プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
その後、私達はラビリンスの複数あるアジトの1つに身を置いていた。
イリヤを筆頭にしたギルド、
昨日、というのは私達はこの小さなアジトに辿り着いてから既に1日が経過している、何事もなく、食事を取り、これからの方針などの話し合いは明日以降になるとムイミから言われ、私達は眠りについた。
現状、目を覚まし、私は辺りを確認している最中である。
「おや?目を覚まされたご様子ですね、主さま」
「コッコロか…今は何時だ?」
「まだまだ早朝でございます、健康的な1日を過ごせる良い朝でございますよ…ところで、そのお二人は何をなさっているのですか?」
コッコロが指摘したのは私の両隣にシズルとリノがしがみ付いている事。最近はよく眠っている間、私の隣に誰かがいることが多いな。
「まぁ…コイツらはいつも通りだ、あまり気にしなくていい」
「わーい、久しぶりの黎斗くんだぁ〜!黎斗くん成分補給〜☆」
「ちょっと!シズルお姉ちゃん!くっつきすぎですよ〜!全く油断もキスもナッシングです!」
「油断も隙もないね、リノちゃん、といっても私から黎斗くんを引き剥がす事はできないよ!私達には切ってもきれない血の繋がりがあるんだから!」
「いや…シズルお姉ちゃんもわたしと同じで血の繋がり無いじゃないですか」
ここで初めて知る事実、コイツら血の繋がりがないのか…
「あの…もう既に主さまはお目覚めになっているご様子ですし…そろそろお二人には退いてもらった方が主さまの都合もよろしいのですが…」
「え!?そうなの黎斗くん!?お姉ちゃん、邪魔?」
「…そうだな、私はもう起き上がりたい、2人とも退いてもらえると助かる」
私の言葉に渋々と頷き離れる2人。
「これからは黎斗くんとずっと一緒だよ!お姉ちゃんの力が借りたかったら何でも言ってね!」
「み、右に同じですよ!お兄ちゃん!!」
2人はそう言い残してその場から去っていった。
「なんとも騒がしい人達でございますね」
「悪い奴等ではないが、相手にするのは少々面倒な2人だな」
「おーい、黎斗ぉ!目、覚ましたか?ちょっとこっちで話がしたい!来てくれないか?」
ムイミの声が響く、話しか、丁度いい。私は軽く身支度を整え広間に向かう。
すると激しい剣撃音が響き、砂塵が舞う、全く狭いアジトでなんだというのだ。
「中々やるじゃないか!ダイゴの坊や!」
「っ…!お前!これ戦闘訓練って分かってやってんのか!?全力出し過ぎだろ!?」
「訓練で全力を出さないなど間抜けか?それでは訓練にならないだろう!」
何故か広間ではあのクリスティーナともう1人、金髪のダイゴと呼ばれた筋肉隆々の男が両腕のガントレットでクリスティーナの大剣を受け止めている。
恐らく先日ラジニカーントが言っていた、クリスティーナともう1人の脱獄者という事か。
「おいおい、お前達、こんな狭い所で訓練なんてやるなよ、埃が舞うだろ!?」
「とはいえ、ワタシ達は罪人だ、表立って訓練などできないのだから仕方ないだろう」
「まぁ、俺もよ体を動かしてなきゃ鈍っちまって、いざという時、戦えねぇかもしれねぇからな、ただでさえあの狭っ苦しい牢獄にぶち込まれてたんだしよぉ」
ムイミは頭を掻きながらため息を漏らす、コイツらは問題児2人という感じだ。
「まぁ、なんだ…もうすぐ朝ごはんだから落ち着いてくれよ…」
「おお!朝飯か!だったらこんなおばさんと戦ってる暇はねぇな!」
「おい、誰がおばさんだ、年長者は敬うべきだよ坊や」
2人は互いに武器を収め、服に付いた埃を払う。
「悪いな、騒がしくて、いつもこんな感じなんだよ」
「それは良い、話とはなんだ?」
「ああ、まずはラビリスタ…ここのボスと顔合わせしてもらう、今どういう状況なのか知ってもらいたいからな」
ムイミのその発言は何か意味ありげなものだった。私達は黙ってムイミの後を追う、するとそこにはベッドで横たわるラビリスタの姿があった。
「ラビリスタ…がどこまで『晶』としての記憶を持ってて、今何が目的なのかは分からない、でもアタシ達を命がけで守ってくれたのは事実だ、こんな状態になってまでな」
「あの後何があった?彼女がこんなことになるという事はあの時、あの演算以外に何かをやっていたということか?」
「詳しくは知らない、でも今この状態なのはあの真那…えーと今はユースティアって名乗ってるんだっけ?そいつを精神世界っていうのかなんというかそういう場所に押さえつけてる状態…らしい」
