ガールズ&パンツァー 蘇る宿命の砲火   作:人斬り抜刀斎

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戦車道連盟へ!!

〜愛里寿side〜

 

みほ達がボコミュージアムに来る少し前に一人の少女がボコミュージアムの門を潜って入る。

 

「遊園施設の中には、入り口からエントランスまでの距離を長めにしたり緩やかな傾斜の登り道にするなどして来場者やな高揚感や期待感を抱かせるよう工夫を凝らした造りになっているものもある・・・・・・でも、ここにはそんなの必要ない。ここにはボコがいるんだから」

 

『おう、よく来やがったな』

 

ゲートを潜って出迎えてくれるボコの可動式人形に心を躍らせていると、

 

「あ〜、今日も客がこねぇな〜」

 

「白ネコと青ネコ・・・・・・!」

 

「毎日暇だよな」

 

「なぁ、聞いたか?あの噂」

 

「あぁ…ここが閉館するってやつだろ」

 

「そりゃ夏休みだってのにこれだけ人居ないとなぁ…、今日なんて大洗の学園艦が帰港してんのにこんなだし」

 

それは私にとって、天地がひっくり返るくらいの話だった。

白ネコと青ネコの二人が話しているのを偶然耳にしてしまった私はその場からしばらく動けなかった。今までもボコミュージアムに来たとき、私以外のお客さんを見る事は少なかった。…正直、騒がしいのは苦手だし、ボコを一人占め出来て嬉しいと思っていたけど。

でも…ここが閉館になったら?もうボコには会えなくなるのかな…?

 

『おう!よく来やがったなお前たち!オイラが相手をしてやろう!!』

 

「ボコ…」

 

いつものように私を出迎えてくれるボコ、他のボコに比べてちょっぴり細めなそのボコは勇敢にファイテングポーズを私に見せてくれる。

 

「…ボコは、どんな相手でも絶対に立ち向かうよね」

 

でも、ここがもし無くなっちゃったら…ボコはもう戦えなくなるの?

 

「………」

 

ふと、涙が込み上げてきそうになる。そんな事ない、ボコはどんな時でも立ち上がる、だって、それがボコなんだから。

 

「よう、お嬢ちゃん。ようこそボコミュージアムへ」

 

そんなボコミュージアムが閉館すると聞いて落ち込んでいた愛里寿にネズミが声をかけて来た。

 

「さっきからずっとここに立ってるな、このボコ気に入ったのかい?」

 

「このボコ・・・・・・普通のボコよりちょっと細く見える」

 

「え、そうか?誰も気にした事なかったんだけど。嬢ちゃんはボコが好きなんだな」

 

「うん」

 

「どういうところが好きなんだい?」

 

ネズミにボコのどこが好きかと聞かれすると、愛里寿はショルダーバッグから『素粒子物理学』と書かれた参考書を取り出した。

 

「お、なんか難しい本を取り出したな」

 

「私はもう大学生だから、今いろいろ勉強はしてるの」

 

「そっかー、嬢ちゃんは大学生かー。えらいなー」

 

そう言ってネズミは愛里寿の頭を撫でる。愛里寿の髪はネズミに荒っぽく撫でられたからか、かなり乱れたが愛里寿はお構いなしだ。

 

「観測衛星の発達により今世紀に入り宇宙の総エネルギー量を測定できることが可能になった。その結果私たちや物質を形作る原子は全体構成量の4.3%、惑星や恒星などの天体は0.5%ほどしかなく。人類が現在のところ観測できるものは原子より小さい素粒子、ニュートリノを含めても全体の5%にも満たないことが判明した」

 

「ん?」

 

「残りは20世紀から示唆されていた仮説上の存在。暗黒物質と暗黒エネルギーとされている。一方で、それらのものは存在しないという理論もあるが間接的な観測事例も発表されており、未だ正体不明の物質・エネルギーは存在すると仮定するのが近年の通説である。いずれにしても、私たちが直接認識できるものというのは、この世界を彩る存在のうち本当にごくわずかなものしかないの。そのひとつがボコ、ボコは何度やられても困難に立ち向かう勇姿をいつも私に見える形で示してくれる。世界の大きさを学ぶたびボコに出会えたことに感謝せずにはいられない」

 

「お、おう・・・・・・」

 

「でも・・・・・・」

 

難しい単語にネズミは戸惑い、愛里寿はここがなくなくる思うと表情を暗くし俯く、そんな愛里寿を不憫に思ったネズミはある提案をする。

 

