プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
「そうですね…一緒に寝てしまったのは不本意だったんですけど、実は昨日…」
ペコリーヌが昨日の事を簡単に話す、ユースティアナと呼ばれる狐の獣人に命を狙われ、そして殲滅魔法を放たれた事を。
「成る程、昨日の爆発は…そのユースティアナ、と呼ばれる人物による攻撃だったのですか…お2人共ご無事で何よりです」
「それにしても凄いですね…山が丸ごと消し飛ばされるほどの威力の魔法を撃たれたのにお2人ともご無事だったなんて…」
確かに、あの絶体絶命のピンチを切り抜けたのはかなり細い糸を手繰り寄せた奇跡に近い。
「あの場にいた手練れの人達と協力してなんとかなったんですよ」
「そうだな、不服ではあるが、私1人ではどうしようもない事態だった」
特にあのラビリスタがいなければ確実に私達はゲームオーバーだっただろう、せめて奴とまた接触できれば何か進展があるのだが…
「あ、そう言えばお嬢様にまだ黎斗さんの安否の連絡をしていませんでした、かなり心配していらしたので、後で通信魔法で連絡を入れておきますね」
「それが良いですね、黎斗くんも愛されてますね〜このこの〜♪」
「…そんなことよりも…ペコリーヌ、いや…そろそろ話しても良い頃なんじゃないか?『ユースティアナ』」
「っ!?」
私がそう問いかけるとペコリーヌは驚愕の顔し、数秒間間が開いた後、若干涙を浮かべながら
「どう…して…それを…」
「主さま…?どうしてペコリーヌさまをユースティアナと…?ユースティアナとは主さま達を狙った人物のことではないのですか?」
コッコロが当然の疑問をぶつけてくる。
「…ペコリーヌ、君に話す気があるのなら、話すといい」
「…えへへ、すみません…なんか…勝手に感極まっちゃって…泣いちゃって…その名前を…誰かに呼ばれたのは本当に久しぶりだったので…」
零れそうな涙を手で拭いながら笑顔を絶やさずにペコリーヌは語り始める。
「本当は…皆さんに迷惑をかけたくなくて…ずっと内緒にしてようって思っていたんですけど、黎斗くんなら…いいえ、黎斗くん達なら話しても…大丈夫って思えるんです」
ペコリーヌは1度、私とコッコロの顔を見る、そこには信頼していると見て取れる表情をしていた。
「わたしの本名はユースティアナ・フォン・アストライア、このアストライア大陸を治めるランドソル王家の長女として生まれました」
「お、お姫様って事ですか…あ、あわわ、なんと…恐れの多い事を…っ!」
「あはは、スズメ何テンパってるの〜?おもしろーい」
テンパるスズメをニコニコしながら茶化すアヤネ。
「そ、それはそうですよ!お姫様ですよ!?…でも、私、あなたの顔を拝見した事がないのですが…いえ!すみません!失礼な事を!!」
「えと…スズメさん…でしたよね?あなたは王宮の…?」
「スズメの仕えているお嬢様…サレンは貴族だ、更にサレン自身
私がそう補足するとペコリーヌは「ああ〜成る程」と合点がいったようだ。
「あの…もしかしてですか…顔を変える魔法なんかを使われておりますか?そうでなければお姫様なんていう誰もが知る筈のお顔をお忘れする事なんて無いと思うんのですが…」
「いいえ、生まれてこのかたこの顔が素顔ですよ♪……みんながわたしの顔を覚えていない理由を今から話します……王家ではある一定の年齢になると子を武者修行の旅に出すんです、男女問わずに、それはこの王家に代々伝わる『王家の装備』に見合うかどうかをテストする為のもの…わたしもそうだったんです」
彼女は少しづつ声のトーンを落としていく。
