プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン   作:古賀コーラ

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大我編です。

今回の神の用意したゲーム内容はこんな感じです。
アリですかね?


BUN!!した心がやってくる

「ポッピー!!……ポッピー!!!」

「ニコ!!おい!!!どこ行った!!!」

「ちっ…やっぱりゲンムの奴…!!」

「…少し落ち着け、小児科医、開業医、パラド……つまりこれがゲームという事か」

 

取り乱す僕達を飛彩さんが宥める。

 

ゲーム…そうだ、黎斗さんが仕掛けたゲーム…このプリンセスコネクトの…

 

「成る程ね…プリンセスっていうのはポッピーとニコちゃんって事か」

 

貴利矢さんが推測する。

 

「ご明察、流石は九条貴利矢だ」

 

その時、僕の手に持っていたプリンセスコネクトガシャットから音声が流れる、先ほどの女の子の声ではない、聞き覚えのある男の声だった。

 

「…この声は…ゲンム…!!」

 

パラドの激昂する声が響く、その声と同時、ガシャットからモヤのようなものが出現し僕達の前に形を成していく。

 

それは人の形となり、パンっと弾けると見慣れたあの姿になる。

 

忘れる事はないだろう、あの男…檀黎斗が目の前に存在した。

 

「黎斗…さん…ですよね」

「その通りだ永夢、私は檀黎斗のバックアップデータの1つ檀黎斗9610だ」

「9610…ってお前いくつまでバックアップあんだよ」

「勿論10億だ」

 

勿論って…何を基準にして勿論なんだ…そんな文字通り桁違いの数値を耳にしたみんなは半分呆れた感じでため息を漏らす。

 

最早、黎斗さんのこう言った発言には慣れてしまっているんだ。ある意味で怖い。

 

「それよりもニコとポッピーピポパポをどこへやった、答えろゲンム」

「まぁ、そう焦るな花家先生、これからゲーム内容を伝える、私はいわばその進行案内人だ」

 

黎斗9610…いや長いから黎斗さんでいいや、黎斗さんは両手を広げながらCR内を歩き、口を開く。

 

「プリンセスコネクト…それは姫との絆を紡ぐゲーム」

「…タイトル通りだな、それで?自分達は何をすれば良いわけ?」

「今回の主役は3人…宝生永夢、鏡飛彩、花家大我、君達だ」

 

…僕達?いや、大我さんは分かるんだけどどうして僕と飛彩さんまで…

 

「まぁ、何となく分かる面子だな」

「どういう事ですか貴利矢さん」

 

貴利矢さんは椅子に腰掛けながら。

 

「ポッピーは永夢、大先生は小姫さん、大我先生はニコちゃん、それぞれのお姫様はこうだろ?神」

「その通りだ」

 

黎斗さんは両腕を組みながら肯定する。

 

「ルールは簡単だ。主役の君達は姫との絆を手に入れ、姫を救わなければならない」

 

姫を救う、という部分は分かる、今この状況から助け出すという事だから。

 

でも…姫との絆を手に入れるって…どういう事だろう。

 

「…檀黎斗…小姫まで巻き込んで何を企んでいるんだ」

「…企む?私にはもう策略も何もないよ、純粋に君達にゲームを楽しんでもらいたいだけさ」

 

凄まじく胡散臭い、黎斗さんの歯の浮くようなセリフにはもう騙されない。

 

「彼女達との記憶を辿るといい、そうすれば…彼女達のいる場所へ向かう事ができるだろう」

 

…ポッピー達との記憶…だから姫との絆…なのか。

 

「分かりました、受けましょうそのゲーム」

「…天才ゲーマーの力を是非見せてくれ永夢、私はここから見守ることにしよう」

「っうわ!?」

 

そう言って黎斗さんは霧散し僕達に1度体当たりするようにぶつかって(煙みたいな感じだったから衝撃はない)消えた。

 

…やる事は決まった。

 

「行きましょう皆さん、ポッピー達を助けに」

「そうだな、奴からの指示に従うのは癪だが…小姫を救えるのは俺だけだ、小姫は任せてくれないか」

「俺もブレイブと同じだ、ニコは俺が救う」

「そうですね、黎斗さんは名指しで僕達を指定しました、個々に分かれて行きましょう」

 

早速行動を開始しようとした時、僕についてくるパラドを貴利矢さんが止める。

 

「なんだ、レーザー」

「ちょい待ち、今回は俺とお前はお休みな」

「何でだ、俺は永夢と行く、ゲンムのふざけたゲームなんだ。1人で行かせるのは危険だ」

 

