プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
Princessの絆!!
僕の名前は宝生永夢、聖都大学附属病院に勤めるドクターだ。
黎斗さんが…いえ、黎斗IIが消滅してから1年の月日が経過していた。
僕は相変わらずCRと小児科を跨いだ生活をしている。
…CRが存在している、という事は未だにバグスターや消滅してしまった人達の問題は片付いていない。
あの日…黎斗IIが消滅した日を境に世界中で異変が起こり始めた、これは恐らくだけど黎斗さんは関係ない。
どちらかというと本来起こるべき事が今起き始めたって言い換えたほうがいいのかもしれない。
それはなんなのかっていうと新しいバグスターウイルスの出現。バグスターもウイルス、年々進化をして来ている。
今までバグスターウイルスは黎斗さんの管理下にあった、だから黎斗さんの元会社である幻夢コーポレーションのプロトガシャット10種のゲームキャラクターを元にしたバグスターしか発生してこなかった。
でもその黎斗さんはもういない、檀正宗も存在しない、管理下から離れたバグスターウイルスは世界各国にネットという広大な海を使って広がりを見せた。
それにより幻夢製のゲームのみならず世界のあらゆるゲームのキャラクターを元にしたバグスターが発生している、それがあの日から変わった異変の1つだ。
だから僕達仮面ライダーの仕事は無くならない、未知の脅威に立ち向かう為に僕達はドクターとして仮面ライダーに変身し今も尚戦っている。
そして2つ目は新たなバグスターが生まれ始めた事により動きもあったという事、それは幻夢コーポレーションの現社長、小星作さんがCRと協力し新たなガシャットを作り出した。
そして衛生省からの指示により新たな適合者…ドクターライダーをこの聖都大学附属病院に配備する事になった。
最前線で戦ってる僕達も、もういい歳だ。今後も新型のバグスターウイルスが生まれ続けるのならやはり若い世代に引き継いでもらわなければならない。
本来ならこのバグスターの広がりに対して全国的にもっと配備をしていきたいっていうのが本音なんだろうけど適合手術は狭き門、それをクリアした医者を見つけ出すというのはかなり難題だ。
現にこの病院に配備された新しい適合者はたったの1人、手術を受けた人数は20人いたのにたったの1人だ。
正直あまり実感なかったんだ、当時の僕はパラドに感染していたから適合手術を受けずに変身できた。
大我さんは黎斗さんによって元々選ばれた存在で僕が変身していた時には既に適合者だった。
飛彩さんも黎斗さんと過去に出会っていた時点で選別されていたんだろう、貴利矢さんも。
当時、黎斗さんによって駒として僕達は集められた訳だから当然みんな適合できた。だから実感が湧かなかった。
本来、適合するのはここまで狭いんだって事を、今回改めて僕は実感した。
「先生!永夢先生!!」
「叶君!」
彼は
彼は8年前、当時15歳の時にライダークロニクルが起こった、その時に僕が治療した患者の1人だ。
あの時から叶君は命がけで救ってくれた僕に憧れてドクターを目指し必死に勉強してこの病院に来てくれたって話を聞いた時、僕は心の底から嬉しかった。
恭太郎先生に憧れてドクターを目指した僕に叶君が憧れてドクターになった、凄く運命を感じる。
これが受け継ぐって事なんだって思った、ドクターの…ヒーローの意思は受け継がれていくんだって。
そんな彼もまた昔の僕と同じくCRと研修医の二足の草鞋を履いている。
CRに所属しているという所から分かる通り、彼もまた仮面ライダー…の卵。
さっきも言ったけど、若い世代に適合手術を受けさせてガシャットを使い、変身させる訳なんだけど…
