ガールズ&パンツァー 蘇る宿命の砲火   作:人斬り抜刀斎

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ケイ&レスキュー

C-5Mスーパーギャラクシー。アメリカが開発した大型輸送機にてその最高速度はおよそ920km/hだとか。

そのスーパーギャラクシーに描かれている校章こそ、サンダース大学付属高校のものだった。

 

「サンダースで、うちの戦車を預かってくれるそうだ」

 

「えっ!?」

 

大洗学園の保有戦車は学園廃校と同時に文科省が預かる事になっていた。

文科省が大洗の戦車をどうするかは知らないが、少なくとも取り上げられる事に違いはない。

 

「大丈夫なんですか!?」

 

要するに文科省に戦車を取り上げられる前にサンダースに一度逃がしてしまおうって話なんだろうが、後々問題になったりしないんだろうか?

 

「紛失したという書類を作ったわ!」

 

柚子が自信満々に【紛失顛末書】を見せてくる。

 

「本当ですか!!」

 

「じゃあ、私たちの戦車は!!」

 

「これで、みんな処分されずにすむね」

 

「「「「やったーっ!!」」」」

 

などと、さも憂憂と言うがそれって普通に書類偽造なのでは無いかと思うが口にするのは辞めておく。そして、戦車が没収されないと知って喜ぶアヒルチーム。

 

「お待たせ!」

 

「まったく世話をかけさせるわね」

 

スーパーギャラクシーが校庭に着陸すると中からケイさん達が降りてきた。

 

「サンキュー、サンキューケイ」

 

「こんなのお安い御用よ!」

 

杏の言葉にケイは手を振って答えた。

 

「さぁ、みんな!ハリーアップ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

笑顔で号令を送るケイだが、サンダースにとってこの戦車を預かる事が決して『お安い御用』でも『ノープロブレム』でもない作業なのはわかる。

そもそもサンダースも今日は試合をしていたはずだ、加えてサンダース大学付属高校の母校は長崎にある。試合が終わってから、長崎からここまでスーパーギャラクシーで来てくれた、それだけでも燃料費やらなんやらは馬鹿にならないだろうに。

 

「だが、いつの間にケイ達と計画を立てたんだ?」

 

「あら、アッキーは知らないの?」

 

「…なにがだ?」

 

「うーん…こういうアイディアはあなたが考えるものって思ったんだけど」

 

秋人の言葉が意外だったのか、ケイは腕を組むと何やら考えている。

 

「…そっか」

 

だが、その視線が秋人をじっと見つめるとやがて納得したように呟いて。

 

「えいっ!!」

 

「!?」

 

不意打ちで、いきなり抱き締められた。

 

「sorry、そうね、あなたも大変だったものね…」

 

だが、その抱擁はいつものこの人が見せているアメリカン的な勢いのあるハグとは違い、優しかった。

突然で驚きはしたが、俺が抵抗しなかったのは不意打ちではなく、その心地良さの方が原因だろう。

 

「隊長ぉぉぉ!?何やってんですか!!」

 

「………ん?あはは!ごめんアリサ、ついね」

 

アリサがすごい剣幕でケイに詰め寄ってきた事でケイは謝りながらパッと身を引いてくれる。

 

「・・・・・・ふふ」

 

「む、笑ったわね~?」

 

とケイは、今度は秋人の顔を自分の豊満な胸に押し当ててる。

 

「・・・・・・苦しいだけど(なんか、凄いいい匂いがする)」

 

「いいから、いいから」

 

「…秋人さん」

 

あまりに突然の事で驚いていたのは俺もそうだが、あんこうチームの面々も同じだろうが、彼女達は彼女達でなにやらじとーっと俺を見ている。

 

「まぁその、あれだな。計画を実行しよう」

 

このままだとただ単に俺を抱き締めに来ただけになっちゃうんだけだ。いや、本当にそれ目的なら俺としても嬉しい。

 

「ヘイ、ミホーっ!」

 

「ひゃんっ!!ケ、ケイさんっ!?」

 

ケイはみほの尻を平手打ちをし、驚くみほにケイは続けて抱擁を交わす。

 

「やっぱりそうよね!隊長たる者そうこなくっちゃ!!」

 

「え?え?」

 