精神世界、というのはあまり表現として適切ではない、こちらで眠っているという事は…恐らく
「今はコイツの子細を話している暇ではなさそうだな…とコッコロどうかしたかい?」
「いえ、この方…どこかで会ったことがあるような、懐かしいような感覚があるのですが…」
「あー、それも踏まえて話したい事があるんだ、ラビリスタとの顔合わせは終わった事だし、朝食を取ってから話をしようじゃないか」
私達は再びムイミの先導で広間へと戻る。テーブルには朝食が並べられており、私達は席へと座り朝食を取る。
そして腹を満たし準備を整えた後、ムイミが話し始める。
「えーと…どこから話せば良いんだろうな…アタシ、説明下手だからうまく話せないんだよなぁ…よし、それじゃあ聞くぞ?あんた達はこの世界に何か違和感を覚えた事はないか?」
「違和感…でございますか?」
「ああ、なんでも良いんだ、地形がおかしいとか政治、文明がおかしいとかなんでも」
「言われてみると…そうですね、日常生活に不自由なく、と考えると粗が少々あると感じた事があります、まるで今さっき急ピッチで作られたような…」
コッコロがムイミの質問に答える、どうやらムイミはこの世界の変貌に気づいている様子、そしてそれらをペコリーヌ達に教える考えだ。
「わたしもそういったことを考えた事はあります、でも何というか…考えようとするとスルスル〜って頭の中から抜けていっちゃうというか…考えないようになっちゃうような…不思議な感覚が過去に何度かありました」
「そう、この世界はそういう修正力がある、みんなに違和感を与えないよう、記憶が改竄されているんだ」
記憶の改竄…即ち、この世界にいるプレイヤー全てがこの世界を現実だと思い込み、生活をしているという事。
突飛な話に聞こえるが私にとっては経験がある事だ。
マキナビジョン、奴が開発したゲーム、ハリケーン忍者による襲撃で新種のバグスターウイルスに感染した人間の意識をVR空間に連れ込み、そしてその中で、与えられた役割のキャラクターとして永遠に閉じ込めるというもの。
これはその案件に非常に酷似している、皆がその役割として違和感を覚えずに生活をし続ける。
「ゲームって言っても伝わらないかもしれないからさ、取り敢えずこの世界のことを夢の世界って言い方にする。この世界は夢の世界…つまり現実の世界じゃないんだ」
「…現実ではない…としたら本当の現実の世界というものがあるということでございますか?」
「ああ、勿論ある、こんな事態になる瞬間に間近でアタシは立ち合ったんだ…アタシにはさ、不思議な力があって…その力でなんとか自分の記憶だけを守る事ができたんだ…みんな忘れちゃったけど…アタシにはちゃんと現実世界で生きていた記憶もある」
ムイミの顔に嘘偽りは無かった。
「その話が真実だとして…わたし達はどうすれば良いんですか?あの偽物と何か関係があるんですか?」
「ある、この原因の1つはアイツにもあるからな」
「…待て、その言い方ではまるで奴のみの責任ではないような言い方じゃないか」
私としては奴が何かしらの事をしてこのような事態になったと考えていたが…他にも要因があるというのか?
「そういえばさ、黎斗…お前、どういう存在なんだ?記憶喪失ってレベルじゃない、人格まで変わってるってあり得ないだろ、名前も違うし…お前本当に何なんだ?」
「…では、私の事を簡潔に話してやる、コッコロも心して聞くといい」
私はコッコロにそう釘を刺す、理由は…この事実は彼女の主さまという概念の根幹に関わる事だからだ、本来の主さまは私ではないのだから。
「私は檀黎斗…恐らくだがこの世界とは別の世界からこの少年の体に憑依した……人間だ」
バグスターなどという存在は余計に混乱を招く為、人間という表現でここは通す。
「別世界…まて、それは現実の世界って意味じゃないって事だよな?」
「ああ、このアストルムでも君の知る現実世界でもない、とはいえ私の世界とここの現実世界は大した差はないようだが…所謂パラレルワールドというものだろう」
パラレルワールドという単語に納得したのはムイミだけだった。
「どうしてそんなことになったんだ?」
「さぁな、だがこの少年の末路は…君の方がよく知っているんじゃないのか?」
私がそう言うと暗い影を落とす、やはり何かこの少年の身に悲惨な事が起こったのだろう。
「…私はこの少年に乗り移った精神体…という解釈をしていた、が…あのユースティアナ…奴と対峙した時、奴はこう言っていた『そういうものとも何か違う気がする』と」