パラドの警戒も最もだ、本来なら団体行動をして1人ずつ助けていくのが定石だろう。

 

「まぁまぁ、この問題に関しては、なんつーの?1人1人がちゃんと解決しなきゃいけないっていうか…とにかく!お座りしなさい!パラド君!」

「お、おい!なんだ!というか俺は犬じゃない!!」

 

無理やり貴利矢さんに座らせられるパラド。

 

「とにかく永夢を信じろ」

「…分かったよ…何かあったら俺は永夢の心を感じられる、そうなったら俺はすぐに行くからな」

「はいはい…っと…永夢、頑張れよ」

「…分かりました、行ってきます」

 

僕達はそれぞれ別の道に進む、それぞれの記憶の旅路か…

 

僕のポッピーとの思い出…思い当たる場所に行ってみるしかない。

 

 

 

 

 

俺とニコの思い出の場所っつったら、あそこしかねぇ…

 

半年前から休業している俺の医院、只今休業中という張り紙が貼られた扉を開き、奥へと進む。

 

アイツが海外に行った後のこの院内の風景は殺風景なもんだ、アイツ色に染められていない普通の医院。

 

半年間アイツの家にお世話なったからかこの風景が妙に殺風景に思えてしまう。

 

「…で、どうすりゃいいんだ?」

 

思わずそう呟かざる得なかった、この場所に来たからと言って何か起こるわけじゃない、何の意味があるのか…

 

そう思っていると俺の白衣の内ポケットが光り輝く…そしてそれに気づいた瞬間からその部分に違和感を感じた。

 

俺は内ポケットに手を突っ込むと何か入っている、手の感触でわかる、これはガシャットだ。

 

こんな所に俺はガシャットを忍ばしてはいない…いつの間にか入れられていた。

 

「…あの時か…」

 

考えられるとすればゲンムが霧状になった時、わざわざ俺達にぶつかって消えた、あの時コイツを入れられたんだ。

 

手に取って見れば、それは『プリンセスコネクト』ガシャット、成る程な、コイツを使えって事か。

 

前回の『マイティノベル』と同じならガシャットを起動しドライバーのスロットに入れればイベントがスタートする。

 

やる価値はあるか。俺はガシャットを起動し腰に取り付けたゲーマドライバーのスロットに挿入しレバーを開く。

 

『プリンセスコネクト!イベントスタート!!』

 

その音声と共に俺の意識は一瞬だけ飛ぶ、次に目を開いた時、周りの風景が淡く見えた。

 

何と言えばいいのか…白黒という程でもないが周りの風景の色が薄い。

 

そして目の前には俺がいた、今の俺よりも随分若い俺だ。

 

『…なんだてめぇは』

 

若い頃の俺はそう言った、俺が振り向くとそこには…ニコの姿があった。

 

キャピキャピした奇抜なファッション、今よりも随分背が小さい、いや、今も小さいが…

 

とにかくニコも今のニコよりも若い姿でそこにはいた、というよりこの光景には見覚えがある。これは…

 

『天才ゲーマーMを倒してくれる?』

『…ふざけんな』

 

このやりとりは…俺が初めてニコに会った時の会話だ。

 

その時、目の前に選択肢が現れた。ノベルの時と一緒だ。

 

《この時の彼女への印象は?》

 

→かわいい女の子

→最悪の面倒臭いガキ

→患者

 

 

俺は迷わず2つ目の『最悪の面倒臭いガキ』を選択した、迷う訳がない。

 

最初の印象は最悪だった。勝手にやってきて勝手に命令し、どこに行くにもついて来やがる、人の話は聞かねぇしその癖自分の意見だけは通そうとする。

 

…今にしては何でこんな奴とこんなに長い付き合いをしてんのか分からねぇくらいだ。

 

コイツが来てからこの医院は変わった、元々捨てられていた病院を勝手に使ってたから外装も内装も心霊スポットそのものだった。

 

それがコイツの色に染められたんだ、ポップなよくわからねぇキャラとかファンシーな装飾品とか付けられて、最初は嫌悪感しかなかったがいつの間にか慣れちまってた。

 

『イベントクリア!!』

 

「…っ…!」

 

音声が鳴り響くとフッと意識が戻るというか気づくと景色に色が戻っている、現実に戻って来たって事か。

 

…過去の…その時の事を思い出し、選択肢を間違えなければクリアか。

 