「大変だろうけどがんばるのよ、困ったことがあったら遠慮せずなんでも言いなさい、それでいつか再戦してもらうんだから!」

 

「ケイさん・・・・」

 

「いいわね、約束よ!」

 

「は、はいっ、ありがとうございます!」

 

「はいそこ邪魔しない」

 

そして、ある程度ギャラクシーに戦車を載せ終わり、ナオミが面持ちで、

 

「さて、ここからが本番か」

 

「最後まで緊張を強いるフライトをさせちゃうげど、頼んだわよナオミ」

 

「問題ない」

 

すると、ケイの口角が上がりナオミピップアタックをするが華麗にかわされる。

 

「ちょっとふたりとも!早く行きますよ!毎回よくかわせますよね、隊長のお尻」

 

「わかりやすいだろ、いつ来るかなんて」

 

「イヤ、突然なんですから読めませんって、いつも作業の邪魔するんですから」

 

そんなことを言うアリサにナオミはほくそ笑み。

 

「アリサ、お前は頭がいいけどやっぱりちょっと抜けてるよな」

 

「な、なんですか、ソレ!!」

 

そして、いよいよギャラクシーが飛び立つ時がやって来てケイと杏が握手を交わし、サンダースに戦車の事を託す事にする。

 

「よろしく頼むよ」

 

「任せて」

 

「まったく、世話をかけさせるわね」

 

「アリサ、わかってるでしょ。ウチはほかと比べて設備も充実してるんだから、これはもう私たちの使命なのよ。恵まれた立場にあるのなら、それに相応しい自分たちで在るべきじゃない!」

 

そう言うケイに、アリサとナオミは微笑む。そして、戦車を全て入れ終わると三人はギャラクシーへと乗り込んで行く。

 

「確かに預かったわ」

 

「移動先が分かったら連絡頂戴!」

 

『はい!ありがとうございます!』

 

「届けてあげるわ」

 

西住との会話を終えたケイさんとアリサもスーパーギャラクシーに向かうナオミと合流する。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「重そうだが飛べるのか?」

 

「頑張って〜」

 

戦車は9台とかなりの重さがあり、ちゃんと飛べるか心配だったがサンダースの三人が乗り込んだスーパーギャラクシーは大洗の校庭からゆっくりと離陸し、すぐに見えなくなった。

 

「よかった・・・・・・学校は守れなかったけど、戦車は守ることができました」

 

「うん・・・・・・」

 

すでに廃校が決まった大洗にとって、それはほんの小さな抵抗の一つに過ぎない。

おそらくは文科省だって今さらこの程度の抵抗に文句をつけにくる必要は無い程の、悪あがき。それでも、彼女達とあの日々を共にした戦車はまた、彼女達の手元に戻ってくるのだ。

 

ーーー

 

ーー

 

 

翌朝、大洗学園艦は大洗港に停泊し、生徒や住人達を降ろす。

それは言ってみれば学園艦にとって最後の仕事のようなもので、もう艦内に残っているのは船の運行に必要な一部の船舶科の生徒だけだろう。

 

「全員そろってるな」

 

「はい」

 

港では、荷物を持った戦車道チームが集まっている。

 

「改めて見ると本当に大きいな、この艦ともお別れ。しかし、初めて見るな学園艦が港を出港するのを見るのは」

 

「そうですね…、なんだか変な気分です」

 

大洗学園艦が港から出港する事自体は珍しくもないが、優花里の様に自宅が学園艦にある者にとってはその光景を普段見る事はない。

 

「そっか…優花里さんは、自宅が学園艦にあるもんね」

 

他の生徒が帰省やらなんやらで学園艦を離れる時だって、元々大洗に実家がある優花里には無縁の話だった。

 

「学園艦もいよいよ見納めか・・・・・・」

 

「かえすがえすも理不尽な・・・・・・!これではまるでネロの独裁政治ではないか」

 

「あるいはこれでよかったのかもしれんぜよ」

 

「な、なにを言うおりょう!」

 

「・・・・・・大洗女子が廃校になったことでほかの学園艦は残る。その中の生徒たちが明日の日本を導く担い手になるかもしらん。この国の夜明けの礎となるなら本望ぜよ」

 

「くっ・・・・こんなときにそんな・・・・・・」

 

「なんという時代を見据えた大局観・・・・・・」

 

