プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン   作:古賀コーラ

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一部でほぼ出番なしだったあのギルドを出します。


狂騒する獣

 

私達は人混みをかき分け、民衆の前…いや後ろに立つ。

 

「主さま、人々の避難の方はどうなされますか?」

「それはノゾミ達がやるだろう、君と同じようにあそこには精霊と契約したチカがいる、既に感づいていたようだからな」

 

私の言葉とほぼ同時にノゾミ達が観客に退避するよう指示を出し、人々の誘導を始めた。

 

「コッコロ、距離はどうだ」

「はい、既に300メートルを切っています、まっすぐに……10秒後にはこちらに辿り着くと思われます」

 

時速120キロ程度か…しかもそれを継続して出し続けるほどのスタミナを兼ね備えているとなると…相当な上級の魔物と考えていい。

 

そうしている間に魔物のシルエットが遠方に見えてくる、巨大な体躯、二足歩行型の魔物だ、全高4メートル前後。

 

筋肉隆々にライオンのような顔、額には禍々しい2本の赤きツノ、尾は大蛇となっている。

 

確かアレは…キマイラとかいう魔物だったか、かはり上位種の魔物だ。

 

私はキマイラに縁があるようだな、ネネカの研究施設にいたのもキマイラだったからな。

 

それはそうと、それがこの街中に現れるというのは何か引っ掛かる。

 

「黎斗さん!!」

「トモ…それにマツリか」

 

事態の急変を受け、この場にいた王宮騎士団(ナイトメア)の2人が私達に駆けつけてくる。

 

「…頼めるな、トモ、マツリ」

「勿論ですよ、黎斗さん」

「じ、自分もやるッスよ〜!!」

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マ〜イティアクショ〜ン!!エェックス!!タドルクエ〜スト!』

 

「あ、主さま…」

「コッコロ、今はそういう事態ではない、王宮騎士団(ナイトメア)だろうと共闘する必要がある」

 

コッコロは何か不服のようだが、私の言葉に従い、武器を構える。

 

「来るぞ!!!」

 

キマイラは大腕を振りかぶりそれを私達に向かって振り下ろす、その場にいた全員がバックステップ回避をする。

 

振り下ろされた腕は地面を砕き、砂塵が舞う、見た目通りとてつもない腕力だ。

 

「ミクマ流剣術…迅雷一閃光!!!」

 

バックステップ時に大きく飛んでいたトモはそこから建物の外壁に足をつけ踏ん張りを効かし一気に加速して奴の首元目掛けて斬り込んでいく。

 

しかし、ガンッという肉に斬り込んだとはとても思えない音が鳴り響く。

 

「っ…硬いな…!!鋼鉄に斬り込んだみたいだよ…!!」

 

キマイラにはダメージになっていない、キマイラはそのまま動き出し、着地したトモを狙う。

 

「トモねーちゃんには近づかせないっスよぉ〜!!タイガー…スラッシュゥゥ!!」

 

ガンッ!!ガガンッ!とやはり鋼を叩くような音が響く、トモでダメージを与えられないというのならばマツリでは奴にダメージを与えることは出来ない。

 

「か、硬すぎっスよ〜っ!!うわぁっ!!?」

 

奴は足踏みをするだけでトモとマツリを吹き飛ばし瓦礫が舞う。

 

「っ…王宮騎士団(ナイトメア)とはいえ…あのお二人を助けないという選択は…ないですよね…!!風の精霊よ…!!ウィンドエクスプロージョン!!」

 

キマイラの胴体部分に風が集まり、爆発を起こす、流石のキマイラもそれには怯み2.3歩程後退する。

 

その隙に私はガシャコンソードの氷結モードで足元を凍らせ動きを止める。

 

「っ!!?」

 

私はその間に近づき斬り込もうとしていたのだが奴の尾の大蛇が私に向かって噛み付いてくる。

 

「っち、自立して動いてくるのか…厄介だな」

「主さま、奴が動きます!!」

 

コッコロの指摘通り奴は凍った氷を粉々に砕き行動を再開する。

 

「ミクマ流剣術!!灰塵旋撃!!」

「タイガーインパクトォ!!」

 

トモは超高速剣撃、マツリは自身の力を一点集中した一撃をキマイラにぶち当てる。

 

決め手になるような攻撃ではなかったもののキマイラを足止めをするには十分だった。

 

「マツリちゃん!とにかく足止めだ!まだ避難できてない人もいる!せめてその人達が避難するまで耐え忍ぶんだ!!」

「了解ッス!!黎斗さん達もいるし…自分達ならきっとやれるッス!!」

 

