ガールズ&パンツァー 蘇る宿命の砲火   作:人斬り抜刀斎

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遂に劇場版突入です!


劇場版
エキシビション開幕ですっ!


聖グロリアーナのチャーチル車内

 

「茶柱が立ったわ」

 

車長席に座るダージリンが、自分が今右手に持っているティーカップに淹れてある紅茶に茶柱が立っているのを見てそう呟く。

 

「イギリスのこんな言い伝えをしっている?『茶柱が立つとステキな訪問者が現れる』」

 

「お言葉ですが、もう現れています。ステキかどうかは、さておき」

 

ダージリンがそう言葉を続けると、装填手のオレンジペコがそうツッコミの様に口を挟む。

直後にチャーチルの車体が揺れ、甲高い金属音が鳴り響いた。今、彼女達が乗るフラッグ車であるチャーチルは、大洗ゴルフ場のホール内にて、とあるバンカーを塹壕に見立てて、3輌のマチルダⅡと共にハルダウンしている。

その聖グロリアーナの戦車隊は、大洗チームのあんこうチームとカメさんチームとアヒルさんチーム、カバさんチーム、ウサギさんチーム、アリクイさんチーム、ワシさんチーム。

そして、チハ(旧砲塔)3輌、チハ(新砲塔)3輌を中心とした知波単学園チームが包囲していた。

今日は大洗女子学園全国大会の優勝を記念したエキシビションマッチが行われているのである。

 

 

大洗町の一角

盛り上がっている観客席エリアとは別の場所にて、荷台に物見櫓が取り付けられたGAZ-AAが在る。その物見櫓の上には、継続高校のミカとアキの姿が在った。

 

「…………」

 

試合の様子を見ながら、カンテレを奏でているミカ。

 

「エキシビションって、なんかかっこいいね〜」

 

とそこで、アキがそう声を挙げる。

 

「かっこいい………それは戦車道にとって大切なことかな?」

 

そのアキの言葉に、ミカは否定的にそう返す。

 

「え~じゃあ、ミカは何で戦車道をやってるの?」

 

「戦車道は人生の大切な全ての事が詰まってるんだよ。でも、殆どの人がそれに気づかないんだ」

 

「何よそれ〜」

 

哲学的かつ、難解な返答をするミカにアキは呆れる様な様子を見せるのだった。

 

一方、聖グロのチャーチルの車内では、

 

「いくら親善試合とはいえ、油断しすぎたのでは」

 

「この包囲網はスコーンを割るように簡単には砕けません」

 

「落ち着きなさい、いかなる時も優雅に・・・・それが聖グロリアーナの戦車道よ」

 

不安がるオレンジペコに、アッサムがそう言う。そんな二人をダージリンが宥め優雅に紅茶を飲む。

 

「応戦してこないね。相手は何だか余裕だよ」

 

一方、包囲網のやや後方に控えていたフラッグ車であるⅣ号からは、麻子を除くあんこうチームの面々が車外へ姿を晒しており、双眼鏡を覗いていた沙織がそう言う。

 

「何かを待っている感じだな・・・・・」

 

そのⅣ号の隣にいるティーガー改のキューポラから双眼鏡を携えた秋人がそう言う。

 

「きっと紅茶飲んでるんですよ」

 

「わたくしたちは緑茶でも入れます?」

 

「ミルクセーキが良いっ!!」

 

そこで優花里がそう言い、華が口を挟むと、麻子が車外へ姿を晒してくるなりそう声を挙げる。

 

「卵も牛乳もクーラーボックスに入れて来ましたから、作れますよ」

 

「おお」

 

「すごいです」

 

(なんで、普通に持っているんだ・・・・・)

 

優花里がそう言ったのを聞いて黙り込み、麻子と華が感嘆の声を挙げる。秋人は、内心でツッコミを入れる。

 

「で、どうする?みぽりん」

 

とそこで、沙織がみほへ指示を仰ぐ。

 

「発砲をやめてください」

 

するとみほはそう命じ、大洗・知波単連合の攻撃が一旦止む。

 

「別動隊が此方へ到達するにはまだ時間が掛かります。今の内にゆっくり前進して、包囲の輪を狭くして行きます。安全な地形を確保しつつ、近距離での確実な撃破を目指しましょう」

 

「かしこまりました」

 

「Ich verstehe(了解)」

 

みほが続けて指示を出し、西と秋人が返事を返す。

 