「成る程、だからペコリーヌ…さまと今はお呼びしますね、そちらの方が呼び慣れているので、武者修行をなさっていたからわたくし達と旅すがら出会ったという事ですか」
「はい、そうなんです…といってもコッコロちゃん達と出会ったあの時には既に…わたしの武者修行は…無意味なものでしたけどね」
「どういう…?」
その意味を訊ねる為にコッコロが呟く。
「…わたしが武者修行を終え王宮に戻った時、王宮のみんなはわたしを覚えていませんでした、誰も…わたしをわたしだと…ユースティアナだと気付いてくれませんでした」
「そして代わりにいたのがあの獣人のユースティアナだな?」
「…はい、あの人はどうやったのか分かりませんがわたしに成り代わり、王女として君臨しわたしの全てを奪っていきました…」
いつもなら元気よく食事をしているペコリーヌの食事の手が止まる。
「わたしは何度もお父様やお母様…いつも仲良くしてくれた兵士さん達やメイドさん達に訴えました、でも…わたしの方が偽物だって、そう言って、捕まえようとして来ました…わたしは…家族に…指名手配犯にされたんです」
「…なんと…ペコリーヌさまにそのような過去が…」
「指名手配犯にされて…もうなんだかわたしの方が頭がおかしくなっちゃったんじゃないかって思って…この国の人達にも顔を覚えられてる筈なのに誰1人見向きもしなくて…途方に暮れてて…街から離れたくなって、それで惰性でずっと武者修行を続けて…」
「そんな時に出会ったのが私達という事さ、コッコロ」
コッコロは「成る程、時系列的にこちらという事ですか」と納得した
「すごく辛くて、苦しくて…もう全てが嫌になってた時に黎斗くん達と出会いました、黎斗くん達はわたしの事情なんて全然知らなくて…だからこそ仲良くしてくれて、ご飯を食べてくれて…本当に嬉しかったんです」
「ペコリーヌさま…」
彼女の笑顔は心の底から溢れ出たものだった、それに応えるようにコッコロも微笑む。
「う〜ん、今考えるとそうだよね〜。うちのパパもママも貴族だったからさ、王宮のこととかアタシも知ってるんだけど…この国って獣人…というか亜人の人達に風当たりが強い筈なのに1番トップの人が獣人っておかしいよね?」
そう言ったのはアヤネだった、中々鋭い所を突いてくる。
「そう…ですね…確かにアヤネちゃんの言う通りです、獣人の人が獣人の人達を差別するなんておかしいと、今思いました、どうして今までそう思わなかったでしょう?」
「それは『そういう認識』だと思い込まされていたからだ」
スズメの疑問に私が答える。
「黎斗くん、何か知ってるんですか?」
「ああ、私はペコリーヌ、君に昨日出会う前、奴と対峙した」
…キャルの事を伝えるべきか、一瞬悩んだがここではまだ話すべきではないと判断した、おそらく話が脱線し混乱を招くだけだ。
「その際、奴と会話をしてね、そこで面白い情報を聞き出すことができた」
「それはなんでございましょう、主さま」
「…この世界は奴にとって都合の良い世界に作り変えられているという事さ」
私の発言に皆が驚愕した、無理もない、世界を作り替えるなど途方も無いことだ、私以外でそういう発想に至るものはそうそういないからな。
「世界を作り替えるって…そんなことできるんですか!?あり得ませんよ!」
「スズメの言いたいことは分かる、しかしこれは事実だ」
「確かに…あの人ならやりかねませんね…世界を変えるなんて事も…でもどうしてわたしの立場を奪ったのでしょう?」
…そう、そこは私も疑問に思っている所だ、奴にとって都合がいい立場がペコリーヌの立場だとしてそれはなぜ?
