プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
王宮、それも玉座の間とか呼ばれる場所の丁度真下に位置するこの場所。
大きな広間にポツンと機械が1つ。
「ちっ……ラジラジの旦那…どうなってやがる…!!」
「そうですね…やはりというかここの警備はかなり厳重ですね…ダイゴ、やはり正面突破は厳しかったかもしれません…!」
俺とラジラジの旦那は今、洗脳装置っつぅもんを破壊する為、その保管されてる場所までやって来たんだが…
「とてつもない数のシャドウ…これにこの場を守らせている…」
「まぁ、今は兵士共は色々と出払ってるからな、都合がいいというかまぁ、得策だよな」
俺達はとにかくシャドウ達をぶん殴りながら前へと進んでいく。
「あの陛下代理とかいう少女が仕掛けたものでしょうが…どうしたものでしょう」
「こいつら自然消滅するんだろ?つってもそこまで待ってる時間はねぇけど…!」
そうだ、俺たちには時間がねぇ、他の奴らも頑張ってるんだ、さっさと俺達も仕事終わらせて合流しねぇと…
「っ…!!…っダイゴ」
「どうした?」
「…あのシャドウが…います…!!」
ゾクリと背筋が凍る。前方を見ると、奴がいた…あの時、俺達全員を戦慄させたあの男が…。
「…マックス大変身」
『マキシマムガシャット!ガッチャーン!レベルマァックス!!最大級のパ〜ワフルボディ!!マキシマ〜ムパワーエェックス!!』
「どうします…ダイゴ…今の私達ではアレには勝てませんよ…!」
「どうするもこうするもやるしかねぇだろうが!!」
自然消滅を狙う?それまで後何分掛かる?
前回だって10分か20分くらいは残ってやがった筈だ、それまで逃げ回ったらジリ貧で俺達は負ける。
とにかく洗脳装置を破壊しなきゃならねぇ…兵士達もこの今の状況に疑問を抱き、他の奴らがやべぇ目に合う確率が格段に下がる。
ここはなんとしても…意地でも突破しなくちゃならねぇ…!!
「…覚悟決めろ…旦那…男にゃ引けねぇ時がある」
「…そうですね…私も男です、気持ちは分かります、出力全開で挑みます」
俺は両拳を打ち鳴らし、旦那は無数の腕を出現させ構える。
「ゲーム…スタートだ…!!!」
あいつがそんな事を言いながら、腕を大きく振りかぶり…来た!!腕が伸びて来やがった!!!
「うぉぉぉぉ!!!」
俺達は前へ飛び出す、真正面から打ち破る!!それが俺の…俺達の流儀だ!!!
…
「面白い、中々考えて来たようね…ラビリンス」
「…ネネカ様を解放するんだ、お嬢さん」
まさに一触即発って空気だよね〜…この玉座の間には私シズルとマサキさん、そしてリノちゃんの3人がいる訳なんだけどちょっと想定外かなぁ…
本当は陽動で撹乱するのが私達の目的だったんだけどうまく誘導されちゃったのか辿り着いたのは玉座の間…
兵士達はかなり倒したからここにはあんまり来ないと思うけど…目の前には陛下代理とかいう黎斗君のお友達の子…
前に見た時からヤバいとは思ってた、性格とかそういうんじゃなくて…純粋に魔力が
内包してる魔力の量が桁違い。それに使う魔法だってかなりヤバめ。
「ネネカ、ネネカって…あんたはそれしか言えないのかしら、まぁいいわ…黎斗とかがいないんじゃつまらないし…あの世に送ってあげる、あたしの手で」
前と口調が違う、これも洗脳装置って奴のせいなのかな、元々あの話し方はおかしいって黎斗君とかが言ってたし…内なる心を刺激するって見解は正解かも…
「あの世にはいかん!!俺は…ネネカ様を救わねばならんのだからな!!!」
「あっそ、目障りよ、消えろ…メテオシューティングダスト!!」
彼女の頭上に巨大な魔力の塊が出現、そこからあり得ない数の魔法弾が発射されてくる、これは…!!!
