プリンセスコネクト!リ・ダイブゥゥゥゥゥゥゥン!!!(ガッチョーン 作:古賀コーラ
状況は好転している。
獣人の戦士達が数十名とマコト、マコトの先輩なる男オクトー。
更にムイミを狙う謎の襲撃者…これら全てが敵だった場合は私達の敗走は確定していた。
しかしそれらは全て真逆…実に運がいい、人脈とは持っておくべきものだ。
「主さま、弓での襲撃者はこちらに迫って来ております」
「そうだろうな、不意打ちが失敗した今、超遠距離からの狙撃は矢の無駄だ、接近し狙い撃ちにするのが効率的だろう」
それに、この矢を放つ彼女だけではないだろうからな。
「ちっ…!チマチマと…!!隠れてないで出て来やがれってんだ!!相手になってやる!!!」
マコトは今もまだ飛んできている矢を斬り落としながら吠える。
「ふっふっふ、あなた達に名乗る必要なんかありませんよ!!「ラビリンス」のリノちゃんは賢いので!!!」
「…あ?ラビリンス…?聞いた事ねぇよ!!」
そう言って弓を構えた少女が1人、小高い岩山の上の岩陰からヒョイと出てくる。
…やはりリノか…それにしても相変わらず…
「リノちゃん♪言ったそばから名乗ってどうするのかな?天然?天然さんなの?」
「っあいた!!?いきなり頭突きですか!!?うう…す、すみませんシズルお姉ちゃん…つい…」
…どうやらシズルもいるようだな、さて…彼女達はどう出るかで選択肢は変わってくるが…
「とにかく、そこにいるノウェムを回収されてしまうと困るんです!だから…こちらも介入させてもらいます!!」
「そういう事、だから大人しくしててね♪」
彼女達の狙いもムイミ…いや彼女達はノウェムと言ったか…この少女は2つの名を持っているという事か?まだわからないな。
「ラビリンスだか何だか知らねぇが売られた喧嘩は買ってやるよ…こっちもやられっぱなしじゃあよ…黙ってらんねぇんからなぁ!!」
「…リノちゃん、あっちにいる獣人の人達の足止めをお願いね、私はノウェムを確保するから」
「了解しました!!」
次の瞬間、行動を開始する。リノは連続して矢を放つ、全てが炎のようなものを纏いながら獣人達を足止め、その間にシズルが岩山から華麗に降り立ちノウェムに向かって走り始める。
「なに…無視しようとしてんだ!コラァ!!」
そうはさせまいとマコトが剣を振りかざしシズルの胴を斬りつけようとする、しかしそれは簡単にシズルの持つ長剣に防がれ唾競り合いとなる。
「うーん、今はワンちゃんの相手はしてられないかなぁ、少しおすわり、しててもらえる?」
「なんだと…ってうぉ!?」
唾競り合いで力んでいたマコトはいきなり後方に大きく跳躍したシズルによってバランスを崩し転倒しかける。
「っ…!野郎っ…アタシの力を利用してあんなに高く跳躍しやがった…っ!!!」
「それで終わりなわけ…ないよねぇ」
「っ!?」
彼女は高さ10メートルの位置で静止しており、空に向かって両足を向けるような体勢で剣を頭後ろに持っていくような構えを取る。
顔はしっかりとターゲットのマコトに狙いを定めており、背中付近から光の翼のようなものを噴出させそのまま空を…空間を蹴り込む。
ドンッという炸裂音が響き渡るとコンマ数秒でマコトの背面にまで移動し既に斬り込んでいた。
「なっ…っ!?」
「安心して、峰打ちだよ、まぁこの剣に峰なんてないんだけどね♪」
まるで雷鳴の如く、勝負は一瞬でついた。
そのまま何事もなかったかのように長剣をクルクルと手首を器用にスナップさせて振りながら呑気に歩いてくる、対照的にマコトは片膝をつき、斬られた(恐らく打撃)部分の右肩を左手で押さえながらギリっと歯を食いしばっていた。
「さて…と、黎斗く〜ん、ゴメンね?せっかく会えたのに今はお仕事中だから相手ができないんだぁ」
「…何故今の姿で私だと?」
「それは私達が運命の赤い糸で結ばれた姉弟だからだよ♪姿形が変わっても…性別が変わっちゃったとしても…性格が変わったとしても…私は君を区別できるんだよ!」