まだまだ育成が足りていないのは事実としてある、彼の扱いが卵なのはそれに起因している。
僕や飛彩さん達が戦っていたあの頃は黎斗さんのせいでとんでもない量のバグスターやライダー達と戦わされていた、それこそ毎日のように。
幸いな事に現状新種のバグスターもパンデミックという程、爆発的に増えてはいない、既存のバグスターもワクチンでなんとかなる。それに黎斗さんの暗躍がなければ人為的な発生もないから僕達がオペする機会もそこまで多くはない。
仮面ライダーのオペは命がけだ、新人研修だとか言って無闇矢鱈に彼のみでオペさせるわけにはいかないから先輩である僕達も現場に行くんだけど…
僕はともかく飛彩さんは融通が効かずに1人で倒してしまうのが問題で新人の育成にまるでなってないのが現状。
一応僕からも注意を促した事はあるんだけど…「俺の執刀は俺が決める」の一点張りで全く話を聞かない、なんというか頑固さは昔からは変わらないけど…こう…やり取りが初めて会った頃を思い出して嫌だった。
あのポッピーからもこっ酷く怒られたのも記憶に新しい。
そんな訳で近況は色々と変わって来ている、その中で1番変わった出来事…というか驚いた事があったんだ。
今から1ヶ月程前に遡るんだけど…
ー1ヶ月前ー
「えぇぇぇぇ…!?」
ポッピーの甲高い声が耳をつんざく、というのも仕方がない事だと思う、だって僕も驚きを隠せていない。
「き、きききき、キリヤがけ、けけけけ結婚っ!?ぴぴぴピプペポパニックだよ〜!!」
そう、あの貴利矢さんが突然結婚するなどと言い始めて来たからだ。
もうそれは驚いた、いつもの嘘かとも思ったけどなんかそんな雰囲気じゃないというか何というか…僕だって長い付き合いだ、それくらいは分かる、だからこそ驚いたんだ。
CR内でその報告を聞いた訳なんだけど、僕は口を開いたまま静止、ポッピーはピヨり、飛彩さんは口に運んでいたケーキを落とし、叶君は僕達の声に驚き何もないところで転んだ。
「あのさ…君達、酷くない?その反応」
「いや…だってあのキリヤがだよ!?嘘つきでなに考えてるのかわからないあのキリヤが!!」
「…ポッピー、流石の自分でも傷つきますよ、それ」
まぁ、ポッピーがそう言うのも無理はないと思う、僕も口には出さないけどそう思ってるし。
いやというかいつの間にそんな関係の人がいたの?っていうのが素直な感想、だってそんな素振り見せなかったし…いや、貴利矢さんの事だから言ってたのかな…?
貴利矢さんとの会話は半分くらい冗談として聞き流してる、いつも嘘をつくからね。
だから過去に「いや〜自分、〇〇さんとお付き合いしててさ〜」なんて言ってたかもしれない、勿論僕は「はいはい、そうですね」と言った具合でスルーしてた可能性もある。
それが本当の事だと知らずに…ともかく
「ん″ん″…ところで観察医、相手は誰なんだ?」
飛彩さんがわざとらしく咳払いをしながら貴利矢さんに聞く、うん、それは僕も気になる。
「ああ、それは紗衣子先生だよ」
「八乙女紗衣子だと!?」
「うおっ…っ」
僕は突然の事に驚きの声を上げた、その理由はそう言って僕の体から出て来たパラドに驚いたからだ。今までは黙って聞いていたけどその名前を聞いて我慢できなかったんだと思う。
パラドと紗衣子先生には浅からぬ因縁があるから無理もない反応だとは思うけど、僕も…まさか貴利矢さんとだなんて…
つまり…紗衣子先生と以前からお付き合いしてたって事になる、貴利矢さんもそうだけど紗衣子先生とも僕はちょくちょく会っていた筈…2人とも全くそんな素振りを見せなかった。
2人ともポーカーフェイスが上手い人だから仕方がないんだけど。
