秋人達との、交流を終え洗車に入ろうとしていた時、秋人の元にみほがやって来ました。
「あの、日向さん!!」
「西住さん、何ですか?」
「あの、その怪我の方は大丈夫ですか?」
「あぁ、まだ少し痛むがだいぶ良くなった」
と秋人は、軍帽を脱ぐと額には包帯が巻かれていた。
「そうですか、それと・・・・よかったんですか」
「よかったと言うのは、戦車道に入った事か?」
「はい・・・・日向さん達は戦争で心に傷を負っている上に、剰え戦車道に懐疑的でしたし」
「確かにまだ戦車道についてまだ納得していない所もある。だが、これは、俺達が決めた事だ。西住さんが後ろめたく思う事じゃない筈だ。それに俺達には、この時代・元の時代のどこにも居場所なんてないだ!それに、逃げたくないんだ!自分の運命から・・・」
と秋人は、悲しそうな表情でそう言って自分らの戦車の方へと歩いて行った。
(日向さん・・・・私に何か日向さんを癒す為になにか出来ることはないかな?・・・・自分の運命から逃げたくない)
みほは、心の中で秋人を癒す為に自分に何か出来ないかと思った。そしてその後、戦車道履修生達は、自分達が洗車する戦車を見つめていた。
「ガッチリしてますねぇ」
「いいアタック出来そうです」
そう言ってバレー部の4人は八九式中戦車を見る。日本初の国産量産型戦車で18口径57m砲を搭載しているが装甲の厚さが17mと非常に薄く脆いのだ。
「砲塔が回らないな」
「象みたいぜよ」
「ぱおーん」
「戯け!三突は冬戦争でロシアの猛攻を押し返した凄い戦車なのだ!フィンランド人に謝りなさい!!」
「「「すみません」」」
とⅢ号突撃砲を象見たいと揶揄する歴女達にⅢ突を擁護するエルヴィン。カエサル、左衛門左、おりょうはフィンランドがどっち方面にあるのか分からないのに取り敢えず頭を下げる。そもそもⅢ号突撃砲がフィンランドに配置されるのは冬戦争じゃなくて継続戦争なんだけどなぁ。Ⅲ号突撃砲の当初の任務は戦車との交戦ではなく、歩兵の支援だった。対戦車用自走砲としてⅢ号戦車の車体を流用したⅢ号突撃砲。高速の75m砲を備えた車高が低いドイツ軍最強の対戦車兵器であり1945年の終戦までに数多くの連合軍戦車を撃破した。
「大砲が二本あるね」
「大きくて強そう」
そう言ってM3中戦車リーを見る一年生チーム。大口径砲の75m砲を車体の右側搭載しているのが特徴だ。M4シャーマン中戦車が登場するまでアメリカ軍の主力戦車だった。秋人達も1943年のクルスクの戦いでソ連赤軍第6親衛軍との戦いにて何度かM3中戦車と遭遇し戦った事がある。
「うわぁ!ベタベタする」
「これはやりがいがありそうですね」
武部がⅣ号の車体を手で触れると車体には油汚れで気色の悪い感触がし拒絶した。その後、皆は汚れてもいいように制服から体操着に着替えた。そしてみほは手慣れた様にⅣ号の車体に上りキューポラの中を覗くとみほは鼻を摘んだ如何やら戦車の中は悪臭が漂っている様だ。そりゃ20年も放置されていれば普通そうなる。
「車内の水抜きをして錆び取りをしないと古い塗装も剥がしてグリスアップもしなきゃ」
とみほは的確に清掃する場所を指示する。その一方でみほの隣では秋山が目を煌めかせてみほを見ていた。
「こいつを掃除するなんて久しぶりだな」
「そうだね。戦場じゃそんな余裕なかったから車体のあっちこっちに泥や砂埃が付いているし、車内は埃で汚れているね」
「私達、良くこの中で気持ちよく休んでいたんだな」
と良と幸也と綾乃がティーガーを見て言ってると
「それは重大な問題だ・・・・早急に取り掛かるぞ」
と秋人が言い秋人達も清掃を開始する。秋人達は野戦服のままだが、頭を保護する為制帽からシュタールヘルムと呼ばれた鉄製のM35鉄帽ドイツ軍を象徴するヘルメットを被っていた。
「ちょっ、ちょっと沙織さん!もぉ〜冷た〜い」
「だ、誰ですか!?」
武部が、ホースで水を掛けたらその水が五十鈴に掛かり昔のホラー映画に出てきそうな女幽霊みたく恨めしそうな声でゆっくりと武部の方に振り返る姿を見た秋山は背筋が凍る様な寒気が走った。そしてⅣ号戦車の隣の歴女達のⅢ号突撃砲では、
「高松城を水攻めじゃぁ!!」
「ルビコンを渡れ!!」
「ペリーの黒船来航ぜよ」
「戦車と水と言えばノルマンディーのDD戦車でしょ!」
「「「それだ!!」」」
と、水と自分達の専門歴史絡めて清掃する歴女達。
「もうびしょ濡れ」
「恵みの雨だぁ!」
「ブラスケちゃうよ」
と、子供の様にはしゃぐ一年生達。ホースを上に向けて噴水みたいに水を出して雨を降られている様だった。
「今日は戦車を洗車すると言っただろ」
「うまいね〜座布団一枚」
「決してそう言う意味で言ったのではありません」
「それよりちょっとは手伝ってくださいよ」
河嶋が戦車を洗車と言って戦車と洗車をかけたと思ったのか?座布団一枚と言うが河嶋本人は別に洒落で言ったわけでない。しかも、角谷と河嶋二人だけが体操服ではなく、制服のままで38(t)を清掃していたのは、副会長である小山一人だけだった。しかも彼女だけ体操服でなくビキニの水着姿で。当の二人は傍観者気取りで何にもしない、小山の言う事も最もな意見だった。とまぁ、そこは置いといて秋人達もティーガーを洗車する。車体の中を秋人とミーナが外を良、幸也、綾乃が掃除する。
「中も結構泥や埃が溜まっているわね。戦場だったからあんまり気にしていなかったらけど、改めて見ると結構汚れてるわね」
「こういう所は、隙間だらけだ。そして埃はその隙間が大好きだ。そう言った隙間という隙間に埃は入り込む、こいつらは掃除しても掃除してもまた直ぐに何処からか湧いてきやがる。全くきりがない」
と秋人はそう言って雑巾であらゆる所を念入りに拭いていく。
そして日が沈む頃には戦車の洗車は終わっていた。みんなは体操着や顔には油や煤で汚れていた。
「よし、良いだろう。後の整備は自動車部の部員に今晩中にやらせる。それから、お前達の戦車に判定装置と装甲材も今晩中に自動車部の部員にやらせる。それでは本日は解散!」
と河嶋が解散の号令を掛けその日は解散となった。隣では小山がブラシを杖代わりにして体を支えていたがフラフラ状態だった。結局小山一人で清掃して疲れてヘトヘトで角谷と河嶋の二人は手伝わなかった様だった。
「早くシャワー浴びたい」
「早く乗りたいですね」
「う、うん・・・」
と、早く戦車に乗りたくて爽やかな秋山とは逆に何故かみほの表情はどこか元気の無い堕天使ブルーだった。
「・・・・・・」
そんなみほの事を秋人は、黙って見つめていた。