「よし嬢ちゃん、午後のボコショーまでの間このネズミ様が園内を案内してやろう」

 

「そんなことしていいの?」

 

「今日はお客さんすくないから特別だぜ。・・・・・・いつも少ないけどな」

 

それから愛里寿はネズミに園内を案内され、『ジャングルボコ』『ビックサンダーボコンテン』『カリブの海ボコ』『スターボコズ』などを一通り回った後、午後のボコショーへとやって来た。そして、愛里寿はみほ達の席の隣に座りボコの応援をし、その後ショーが終わりステージの幕が降りる。

 

「終わっちゃった・・・・・・これで・・・・・・もう最後になっちゃうのかな、次はないのかな」

 

これが最後のショーになるのかと落ち込みながら愛里寿は、グッズショップへとやって来て

 

「…激レアのボコだ」

 

たまたま、残り一つしかない限定の激レアなボコを見つけた。自然と手が限定ボコに伸びる、そして、

 

「あっ…」

 

どうしよう女の人の方が、私と同じ激レアボコを手に取ろうとしていた。この人は見覚えがある、西住流の家元の娘で秋人お兄ちゃんと同じ戦車道チームの西住みほ、

 

「いいのいいの、私はまた来るから」

 

でもその女の人は笑顔でそう言って、私に激レアのボコを渡してくれた。お礼を言いたかったけど、逃げちゃった。そして、愛里寿がボコミュージアムを出る頃には、既に空は茜色にそまっていた。

 

「そろそろ閉館の時間か。どうだい嬢ちゃん、今日は楽しんでもらえたかい?」

 

「うん、ひとつしか残ってない。激レアのボコも譲ってもらった・・・・・・」

 

「へー、珍しいやつなのか・・・・・・・・・それ、ほかのとなんか違うの?」

 

「・・・・・・・・」

 

激レアボコとの違いを聞いてくるネズミだが、愛里寿はそれでも浮かない顔をして見かねたネズミが機転を効かせ

 

「嬢ちゃんはホントにボコのこと詳しいんだな。こりゃあ未来の館長さんだ」

 

「そっか・・・・・・ボコが何度でも戦えるように私がここを守ればいいんだ」

 

「嬢ちゃん、アイツはさオレたちが何度も倒しても立ち上がってくるんだ。ほら」

 

とネズミに言われて方向を見ればそこには、茜色に染まった夕陽を見つめる様にボコミュージアムの天辺に聳え立つボコのモニュメントがあった。

 

『ボコーーッ!』

 

愛里寿は大声で叫んだ。

 

「あの人が次に来たときに必ずあんたを買えるようにしてあげるからね。今度はお兄ちゃんとも一緒に来たいな」

 

そして、みほから譲ってもらった激レアボコの人形を見つめてそう言う。

 

 

ボコミュージアムに行った次の日

旧校舎の静かな廊下を通り抜ける秋人、生徒会が臨時の生徒会室として使っている旧校舎職員室を前に立ち止まる。

少し深呼吸しつつ、ゆっくりとその扉をノックした。

 

「どうぞ」

 

柚子の声に扉を開くとそこには柚子と桃の二人が書類仕事をしている最中のようだ。

 

「…日向か、何の用だ?」

 

桃がチラリと一度俺を見ると目線をまた手元の書類へ戻す。

 

「角谷会長…居るか?」

 

「会長なら奥においでだ」

 

「…わかった、じゃ失礼します」

 

桃に言われて職員室の奥へそこに向かう。大洗女子学園から持ち込んだらしい、お気に入りの椅子に座りながら、会長は窓の外を眺めていた。

 

「どうしたの?日向くん」

 

「どうしたの、じゃないですよ。会長が呼び出したんじゃないですか」

 

「いや〜ごめんごめん冗談だって」

 

杏は器用に椅子をクルリと半回転させるとこちらを向き直り、勢いのまま立ち上がった。

 

「んじゃ行こっか?戦車道連盟に」

 

「…え?今すぐっすか?」

 

「そ、何事も善は急げってね」

 

「それで、行くにしても足はどうすんで?」

 

この人の事だ、たぶん狙いは俺と同じだろうがその為には長距離の移動がどうやっても必要になる。

 

「それなら大丈夫、蝶野教官にはもう話つけてあるから」

 

「…ちょっと手際良すぎません?」

 

蝶野教官は自衛隊の人だし、ヘリの用意くらいはできそうではあるんだが。

 

「蝶野教官、協力してくれるんですね」

 