権力?財力?…いや違う、おそらくそんなものでは無い、もっと、なにか個人的の思想な気がしてならない。
「…ユースティアナ…この名前はわたしのお母様達が…遠い異国の神様の名前からとって付けてくれたものです…とても大切な名前なんです…だから…このまま取られたままなんて…嫌なんです」
ユースティアナか…おそらくローマ神話に伝わる女神ディアナ、が濃厚な線だと思われる。
女神ディアナは純潔と月を司る女神とされている、一説にはアポロンの妹と言われ、そのアポロンはヘリオスと同一視されている…つまり太陽だ。
月と太陽、そしてアストライアは星、フォンはドイツ貴族の爵位の呼び名。
これがペコリーヌ…ユースティアナ・フォン・アストライアの由来か…
「確かに…君らしい…とても美しい名前だ、誇りに思い、そして必ず取り返すといいさ、奴には過ぎた名前だからな」
「黎斗くん…えへへ、黎斗くんって本当に褒めてくれますよね、そんな真顔で言われると照れちゃいますよ〜…でもそうですよね、必ず取り返します、わたしの名前を」
ペコリーヌの目に光が灯る、強い闘志の光だ。
「…やっぱり黎斗くん達には迷惑をかけられませんよね、あの人はわたしを狙っていました、きっと本物であるわたしが邪魔なんでしょうし」
「いや、一概に君だけが狙われているとは言えない、言っただろう、私は奴と対峙したと」
「…そう言えばなんで黎斗くんを…?」
私としても私自身が狙われているのではなく今借りているこの体の少年が狙われていると言った方が適切であるが。
「どうやら、記憶を失う前の私は、奴の計画を阻止したことがあるらしい、その影響もあって今の世界が構成された…とも言っていたな」
「…記憶を失う前の主さまでございますか…」
「そんな…まるで勇者みたいな存在だったんですね黎斗くん」
「…といっても記憶がない以上、赤の他人がやった事となんら変わらない、実感がないのだからな」
元より私がやったことではないというのもあるが。
「あの獣人は共通の敵、と捉えて良いだろう、私としてもあそこまでやられたんだ、このまま見過ごすつもりもない」
「黎斗くん……分かりました、一緒に…協力してあの『偽物』をやっつけましょう!」
私としても無策で挑むほどの愚か者ではない、奴と私とでは圧倒的に戦力の差がある、それは現状では到底埋められない差、これは事実だ。
「ではまずはいつも通り、情報を整理しよう、戦いとは情報を先に得た方が勝つ、そして情報はその都度整理する事で円滑な伝達、共有が行える」
「情報の整理…ですか…なら、まずあの『偽物』の目的ですよね」
「目的…それは具体的には分からないが、奴は自身に都合の良い世界を作り出し、最終的には『完璧な世界を作り出す事』が目的だと私は推測する」
「完璧な世界…とはなんなんでしょう?」
ペコリーヌが私に問う。
「…完璧、の定義が不明だが、奴にとっての完璧とは自身が『神』となる事、つまり世界のルールとして君臨し頂点に立つ事だ」
「そ、そんな悪の親玉みたいな…」
スズメの言う事もあながち間違いではない、これではまるで敵キャラの思想そのもの。
「では奴の狙いだが、私を含め昨日いたメンバー全員は確実に対象内だ、だからこそ私達が次にするべき行動は彼らとの合流または連絡を取り合う事」
「うへぇ…あの中にはクリスティーナって人もいますよね…あの人苦手なんですよね…」
そうだな、私も苦手だ。
「だがしかし、私達だけで奴を対処するのは不可能に近い、今は戦力となり得るもの、利用できるものは全て利用するべきだ」
「そうですね…あれ程の魔法を撃ち、恐らくわたし達の事は死んだって思っててもおかしくはないですが、わたし達が生きているとなればどこかで必ず足がつきます、そうなった時、今のままではまた同じことの繰り返しです」
そう何度も同じようなヘマをするなどあり得ない、だからこそ早急に奴等と連絡を取り合わなければならない。
「あれ…?」
「どうしたのぉ…?スズメお姉ちゃん」
話し合いをしている最中、スズメは何やら魔法を使っていたようだが、不調のようらしい、何度も試している様子だが反応がなくクルミに心配されている。