「どこまでスケールの大きい奴なんだ」

 

歴女達がそんな事を話しておりょうは新撰組の誠の旗を振り翳す。そして汽笛を鳴らしながら、大洗学園艦が港からゆっくりと離れていくその姿を、俺達生徒は陸の上から見送るしかなかった。

 

「出港してしまうんですね」

 

「これでお別れなんですかー・・・・・・」

 

「さらば」

 

「…こんなの、彼氏と別れるよりも辛いよ」

 

「別れた事もないのに?」

 

しかし華は相変わらず容赦ない。

 

「行かないでぇ〜」

 

「笑って見送ろうよお〜」

 

「ありがとぉー」

 

「げんきでねぇ〜」

 

「「「「「さよおならー、さぁよぉなぁらぁ〜っ」」」」」

 

ウサギチームが離れていく学園艦を走りながら追っていく、やがて港の端っこで立ち止まった彼女達は学園艦が見えなくなるまで別れの言葉を口にしていた。

 

「構え!」

 

秋人がそう言うと、ミーナ達はボルトを起こしてKar98kを空に向け

 

「Fire!」

 

と号令と共に発砲する。秋人達は学園艦に弔銃を行いそして秋人達はある歌を歌い始める。

 

Ich hatt' einen Kameraden,

Einen bessern findst du mit.

Die Trommel schlug zum Streite,

Er ging an meiner Seite

Im gleichen Schritt und Tritt.

 

(私には戦友がいた、

さらに、親しくなった友人が。

北音は開戦を知らせ、

私のそばで一緒に歩いた。

同じ足踏みと歩き方で)

 

2節

Eine Kugel kam geflogen

Gilt's mir oder gilt es dir?

Ihn hat es weggerissen,

Er liegt vor minen Füßen.

Als wär's ein Stück von mir.

 

(弾丸一足がこっちに飛んできたね。

目標は私でしたか、あなたでしたか?

すぐに彼は倒れてしまい、

私の足の前に横たわった、

まるで私の一部であるかのように)

 

3節

Will mir die Hand noch reichen,

Derweil ich eben lad'

Kann dir die Hand nicht geben

Bleib du im ew'gen Leben.

Mein guter Kamerad!

 

(彼は私に手を伸ばしたが、

急いでロードするのに忙しい

手を差し出せませんでした。

ただ魂になってゆっくり休むことを望むだけだね、

私の良い戦友よ!)

 

それは、ドイツ軍の追悼歌として名高い『私にはかつて一人の戦友がいた』を合唱し学園艦が見えなくなるまで敬礼した。

 

「みんな、バスに乗りましょう」

 

みほ達は転校先が決まるまでの仮の住まいになる所へバスで移動する事になっている。

 

「これってどこに向かってるの?」

 

「転校先が決まるまでの一時待機場所だって」

 

優希がバスの行き先を聞きあやが答える。バスの中ではみんな終始優れない表情をしている。

 

「だんだんバスが別れていくね…」

 

とはいえ、さすがに大洗の高校生全員を受け入れる宿泊先がある訳でもなく、最初は多くのバスでの集団移動だったそれも、一つ一つと数が減っていった。

 

「生徒の数が多いから、みんな学科毎に分かれて宿泊するそうです、戦車道をとっている人達はみんな固まっているみたいですけど」

 

きっと生徒会がまた何か根回しをしたんだろう、そもそもこのバスに乗っているのが戦車道受講者しかないないし。

 

「とりあえずお菓子、食べよ!」

 

「みんなで頂きましょう!」

 

「うん・・・・・・」

 

そんな重苦しい空気を和ませようと沙織が持って来ていたポテチの袋を開けて差し出しそう言い、華もそれに同意する。

 

「ほら、日向殿もこっちに来てお菓子食べましょう」

 

パックリと後ろを開けたポテチを見せて来たので

 

「…まぁいいが、冷泉さんも寝てる事だし静かにしてやらんと」

 

「起きているぞ」

 

ムクリと後ろで長椅子を独占していた麻子が起き上がってきた。なんだかんだ朝早かったから爆睡していたくせに。

 

「先まで寝てただろ」

 

「今起きた」

 

いつもそれぐらいすぐに起きられないのかね、などと心の中でそう呟く。

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