蝶野教官は陸上自衛隊の1等陸尉、秋人も17歳でドイツ陸軍の少佐の階級を与えられているので人の事は言えないが女性としてあの若さでわりとトンでもない肩書きなんだが、あの人個人の裁量でヘリの用意までしてくれるものなのだろうか。

 

「教官は最初からずっと私達に協力してるよ」

 

「…そっすね」

 

元々会長と蝶野教官に関わりがあったのかはわからないけど、大洗が戦車道を立ち上げた時から特別顧問として練習を見に来てくれた人だもんな。なお、いきなり実戦だった模様。 

その後だってちょくちょくタイミングを見ては練習を見に来てくれてしたし。なお、練習の指示はバーっとやってズサーってやるタイプの長島式教育の模様。

さすがに審判長として試合で大洗を優遇する事はなくても、それ以外で蝶野教官は大洗をずっと目にかけてくれていた。

 

「それに行くんでしょ?戦車道連盟の本部」

 

「…はい」

 

戦車道全国大会での大洗学園の優勝とそれに関連付けた男性に対する難癖。そして大洗女子学園の廃校。それらは全て文科省主導で全ての出来事が進んで来た。

だが戦車道に対する難癖となるなら、本来なら文科省よりももっと早く対応するだろう所がある。日本戦車道連盟、今日までだんまりを続けて来たが、戦車道に関わる問題事でこの組織が何も動いていないのだ。

男性が伝統ある女子の武芸、戦車道に関わるのが許せないなら、文科省よりもまず先にこの組織が文句を言って来ないとおかしいまである。それがただ単純に大洗女子学園なんてどうでも良いから動かないのか、それとも…動けないのか。

現状では敵とも味方とも言えない立場ではあるが、少なくとも蝶野教官は味方をしてくれるのだろう。…あの人も戦車道連盟の一員なのだし。文科省を相手に杏達学生がどれだけ騒いでも一蹴されるだろうが、もし戦車道連盟を味方につければ。

 

「そんじゃ、こやまー、かーしま」

 

「はっ」

 

「はい」

 

杏の掛け声に柚子と桃共にが入ってきた。

 

「そういう訳だから、私達、ちょっと出掛けてくるね」

 

「はい、留守は私達に任せて下さい」

 

「ふん、日向、しっかり会長をサポートするんだぞ」

 

「わ、わかりました」

 

なんならこの人にサポートとか居る。

 

「なんだその返事は!頼りないぞ!!本当なら私が会長のお側でサポートするべき所をお前に任せる屈辱がわかるか!!」

 

「でも桃ちゃん、さっき日向君が入ってきた時は嬉しそうなの見られたくなかったからわざと顔を下げてたよね?」

 

「ゆ、柚子ちゃん…、ゴホン、柚子、なんの話だ?」

 

わざとらしく咳き込んだが何も誤魔化しきれてない。

 

「ともかくだ、我が校の命運がかかっているんだ、もっと気を引き締めろ」

 

「かーしま、固い、もっと気楽でいいよ」

 

「か、会長まで…」

 

「大丈夫大丈夫、日向君が居るから」

 

「そうね、会長と日向君が一緒に動いてくれるんだから、大丈夫だよ、桃ちゃん」

 

無理矢理の部分はわざと強調させておく、本当に巻き込んでくるのはあなた達ですからね?そこんところわかって?

 

「ま、そんな訳で頼りにしてっからね」

 

「えぇ、やってやりましょう!!」

 

「おぉ!日向、そうだ、良い返事だぞ!!」

 

「…大丈夫かなぁ?」

 

これもすべて大洗女子学園の為に、

 

 

【日本戦車道連盟】

 

当たり前の話だが、戦車道の試合は野球やサッカーといったそこら辺の試合とは一試合の規模が違いすぎる。日本戦車道連盟はその為の組織であり、試合を行う時は例え練習試合だとしてもこの組織に話を通すのが基本である。

先の大洗女子学園優勝記念エキシビションマッチはもちろん、最初にやった聖グロリアーナとの練習試合だってもちろん連盟にきちんと話は通している。あとは試合の運営や審判団の派遣等、要するに日本で戦車道をするに辺り切っても切れない相手だという事だ。もちろん戦車道全国大会の運営にも関わっている。その優勝校である大洗女子学園の廃校問題も、その発端に男子助っ人が関わっている事も知らないはずが無い。

だが、実際にやり取りに来たのは文科省の役人で戦車道連盟の方は静観を続けている。男性が戦車道へ関わる事が問題だというなら、文科省よりまず先に戦車道連盟が動くはずだ。