「…どういう意味だ?」
「…さぁ、奴も具体的な事までは分かっていない様子だったからな、私としても私が私であるのか不安になってきたよ」
さて、この話を聞いてコッコロはどう思うか…
「どうだ、コッコロ…これで分かったと思うが、私はこの体の持ち主の少年本人ではない、君の本来の主さまはこの少年であって私ではない」
「いいえ」
即答だった。その言葉は私の予想していた答えと違った。
「主さまは主さまです、どんな境遇だろうとこの数ヶ月を共に過ごした主さまは…紛れもなく黎斗さまなのです…だから…わたくしの主さまで間違いありません」
「…そうですね、黎斗くんは黎斗くんです、初めて会ったあの日から黎斗くんでしたから、黎斗くんの前の人格がどんな人かはわたしは知りませんしね」
ペコリーヌもコッコロの意見に同調した、全く、私のギルドメンバーは頭のおかしな奴らばかりだ。
「へへ、黎斗もこの新しくなった世界でアイツらとは違ういい仲間が出来たみたいで何よりだよ。話を戻すけど黎斗の問いには正確には答えられない、間近とは言ったけど直接は見てないんだ、ユースティアナ…千里真那とあの現場にいたお前やお前達の仲間が何かやったっていうのは推測できるんだけどな」
「あの…アイツら…ってわたし達ではないんですよね…?」
そう聞いたのはペコリーヌだった、少しだけ不安そうに聞いている。
「あ、ああ…そうだな、少なくともこの再構築された世界では初めて会ったよ、そっちのコッコロっていう方も、前のコイツの仲間は他にいて、フィオっていう妖精もつれてた筈だ、なんでこの世界では一緒にいるのがアイツらじゃないんだっていうくらい仲が良かったよ」
フィオか…千里真那が言っていた妖精…ムイミとの話が合致したな。
「そう…ですか…あはは、なんかちょっとだけショックですね…こんなに仲が良いのに…本当は違う人達と仲良しで…横から取っちゃったみたいで申し訳ない気持ちがあります」
「はぁ…何を言うかと思えば、君はさっき言ったんじゃないか、初めて会った時から私は私だと、前の私とは違うのだと、ならそんな事を考えるの無意…無駄だ」
「黎斗くん…」
「ふふ、ペコリーヌさまを元気付けていらっしゃるのですね、それにムイミさまの配慮をして『無意味』ではなく『無駄』と言い直しているあたりも主さまの優しさがお伺いできます」
…無駄に観察力ばかり付いてしまったコッコロには敵わないな。
「お前……そうだな、確かにただの憑依とは違うのかもしれないな…」
「どういう意味だ?」
「いや、檀黎斗っていう奴の元々の性格を知ってる訳じゃないからはっきりとは言えないけど…前のお前はすごく優しい奴だった、こっちが目眩を起こしちゃうくらい甘い奴だった。憑依ってさアタシの感覚だけどそっくりそのまま憑依した奴…つまり黎斗の性格が反映される筈だろ?」
…ムイミのその答えで私の中である仮説が生まれる。
単純な憑依ならば、この少年の性格に引っ張られるなどという事は決して無いはずだ、例えるならパラドが体内にいた事でMの人格が生まれた永夢。
永夢の体に一時期乗っ取りをするような形でパラドが侵入した際、パラドはパラドだった、永夢の性格に引っ張られていたという事は無かった、だから私のレベル0で抑制し切り離す必要があった。
つまり…私のこれは憑依というよりは…『融合』や『統合』に近いのかもしれない、私と少年の体だけでなく精神まで統合していると考えられる。
しかしこの少年の場合は記憶の欠落がある為、私の記憶の方のみが一方的に支配している。本来ならば少年と私の記憶の混流があったのかもしれない。
いや既に始まっている…フィオという単語に聞き覚えがあったのもそれだ。
私の精神は一体どこへ目指すのか…私という個体がどのようなエンディングを迎えるのか…クフフフフ…今から楽しみでしょうがない。
「黎斗…?考え事は終わったか?」
「ああ、大体状況は把握した」
「そっか…とにかく、夢っていうのはいつまでも見てちゃダメなんだ、そりゃ…辛い現実が待ってるかもしれない人だっているかもしれない…でも、夢はいつか醒めなきゃ前には進まない」
「違うなムイミ、夢は見てはダメなのではない…『夢は叶えるものだ』自分の力でな」
私の言葉に目を丸くした後、微笑むムイミ。
「そうか…そうだよな、アタシだってそうだったんだ、自分の夢を叶えるためにも今のこの悪夢を取っ払わなくちゃならない…!今はみんなで協力しよう!」
「それで?協力とはこれから何をするつもりだ?」