「時間はあるので慎重に………パンツァー・フォー!」

 

「Panzer vorwarts(戦車前進)」

 

そして、みほと秋人がそう号令を掛けると、大洗チームの面々が包囲網を狭めるべく前進する。しかし、知波単学園の戦車は何故か前進しない。みほは、IV号戦車を西の九七式中戦車の横に停車させる。

 

「あの・・・・・」

 

「西住隊長『ぱんつぁー・ふぉー』って何ですか?」

 

すると、知波単チームの隊長『西 絹代』からそんな質問が返って来る。

 

「え?ああ、戦車前進って事です」

 

西に対しみほがそう説明する。

 

「なるほど!そう言う意味ですか、勉強になりました!」

 

「大丈夫か、知波単学園は・・・・・」

 

西が感嘆した様子でそう返すと、桃が呆れた様にそう言い放つ。

 

「ちょっと変わってるよね〜」

 

「でも、皆真面目そうだし、勇敢だから」

 

杏、柚子がそう言っていると

 

「戦車前進!」

 

「「「「戦車前進!」」」」

 

西がそう掛け声を掛け、知波単チームも漸く前進を開始する。

 

「今時外来語が苦手なんて人居るだな、大正生まれなのか彼女達は?」

 

と秋人が知波単学園のみんなを見てそう呟く。

学園艦の中でも日本色が濃い知波単の生徒は、総じて外来語が苦手であるのだ。

 

「フフッ、ではもう一度パンツァー・フォーッ!」

 

みほは苦笑いを零しながらも、改めて号令を掛け、今度こそ大洗・知波単連合は前進を開始するのだった。

 

「Wars bring scars『戦いは傷跡をもたらす』人はなぜ、そうまでして戦うのかしら?」

 

とダージリンが突然哲学的な事を呟く。

 

「勝利し、目的を遂げるためかと」

 

「あら、随分と即物的ね」

 

「それと達成の方法を持たないで戦うことは、自身の立場を危うくします」

 

ダージリンの問いに、隣にいるオレンジペコは短絡的な回答をする。

 

「今の我々のように、まあ手厳しい。さすがは、みほさん。うまくプラウダと分断されてしまいました」

 

「油断しすぎかと・・・・」

 

「ここでしか咲かない花がある。件の大洗廃校騒ぎのとき、生徒のひとりがそんなことを口にしてたそうです。仲間の大切な場所を守るため、あちらの隊長はさしずめそんな凛たる一輪ではないのかと」

 

自身らを追い込んだみほを称賛するダージリンに、アッサムはみほをそう考察する。

 

「全車停止!!」

 

やがて、大洗・知波単連合は、グロリアーナチームが籠っているバンカーの至近距離まで包囲網を狭めるとみほが停止の号令を掛ける。

 

「アヒルチーム、砲撃準備完了!」

 

「ウサギチーム、準備OKです!」

 

「大丈夫だにゃ~」

 

「砲撃準備良し」

 

「始めちゃって良いよ~」

 

「いつでも大丈夫だ」

 

そして、典子、梓、ねこにゃー、ハエルヴィン、杏、秋人から次々に攻撃準備完了の報告が入って来る。

 

「大洗・知波単連合の『攻撃部隊』の準備整いました。『守備隊』の状況は如何なってますか?」

 

そこで沙織が、大洗・知波単連合の『守備隊』の方へと通信を送る。

 

「ジワジワ来てるよー。え〜と………」

 

「後5分ってとこかな?」

 

「後5分だって」

 

それに対し、ナカジマとホシノが返事を返す。

 

「でも、どっちにしてもそんなには持たないからね~」

 

そう返すナカジマが乗るポルシェティーガー、カモさんチームのルノーB1bis、そして、チハ(新砲塔)1輌と九五式軽戦車と共に、丘の上に陣取ってプラウダ高校を相手に防衛戦を展開していた。相手方は相当撃ち込んで来ており、ナカジマの言葉通り、長くは持ちそうにない。

 

「了解」

 

「砲撃開始!!」

 

沙織が返事を返すと、みほが一呼吸置いてそう命じ、大洗・知波単連合の攻撃部隊による攻撃が再開された。戦車部隊が、バンカーに籠っているチャーチルとマチルダⅡ3輌に向かって次々に砲撃。

 

「さすがにマズイのでは・・・・・・」

 