 

「そろそろ戦車道連盟の本部よ。二人共降下の準備はOK?」

 

「…なんかそれだとヘリから直接降下作戦するみたいに聞こえるんですが?」

 

「ふふっ、『空の神兵』ならもちろん歌えるわよ」

 

「いや、現役の自衛隊の人がここでそれ歌ったらちょっとシャレにならないんで…」

 

「…すいませんね。わざわざヘリまで出して貰って」

 

運転してくれてるのはもちろん蝶野教官だ。まだ朝も早いというのに大洗からヘリで俺達を戦車道連盟の本部まで送り届けてくれている。

今日は朝から自衛隊のヘリと大洗の住民達もさぞ困惑しただろう。

 

「いいのよ、今回の件、エキシビションマッチであなたの参加を許可した私達にも責任はあるもの」

 

そう答えた蝶野教官の声は優しい。だが、優しいからこそ、引っ掛かるものがあった。

 

「…やっぱ問題でしたか」

 

そもそもの話だが『戦車道連盟は俺のエキシビションマッチ参加を許可している』のだ。

この時点で文科省が問題に上げていた『男子が関わっている高校は優勝校に相応しくない』という主張と食い違っている。

大洗を是非とも廃校に持っていきたい文科省が叩きどころとして見つけた主張だろうが、戦車道連盟も秋人のエキシビションマッチの参加を許可した事で状況を静観せざるをえなくなったのではないだろうか?それが弱味として文科省側から圧力をかけられた。なんて可能性もあるだろう。

 

「あら、日向少佐の言う問題とは何でしょうか?」

 

含みを持った言い方で試すように蝶野教官は問いかけてくる。その問題についてはもう嫌になるくらい掘り下げて来たはずなんですが?

 

「何って戦車道は乙女の武道ですから、本来なら男子禁制ってやつじゃないんですか?」

 

「そんな小さい事、問題にもならないわ。バーっと流しちゃいましょう!!」

 

「えぇ、雑ぅ…」

 

わりと主題というか…。そこら辺で散々うだうだやってた時間全部バッサリ切り捨てちゃったよこの人。

 

「日向くん」

 

「…なんですか?」

 

蝶野教官の相変わらずなアバウトさに若干辟易気味なんですが、会長ならまだ…この人も大概アバウト寄りなんだよなぁ。

 

「実は日向くんに会って欲しい人が居るから」

 

「…会って欲しい人、ですか?」

 

「そ、戦車道連盟の理事長の人」

 

「…まぁ、そもそも連盟の偉い人に会いに来たんですけどね」

 

理事長って事は戦車道連盟のトップの人だ。そもそも男の俺が会いに行って良い顔をするものだろうか?

なんせ相手は乙女の武道たる戦車道、その連盟の代表

日本戦車道連盟会館の前にヘリは着陸し、蝶野教官を先頭に秋人と会長は後を着いていく。

 

「ここよ、もう理事長に話は通してあるわ」

 

扉を前に蝶野教官は立ち止まる。この先に戦車道連盟の理事長が居る。

 

「失礼します。蝶野亜美です」

 

蝶野教官が扉をノックし、開けるとそこに居たのはーーー。

 

「あぁ蝶野君と、大洗女子学園のお二人だね。話は聞いているよ」

 

恰幅の良い、ハゲたおっさんだった。

 

「日向少佐、この人が戦車道連盟の理事長を勤める…」

 

「児玉七郎です。はじめまして、日向秋人君」

 

「あ、ども。初めまして、えっーと」

 

この人が戦車道連盟の理事長らしい。

 

「困惑される事には慣れているよ。戦車道は女性がメインの競技だからね。その連盟の理事長となると女性が勤めていると思うものだろう」

 

「…まぁ正直に言えば、そうですね」

 

「だが、私はこの通りお飾りではあるが理事長をやらせて貰っている。君の話ももちろん聞いているよ」

 

俺をこの人に会わせる為に、同行させたのか。そして、おそらくこの人も俺がタイムスリップしたドイツ軍人と言う事も既に知っているだろう。

 

「私も子供の頃から戦車が大好きでね。よく男のくせになんて周囲に揶揄されながらも模型なんかを何台も作ったものだ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「まぁとにかくだ。そんな私も今ではこうして戦車道連盟の理事長として、戦車道と関わりを持たせて貰っているよ。日向君」

 

「…はい」

 

「『戦車道に男子が関わってはいけない』なんて事は無いんだ。そうじゃないと、私の立場もないだろう」

 