…彼女は以前に私と出会った時、私の名前や性格の違いに違和感を覚えていた…つまり前の私の体の持ち主を知る人物。
それでも尚、私をこの体の持ち主の少年と同一視していた、その時はただの頭のイカれた女だと判断していたが…ここまで来ると本当に何か…五感ではなく六感という奴で判断しているのではないかと思えてくる。
「それじゃあ…」
キラりと剣を静かに構えるシズルに対し
「わー待って待って!マコトちゃんが敵わない相手なんて僕ができるわけないよ!僕は頭脳専門だし!はいその子は譲りまーす!!」
「そっか、それじゃあ遠慮なく」
「へ?ちょっオクトーお前っ!グヘッ!?」
シズルは手刀1発でノウェムを気絶させ抱き抱えそのまま後方へバックステップしてリノの元まで下がっていく。
「よろしいのですか!?主さま!!ムイミさまが…!!」
「ああ、これでいい、彼女達は私の知り合いだ、下手な事はしないだろう、私としても彼女達と…あのシズルと戦うのは願い下げだ」
彼女はしっかりと仕事は仕事と割り切るタイプだ、平時は私を弟などといって可愛がってくるとはいえ邪魔をすれば確実に排除しにかかってくるだろう。
私の戦力を考えてもシズルとの一対一での戦いは分が悪い、オクトーではないがマコトが負けたのなら私が勝てる見込みは万に一つもない。
「あ、主さまのお知り合い…ですか…またもや女の子…ですか…そうですか」
「不服か?」
「…少し」
ふっコッコロにもちゃんと反抗精神があるのだな。
「リノちゃん、回収は完了したから、後は下がるよ。黎斗君には申し訳ないけど……マスター!!「オブジェクトの変更」で追手が来ないようにしてくれる!!?」
「逃げるがカチンって奴ですね!!」
「逃げるが勝ちね、リノちゃん」
ラビリンスと名乗った2人がその場を離脱すると同時に大地が揺れ始め、隆起する。
「な、なんだこりゃ…っ!!?」
「う、うわぁぁ!?なにこれ?魔法!?」
片膝をついていたマコトは立ち上がりバランスを崩しそうなオクトーを支える。
「あ、あわわわっ!?こ、転んじゃっ…って…く、黎斗さん!?」
「スズメに今ドジを踏まれると確実に落下死するぞ…私に掴まっていろ」
「す、すみません…ありがとうございます」
「主さま、こちらもなんとか大丈夫です」
コッコロは馬主を支えてくれているようだ、それにしてもオブジェクト変更…か。
どうやらラビリンス…というギルドにはこのゲーム本体に直接介入できる存在がいるようだな…マスターと呼ばれていたようだが。
しかしまぁ、おやつ感覚でオブジェクト変更をしてくるとは、このゲーム世界だけで生活している私達にとってはたまったものではない。
とにかくこの不安定な足場から落下しないように踏ん張りを効かせる、こんな所でゲームオーバーなど話にならないからな。
「っ…シズル達め…ただ逃げる為だというのに大掛かりすぎる…!マコト!お前達の仲間は動けるか!!」
「あ、ああ…!っち!もうここの足場ももたねぇか…!オクトー先輩!!アタシが担いでやるからしっかりしろよな!!お前達!あっちの足場に移動する!!アタシについて来い!!」
マコトが先陣を切り、不安定な足場を跳躍で抜けていく。
「コッコロその男も私に渡せ、スズメとソイツは私が担ぐ、君は先に行っていろ」
「しかし…っいえ、今は問答している場合ではございませんね、分かりました」
「物分かりが良くて助かるよ、流石は私の従者だ」
よし、コッコロは先に行ったか。
「スズメ、しっかり掴まっていろ、ここで下手に暴れて落ちたとしても私は助けないからな」
「は、はいぃ…」
私は揺れ動く足場を跳躍で次々と移動していく、それと同時に足場にした場所は崩落していく。
間一髪だったな、だがこれで…っ!!?
「主さま…っ!!」
「くっ…!!?」
後一歩の所で私のいた足場が崩れ落ちる、後数十センチ、目の前にはコッコロ達がいる足場に辿り着くはずなのに…!!