そう言うオレンジペコ、彼女予想通りⅣ号が発射した砲弾が一輌のマチルダⅡを撃破、続いてチハ(新砲塔)が放った砲弾がもう一輌のマチルダⅡのエンジン部分に命中し白旗が上がる。

 

『すみません、走行不能です』

 

「いいえ、こちらの不手際よ。怪我はないわね?」

 

『ありません』

 

無線から撃破されたマチルダⅡの乗員から謝罪が飛んできたが、ダージリンはその乗員を咎める事なく安否確認をする。

 

「知波単学園2号車、マチルダⅡ命中!」

 

「おお、聖グロリアーナ撃破ぁっ!!」

 

「快挙であります!大戦果でありますっ!!」

 

更に『細見』も歓声を挙げ、彼女の車両の通信手である『寺本』は矢鱈と古いカメラでその様子を撮影する。

 

「すごいな、聖グロから白旗なんてスチュアート以来だ!」

 

「西殿!あとは突撃あるのみです!」

 

「その通り!突撃は我が校の伝統です!」

 

「突撃以外、何が有りましょうぞ!」

 

「いや、どうかな?」

 

戸惑う西を余所に、他の知波単戦車隊員達も賛同する。

 

「突撃ーっ!!」

 

「「突撃ーっ!!」」

 

何と知波単戦車部隊は勝手に突撃を開始してしまう!

 

「あ!」

 

「突撃して潔く散りましょうぞぉっ!!」

 

「お!?ややや散ったらダメだろう!」

 

「知波単魂を世に知らしめよーっ!!」

 

「勝利は我にありーっ!!」

 

最早西の言葉も届かず、チハ(旧砲塔)3輌、チハ(新砲塔)3輌はバンカーに籠っているグロリアーナチームに目掛けて突撃して行く!

 

「あれ!?号令がまだ・・・・・あー、ま いいか?よし、吶喊!」

 

「え?あの、西さん!」

 

戸惑っていた西だが、最終的に自身も突撃を敢行する。みほの掛け声に走り去っていく九七式中戦車の砲塔から身を乗り出している身体をみほの方に向け敬礼しながら走り去って行った。

 

「敵陣の中を突っ込んでいく、あれが日本の大和魂ってやつか?」

 

「うん、違うと思うよ。秋人さん」

 

知波単学園の敵陣に切り込んでいく侍のような勇姿にこれが大和魂なのかと言うが、みほが否定する。全速で駆け抜けながら、次々にグロリアーナチームに砲撃を見舞う知波単チーム。しかし、幾ら撃とうとチハの主砲弾では、弱点部を至近距離で狙わなければチャーチル、マチルダⅡどちらの装甲も貫く事は出来ない。

寧ろ、身を隠していない分、知波単戦車部隊は撃破される危機に晒されているだけである。

 

「あら、勇敢ね。勝手にスコーンが割れたわね」

 

「後は美味しく頂くだけですか。心意気に応えるべきかと!」

 

「ダージリン、あなたは臆病だった私に戦車道を与えてくれました。恐れを抱いた心では小さなことしかできない。友のため、自分のために」

 

ダージリンとオレンジペコがそう言い合うと、アッサムがそう言いながらチャーチルの砲塔を旋回させる。チャーチルとマチルダⅡの砲塔が旋回し、突っ込んで来る知波単戦車部隊に照準を合わせる。

 

「それに、もうすぐサンドイッチも出来上がるわ。砲撃」

 

そしてダージリンが更にそう言い合うと、チャーチルとマチルダⅡが発砲!空のドラム缶を叩いた様な乾いた金属音が鳴り響いたかと思うと、チハ(旧砲塔)とチハ(新砲塔)が撃破される。

更にチャーチルの砲塔が旋回すると、別方向に居たチハ(新砲塔)にも砲撃が放たれ、アッサリと撃破する。

 

「クソーッ!」

 

撃破されたチハ(新砲塔)の車長が悔しそうな声を挙げている間に、更にチハ(旧砲塔)2輌が即座にリタイアになった。

 

「んー、あとひと息なのに。果たして我々はこのままで良いのだろうか?いや、良くな、いや、良い!」

 

残るチハ(旧砲塔)の西は粘るが、このままでは撃破されるのは時間の問題だった。

 

「あらあら」

 

「まずい、このままじゃ」

 

西を除いて殆どの知波単チームが撃破された光景を見て、悠長な表情をする華とは対照的に焦りを見せるみほ。

 

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