コッコロと私もキマイラに接近し4人でキマイラの攻撃を捌く、奴の特徴は高腕力と自立して動く大蛇。

 

1人ではかなりキツイ相手だろうが4人いればそれだけターゲットが分散できる、コイツ自身、特殊な能力があるわけではないから捌くことは容易いが…

 

攻め手に欠ける、奴は防御力もかなり高い、生半可な攻撃では傷一つ付かない。

 

倒すという事ができないのはかはり痛手だ。5分もの間、私達は息も付かせぬ攻防を続けていた。

 

ここで一つの問題が発生するそれはスタミナだ、常に体を動かし続けるというのはそれだけで息切れを起こしパフォーマンスが著しく下がっていく。

 

「っ…はぁ…はぁ、かなりキツイ相手だね…っマツリちゃん!君はもう下がって!」

「はぁ…はぁ…ま、まだ…自分は…っ」

「トモ!!マツリを連れて下がれ!君も最前線で戦い疲弊している筈だ!!体力を回復しろ!!」

 

トモは私達以上に接近し相手を翻弄していた、その為、この場にいる誰よりも疲れている筈、既に彼女のパフォーマンスは5分前より大分下回っている。

 

「す、すみません黎斗さん!!この場は一旦任せます!マツリちゃん!行くよ!」

「申し訳ないッス…」

 

2人の離脱は大きい、私とコッコロ2人では奴の攻撃を完璧には捌き切れないのは事実としてある。

 

奴の攻撃が苛烈さを増していく、お互いの負担を減らすべく、互いに気を配り、極力大きな被弾をしないよう立ち回る。

 

「コッコロ!スタミナの方は平気か!!」

「は、はい…なんとか…大丈夫でございます!先日の魔物の大群に比べれば…大したことなどございません!!」

「よく言った、流石は私の従者!!」

 

だが気合だけでどうにかなるものではない、このままトモが戻ってこなければジリ貧で私達はゲームオーバーだろう。

 

「お待たせ〜!!2人とも、よく頑張ったね!!」

 

ギャン!と金属同士がぶつかり合いをしたような音が鳴る、それはノゾミが剣を片手にキマイラの胴体に思い切り衝突した音だった。

 

あの巨体のキマイラが体を退けぞらせる程の衝突、だがキマイラは止まらない、そのまま衝突してきたノゾミを狙う。

 

「そうはさせませんよ〜!!」

 

キマイラの動きが止まる、見えない糸で足止めされているからだ、これを行っているのはツムギだ、彼女の扱う戦闘用の糸の強度は10トン以上の重りをつけても切れない程。

 

「風の精霊よ…皆さんを守ってください!!」

 

突き抜ける一陣の風がキマイラの体を切り刻む、コッコロと同じく聖霊と心を通わせることができるチカ。

 

「助かった、3人とも…これならば奴を攻略する事が出来る」

「ちょっと見ないうちに黎斗君、変わったね、変身って奴?」

「そうですね…黎斗さん、本当に騎士さんになっちゃいました、ビックリです」

「皆さん、まだ戦いは終わっていません、気を抜かないでください」

 

この3人の助太刀は心強い、なぜかわからないがこの3人の戦闘能力は高い、彼女達を私が少し強化すればこの程度の相手、遅れを取ることはないだろう。

 

私は前線から身を引き、彼女達の強化に集中する、それと同時に私は頭を回す。

 

キマイラ…何故、これ程までに強力な魔物が街中にまで侵入してこれたのか…

 

1つ、街の警備。今、ランドソルは今週末の祭り開催にかけて警備を厳重にしている筈だ、それなのに魔物の侵入を許すとは正直考えにくい。

 

つまりこの魔物は意図的に侵入させたもの…そんな芸当ができるのはキャルくらいだ。

 

2つ、狙いは何か。街門からここまでの距離は約7キロ、それほどまでの距離を一直線にここに向かって来たとなると目的がなければなし得ない。

 

魔物という目に映るものを優先的に狙うルーチンをしているデータの塊がこのような動きをするというのは違和感がある、上記でキャルが使役していると推測したが、だとするのならばコイツの狙いは私やコッコロという事になる。

 

3つ、全体像は何か。キャルが私達を狙っているという事は、ペコリーヌはあくまで保険か…

これで私達を捕まえられればそれでヨシ、これやこれ以外で失敗し続けても最終的にペコリーヌを救出する際に私達は相手の総本山に突っ込む事になる。

 

キャルにしては悪くない策だ、失敗する事を想定した、安全策。

 

だが、リスクを犯さず安全策のみの緩やかな橋では私は簡単に踏破してしまうぞ?