「でもどうして紗衣子先生と?どっちからプロポーズしたんですか?」
「そりゃあアッチからだね、まぁまぁ付き合いもあったし気も合うし別にいっかな〜って感じ」
「随分適当だな、観察医らしいといえば観察医らしいが…結婚というのはそういう不純な理由で決めるべきではない」
飛彩さんにとって結婚というのは小姫さんとのある意味でのエンディング地点だ、そこまで辿り着く為に今までずっと苦しんできた。
貴利矢さんのそんなフランクな理由にトゲのある返しをするのは当然の事で、僕自身飛彩さんの意見はもっともだと思う。
だって結婚っていうのは人生でも重要な分岐点だと思うから、といっても結婚はおろか女性と付き合ったこともない僕が言うのも何だけど。
「…そうかもな、でもさ、別に嫌いでもなくて寧ろ好印象の相手に告白でもされたらそれでオッケーなんじゃねぇの?…それにさ自分達はもう別に若くねぇんだしな」
貴利矢さんの返しに何も言えなかった、特に…若くないという部分に。
今まで色んな事があった、辛い事も楽しい事も、それに目を取られて意識が向いてなかったって言うのはある。
僕も今年でもう32歳……若くない、普通に考えればなりふり構っている暇がない年齢って言えるかもしれない。
それに僕は医者だ、そういった場に行く事も機会も今は無い、忙しいという理由で先延ばしにしていたら多分、僕は一生結婚なんてできないと思う。
飛彩さんのように学生時代からの恋人がいる訳ではないし、学生時代はゲームが恋人みたいな感じで今はそれが仕事に変わってる。
そう考えると確かに貴利矢さんのように数少ない出会いを大切に即時即決のような大胆な行動を起こしたほうがいいのかもしれない。
「まぁさ、大先生には小姫さんがいるしタイガー先生にもニコちゃんがいる訳だ…んで問題は永夢よ」
「ぼ、僕ですか…?」
いや、確かに飛彩さんや大我さんみたいに相手がいる訳じゃ無いけど…こう…他人に名指しで言われるとなぁ…意外と来るものがある。
「ここら辺で思い切った行動しねぇと…永夢、お前孤独死するぞ?」
「…キリヤが珍しく真面目…」
「そらな、どっかの神じゃあるまいし不死身じゃねぇんだ、残る人生、孤独にゃ生きたくねぇのよ」
確かにそうかもしれない…結婚…か…
「で?永夢、お前にはそういう相手いないのかよ」
「…そう…ですね…」
あまりそう言った事…考えた事なかったな…前までは家族というものにあまり良いイメージを持ってなかったし。
こうやってちゃんとみんなと話してようやく考えたってレベルだし…僕は…
「…どうしたの?エム、私の顔に何か付いてる?」
「え…いや、何でもない」
なんでだろう、貴利矢さんにそう言われて無意識にポッピーの方を見ていた、確かにポッピーの事は普通に好きだ、声も好きだし、見た目も僕の好みだと思う。
でも別に今までそんなこと思った事なかったし意識した事もなかった。
「ほぉん…まぁ、いいや、自分がここに来たのはさ。式は1ヶ月後になるからその報告をって思ってな、勿論大我先生もニコちゃんも呼ぶつもり」
「1ヶ月後って…それもまた急ですね…」
「そこら辺はまぁ、自分も思ったよ、あの人そういうの好きだからな〜」
確かに紗衣子先生はああ見えてせっかちだ、そういう部分を黎斗さんに利用された過去もあるし。
「それにしてもサイコ先生がキリヤとかぁ…院内どうなっちゃうんだろう…」
「阿鼻驚嘆だろうな、奴に惚れていた男は多い、それに俺達にすら今の今まで伝えていないという事は院内の誰も知らないだろうからな、明日から荒れるぞ」
う…飛彩さんの分析はよく当たる…そうだよね…紗衣子先生と貴利矢さんが付き合ってる!とかでもアレなのにいきなり結婚報告って……
男性ドクターのメンタルケアも視野に入れないと…心療内科の人達…頑張ってください。