これを後何回か繰り返せばニコの元に行ける…。待ってろよニコ、俺が絶対に救ってやる。

 

そう心に決め、俺は次の目的地に向かう。次の目的地…か。

 

当てがないわけじゃねぇ、俺とアイツの中で何かが変わったと思う場所に行けばいいって事だ。

 

 

 

俺が次に向かったのはここだ。

 

ゲンムと戦ったこの場所、ニコがポッピーピポパポに諭されゲンムに対してモップで殴りかかったあの場所だ。

 

その場所に近づいていくとガシャットが先程同様に光輝く。

 

「…やっぱりな、だったら早速…」

 

俺はガシャットを起動する、再び白黒の風景世界に飛ばされていた。

 

 

『大我!こんな奴、さっさと倒して!!』

 

やっぱりだ…この場所で俺は…

 

《この時、彼女に抱いた感情は?》

 

→恋心

→心の支え

→救い

 

 

 

…俺は少し考えた後、『救い』を選択した。

 

俺はこの時、この場面でコイツが主治医だと言ってくれた時…救われていたんだ。

 

腐っていくだけの俺の心を洗い流してくれた、滝のような存在だ。

 

一方的に流れ落ちて、こっちの否応なしに流してしまう、そんな奴だった。

 

…あまりこんな事を考えてるとまたポエムってるなんて笑われそうだが俺はそう思っている。

 

この日からだったな、ニコと打ち解け始めたのは、共にいる事が当たり前になり、共に危険な戦いに挑んだ。

 

ニコは本当に想定外の存在なんだと実感したのもこの時だったか、ニコがいなければ檀黎斗も檀正宗も倒せなかったと今にして思う。

 

『イベントクリア!!』

 

その音声と共に俺は元の世界に戻る。

 

…戻ってきて思う。何というか違和感がある、あの檀黎斗って奴のゲームにしては平和すぎる。

 

今俺がやっている事はニコへの思いの再確認、当時の事を振り返り、どういった存在だったのかを改めて実感している、ただそれだけだ。

 

一体どういう事なんだ?これじゃあまるで本当に絆を再確認しているだけのゲームだ。

 

…いや、あのゲンムだ、きっと何かある…さっさとクリアして奴の目的を暴いてやる。

 

俺は早歩きで進んでいく、俺が次に向かった場所、そこは…

 

 

 

ラヴリカと戦ったあの噴水広場だ、ここには必ずイベントスポットがある。

 

俺の読み通り、ガシャットが輝く。

 

「さっさとケリをつけてやる」

 

 

 

俺はガシャットを起動し白黒世界に入る。

 

目の前には水没した俺とニコ、ブレイブやエグゼイドの姿があった。

 

そう言えばこの時はポッピーピポパポが洗脳されていた時期だったな。

 

『お前が主治医だと言ってくれて…嬉しかった…』

 

俺の本心を吐露した場面だ、凄まじく恥ずかしい、エグゼイドやブレイブはこんな感じで俺を見ていたのだろうか。

 

この時の俺は周りは見えていなかった、ただ純粋に思った事を言う、それだけに集中していた。

 

『これからもよろしくね♪セ〜ンセ♪』

 

この言葉が俺の心を変えてくれたんだ…

 

《この時から彼女はどういった存在になった?》

 

文字が浮かび上がる、どういった…存在…か。

 

→恋人

→最高の患者

→かけがえのない存在

 

…この選択肢だけは少し迷ってしまった、俺にとって…ニコとはどういう存在なんだ?

 

あまり深くは考えた事がなかった、この当時はいる事が当たり前、その後は俺の患者だ。

 

…本当に今はそうなのか?頭が痛くなる。

 

ゲンムのゲームでこうなるとは思いもしなかった、ちっ…

 

俺は思わず舌打ちをしてしまう。選択しようとする手が震える、俺にとってニコは…

 

目を1回瞑った後、俺は決心し選択する。俺が選んだ答えそれは…

 

「…俺にとってニコはかけがえのない存在だ」

 

アイツは闇から俺を引き上げてくれた、俺に光を与えてくれた。

 

アイツがいたから今の俺がいる、アイツがいたからエグゼイドやブレイブ達と打ち解けた、アイツが俺の心の闇を取っ払ってくれたんだ。

 

答えは…出た、何か俺の中に頑固たるものが生まれた気がする。

 

『イベントクリア!!!』

 

音声が響き、再び世界が戻る、するとガシャットが光り輝きその光がある地点を指し示す。

 