 

あまり私の才能を侮らない方が良い。

 

私がそう思考を割いていた時だった、傷を負った奴の雰囲気が変化する。

 

筋肉がさらに膨れ上がり、怒気のように口から煙を吹く。

 

腕をその場で振り回すと爆風が吹き荒れ、近接戦闘をしていたノゾミが吹き飛ばされる。

 

「きゃあっ!!…っつぅ…怒ったって感じ?ちょっとヤバいかも…!」

「ノゾミさん!あまり無理はしないでください!私とチカさんで何とか動きを封じますから!!」

「分かった!2人とも!よろしく頼んだよ!!」

 

3人の連携で攻撃を何とか捌いていく、私も集中して彼女達を強化するのだが、かなり戦況は厳しい。

 

見誤ったか…?あのキマイラ…相当なレベルだ、私が気を抜けばあの3人だろうと手に負えない、ちっ…集中強化中はあまり私自身が身動きが取れないのがネックだ。

 

奴が大きく片足を持ち上げ地面に叩きつけると地面が砕け、大きな破片が舞い上がる、それを腕を使って更に砕きつつノゾミ達に向かって投擲し始める。

 

彼女達は全てを身体能力や魔法を使って回避していくのだが、奴の尾、つまり大蛇の部分が1つの瓦礫をこちらに飛ばして来た。

 

「っ主さま!!!」

 

身動きの取れない私の前にコッコロが立ち塞がり飛んできた瓦礫を槍を使って粉砕する。

 

「っよくやったコッコロ…!!」

「主さまをお守りするのが従者の……っっ!!?」

 

ゴッという衝突音が響いた、骨が粉砕される音だ。

 

安堵したのも束の間、瓦礫を粉砕した瞬間、伸びて来た大蛇がコッコロを跳ね飛ばしたのだ、私の目の前で小さな体が宙を舞う。

 

槍はその場で虚しい音を立てながら転がっていき、鮮血が飛び散る、彼女の体は十数メートル程飛んでいきそのまま地面に受け身も取れずに叩きつけられる。

 

「…っコッコロ……ッ!!!!!!」

 

やってしまった、私とした事が、前線で戦うカルミナに集中しすぎて、コッコロの強化を疎かにしていた、あの当たり方は非常にまずい。

 

「貴様ァ……私の従者になんて事を…っ!!」

 

怒りが沸沸と湧いてくる、しかし落ち着け私、ここで冷静さを欠くのは後手に回る行為だ。

 

「チカァ!!!コッコロの治療を頼む!!その間は私が出る!!!」

「えっ!?く、黎斗さん!?…っ…あの子の治療が先決ですよね……分かりました!お願いします!!」

 

私は1度カルミナの強化を中断し、戦闘に集中する。

 

ガシャコンソードを片手に一心不乱にキマイラに斬撃を入れていく、しかし鳴り響くのは金属音のみ、硬い奴の皮膚が刃を通さない。

 

「っ…黎斗さんの強化が途切れたせいか…奴を束縛するのが難しいです…!!」

 

ツムギの拘束も一瞬で解かれる程、奴の力は強大だった、私は判断ミスをしていたという事に今気づく。

 

冷静にと言った手前、知らず知らずのうちに私は怒りに支配されていた。コッコロを傷つけられたという事に対する怒り、それに支配され冷静な判断をしていると勘違いしていたのだ。

 

この怒りは過去に不正なガシャットを生み出した永夢や小星作に対して抱いた怒りと同等かそれ以上の物だと今にしてわかる。

 

 

「ヤバっっ!!」

「ノゾミさん!!!?」

 

ノゾミの一瞬の隙をつきキマイラが拳を振るう。

 

『タドルクリティカァル!フィニィッシュ!!!』

 

私はそれに合わせてキメワザを放つ、炎熱の斬撃が奴の振るう拳を斬り裂く。

 

それによりノゾミに対する攻撃は阻止できたがそのまま奴のけたぐりが私に向かって炸裂する、この体格差のけたぐりは私の体全体に突き刺さりそのままコッコロの倒れる位置まで吹き飛ばされる。

 

「がっはぁっ…!!」

「黎斗君!!こんのぉ…!ってわわっ!?」

 

私が倒れている間もノゾミとツムギが何とか時間を稼いでいる、くっ…何という事だ、この私が…っ!!