「リノちゃん!お願い!!!」
「任されましたよ!!お姉ちゃん!!」
リノちゃんはすぐに構える、矢を数本手に取り、片膝をつき、弦を引き絞る。
「いっけぇぇぇぇぇ!!!コロナレイン!!!!」
ドンッ!!とリノちゃんが放った矢が炎を纏い、無数に分裂して迫りくる魔弾を1つ1つ破壊していく。
「ってわわっ!?流石に全部破壊するのは無理!?」
「そうはさせん!!」
ガガン!とマサキさんが剣で迫る魔弾を連続で薙ぎ払う。
「あ、ありがとうございます…」
「礼には及ばない!」
「余裕があるようだけど、これで終わりなわけないじゃない、サンダボール・レスレヴィナント!!」
2メートルくらいの巨大な雷の弾が10個ほど生成されてこっちに飛んでくる。
「むっ!?これは回避優先か!!」
「うん!みんな散開して避けるよ!」
だけどそれを簡単に許してはくれない。
「ネビュラ・ランス!!」
「嘘でしょ!?間髪入れずに別の攻撃魔法!?」
才能があり過ぎるよ!?普通、攻撃魔法をこんな連続で同時に使用なんてできない、脳が焼き切れちゃうから。
魔法を使うというのは文字を書くのと一緒、別の魔法を同時に使うという事は別の文字をもう片方の手で同時に書くという事に他ならない。
しかも1つの魔法につき何個も何十個も展開するなんて…片手どころか1つ1つの指先で別の文字を同時に書いてるような、そんな神業だよ。
あの子はそれを今、やってる…!
放たれた槍は全部で20、一直線に飛んでくるから軌道は読みやすいけど…
「くっ!先に放たれた弾の方が面倒だ!!仕方がない!!斬り裂き破る…」
「っマサキさん!それはダメ!!!」
私はそう叫んだけど時既に遅し、マサキさんが雷の弾を斬り裂いた、すると
「なっ……っ!!?」
バリバリバリっていって弾が弾け飛び雷撃の爆発を起こす、近距離で浴びたマサキさんは雷の光に包まれて一瞬姿が見えなくなる。
「ば…爆発……した…だと…っ!?」
「…っセイクリッド…パニッシュ!!!」
私は背中から光の粒子を集めた翼を出現させ、一気に加速し飛び交う雷弾を避けながらマサキさんに近寄り、更にダメージを負ったマサキさんに飛んでくる槍を弾き飛ばす。
「リノちゃん!!!」
「わかってます!!」
遠距離攻撃のリノちゃんが安全圏から雷の弾を狙撃して爆発させる、これによりなんとか相手の攻撃を凌げてはいたんだけど…
「オメガグラビティ!!」
「つぅっ!?」
次に来たのは重力魔法、リノちゃん以外の私達はかなりの重さで上から押さえつけられたみたいに地面に這いつくばる。
リノちゃんは範囲外…っ…なんとかしてもらわないと…っ!
「ダークサンダイオン!」
またしても攻撃魔法の連続使用、狙われるのは当然動けない私達…!!
