一方、みほ達が聖グロを追い詰めている頃守備隊の方では、
「我が知波単第一中隊が突撃を敢行したらしいぞ!」
「よし、我々も後れを取るな!」
「取らいでか!」
「突撃!」
「「「おおー!」」」
玉田達が突撃したの方を受け、守備隊の中に居たチハ(新砲塔)の名倉が、守備を放棄して突撃を強行する。
「え!?ああ、ちょっと待った!」
ナカジマが止めるのも遅く、稜線から飛び出したチハ(新砲塔)を敵が見逃す筈もなく、アッサリと撃破される。
「先輩殿!我々もあとに続くであります!戦車前進!」
と、そこで更に残る九五式軽戦車の『福田』も、突撃を強行しようとする。
「ああ、だからダメだって!みんな無謀すぎ!」
「行かせて下さい!このままではみんなに合わす顔がありませんっ!」
「アグレッシブに攻めるのもいいけど、リタイヤしちゃったら元も子も無いんだよ」
尚も突撃を続行しようとしている福田を、ナカジマがそう諭そうとする。
「しかし、我が知波単学園は………」
「西住総隊長からこの陣地を守れって言われたでしょ。命令ってのは規則と同じなの」
「でもであります」
「規則は守る為にあるのよ」
「うう………」
だが、福田は納得する様子を見せず、見かねた様にみどり子からもそう戒めが飛ぶ。
「こちら、まもなく突破されます。退却合流します」
「ほら、行くわよ」
「ああ、何をするでありますか!?退却などイヤであります!」
「いいかいいから」
すぐにレオポンチームが退却を開始し、カモさんチームも福田の九五式軽戦車を押しながら退却させようとするが、福田は抵抗する。
その直後………多数のT-34-76とT-34-85、そして1輌のIS-2のプラウダチームが稜線を超えて来た!
「待たせたわね!」
隊長であるカチューシャが、連合を組んでいる相手………グロリアーナチームの隊長であるダージリンに通信を送る。
『待ちすぎて、紅茶が冷めてしまいましたわ』
しかし、ダージリンからはそんな返信が返って来る。
「仕方ないでしょ!もっと簡単に敵を突破出来ると思ったのよっ!!」
「迂回すれば良かったんですよ」
ノンナが無線でそう答えた。実際、向こうの目的はこっちの足止め、時間稼ぎにあるんだろう。
しかし、カチューシャの言う事もわからんでもないが確かに数の上ではプラウダ・聖グロが圧倒的に有利ではある。
だというのに攻めあぐねている辺り、向こうの防衛陣形がしっかり高台にある事に加え、やはりポルシェティーガーがなかなかの曲者だ。
『それより、早く挟撃態勢に入っていただける?』
「任せなさい、カチューシャたちが来たからにはもうおしまいよ!全車輌でフラッグ車を狙って!」
そして今度は聖グロ・プラウダ側が包囲する番だ。ダージリンのチャーチルとカチューシャが率いるプラウダ部隊が相手フラッグ車を捉えたとなれば、王手を掛けられる。
『Вы имеете в виду сразу поселиться на этом поле для гольфа?(このゴルフ場で一気に決着をつけるということですか?)』
『Да, надеюсь, все пройдет хорошо(はい うまくいけばいいのですが)』
カチューシャの命を聞いたクラーラとノンナが、流暢なロシア語でそう言い合う。
「ノンナ、クラーラ!日本語で話しなさいよっ!!」
『はい?』
その様子に、ロシア語に余り明るくないカチューシャは不満の声を挙げるが、クラーラは相変わらずロシア語で話すのだった。
「それにしても・・・・・嬉しそうですね、カチューシャ」
「……」
と相変わらず、誂う様に直球で言ってくるノンナ。
「カチューシャ?」
「…えぇ、嬉しいわ……嬉しいわねッ!漸く!アキーシャに私の凄さを見せつける事ができるもの!」
「あら、今日は素直ですね」
はんっ!!素直にもなるわよ。もう、正直…そちら方面じゃ、なりふり構っていられないだから
「何よ。ノンナは、嬉しくないの?」
「嬉しいですよ? もちろんです。引っかかる所は、多数ありますが…今は、現状を堪能しようかと思います」
「堪能ねぇ~。まっ、いいわ。もしカチューシャ達が勝ったらアキーシャには一週間入学してもらうわ」
「いい考えですね」
ノンナを知らない人なら、この顔は今、真顔に見えるでしょうが嬉しそうに小さく口を綻ばしているのを分かる人は、限られてる。