理事長はそう言いつつ、冗談めかして笑ってみせた。まぁ、秋人に言わせてば兵器である戦車が女性のスポーツとして現代に浸透している方が異常だが

 

「…ありがとうございます」

 

この人に会えただけでも今日ここに来て良かった。本当に蝶野教官の言う通り、問題にもならない小さな事だったのだ。

 

「では理事長、これで彼の関わりによる大洗女子学園の優勝の問題、という文科省の主張は取り消せますね」

 

「うぐっ…」

 

続けて蝶野教官が本題に入ろうとすると、理事長はわかりやすく言葉を詰まらせてその大きめな身体を縮める。

 

「蝶野君、あー…それはだね。それとこれとは話がちょっと違うというかね」

 

この理事長の様子を見てなんとなく察しはつくけど、やっぱりそこは乙女の武道、男性の肩身が狭いのは変わらない。

 

「君たちの力になりたいのはやまやまなんだが、文科省が一旦決定したことは、我々にもそう簡単には覆せないしなぁ・・・・・」

 

そもそもが大洗学園廃校の話は大洗学園と文科省が『優勝したら廃校は撤回する』というやり取りをしたので、戦車道連盟は関係無いといえばそれまでの話だ。

戦車道連盟が認めた所で、文科省が認めなければ意味がない。

 

「向こうのメンツが立たないと言うことですか?」

 

「そう言う事になるかな・・・・・」

 

「メンツという事であれば。優勝するほど、力のある学校をみすみす廃校にしてはそれこそ戦車道連盟のメンツが立ちません」

 

「蝶野君も連盟の強化委員の一人だろう?」

 

戦車道連盟としても、文科省と正面から対立は出来ないという事だろう。この人の立場からすれば余計に事を荒げるのは避けたいという事か。

 

「ですが理事長、戦車道に力を入れるという国の方針とも矛盾しますし、何よりもイメージがさがります」

 

「ふう、うーん」

 

「私たちは優勝すれば廃校が撤廃されると信じて戦ったんです。信じた道が『実は最初からなかった』と言われ引き下がるわけにはいきません」

 

「しかし今、文科省は2年後に開催される世界大会のことで頭がいっぱいだからなあ、誘致するためにプロリーグを発足させようとしているくらいだから取り尽くし島がないよ・・・・気の毒なこととは思っとるよ。生徒たちもさぞ気落ちしているんじゃないかね」

 

「そこは心配ありません、この件がどう転ぼうと私たちは自分たちの出来る事をするだけです。例えこの先、皆が別々になってもそれぞれが自分たちの戦いをしていくでしょう、どんなに困難な場面でも状況はいつだって自分たちで作る。それが大洗女子の生徒です」

 

「プロリーグ・・・・・それですね」

 

そういえばそんな話があった事を思い出した。

二年後の世界大会と、その為のプロリーグ設立、今文科省が一番力を入れているのが戦車道で、その戦車道で優勝する事で学園に実績を残す。

それは大洗女子学園が廃校を撤回する為に、戦車道という競技を選択した理由だ。

 

「ここは超信地旋回でいきましょう」

 

「お、日向君、なんか思い付いた?」

 

「…いや、世界大会やらプロリーグやら、話を聞けば文科省は戦車道を盛り上げたいんですよね?」

 

「あぁ、その為我々の話にも耳を貸そうともしない」

 

なぜこうまで強硬して大洗を廃校になんかするんだ?全国大会の優勝校が廃校とか、戦車道的にも盛り下がるニュースになるだろうに。

 

「…なら、世界大会やプロリーグに関する事なら耳も貸してくれません?」

 

「…それはつまり、文科省に協力する。という事かね?」

 

「協力というより向こうが我々の話を聞かざるをえない状況を作るだけです」

 

そもそも文科省の奴らだって多少の嫌がらせは覚悟して貰いたい所ではある。

 

「なら、日向君に良い情報があるわよ」

 

「なんですか?」

 

「プロリーグ設立委員会の委員長は是非西住流家元に、という声が多く上がっているわ」

 

「はぁ」

 

妥当ではある。なんせ戦車道の最大流派が西住流なのだ。プロリーグ設立となればその家元が話に出ないはずがない。

 

「どうやら、次の目的地が決まったみたいね」

 

「いいねぇ、日向くんもそろそろ西住ちゃんのご両親にご挨拶に行かないとだしねぇ」

 

「…会長、それわざと言ってませんか?」

 

蝶野教官と会長はトントン拍子に話を進めていく。

 

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