「シズルお姉ちゃん!!!?」
「こんのぉ…っ!!セイクリッド…シールド!!!」
無理やり技を発動させ光り輝くドームシールドを展開、真上から降り注ぐ無数の闇色の雷を妨害する。
「…くっ…っレジオン!!」
マサキさんがそう叫ぶと、体がフッと軽くなる…多分周りに負荷がかかる魔法を阻害する魔法を使ってくれたんだと思う。
「っ…やるなあの子…少し侮っていた」
「代理を任されるだけはあるね…」
私達は防戦一方、いまだ降り注ぐ雷を前にシールドを解除できない。
その間も他の攻撃魔法でリノちゃんを攻撃している、どうなってるんだろうあの子の脳みそ…
「しかし…こんな魔法の使い方…魔力以前に脳が持たないぞ」
「そうだよね…今見えてるだけでも同時に『8つ』の魔法を使ってる…しかも1つにつき何個も…何十個も展開して…こんなのまともな使い方じゃない」
どんなに才覚があったってこんな芸当は正直不可能だと思う、考えられるとすればあの仮面…
無理やり魔力を高め、脳味噌を弄ってるのかもしれない、魔法を最適に使う事ができるように。
「…長時間の戦闘は好ましくない、彼女の命に関わるかもしれん、彼女は黎斗君達の知り合いなのだろう?」
「そうだね…ここで見捨てちゃったらお姉ちゃん、黎斗くんに顔向けできない」
それにジッとしててもリノちゃんが持たない、というかもう既にリノちゃん1人じゃ限界っぽいし。
「…マサキさん、シールドが解けたらさっきの魔法お願い」
「任された、アレを使った後は即回避、そしてすぐに本体に攻撃して少しでも次の攻撃の手を緩めさせるんだ」
私がシールドを解くとマサキさんがさっきの魔法でまず重力効果を無効化する、そしてすぐに散開しつつ。
「セイクリッドチェイン!!」
剣を振りながら光の鎖を召喚し、あの子が放つ魔法を砕きながら本体を狙う。
「リノ君!平気かい!?」
「す、すみません…少しヘロヘロで…」
「俺の後ろにいるんだ!攻撃は全て防ぐ!!」
リノちゃんはマサキさんに任せておいて…私は…!!
「本体狙い…小癪なマネを…!!!!」
私の鎖を嫌がり周りを打ち払うような範囲攻撃魔法を唱え始める。
「接近戦は苦手な典型的な魔法使いタイプだね、だったらお姉ちゃん、遠慮なく近寄らせてもらうんだから!!」
未だに降り注ぐ槍や弾、雷、様々な魔法を掻い潜り彼女の懐まで潜り込む。
「っ…!!?」
「これで…終りにするよ!!」
私は剣を引いて、突き刺す構えを取る。
「…掛かったわね」
「なっ…っ!?」
瞬間、彼女が一歩大きく後ろに飛び退くと彼女が立っていた場所の床に魔法陣が出現、これは…!!!
「設置型…魔法っ…きゃぁぁぁぁ!!!?」
設置型魔法が炸裂して閃光が迸り私は大きく後方に吹き飛ばされる、ギリギリ…本当にギリギリで回避と防衛魔法が発動できたから致命傷にはならなかったけど…っ…!!
「シズルお姉ちゃん!!?」
リノちゃんの声が聞こえる、私は背中から地面に叩きつけられて数回転がりつつ前を見る。
ユラリと体勢を立て直したあの子が口を開く。
「接近戦が苦手なんて百も承知よ、対策してないわけがないじゃない、あたしに近寄るな、屑共」
っ…また攻撃魔法がめちゃくちゃに放たれる…ヤバいかも…!!
その時、私の目の前に全力ダッシュで近寄ってきたマサキさんが数多の攻撃を剣1つで捌いていく。
その後ろからリノちゃんも走り寄ってきて、倒れている私の肩を抱き寄せる。
「くぅ…!!!!」
「ま、マサキさん…!!?」
「俺は騎士だ…!!!ネネカ様をお守りする誇り高き騎士!!その騎士が目の前で女の子を守れないなどネネカ様に笑われてしまう!!!」
マサキさんは全ての攻撃を弾き消す、私だけじゃないリノちゃんの分まで全て。
でも剣1つでは限界がある、このままじゃマサキさんが最初に倒れる事に…っ!!