「…つまりここに向えって事か…上等だ」

 

今までとは違う、これが最後だと確信できる、この場所にニコがいる…俺は走る、無我夢中で走った。

 

息を切らしながら俺が向かった場所はここだ。

 

「…幻夢コーポレーションか」

 

何故ここなのか、大体察しは付く。この場所は俺達にとっても馴染み深い、何度訪れた事か。

 

2人揃って初めて訪れたのはゲンム対策の為のガシャット及びエグゼイドのガシャットを生み出す際にここに来た。

 

ニコが幻夢の株主になってからはよく来るようになった、この世界からバグスターを根絶できるよう俺達は幻夢と協力していたんだ。

 

「とにかく入るか」

 

俺の顔は全社員に割れている、まぁ大株主様の保護者だからな、顔パスで入る事ができる。

 

「あれ?花家さんじゃないですか、どうしたんですか?」

 

現れたのは小星作、この幻夢コーポレーションの現社長なんだが…言っちゃ悪いがそんな雰囲気の持ち主ではない、というか社長が何でこんなところにいるんだ?社長室でもなければ普通の廊下で普通に茶を飲んでやがる。

 

「ああ、ちょっとな…それより頼めるか?」

 

俺は小星の案内でガシャットを制作する部屋に向かう、ゲンムが残した専用部屋だ。

 

ゲンムが消えた後、俺達はここでガシャットを生み出し続けて来た、まぁ俺達はただ見ていただけだが。

 

「あの…今日はどうして?またガシャットの注文ですか?」

「いや…今日は違う…野暮用だ」

 

プリンセスコネクトガシャットが光る。

 

「下がってろ小星作、ゲームが始まる」

「そ、それってまさか…だ、檀黎斗のですか!?」

 

俺は小星を下げ、スイッチで起動する、あの音声が流れ…

 

目を開けば見た事ない場所だった、あの部屋じゃない、というか室内でもない。

 

「…どうなってやがる…」

 

今までとは明らかに違う、風景も別に白黒じゃない…ここは…何なんだ?

 

見渡せば見渡す程、謎が深まる。ファンタジーの世界だ、これは…見慣れぬ景色、見慣れぬ建物…奥には王宮らしきものまで見える。

 

今までもゲームエリアで構築されたものだったが今回は大分違う、現実にある世界を表現してるもんじゃねぇ。

 

俺が歩を進めると前から女の子が歩いて近寄ってきた、歳は…10歳くらいに見える、だが目を引いたのはその格好だ。

 

コスプレって言うのか?あまり感心しねぇ格好だ、自分に娘がいたのならさせないだろうな。

 

銀髪で淡く赤い目、先がとんがった耳…頭の中でエルフという文字が過った、この少女はそれに当て嵌まる容姿をしていた。

 

「…君は?」

 

俺は少女に目線を合わせ話しかける、ゲンムの仕掛けた罠かも知れないがいきなり攻撃を仕掛けるのは気が引ける。

 

「わたくしはコッコロと申します、貴方さまのお姫さまを守るよう申し付けられました」

 

『コッコロ』…?『心』じゃなくてか?

 

というより凄まじく丁寧な口調の女の子だ、ニコにも見習って欲しいもんだな。

 

「っと…そうじゃねぇか、君は…ニコの…お姫様の居場所を知っているのか?」

「勿論でございます」

「だったら…」

「わたくしはお姫さまを守る守護者、外敵を排除します」

「っ!?」

 

『インフェクション!レッツゲーム!バッドゲーム!デッドゲーム!ワッチャネーム!?ザ・バグスター!』

 

コッコロと名乗った少女がバグヴァイザーを使って怪人化した…っ!!やはりゲンムの野郎の罠だったって事か…!!!

 

見た目はそこまで大きく違わない、コッコロという少女をそのままただ怪人化したという感じだ。

 

手には巨大な槍…こうなったらやるしかねぇ。

 

「…はぁ、ガキの相手は苦手なんだがな」

『バンバンシューティング!』

 

「第二戦術…変身」

『ババンバン!!バンババン!!Yeah!!バンバンシューティング!!』

 

仮面ライダースナイプのお出ましだ、俺はガシャコンマグナムを召喚し、射撃する。

 

「手加減は無しだ、邪魔をするって言うんならてめぇを倒してニコを取り戻す」

 

俺は片手で射撃しながら後方に少しづつ下がる、俺はスナイプだ、遠距離職なんでな。

 

