターとか出したいけど今のところ挿入できる場所がない…