「いや…通信魔法が…お嬢様に繋がらなくて…元々私は通信魔法が苦手とはいえお嬢様とは何度も連絡を取り合っていますので失敗するなんて事はないと思うのですが…」
「…コッコロ、何か分からないかい?」
「承知しました主さま…」
コッコロは目を閉じて魔力を練り上げる、数秒もすれば何かわかったのか目を開き私の方へ顔を向ける。
「主さま、ここら辺一帯、魔力の大きな乱れを感じます、何か…魔力を阻害するものが大気中に漂っているような…」
「ふむ…考えられるとしたら…EMP…電磁パルス、いや魔法によるものなのだから魔力パルスと言った方がいいか」
電磁パルス…強烈なガンマ線や、β線やα線などの粒子線が高層大気中を通過すると、その相互作用によって、広域にわたって光電効果や電離作用を発現させ、光電子やオージェ電子、イオンが多量に生成される。
生成された電子は電子拡散を生じ、地磁気によって回転運動しシンクロトロン放射、物質との衝突によって制動放射を起こす事によって広い帯域の電磁波が放出される。
特に核爆発によって引き起こされるのだが…奴は核に匹敵する殲滅魔法とアレを称した、ならばあの魔法による影響と見た方がいいだろう。
「魔力パルス…?なんですかそれ?」
「おそらく、昨日ユースティアナ…君の偽物が放ったあの魔法により…そうだなこの世界で例えるならば魔力を練り上げる精霊やマナと反応を起こし、広範囲に魔力を乱すなんらかの波が発生しているのだろう」
魔法とは即ち私達の世界における科学、それらを阻害されるとなると人間はいかにそれらに頼っていたかを思い知ることになる。
「どうしましょう…これでは黎斗さん達の無事をお嬢様にお知らせする事ができません…」
それはこの世界でも同じだ、魔法に頼ってきたこの世界で魔法が使えないとなると凡人は途端に思考力が低下する、科学も魔法もそれを生み出してきた天才こそが状況を冷静に判断し脳をフル活用して対策を取ることができる。
「なら答えは1つしかないだろう、直接出向けば良い」
「直接って…黎斗さんがですか?」
「ああ、まぁ、エリザベスパークには私の知り合いもいるからね、それらの状況確認も同時に行えば一石二鳥だろう」
私がそう言うとスズメは納得したように頷く。
「主さま、今回はわたくしもついて行きます、前回わたくしがいなかったばかりに主さまに大怪我を負わせてしまいました…ですから今度は離れません」
そう言ってコッコロは私にしがみ付いてくる。
「あはは、相変わらずコッコロちゃんと仲良しですね〜」
「それでペコリーヌ、君はどうする?」
私が聞くとペコリーヌは1度考え
「…わたしもついて行きます、何はともあれ行動が先決です、現状わたしには具体的な目的はありませんし、黎斗くん達と行動することが1番だと思います」
「賢明だな、軽く準備を済ませ出発しよう」
私達は朝食後に救護院を出る、再び山道を歩くと考える少しばかりやる気が削がれるがそんな事を気にしていたら何も行動ができなくなってしまう。
怠惰とは最も危険な感情だ、少しでもこの感情を持ったのならば全ての行動に支障をきたす。
やらない、という選択肢はもってのほかだがやるべき事を先延ばしにする、というものですらかなり危うい。
物事を面倒くさがり、先延ばしにすればやるべき事がどんどんと先送りにされる、1日は24時間しかないのにも関わらずそんな無駄に時間を割くなど愚かな事だ、私にはそんな時間さえもったいない。
私、コッコロ、ペコリーヌの3人で目指すはテント村。
山道を少し登ったところにあるとスズメからの情報だ、彼女はギルド『プリンセスナイト』傘下のギルドだ、その情報に間違いはないだろう。
何故ならば今回の件を取りまとめているのは『
しかし、この国に仕える立場の人間がこの国に君臨するお姫様の一撃で被災した人間達の世話や事後処理をしなければならないとは皮肉なものだ。
さて、歩く事数十分、そろそろテント村に辿り着く頃だが…
「あれ?テント村の様子がおかしいですね…人の気配がしません」
どうやら事を簡単に運ばせてはくれないようだ。
もう2月!?