 

コッコロの方を見ると傷自体はチカにより治されているようだが依然目を覚まさない。

 

私はそれを見て再び拳を強く握りしめる。

 

「…必ず…私の手で削除してやるゥ…!!」

『ギリギリチャンバラ!!ギリ・ギリ・ギリ・ギリ!チャンバラ~!』

 

私はタドルクエストからギリギリチャンバラにレベルアップしガシャコンスパローを手に連射しながら突っ込んでいく。

 

奴の注意をこちらに引き付けつつ、接近したと同時に弓モードから鎌モードに変化させ斬り込んでいく。

 

「くっ!何故だ!!何故ダメージが通らない!!!」

 

硬すぎる!!ここまでトモやマツリ、カルミナやコッコロなどで攻撃を加えている筈なのに、殆どダメージになっていない…!!

 

「黎斗さん!近づきすぎです!!離れてください!!」

 

ツムギの言葉を聞いた時には既に私は大蛇に跳ね飛ばされていた、再びコッコロの倒れる場所まで吹き飛ばされてしまう。

 

ぐっ…何だ…何が奴にはあるというんだ…!!くそっ!思考がまとまらない!私ともあろう者が…!神の才能を持つこの私がァ!!!

 

キマイラが動く、再び地面の瓦礫を使い投擲攻撃を仕掛けて来たのだ。

 

狙いはノゾミ達だけでなく、私や倒れているコッコロ、全員まとめだ。

 

私は咄嗟に動く、倒れてるコッコロを守らなければならないと反射的に動いてしまう。

 

「黎斗さん!!!!」

 

治療にあたっていたチカが叫ぶ、私は彼女達の前に立ちはだかり瓦礫を全てその体で受け止めた、しかし代償は大きかった。

 

「がふっ…ぐっ…」

『ガッシューン…』

 

変身が解除され、その場に倒れ込む、意識自体は保っているが体を動かす事ができない。

 

まさかここまでやるとは…キャルの奴め…中々抜け目がないじゃないか…

 

チカが焦ったように私の治療を開始するがこのままでは強化を受けていないノゾミとツムギは殺され、次に私達も奴に蹂躙されるだろう、私とコッコロは最悪キャルの元へと連れて行かれる程度で済むだろうが…それはゲームオーバーと何ら変わりはない。

 

トモが戻って来たとしても勝率は限りなくゼロに近いだろう、見誤った、選択をしくじった、私の責任だ。

 

こんな感情を抱くようになるとは思いもしなかった……良い経験になったよ。

 

しかし、一向にキマイラが攻撃を仕掛けてくる事はなかった。何かあったのかと私は顔を前方に向ける、すると。

 

「やれやれ…今宵もこの街は騒がしいねぇ…全く…『海内無双の型…二の太刀 一点飛雨』」

 

ズバンッ。まさにその効果音がふさわしい音だった、真上から垂直に真下に放たれた剣撃がたったの一太刀でキマイラの大蛇の尾を切断する。

 

「グルルァァァォッ!?」

 

キマイラが絶叫する、切断され大蛇が自立して動き尾を切断した者に対して攻撃を開始しようとしていたのだが。

 

「汚物は消毒だァァ!!ナナカ・エクスプロージョン!!」

「クックック!!来れよ!コード:ヌル!羅刹涅槃(アナイアレート・フォール)・極光終天冥壊波(ファイナル・カタストロフ)!!!」

 

強烈な攻撃魔法が容赦なく大蛇を消し飛ばす。それと同時に更にキマイラ本体が絶叫する。何か奴と大蛇には関係があったように見えるが…

 

「ミツキさんの言っていた通りですわね…あの大蛇の部分が力の源…それさえ消せば弱体化すると…さて…」

 

ゴリゴリとかなり重量のある金属を地面に引きずる音を立て近寄る影が1つ。

 

「私の黎斗さまを傷つけた不届き者…覚悟はよろしくて?クスクスクス、答えは聞いてませんが…」

 

引きずる音が消え、そのシルエットは跳躍、キマイラの懐に入り込み、手に持った巨大な斧を振り抜く。

 

ゴバァッという肉が吹き飛ぶ音が鳴り、キマイラの巨体が数メートル程浮いた、とてつもない力がある事が窺える。

 

殴られた腹部はドス黒い血が吹き出て内臓部分が露出する。

 

そして吹き飛んだ巨体の真下に何やら赤く光る魔法陣が出現しそこから黒く太い薔薇が複数出現、キマイラを拘束し縛り上げる。

 