奴は手に持った槍で飛んでくる弾丸を弾き落とし、その合間に槍を振る事で風の刃を飛ばしてきた。

 

「ほう…遠距離も行ける口か…っ!!」

 

そんな事を言ったのも束の間、瞬時に接近してきた奴は俺に向かって槍での攻撃を開始、横振り、縦振り、突き。

 

槍という武器を最大限に活かした攻撃方法で俺を責め立てる、俺はマグナムを使いつつそれらを弾き、合間に射撃するもそれは避けられ、連続の突き攻撃を受けてしまう。

 

「ぐぅぅ…っ!!意外と強い…」

 

俺は吹き飛ばされ転がり片膝で立つ、少し舐めてかかっていた、子供の姿をしていたからか…

 

そうだな、絶対そうに違いねぇ、あのゲンムが嫌がらせ目的で配置したバグスターだ、ふざけやがって。

 

『バンバンシミュレーション!!』

 

「第五〇戦術…」

 

『I ready for Battleship…デュアルアップ!スクランブルだ!出撃発進!バンバンシミュレーションズ!発進! 』

 

俺の頭上から現れたシミュレーションゲーマと合体し全身に10門の砲台を装備したスナイプシミュレーションゲーマーレベル50となる。

 

「悪かったな、舐めてかかっちまって、ここからは本当に手を抜かねぇぞ」

 

俺は砲撃を開始、その威力は周りの建物を粉々に粉砕する程の物だ、しかし

 

「なに…?」

 

奴は風を纏い、砲撃から身を守っている。爆炎はその風の吹く方向に流れ奴自身にダメージは無い。

 

「ちっ…」

 

俺は構わず砲撃をし続ける、だが同じように風で守られ全くダメージが入らない。

 

再び近づいてきた奴は俺に斬り上げの攻撃をしてくる事で俺は吹き飛ばされる。

 

「っ…流石はあのゲンムが用意したバグスターだな…面倒だ」

「…貴方さまは何故諦めているのですか?」

「あん?」

 

唐突にそんな事を聞いてきたバグスターに俺は思わず聞き返してしまう。

 

…諦める?俺が?なにを?

 

「貴方さまは心のどこかで諦めています、お姫さまの事を」

「…俺は別に諦めちゃいねぇ、てめぇを倒してニコを…」

「違います、諦めているのは彼女との今後です」

 

…何だと?

 

「貴方さまは今のこの現状で良いと思っています、それ以上は望まず、それだけでいいと止まっているのです、それこそ即ち諦めなのでは無いですか?」

「…それのなにが悪い?」

 

アイツと俺はそれでいい、今の関係がベストだ、それ以上を望むのは…俺にはあまりにも光が強すぎる。

 

「俺はニコのお陰で闇の底から日向に戻ってこれた、それで十分だ、それ以上は望まねぇ、必要がねぇ」

「本当に?」

「なんでバグスターのてめぇにそんな事を言われなきゃならねぇ」

 

俺は砲門を向ける。

 

「貴方さまは色々と考えていらっしゃる、ニコさまの未来を、自分との年齢の差を、それらを考えたら自分という存在が彼女の荷になると」

「…それが分かっていてなんで聞いてくる」

「貴方さまはそろそろ自分に素直になるべきなのです、お互いに素直になれないならばどちらかが折れるしか無いのです」

 

…素直か…1年前のノベルで俺達はエグゼイドの過去を探るべくゲーム大会の会場となった場所に訪れた。

 

そこは当日婚活パーティーが開かれた会場になっていて俺達は潜入する為に色々と書かされた。

 

その時に俺達は互いに好みのタイプは『素直』と書いた。

 

「折れる事は諦めではございません、進むべき道なのです、今までもそうだったでしょう」

「…俺は」

 

そうだ、今までもニコの無茶苦茶に『諦め』てきた、そうする度に俺は前に進めた、前に進み闇から抜け出せた。

 

お互いに頑固で壁張ってるんじゃ前に進まねぇ、そして俺はそれでいいと思っていた、もう進む必要がないからだ……それこそが諦め。

 

「……つまり俺に諦めろって事か」

 

俺は無意識に笑っていた、心のどこかを縛っていた鎖が一気に崩れ去ったような感覚だった。

 

グッと重荷が取れ、体が軽くなる。だったらやってやる、闇を抜け日向に出たのなら、もっと光に向かって進んでやる。

 

「…生憎、俺は諦める事には慣れてる」

「…左様ですか」

 

ドドン!と腕の二門の砲台から砲撃を開始、奴は真っ直ぐ突き進んできて砲撃を斬り裂く。

 