「くっ…倒れろ…!倒れろ……!!倒れろぉぉぉ!!!」
…!!あの子の様子が…いや、当然だよね、こんな無茶苦茶な魔法の使い方…あの子の方がキツイ筈…
でもこのままだとマサキさんが言っていた通り、あの子が死んじゃうかもしれない、マサキさんだってもう限界…
それはダメ、黎斗君達が悲しむから…!!
「クソがっ!!思った以上に耐えやがって…!!!!だったら良いわ!!コレで本当にお終いにしてあげる!!!」
更に魔力を練り上げてる…!!何か来る…!!!
「マサキさん!リノちゃん!!私の後ろに下がって!!!全力で盾を張るから!!!」
私は2人を下げさせる、次の瞬間。
「アビス・バーストォォォォォォォ!!!!」
それは炸裂した、一点集中、私たちに向かって特大かつ眩い閃光が襲いかかる。
「ぐっ…くぅ…っっ!!!」
ドーム型のシールドがビリビリと揺れる、ヒビも徐々に徐々に入っていっている、後何秒持つか…分からない…!!!
「くっ…あの子も洗脳とやらをされているのなら…ダイゴ君達が破壊さえしてくれればこの状況もなんとかなるのだろうが…」
「流石に今はそれは期待できそうにないですね…シズルお姉ちゃん、大丈夫ですか?」
正直、会話に参加できるほど余裕がない、一瞬でも気を抜けば私達はあの魔法により蒸発する事になるから。
「…っつぅ…っ!!?」
バキンッと私のドームシールドが破壊されたと同時にあの子の特大級魔法も撃ち終わる…ギリギリだった…
後1秒でも相手の方が持っていたら…危なかったかも…っ
「くぅ…そぉ…はぁ…はぁ………一筋縄じゃ…いかないわね…っ!」
「く…はぁ…はぁ…むしろ…私達相手に…たった1人で大立ち回りできる方が……凄いと思うんだけど…ね…っ」
これでも私は腕に自信があった、でもこの子を見てるとその自信も無くしそうだよ…
「でも…ふふ…っ!!メインのタンク要員が疲弊しているのなら…後の2人を殺すなんて簡単だわ…死ね、陛下に逆らう罪人共が!!!」
っ…アレだけの大技を放っておきながらまた間髪入れずに攻撃魔法!?
さ、流石に私はすぐには動けない、それにマサキさんやリノちゃんだって完璧に防げる程、体力が回復してない…どうしよう…!!
来るっ…!!あの子の攻撃魔法が…私達に死が…確実に迫って…っ!!
「死ネェェェェェェェ!!!!!!」
とてつもない数の攻撃魔法が放たれ、私たちの眼前を覆い尽くしていた、本当ならここで終わり。
私たちの敗北は確定していた…けど…
「はぁぁぁぁ!!!」
「やぁぁぁぁぁ!!!!」
「てぇぇぇい!!!」
どこからともなく聞こえたその声は、私達に降り注ぐ攻撃魔法の嵐を片っ端から弾き飛ばし、私達の目の前に現れる。
「……ペコリーヌ、コッコロ…それに…黎斗…」
攻撃魔法を放っていた彼女がそう呟いた、そう…私達の目の前に現れたのは…
…
「無事で何よりだ、シズル、リノ、マサキ」
「おお!その声は黎斗君!また一段と面白い見た目になったな!!」
マサキが私のデンジャラスゾンビの姿に興味津々に見つめてくる。
「キャルちゃん、一緒に帰りましょう、美食殿に…みんなの笑顔が溢れるあの場所に…」
「ペコリーヌ…どうやってあそこから出たか…まぁ黎斗なら出来るわよね当然」
「…キャル、君の狙いはなんだ?何故わざわざ私達をここまでおびき寄せる必要があった?ペコリーヌを拘束してまでな」
彼女は「ふぅ…」と軽くため息をついた後。
「…決まってるじゃない、あんた達を『一網打尽にする為よ』」
「っ!?」
バチィと私達全員の体に電気のようなものが走り拘束される…魔法ではない、これは…っ!!
