プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
「実に素晴らしい…!!これがファンタジーの世界というものか…!!」
私は感嘆の声を上げていた。今、私はランドソルと呼ばれる巨大な街に辿り着いていた。
やはりというか王道というか、広がる街並みは西洋のそれだ、私が現在いるこの地域は比較的中世の時代に作られた建物に近い雰囲気だ。勿論私の世界基準での話だが。
ランドソルにはこの街を統治する「王宮」なる物があるのだが、あの遠くに見える巨大な建造物がそのようだな。
白く美しい城というのが第一印象か、何に似ているか、というのであれば…パッと見は「プラハ城」が近い。
街並み自体も全体的にプラハに似ているかもしれない、正直な話この街は「それをモチーフにして作られた街並み」と表現できてしまうほどに。
さて街並みの感想は後に、私の隣には今現在コッコロのみがいる。
では道中で出会ったユイ、ペコリーヌそしてあの謎の獣人の少女はどうなったかと言うとだが、長々と説明するつもりはないが簡単に教えよう。
獣人の少女が目覚めることは無かった、魔法学に精通のあるユイによると、どうやら過度な魔力の消耗による気絶をしていたらしい、私達はその少女をこの街まで運ぶ事となった。
ユイやコッコロ達は恐らく慈悲によるものだろう、私からすればそんな感情論で動いてもメリットがなさ過ぎて話にならない。
だが今回は私にとっても気になることがある、この少女が何故こんな所にいたのかそして魔力切れによる気絶?ふん、そんな都合の良いことがあの場で何故起こったのか、それを聞き出す必要があったからだ。
その為にも少女をこの街に運ぶ。唯一の男かつ戦闘ではあまり役に立たない私が少女を背負いコッコロとユイ、ペコリーヌに先導してもらい私達はようやく街にたどり着いた訳だ。
道中で大量の魔物に襲われた際は流石にヒヤリとしたがペコリーヌが1人囮となりソイツらを引き付けてくれたおかげで事なきを得た。
そしてユイなのだが街に着くと同時に親が心配しているかもしれないとの事で解散する事になった、まぁ既に日も暮れている、私達のような流れ者とは違い彼女には帰る家があるのだからそれも当然だろう。
最後に背に抱えた獣人だが、近くにあった病院に預けてそれまでだ、私達は部外者で看病してやる必要もない、金?そんなものは目が覚めたその獣人が勝手に払うだろう。
私達がそこまでしてやる必要はないうえむしろタダでここまで運んできた事を感謝して欲しいものだ。
「あの方は大丈夫なのでしょうか…」
「そこまで心配する必要はないだろう、ユイもあの医者も言っていたが魔力切れによる疲労だ、私達が気に病む必要などない」
「はぁ…それはそうですが…」
コッコロはどうやらあの獣人が気になるらしい、優しい性格のようだ。
「安心しろ、もし心配なら明日にでも様子を見に行けば良い、その為にもまずは私達の寝床を探さなければその明日という日を迎えるのも難しくなるぞ」
「わふ…主さま…そうでございますね、まずは我々の寝床を探すことが先決ですね」
私はそう言って彼女の頭を撫でる、私自身無意識にそのような行動に出てしまった、もしかしたらこの体の持ち主の魂か何かがそうさせているのか…
私達は寝床探しに数時間ほど時間をかける、あまり懐が温かくない今、高値の宿屋に泊まれる程の余裕はない。
出来るだけ安く、出来るだけ長い間そこに滞在ができる場所を探すとなると難易度が跳ね上がる。
もう既に日は落ち夜の街だ。
「凄い…人の数でございます…わたくし、山奥の田舎育ちですのでこのような人の多さにはあまり慣れていなく…」
「既に懐かしさすら覚えるよ、この感じ…平日の仕事終わりの都市の光景そのものだな」
飲食店やら何やらの掻き入れ時の時間帯だ、社会人と思われる大人達の姿が多く、様々な店に出向いているのが分かる。
「逸れないよう手を」
「そんな恐れの多い…!!ですが…ありがとうございます主さま、本当にお優しい方…♪」
私は彼女に手を差し伸べ進む、やはりこれも無意識だ、ふむ…これは諦めた方が良さそうだ。
どうも抵抗は出来ないだろう、この体の本来の持ち主もまたコッコロに負けず劣らずかなりのお人好しのようだ。
「あ…あんた達…」
「ん…?」
不意に声をかけられた、そんな気がした。
私達はその声に振り向くとそこには数時間前まで気絶していた獣人がそこにはいた。
疲労による気絶程度ならば数時間あれば目を覚ますとは思っていたが、存外早かったな。
「…君は…」
「お目覚めになったようですね、どこもお怪我がなく何よりです」
「そりゃどうも…ってそうじゃなくて、あんた達…よね、あたしを助けてくれたのって」
…そこで気になる点が1つできる。
「…なぜ私達だと?君は気絶していた筈、面識のない筈の私達を何故そうだと思った?」
「…へ?あ、ああ〜…!!い、医者の人に聞いたのよ!なんか優男と銀髪のエルフの女の子があたしを運んできたって!」
「…そうか」
かなり苦しいが辻褄は合うか、良いだろう。
「それで?君は何者なんだ?私たちに関わってきたのだからそれくらいは教えてくれても良いだろう」
「そ、そうよね…うん…えーと…それじゃあ改めて、あたしはキャル、その…助けてくれて…ありがとうって言おうと思ってさ」
「そうか、それは律儀に…私は檀黎斗そしてこっちの小さいのが私の従者のコッコロだ」
「コッコロです、よろしくお願いいたしますキャルさま」
私が自己紹介を済ませるとキャルは何やら考え込む。
(檀…黎斗…?あれ?陛下が言ってたプリンセスナイトの男ってそんな名前だったかしら…?それになんか鋭そうな奴だし…うう…接触したのはマズったかなぁ…?)