「ま、他の人達には自分から伝えておくよ」
貴利矢さんはそう言って立ち上がり。
「それじゃあ、諸君…1ヶ月後、楽しみにしておけよ、自分も気合入れて行くからさ」
と言って別れを告げた。
それが1ヶ月前の衝撃的な出来事だった、衝撃すぎて母さんの墓参りに行った際に墓標で話してしまう程、衝撃だった。
…
そんなこんなで今に至る。貴利矢さんの結婚式は明日。今日はそんな式に呼ばれている僕や飛彩さんだけでなくこのCRには大我さんやニコちゃんも来てくれていた。
勿論ただ遊びに来た訳じゃない、大我さん達が来た事は新型バグスターの対策を考えるいい機会だと飛彩さんが判断して今日はCRの活動を優先してくれたんだ。
「まさか…あの嘘つき男が先を越すなんてな…そう思わねぇかブレイブ」
「…そうだな、俺としてはこの1年の間に小姫を復活させる術を見つけている筈だったのだが…」
「ブレイブの場合は難易度が違くね?仕方ないことだと思うんだけどなぁ」
大我さんとニコちゃんがそんな事を言う、彼らなりの気遣いなのだろう。
飛彩さんはこの1年間、再生医療の進歩を願い待ち続けていた、紗衣子先生が言うには少しづつ進んでいるようなのだけれど未だに復活した人はいない。
黎斗さんの残したゴッドマキシマムは本当に神の領域の代物なのだろう、研究チーム総出で取り掛かりもう4年になる。
つくづく黎斗さんの凄さに驚かされる、あの人はあの時点で何年先に行っていたのだろうか。
「結婚かぁ…やっぱ憧れるかも」
「…意外だな、ゲーマー娘がそんな事を言うとは」
「ゲーマーでもあたしも女の子なんですぅ、デリカシーなさ過ぎ」
「…もう女の子という歳ではないだろう…」
「はい、ブレイブ禁句言った!!ふざけんな!この堅物野郎!」
ニコちゃんが飛彩さんに飛びかかってる、それを大我さんが軽く止めている。なんだか久しぶりにこういう和やかな雰囲気かも。
というよりニコちゃんがいるといつもこんな感じになる、毎度付き合わされてる大我さんはたまったもんじゃないだろうけど。
「はぁ…たく、落ち着けお前ら、はしゃぐのは明日からだ、まずは近況報告だ」
大我さんが今度はしっかりと2人を宥める、これも久々に見たなぁ。
「そうですね、そういえば海外の方でもバグスターが発見されたんでしたっけ?」
「ああ、ニコが見つけてな、日本程じゃないが確認された」
「最近では開業医は主に海外でオペをしていると聞いたが」
「まぁね、今はあたしのうちで養ってあげてるんだ」
…今まさに結婚という話題の中でぶっ込んできた同棲発言、いや大我さん達自体は前に一緒に暮らしてた訳だし今更ではあるけど…なんか気になってしまう。
…と今は仕事仕事…
「えっと、海外のバグスターってどんな感じなんですか?」
「こっちとそんなに変わらない、ただ…戦えるのが俺だけだから正直体の方が厳しい時もあるな、それに海外は病気に対して疎いというか、軽く考えている節があるのも問題だな」
昔は戦うのは自分だけでいいと言っていた大我さんも丸くなったものだ。
それにしても海外か…確かにバグスターに限らず米国の医療意識はあまり高くない、インフルエンザが流行ろうがマスクは付けないし予防もしない、医療機関の金額が高いからって平気で治療の為の受診をしない。
僕が聞いた話では怪我をした指の治療をせずに壊死させてしまう人もいるとか。
「あたしが戦えればいいんだけどね〜」
「はぁ、まだそんなこと言ってんのか、お前はもう、うちのバイトじゃねぇんだぞ」
「分かってるよ、あたしもまだまだゲーマーとしての腕は落ちてないし、ゲームをやるつもり」
「…お前はそうしてんのが1番だ」