「この王宮の防衛システムの1つ、魔法なんかじゃコロ助辺りに探知されちゃうからね、この場所に仕掛けさせてもらってたの」
私達全員がその場で膝をつき、苦しみ始める。
「キャルさまは…これを…!!」
「当たり前じゃない、そうじゃなきゃ、わざわざペコリーヌを生かしておく必要なんかない、あんた達みんなまとめて陛下のエネルギーになってもらうわ」
「…成る程…っ…洗脳装置…とやらは…これらのシステムも管理する為か…っ!!」
私がそう言うとキャルはドシンと玉座の間に座り、微笑む。
「ええ、そうよ、あの機械はこの王宮システムの要…あんた達はただ闇雲に壊そうと考えてたみたいだけど、それも無駄。ただ壊したところでこのシステム自体は破壊されない、あんた達は初めから詰んでたのよ」
「…なっ…そんな…っ!!それじゃあ私達は…!!」
リノが絶望した顔で叫ぶ。
「洗脳も解く事が出来ず…我らは捕まる…くそっ!!ネネカ様を助けるのが俺の使命だと言うのに!!こんなところで!!」
マサキは下を向きながら吠える。
「…なら、1つだけ助かる道を与えてあげるわ…」
キャルが呟いた。
「何…?」
私は当然疑問に思い、キャルに訊ねる。
「ねぇ、黎斗…あんた…あたしのものになりなさいよ」
「…何を言っている」
彼女は不気味に微笑みながら続ける。
「あんたがあたしのものになればそこにいる奴らみんな助けてあげる、簡単でしょ?」
「…何故、私なんだ」
「………あんたっていい奴よね、本当…あたしにしょっちゅうかまってきてさ、最初から…あたしがペコリーヌを監視してた事知ってたくせに優しくしてさ…本当に……あんたが欲しい」
…そうか、少し勘違いをしていた。
私は彼女は憎しみや怒りなどで感情を上書きしたのだと思っていた、だがしかし違う。
これは…『愛情』だ、私に対する愛情、コッコロやペコリーヌに対する『友情』。これが歪んでいる。
その膨れ上がった醜い感情が彼女を今なお塗り潰している。独占欲や支配欲に近いものだろう。だからこそ
「ねぇ、黎斗…いいでしょ?あたしのものに「断る」
私は彼女の言葉を遮りながら断言する。
「今の君は……キャル、本当の君じゃない。私の知るキャルという人物は人知れずに努力を惜しまない努力家だ」
私はチラリとペコリーヌの方を見る。それに気づいたペコリーヌが口を開く。
「わたしの知るキャルちゃんは…思ってる事もちゃんと言えなくって、いつもいつも反対の事を言って…でも…本当は優しい良い子なんです」
「わたくしが知るキャルさまは自分よりも他人を優先する方です、そのように自分のみに利益がある事を考えても…抑え込んでしまう…ずっと1人で戦ってしまうような強いお方なんです」
ペコリーヌもまた私同様にコッコロを軽く見つめると、それに気づいたコッコロも言葉を紡いだ。
「…あたしの何がわかる…っ!!!ふざけんな!!知ったような口を聞くな!!黎斗もだ!!あたしのものになれよ!!!そうすれば解決なんだ!!そうすれば……!!」
「『誰も傷つけなくて済む』か?」
「っ!?」
私が彼女の言葉を続けた。
「甘いな、キャル…誰も傷つかないなんていうのは甘い考えだ、そんなものは誰も望まない、自分の道は自分で決めるものだ、例え辛い未来になろうともその先に悲しみ以外何もないとしても人は前に進まなければならない、立ち止まってはならない」
狼狽るキャルに私は続ける。
「今の君はどうだ?陛下なんて呼ばれる者の言いなりとなり、紡ぐ言葉は夢幻の絵空事、誰も傷つけたくない?自分は辛い目にあっていた?そんな『未来』と『過去』に縛られるのはもうやめろ」