「何としてもアキーシャを倒すわよ!」
『『はい』』
と張り切るカチューシャの掛け声にノンナとクラーラが応える。
一方のチャーチルの車内では、
「車輌1.4倍、火力にあっては1.95倍こちらが有利です」
「私たちの援軍ももうすぐ到着するわ。行くわよ、カチューシャ」
『先に言わないで!命令するのは私なんだから!』
「前進」
ダージリンの号令と共にバンカーに身を隠していたチャーチルとマチルダⅡの2輌がバンカーから出てくる。
「はっはっはーっ!豆鉄砲をいくら撃たれようときくものか!!」
『油断は禁物よ、ルクリリ』
「はい、お任せください!このルクリリ、生まれてこのかた油断というものをしたことがありません!ダージリン様の紅茶が冷める前に連中を仕留めてご覧にいれましょう!」
バンカーから出て来るマチルダⅡのキューポラからルクリリが顔を出して威勢を上げ、ダージリンが無線で油断は禁物と釘を刺す。
「油断してますね」
「聖グロリアーナの戦車道はいついかなるときも」
『優雅!』
ダージリンは聖グロリアーナ戦車道のモットーを口にし、ルクリリが答える。
「逃げたぞ、西住!相手に合流させるな仕留めるぞ!」
桃がそう言って、ヘッツァーと三突が追撃しようと前進すると目の前で着弾する。すると、林の中から高速でこちらに向かってくる青く塗装された4台の戦車が現れた。
「何だ、あれは!?」
「カニっぽいねー」
向かって来たのはイギリスの巡航戦車クルセイダーMk.Ⅲだった。クルセイダー巡航戦車は巡航戦車A13の後継として1940年に開発されアフリカ戦線で巡航戦車隊の主力として活躍した。主砲はA13と同じ50口径40mm砲だったが、装甲はA13MKⅡの30mmから40mmに強化された。これは、ドイツ軍の主力戦車であるⅢ号戦車と比較すると火力と装甲ともにやや劣るものだった。機動力は通常は42kmとほぼ同じだが、リミッターを外すと60kmと圧倒的な速さで走る事ができた。弱点としては信頼性の低さで、フランス戦の敗北を受けて早急に戦力化するためテストをすっ飛ばして多くの問題を残したまま量産体制に入ったため故障が多発した。
「巡航戦車クルセイダー!足が早いから要注意だ」
「砲撃中止!」
クルセイダー隊の砲撃を受けた2両がその場から撤退を始める、固定砲塔はこういう時弱いのだ。
「完全に挟まれました!」
「成る程、敵はこのゴルフ場に雪崩れ込んで相手を包囲する挟撃態勢か。このゴルフ場でみほさんを仕留めるってことか」
プラウダ、クルセイダーとバンカーから脱出したチャーチルとマチルダも一斉にフラッグ車であるみほのⅣ号戦車に向けて砲撃して来た。
「うっ・・・・・わっ!」
「もうダメだ!こうなったら潔く散ろう!」
「それが知波単魂!」
「早まるな!西住隊長、いかがいたしますか?」
包囲されそうになり、諦めて玉砕しようとする知波単の乗員達に西は静止させみほに指示を仰ぐ。
「ここで戦うのは不利です。撤退します!」
みほは、ここでの戦いを不利と判断し撤退を決断した。
「敵に後ろを見せるのでありますか!?」
「撤退なんてイヤであります〜!」
「規則だから!」
「あとで挽回しなって!」
尚も撤退を嫌がり抵抗を続ける福田らをカモチームが無理矢理後ろから押して行く。
「山を降ります、下り終わったら敵の戦力を分散につとめてください」
「「「「「「「はい!(にゃー)」」」」」」
「はーい」
「かしこまりました」
「「「「「Ich verstehe」」」」」
そう言って秋人はキューポラに設置しているDShk38重機関銃を聖グロ・プラウダ連合に向けて発砲し牽制する。
「さすがの切り替えですね」
「みほさん、秋人さん。私、もう二度とカップは落としませんことよ」
包囲される前に退却する対応の速さに感心するオレンジペコと以前の練習試合での失敗を繰り返さないと断言するダージリン。
あっさりとその包囲を解き、撤退を開始する大洗・智波単チーム。
「も〜、せっかくのチャンスをフイにして何やってんのよ」
「人は失敗する生き物だからね。大切なのは、そこから何かを学ぶってことさ」
とそう言うアキにまともな事を言いながらミカはその膝の上に乗せた弦楽器を少し鳴り響かせた。そんな彼女らの会話を他所に市街へと続く山道のアスファルトの上を、数輌の戦車が進む。