「それなんだけど、実は作戦があっt……っ!?」
ムイミの言葉が遮られる、理由は単純、奇妙な揺れが確認されたからだ。
「…なんでしょう…地震でございますか?」
「いや…この地鳴りは天災のそれとは違う…人力だ」
「…アジト周辺に仕掛けていた罠が破られて警報がなってる……ラジラジ、まずは状況判断をしたい、空間跳躍で外を見てきてくれ」
「分かりました」
ラジニカーントは瞬時に消える、私達ものんびりしている暇はない、各自席を立ち上がり準備を始める。
「ちょっと油断したな…リノとシズルも洗い物は一時中断!ヤバくなったらここから撤退するぞ!」
「…ふむ、今の揺れは罠を無理やり破壊したという事だな、だとすると物理攻撃ではなく範囲的に魔法で破壊した、と考えるべきか…」
だとするとそんな事をする人物は1人しか思いつかない、罠が目の前に張り巡らされている、1つでも起動してしまうのなら後は全て起動しても関係ないという大雑把な考え、せせこましい作業が大の苦手。
「…キャルか…」
私は誰にも聞こえない小声でそう呟いた。
「この攻撃は
「まぁ、そうだよな…しかもネネカが捕まるような大軍勢…それがこっちにも来たって考えた方が妥当か…」
「遅れて申し訳ありません」
その時、私の背後の空間が歪みそこからラジニカーントが出現する…が
「ラジラジ!ちょっとおそか…ってお前どうした!?大丈夫か!?」
ラジニカーントは右半身がズタボロになり出血もしている、顔色をあまり変えてこそいないが常人なら動くことさえままならないだろう。
「いえ、どうやら私対策の魔法を練り上げられているようで、空間跳躍をした場合、自動で迎撃されるみたいです。と私の事はいいでしょう、外の様子なのですが非常事態です、このアジトの外周をグルりと大量の魔物と
「大量の魔物だって…!?ここを取り囲むレベルって…大戦並みの戦力じゃないか…」
ムイミが焦りの顔を見せる、その間、コッコロがラジニカーントに近寄り回復魔法で治療しているようだった。
「いつまでも逃げ腰っていうのも割に合わねぇ、ここで迎え撃って殲滅っていうのはダメなのか?」
「ダイゴ…そうしたいのは山々だけど無理だ…戦力差が大きすぎる」
「そうですね、相手の魔物の中には城塞級の巨大な個体も見えました、更に特級クラスの魔物もチラホラと確認出来ましたから戦うのは得策ではないかと」
…城塞級に特級…?あのキャルがそこまでの魔物を操りここを取り囲むレベルの魔物の軍勢を操っているというのか…?
いやそう言えば以前、プリンセスナイトの力を無理やり与えられていたな…そうか自身の力としてちゃんと取り込んだという事か、そこだけは褒めてやる。
「しゃーねぇな、俺も別に負け戦がしたい訳じゃねぇし…そういや逃げるんだったらあのラビリスタも連れて行かなきゃなんねぇんだろ?だったら俺が担いでやるよ!待ってろ!」
「…そうだな、ラビリスタはこのギルドの要なのだろう?損失は避けるべきだからな」
ダイゴがその場から走り去り、クリスティーナがダイゴの言葉に付け足す。
「みんな〜!こっちは準備できたよ!」
「みなさん!こっちに抜け穴があるんです!それを使ってここから脱出しましょう!!」
リノとシズルが私達に向かって叫ぶ。
「アタシ達もこういうのを想定してなかった訳じゃない、脱出経路くらいは作ってあったさ」
「ここで死ぬのは本望ではない、私にはネネカさまが待っているのだ!!生恥を晒してでも生き延びてみせる!!」
マサキのやる気を尻目に私達は行動を開始する。
抜け穴に入り込むとそこは洞窟となっていた、ヒヤリとした空気が辺りに流れる。
「ケホッケホッ!整備とかしてなかったから埃っぽ〜い、お洋服のクリーニングとか今は出せないのに汚れちゃったな〜」
「そんなこと言ってる暇はありませんよお姉ちゃん!」
そろそろ、背後のアジトに侵入してきている頃だ、早めにここを抜けたいところだが。
「む?大量の魔物の気配がする…野生の個体なのか待ち伏せかは判断しかねるが…どうだ?ダイゴの坊や、どちらが魔物を多く倒せるか…試してみるか?」
「何言ってんだ!こちとらラビリスタ抱えてんだぞ!?それにちまちま魔物と戦ってたら後ろから追手が来て挟み撃ちにされちまうっつぅの!」
「ほう?中々冷静じゃないか、脳みそまで筋肉ダルマかと思ったがそうでは無いようだな」
私達の目の前には多種多様の魔物が数百体…最近はこんなことにばかり巻き込まれているな。
ここを突破しなければ私達に未来はない…さてどうするか…
マナ…マナが足りない…(スキル上げ)