私は電撃で拘束されながらも無理やり立ち上がる。
「『今』の君はどうしたい、何がやりたい。過去に絶望し未来を悲観しその場で足踏みしているだけの君は一体何がやりたいんだ?」
「うるさい…!!うるさいうるさい!!もういい!!!だったら今やりたい事決まったわ!!あんた達全員…ぶっ殺す!!!!」
彼女が立ち上がり、魔法を詠唱し始める、アレが放たれれば満足に動くことができない私達は消し飛ばされるだろう。
だがしかし
バシュンッという音と共に私達を拘束していた電撃が霧散し消え失せる、それは流石に予想していなかったキャルは驚きのあまり詠唱を中断してしまう。
「なっ!?なんで!?どうして!!?」
「ふぅ…どうやら間に合ったようだな、ダイゴ達は…」
…
「たく…黎斗の兄ちゃんも……くぅっ…無茶…言ってくれるぜ…」
「はぁ…はぁ…ど、同感ですよ…」
俺達は瀕死の状態、王宮のある一角の陰で座り込み息を上げていた。
…だが洗脳装置は破壊できた。
「まさか…『あのシャドウ』を利用する事も作戦に入れているとは…恐れ入りますね彼の頭脳は」
「ああ、あいつの能力…『リプログラミング』?だっけか…アレを利用すればあの装置を上書きして破壊する事ができる、ねぇ…」
「理屈は分かりかねますが…あの洗脳装置をただ物理的に破壊するのでは洗脳は解けない可能性がある、そして陛下代理ならば前回現れたあの強敵を再び守護者として配置する。そこまで読んでのこの作戦…お見事です」
…それにそれだけじゃねぇ…俺とラジラジの旦那を組ませたのも考えてやがる。
おばさんや他の奴らは割と魔法や能力に頼り切り、あのシャドウの能力を受けちまったらかなりやべぇ状況になる。
だからこそぶっちゃけ特殊能力とかねぇ俺や一瞬で戦線離脱できる旦那がいれば、洗脳装置をリプログラミングって奴さえすれば速攻逃げられる。
勝つ必要なんざ最初から無かったのさ。戦いには負けても勝負には勝つ、はっ!中々おもしれぇ経験だぜ。
「つぅか…それでもかなりヤバめだけどな…今の俺達…」
「ええ、逃げられたのは運が良かったからでしょう…とにかく、合流しましょう、私達の仕事は終わっていませんよダイゴ」
「っつぅ…マジで今日は重労働だな…こりゃあ…」
俺達は瀕死の体を引きずりながら玉座の間へ向かう。
…
「なんで…どうして…」
「互いに切羽詰まった状況で」
「っ…!!?」
狼狽るキャルの言葉を遮るように私は話す。
「出来る限りの策を練る……これはラビリンスの初めの作戦会議で決めた言葉だ」
確かにキャルは1人でよく考え抜いたものだ、称賛してやろう。
「だが……私と君とで知恵比べして…君が勝てる道理があるわけないだろう、キャル」
「ふざ…けんな…っ…」
「あの用心深い千里真那が永夢のシャドウをたった1体だけしか用意しないとは考えられない。そして失敗が出来ない君が手を抜く事は決してない…導き出される答えは簡単だ。洗脳装置の守護をさせるという事さ」
しかし1つ、彼女は失敗した。
「…君は永夢を…マキシマムゲーマーの力を知らなかった」
「…っ」
リプログラミングさえ知っていればそこに配置するなんて事はしなかっただろう。単純に私と彼女とでは知識の差が、経験の差が出た。
「…決着をつけよう、キャル…君と戦うのはこれが最後だ」
キャルとの最終決戦が今、始まる。
永夢君まともに戦ってもらえなくてかわいそうになってきた。