薔薇のトゲが体に食い込み激しい出血をし吼えるキマイラ、それを眺めるのは建物の屋根上に立ち、月の光でシルエットとなり姿を隠す1人の女。

 

「エリコちゃん、その子の体、後でじっくりと見たいから出来るだけ丁寧に解体して頂戴ね!ほら、ルカも手伝って」

「はぁ…ミツキには敵わないよ…この期に及んで死体の良し悪しを考えるなんてね」

 

私はこの集団を知っている、私が出会った中でも極めて戦闘能力の高い集団のギルド…たしか『トワイライトキャラバン』といったか…

 

「黎斗さん!遅れて申し訳ありません!マツリちゃんを避難させてる途中にあの人達に会って…黎斗さんの名前を出したら協力してくれるって言ってくれたので連れて来ました!!」

 

私に駆け寄って来たのはトモだった、どうやら彼女達を呼んできたのはトモのようだ。

 

「そうか…いや、正直最高の助っ人だ…」

「そうですね…見ていて分かります、1人1人がめちゃくちゃ強いですよ…」

 

私の強化能力など必要ない程に彼女達は強い。

 

私達が手こずった相手を見事な連携で圧倒していく、刀で斬り裂き、魔法で吹き飛ばし、斧でミンチにしていく。

 

たった数分で事が終わった、キマイラは原型が留めていないほど肉体を破壊され見るも無残な肉塊へと変貌していた。

 

「黎斗さん、これで怪我の治療の方は終わりました」

「すまないチカ……コッコロの方は…?」

「…分かりません、他に目覚めないのには何か理由があるのかもしれません、とにかくこの子は医療施設に方に預けた方がよろしいかと…もう回復魔法でどうこうできる段階は過ぎています」

「そうか…」

 

彼女の言葉を黙って受けいれる事しかできない、私らしくもないな。

 

「ああ!黎斗さま!!大丈夫ですか!!?どこもお怪我をなさっていませんか!?」

 

そう言って私に飛びついてくるのは先程大斧でキマイラをミンチにした魔族の少女、エリコだ。

 

「全く、黎斗、お前さんはいつも騒ぎの中心にいるねぇ、何か持ってるのかい?」

 

今度私に話しかけてくるのは太刀で大蛇を切断した和風の装いをした女性ルカだ。

 

その他にも

 

「我が友、シグルドよ!どうした!情けないではないか!!」

「いやいやアンナたそ、あんな化け物を真正面から戦うなんて無理ゲーですぞ、私達もミツキ氏の助言がなければ苦戦は免れなかったですしおすし」

 

発言の一々が厨二臭い魔族の少女はアンナ、彼女の見た目はパンクでそれこそ厨二病全開の服装だ。うってかわってオタク全開の話し方をするのはナナカだ、見た目は想像しやすい魔法使いそのもの。

 

そして最後に

 

「でも、おかしいわね…黎斗君ともあろう者が…キマイラの弱点を探し出す事ができないなんて…」

 

片目を眼帯で隠し妖艶さを醸し出す女性ミツキ、彼女の性格はマッドな気質がある為、私はあまり得意なタイプではない。

 

「何かあった?それとも…そこの子のせいかしら」

 

ミツキはニヤリと笑いながらコッコロを見る、本当に見透かされているようで嫌な気分だ。

 

「…すまない、少々思考が纏まらなかった…助かったよ」

「あら、あなたから感謝されるなんて珍しいわ。まぁ、それはそうとその子、目を覚まさないわね」

 

…確かに、何か違和感を感じる。回復魔法には怪我を負った人間の症状はある程度分かると聞くが、チカの様子を見る限り、特に脳の方にダメージを負っているようではない筈…

 

「…何にせよ、彼女を医療施設に連れていかなかればならない」

「それなら私の出番ですわ、この近くに私が行きつけの病院がありますの、腕は確かですのでご安心を」

 

エリコがそう言うのだが彼女の行きつけというは何か引っかかる。

 

「トモ、マツリ、後の処理は君達王宮騎士団(ナイトメア)に任せる」

「分かりました…と、最後に1つだけ、黎斗さんに話しておきたかったことを伝えておきます」

 

私達はすれ違い様に言葉を交わす。

 

「王宮内で何かあったみたいです、王宮内直属の兵士達の様子が変わりはじめました」

「…そうか、頭に入れておく」

 

兵士達の様子の変化…か、このキマイラ騒動といい何か変化の時が差し迫って来た、という事か。

 

 

 




あと少しで最終決戦だ、頑張ろう私。

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