やっぱり2人は仲がいい、こうやってこの2人を見てると、貴利矢さんの言葉が刺さる。
僕もそろそろ身を固めないとダメなのかな…いや人生絶対に結婚をしなくちゃいけないって訳じゃないけど…
父さんが生きてる間に孫くらいは見せてあげないとダメかなっていうのは少しくらい思ってる。
「それで、エグゼイドの方はどうなんだ、後輩ができたんだろ」
「それが…飛彩さんがバグスターを1人で倒しちゃって…新人育成としてはちょっと…」
と言うとニコちゃんも大我さんも「ああ〜…」と口を揃えて納得した。それに対して飛彩さんは「おい、変に納得するな」と抗議している。
「お前らは2人揃っていつまで経っても変わらないな」
「…そんなに変わっていて欲しいか開業医」
「…いや、こっちも半年近く海外にいると意外とこういうやり取りが恋しくなるもんだって思ってな、日本食を食べたくなるのと一緒だ」
久々の再会、僕達は話に花を咲かせた。そんな時だった。
「永夢先生!」
「叶君?どうしたの?」
叶君がこちらに近づいて来た、何か小包を手に持って…
「それは…?」
「いえ…永夢先生宛の荷物だと思うんですけど…」
「…研修医、それはどこにあった?」
「え…と…ドローンで届けられたものですが…」
その言葉に僕達は黙り込む、ドローン…以前にも似たような事があった。
脳裏に過るのは1年前の出来事、僕に対して送られてきた『マイティノベルX』というゲームガシャット。
それにより僕達は酷い目に遭わされた、同時にかけがえの無い絆を得た。
「…これって…」
ポッピーが呟く。
「ゲンムの野郎だ、間違いねぇ」
「また檀キモトの?アイツに振り回されるの何度目ぇ?」
2人がうんざりしたように呟く、この場にいる全員が思ってるような事だけども。
「…奴のお遊びに付き合うのはノーサンキューだ…だが…」
「おい、永夢…」
飛彩さんの言葉に続けて、出て来たのはパラドだった、分かる…パラドの言いたい事が心を伝って流れてくる。
「分かってるよ、パラド…これは罠だ…前と同じでね」
「…でもやるんだろ?永夢」
パラドが笑いながら言う、僕とパラドは心で繋がってる、だから分かるんだ、考えてる事が。
「勿論」
「そう言うと思ったぜぇ〜永夢」
そう言って別方向から声が聞こえてきた。
「貴利矢さん!!どうして…確か、今日は準備で…」
「いや…なんか妙な胸騒ぎしてな、やっぱり様子を見に来て正解だったぜ、とにかくまたあの神の仕業なんだろ?」
僕達は貴利矢さんの言葉に頷く。
「…鬼が出るか邪が出るか…どっちみちろくなモンじゃねぇな…」
貴利矢さんは小包を薄目で見ながらそう呟いた。
「そうだな、あのゲンムの事だ、俺達だけじゃねぇ、他の無関係な人間だってアイツなら巻き込む……それでもやるんだなエグゼイド」
「…分かってます大我さん、でも約束したんです、黎斗さんと…必ず貴方のゲームをクリアするって」
そう、これは約束だ、1年前のあの時交わした約束。
黎斗さんの無理難題に僕は一生付き合うって。
「永夢が決めたんだ、よぉし!ビシッと行っちゃってくれ!!」
「貴利矢さん…はい!!」
僕は小包を見つめる、何が来るかわからない恐怖とみんなを危険に合わせるかもしれないからあまり言えないけど、どんなゲームが来るのかのワクワク感が僕の中で渦巻いている。
勿論それはパラドにも伝わっている。
「…では皆さん…開けます」
ゴクリと喉を鳴らす、一体どんな…
僕が小包を開けるとそこには1つのガシャットがあった、見た事ないものだ。
色も…ピンク?何というか意外だった。黎斗さんがピンクの塗装をするなんて…
いやまぁ、僕の持つマイティアクションもピンクではあるんだけど、このピンクはもっと淡いというか、女の子っぽい?というか…