縦振りの槍を両手の砲台で受け止め弾き、片腕の砲台で殴る、怯んだ奴に俺は一撃砲撃を撃ち込んで吹き飛ばす。

 

「…!!」

 

しかし気づくと周りに風の槍が複数、俺を取り囲むように出現しておりそれが俺を斬り裂く。

 

「うぁぁぁぁ…っ!!!」

 

俺は地面を転がる、普通のバクスターより何倍も強いな…コイツ…

 

「貴方さまの思いはこんなものではありません、見せてくださいまし、貴方さまの思いを」

「…言ってくれる…」

 

俺はガシャットを取り出す…コイツを使う事になるとはな…

 

…俺の思い…か、なら…俺とニコが共に生み出したコイツを使う、それが今の俺の思いを表現できるもんだ。

 

『バンバンタンク!!』

 

「第…百戦術…!変身!!!」

 

『ガシャット!ガッチャーン!!レベルアップ!!全てを砕け〜!!砲撃時間だ〜!!バ〜ンバ〜ンタ〜ンク!!』

 

戦車の形をしたゲーマ、タンクゲーマが10台出現し、バグスターに攻撃しながら俺に近づき合体していく。

 

全身に戦車砲台を取り付けた、仮面ライダースナイプ タンクゲーマーレベル100。

 

「…もう俺は自分の道を見失わねぇ、行くぞ」

 

風の槍を生成して俺に攻撃を仕掛ける、俺はそれを避けずにズンズンと突き進んでいく。

 

多少のダメージは覚悟の上だ、それでも俺はもう逃げない、自分のこれからの未来も。

 

構えた槍を右腕ではたき落とし連続で拳を胴体に当てる、怯みつつ風の槍を複数召喚してきたのを確認し俺は10門の砲台でその槍を全て撃ち落とす。

 

更に両腕を合わせる事で巨大な砲台と化す、これはシミュレーションゲーマーと同じだ。

 

強力な砲撃を至近距離で浴びせバグスターを吹っ飛ばす。

 

『ガシャット!キメワザ!!バンバン!クリティカァルブレイク!!!』

 

俺の全砲門が奴に狙いを定め、発射すると同時に2本のキャタピラが先制でバグスターの身を削る。

 

怯んだところをすかさず俺の砲撃が狙い撃つ、バグスターは特大の爆発を起こし吹き飛んでいく。

 

バグスターは煙の中からゴロゴロと出てくると元の女の子の姿に戻った。

 

「…」

 

俺は黙ってガシャットを引き抜き変身を解除して近づく。

 

「…貴方さまのお気持ち…伝わりました…後は…それを…」

 

少女が光になって消えると、代わりにそこにニコの姿があった。

 

「…ったく…心配かけやがって…」

「…大我…」

 

俺は倒れるニコを抱き上げる。

 

「…見てたんだろ、今の」

「…うん」

 

はぁ…と俺は少しだけそっぽを向いてため息を漏らす、その後すぐにニコの方へと向き直し。

 

「まぁ…だからなんだ…その…お前は…アレだ、大切な…奴だ…その…」

 

くっ…息巻いたものの言葉が詰まる、何で言ったら良いのか分からねぇ。

 

「…ぷっ…下手くそ」

「なっ…!!?っ〜…だから嫌なんだよ、こういうのは!!!」

 

ニヤニヤとこっちを見るニコに俺は再びそっぽを向いてしまう。

 

「ま、その方が大我らしいけど」

「…それで、どうすんだ」

「どうするって…それあたしに言わせる気〜?本っ当、あたしがいないとダメダメだね」

 

…年下に良いように言われている自分が情けねぇ…

 

「だから…これからもよろしくね、セ〜ンセ♪」

 

俺の心を変えてくれたあの時と同じ言葉、同じ笑顔でニコは答えてくれた。

 

『GAME CLEAR!!』

 

その音声と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ー次回の仮面ライダーエグゼイドは!!ー


「俺に切れないものはない」

────檀黎斗が仕掛けるゲームは飛彩にも牙を向く。

「俺に…どれを選択しろというんだ!!」

────小姫との思い出を利用する卑劣な罠。

「…切り捨てる必要はない…今も過去も…未来も…」

────飛彩が選ぶ選択とは!!

ー次回『涙のsuture!!』ー

タンクの音声のイメージはゲキトツロボットみたいな感じです。


見た目はタンクタンクみたいなのをイメージしてます

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