「…何を考えている?」
「へ?あ、ううん!別に!!あっそうだ、ねぇお礼にさ、これからご飯食べに行かない?あたしが奢るからさ!ね?」
…話を逸らされたな、あまりここら辺は踏み込んで欲しくないようだな。
大方彼女が魔物を操っていたと考えるのが妥当か、あの場で魔力を使い切る様な魔力の使い方、そして大量の魔物の発生を鑑みるにな。
となるとなぜ彼女はペコリーヌを狙っているかだが…それをこの場で聞き込むの無理か、口を割るとは到底思えない。
だがそれだけでこちらには有益な情報となる。「口が割れないほどの重要な事」と自分から言っている様なものだ。
相当な上層部からの命令か闇社会からの依頼か…どちらにせよこの獣人少女はかなりきな臭い。
まぁ…
「で、ですがまだ出会ったばかりのキャルさまにそのようなご迷惑を…」
「いいのいいの!気にしなくて!よぉし、そうと決まれば早速何か食べたいのある?」
当の本人はそういう策略や悪知恵を考えられる様な人物では無さそうだが…どうにも彼女は顔に出るタイプのようだし無駄に警戒する必要もないだろう。
むしろ好都合と捉えるべきだ、コレと交流を深める事でそういった闇の部分を探れる、それはこの世界の真相、いいデータになるかもしれない。
「すまないが私達はあまりこの街に詳しくない、正直な話どこに向かえばいいのかさえわからない」
「主さまのいう通りでございます、わたくし達はこの街についたばかりの流れ者…それに都会というものにも慣れておりません…」
「そうなの…うーん、あたしもあんまり自分の巣から出ないタイプだからそこまで詳しくは…あ、だったらあそこなんかどう?繁盛してるわよ!」
キャルが示したレストランは確かに人々が入り込み繁盛していた。
「悪くないな、素人が選ぶ基準としては妥当だ、そこにしよう」
「わたくしは主さまが決めた事に従います」
「ちょっと!なんであんたはそんな偉そうな訳!?」
グチグチと言うキャルを放って私達はそのレストランへと向かう、中はやはり人だらけ、席は空いているのだろうかという不安さえ覚える、流石に順番待ちなどというのは味わいたくない。
「流石に繁盛店というだけあって中は人だらけでございますね」
「席が空いていないようなら別の店という選択も検討しておこう」
「ん?あれれれ?この声…そこにいるのは…もしかしてごはん王子!!」
私達の会話に突如乱入するこの元気120%の少女の声は…
「少〜し待っててください、今目の前の山盛りご飯を食べて視界を確保しますので…もぐもぐ☆」
みるみる内にとんでもない量のご飯が消えていく…山盛りという表現が的確なほど巨大なご飯がほんの数秒で…だ。
私達と出会った時の彼女の第一声が「お腹すいた」だった時からうすうす感じてはいたがこの少女の食欲は底無しなのか、実に興味深いな、キャラクターの味付けとしては申し分ない。
「あー!やっぱりごはん王子とお姫様!それに…気絶してた子!!」
私達の認識はそんな感じらしい、まぁそんなものか。
「ごはん王子にお姫様…いえ、わたくしは主さまの従者、決してお姫様などでは…」
「まぁ、私達も名を名乗っていなかったからな、改めて自己紹介をしよう、私の名は檀黎斗、こっちの従者はコッコロだ」
「……キャルよ」
…やはりというかキャルはペコリーヌと会う事は気まずい様子だ、この出会いもまた想定外の様だからな。
「そうですか!えーと黎斗くんにコッコロちゃん!それにキャルちゃんですね!コホン!私はコッコロちゃんにつけられた渾名ペコリーヌです!えへへ!気に入っちゃいました!」
「そ、それで良いのですか?まぁペコリーヌさまが良いというのならそれで構いませんが」
名乗らない少女にそれを狙う魔物使い…中々面白い組み合わせだ、ここは引っ掻き回すよりも放置して観察する方が面白い結果になりそうだ。
「ここで会ったのも何かの縁です!ほらほら!座ってください!みんなで食卓を囲みましょう!そちらの方が美味しく食べられますよ!」
「面白い感情論だ、それは君自身の体験談から得たものかな?」
「はい!……最近は1人で食べることが多くて余計にそう思えるんです…だからみんなで食べましょう!私が奢りますよ!!」
…みんなで食事…か、私はバクスターになってから食事など取らなくても済む体となった。いや…そんな体になる以前から私は誰かと仲良く食事などした記憶は遥か遠い昔。
彼女の言う楽しい食卓とは何なのか、今の私には分からない事だ、分かるつもりも無いが。
「ふぅん、奢りってんならあんた達も得じゃない?あたしもそれは嬉しいし」
「そうですね…わたくし達も懐は温かくないので…ここはお言葉に甘えましょう主さま」
「…ああ、私はそれで構わない」
私達はペコリーヌのテーブルを囲い席に着く、そしてペコリーヌがテキパキと料理を選択し注文する。
「では、皆さん!私達の出会いを祝して楽しく食べましょう!みんなで食べる…幸せな食卓を!!」
これが私達の「美食殿」の出会いの始まりだった。