「ちぃっ!!!コッコロ!!コイツらを受け取れ!!」
「ひゃぁぁっ!?く、黎斗さん!?」
私は咄嗟にスズメと馬主をコッコロ達の方へ放り投げる、しかし私はそのまま崖下に落下していく。
高さは50〜60メートル程度、ゲンムの姿なら耐えられない事はないが大きなダメージは避けられない、変身解除は確実だろう。
本当に困った体だ、この私が他者を優先するなど…だが私が自分の命を捨ててまで他者の命を救うなどあり得ない。
他者を救うのなら必ずこの私自身も生き残ってみせる…!!例えコンティニューしたとしても!!
「コッコロ!!!!」
私は落下しながらコッコロを強化能力で強化する。
「主さまっ!……やぁぁぁ!!」
それに応えるようにコッコロは風魔法を使い、繊細なコントロールで私を上空へと弾き飛ばす。
弾き飛ばされた私の体はフワリと1度重力から解放されるような感覚を受けた後、コッコロ達のいる足場に着地する。
「流石に今のは肝を冷やしたが…よく私の事を理解しているようだなコッコロ」
「当たり前でございます、わたくしは貴方さまの従者です、貴方さまの望む事はわたくしの望む事です」
「うえ〜ん、す、すみません黎斗さ〜ん、私のせいでぇ〜」
「おいおい、大丈夫かよ黎斗、今のは流石に死んじまったかと思ったぜ」
泣きながら私に抱きついてくるスズメを無視し変身を解除しながらマコトに話をつける。
「さて、今回の一件はどうしたものか…馬車は爆破され、道は…この様に通れなくなってしまった訳だが…」
「う…お前分かってて言ってるだろ…わぁってるよ、オクトー先輩がやらかしたとはいえこの依頼のケツ持ちはアタシら『自警団(カォン)』のもんだ、馬車の手配や被害金もアタシらが出すよ」
「それだけか?」
私がそう言うと、はぁ…とため息を1つつき頭をワシワシと掻きながら
「そうだよな…もう後3時間もしたら日は傾いて暗くなっちまうし…馬車もないんじゃ帰りは徒歩だからな…ランドソルに着く頃にゃすっかり日も落ちてるだろうし…お前達は一回自警団で身柄を保護させてもらう」
「そうだろうな、一応私達は被害者だ、丁重に扱いたまえ」
「ったく調子いいぜ全くよぉ…」
そうと決まれば行動あるのみ、日没まで時間がない、徒歩では本当に日が暮れてしまうからな。
日が落ちれば気温は下がり、魔物達も活性化し視界も悪くなる、そんな中で準備もろくにしていない今の状況下でフィールドに出たままなど自殺行為だ。
「オクトー先輩、アンタには聞きたいことがあっから後で覚えておけよ」
「はーい分かってるよぉ〜はぁ…なんの収穫もないのに帰宅は徒歩かぁ…」
「そもそも、爆破の威力をあんなことにしてなければアタシらの馬も逃げる事はなかったんだよ!!爆発音で全部逃げちまったじゃねぇか!」
「そうじゃなくてもあの地形の変化のせいで結局馬達はみんなお陀仏だったと思うし僕のせいじゃないよ〜」
マコトとオクトーはそんな事を言い合いながら周りの獣人に嗜められつつ歩を進めている。
「それにしても…あの「ラビリンス」とは何者なんでしょうか…主さまのお知り合いのようですけど…」
「…それに関しては私も詳しくは知らない、そもそも知り合いといっても現場にいたリノやシズルくらいしか知り合いはいない…残りのメンバーが誰なのか何人いるのか何が目的なのか、その全貌はとてもじゃないが知り得ない」
「では何故逃したのです?主さまはあのシズルという女性の方と戦う事を拒んでいらしましたが」
別に感情論で拒んだわけではないが…
「単純に戦闘面による考慮だ、シズルは強い、私の今の力や例えコッコロを強化した所で歯が立たないだろう」
「成る程…」
「それにさっきも言ったが私と彼女達は知り合いだ、ここで敵対する様な流れを作った場合、次に出会ったとしたら確実になんの情報も得られなくなる、次の手を打つのであればここは穏便に事を済ますのが吉だろう」
「そこまでの事を…!流石は主さまですわたくし感服致しました」
そう、ここは黙って引き下がり我慢をする局面だ。
ノウェムは間違いなくこの物語の鍵、そしてそれが私の知り合いがいる組織の元に渡った。
それも強大な力を…この世界の理を司る力を持つ者がいる組織に…ククク…今のところはこの私の手のひらの上で転がっているぞ…この物語はなぁ…!!
えぇ!?女の子40人とエピソードを!?