「裏側だな…小児科医、裏返してみろ」
僕が手に取っていたガシャットは裏、ロゴも何もなく、どんなゲームなのか分からない。僕は飛彩さんの指示に従い、クルリと反転させると…
「…『プリンセス…コネクト』…?」
『Princess Connect』とロゴが振られて可愛らしい女の子の絵柄が描かれた、なんというかあまり黎斗さんらしくないガシャットだった。
「なんつーか…神らしくなくね?」
「それ思った、もしかしてキモトのキモの部分?」
「でもクロトって一応『ときめきクライシス』みたいな恋愛ゲームも作ってた筈だからそこまでおかしな事…じゃない?」
みんな疑問形だ、そりゃそうだ、僕も正直『マイティ〇〇』みたいなゲームを想像してたから少しというかだいぶビックリしてる。
「…一体どういうゲームなんだ…想像がつかないな」
「起動する前に少し推測した方がいいんじゃねぇか?どうせ起動した途端ろくな事にならねぇのは確かなんだ」
大我さんの言う通りかもしれない、前回はなんの対策なしに起動したからかなり痛い目にあった。
「プリンセス…コネクト、直訳するなら『姫の絆』か」
「ますます想像つかないんだけどアイツがそんなゲーム作る?」
「ニコちゃんの言う事も分からなくないが、相手はあの神だ、自分達の想像なんて軽く超えてくる」
姫の絆…
「まず、姫ってなんなんでしょうか、誰を指し示しているんでしょう」
「それに絆…姫に対する絆なのかそうでないのか、タイトルだけじゃ分からない」
正直、タイトルからは危険性があまり伺えない、でも黎斗さんのゲームだから油断はできない。
「まぁ、今まで通りのゲームならこのラベルに描かれたお姫様っぽい女の子の絵が姫というか主要キャラクターって事になるが…」
貴利矢さんの言う通り、今までのガシャットはそうだった、でも…何というか…
「…前にあった『マイティノベルX』に似てる…」
そう、この感覚…1年前のマイティノベルと同じだ。
そうなるとラベルの女の子はあまり関係がない、前回のゲーム内容は『僕の過去』に関するものだった。
もし前と同じなら…『姫』に設定された僕達の誰かが主役となりそれを元にゲームが展開されていく、と言うことになる。
うーん…全然分からないな…こうなったら同じゲーマーの意見も聞こう。
「パラドはどう思う?」
「んなもんクソゲーに決まってんだろ、ゲンムだぞ?」
…だよね、即答だった。パラドは黎斗さんの事嫌いだから…
あまり有力な意見は聞けなかったな、そうなってくるとやっぱり試すしかない。
「とにかく起動…してみます」
僕がそう言うと一気に空気が引き締まる、ただガシャットのスイッチを入れるだけでこの緊張感…
これですら黎斗さんの手の上のような気がしてならない。
「起動…します」
『プリンセスコネクト!!』
僕が起動スイッチを入れると聞いた事のない声の音声が鳴り響く、なんだろう…凄く明るくて元気っていうイメージがする可愛らしい女の子の声だった。
その瞬間、眩い光が僕達を包み、視界がゼロになる。
咄嗟に顔を腕で覆って光を遮ったけど周りで何が起こったのか分からない。
数秒後ようやく視界が確保でき、僕達は辺りを確認した。
そしてそこで気づく。
「ポッピー…?」
ポッピーの姿がなかった。それだけじゃない
「ニコ…!!おい!ニコ!!どこ行った!!!」
大我さんが叫ぶ、そう…この場にポッピーとニコちゃんの姿が無くなっていた。
ー次回の仮面ライダーエグゼイドは!!ー
「プリンセスコネクト…それは姫との絆を紡ぐゲーム」
────檀黎斗からの挑戦状。
「コイツが来てからこの医院は変わった」
────大我に迫る運命とは!!
「つまり…俺に諦めろって事か…」
次回『BAN!!した『心』がやってくる』