洗車も終わり日が暮れ空は茜色に染まっていた。秋人達は、角谷から渡された寮の鍵を持って学生寮に向かっていた。それまで秋人達は、戦車の中や迷彩柄のツェルトバーンと呼ばれるテントで過ごしていたので部屋で寝泊りすると言うのは久しぶりだった。角谷から渡された寮の鍵は一人一人違う番号が書かれ各人一人一人バラバラの部屋の様だった。秋人達は、角谷に教えて貰った寮に向かっている途中に突然秋人が足を止めた。
「どうしたの秋人?」
「ちょっと一人で考え事がしたいからお前達は、先に行っててくれ」
「いいけど、すぐに戻って来るのよ」
秋人は、皆とは別に一人別行動を取ることにした。そして秋人は、学園艦のデッキに行きそこから海を眺めていた。
「ここが未来の日本の世界か・・・・。未来でも夕日は変わらないだなぁ。しかしこの学園艦本当に街を丸ごと載せた船と言うより都市だな」
角谷から学園艦の事は聞いていたが本当に巨大な船だった。全長が7600m・高さ440m・3万人を収容できると来た。超巨大な船でそこに街を丸ごと一つ載せているのでもやは船と言うよりはちょっとした小都市だった。秋人は、物思いにふけりながら海を眺めていると向こうのデッキから声が聞こえて来た。
「港はどっちかな?」
「はぁー。そろそろ丘に上がりたい。アウトレットで買い物もしたいし」
「今度の週末は帰港するんじゃ」
「何処の港だけ?私港、港に彼が居て大変なんだよね〜」
「それは、行き付けのカレー屋さんでしょ!」
などとみほ達が話し合っていた。すると、みほ達が俺に気付いた様で声を掛けてきた。
「あ!日向さん」
「お前達か。こんな所で奇遇だな」
「日向さんは、ここで何をしていらしゃったんですか?他の皆さんとご一緒じゃないんですね」
「あぁ、ミーナ達は先に帰した。俺は、ここでちょっと夕日を眺めていたんだ。これから角谷会長から用意された宿舎にかれる所だ」
「そうなんだ。だったらさ日向さんも一緒に帰らない」
と一緒に帰らないかと誘われた。まぁ別に拒む理由も無いので承諾する事にした。すると、秋山が、
「あ、あのよかったらちょっと寄り道して行きませんか?」
「え?」
「ダメですかね?」
そんなこんなで、秋山に連れられる形で俺達は、とある店にやって来た。
「戦車倶楽部?」
とプレートの看板を見てそう言う。中に入ると如何やら此処は戦車関連の商品を取り扱っている様だ。戦車倶楽部には、書籍やプラモデル他に戦車の転輪や砲身まで販売しているらしい。
「こんな店があるんだ」
「凄いですね」
「でも、戦車ってみんな同じに見える」
と武部が言うと
「ち、違います!!全然違うんです!どの子もみんな個性と言うか特徴が合って動かす人によっても変わりますし」
と秋山は、異議を申し立て戦車に対し熱弁する。ここまで、戦車に対して熱くなれる女性も稀に珍しい。
「華道と同じなんですね」
と五十鈴がそう言うと、武部はうんうんとなんか納得したかの様に頷く。
「うんうん女の子だってみんなそれぞれの良さがあるしね。目指せモテ道!」
とグッドサインする武部。確かに女の子に色々とその子の良い所があるだろうけど、そもそもモテ道ってなんなの?
「話が噛み合っている様な?ない様な?」
「と言うか、話の内容ぐだぐだじゃないか!?思い切り話の路線が脱線してるんじゃないか?」
と三人を見て苦笑いをする二人。その後秋山は、戦車倶楽部に設置してある戦車のシミュレーションゲームをやり武部と五十鈴の二人がその後ろから見ていた。
「アクティブで楽しそうです」
「でも、顔は怪我したくないな」
「大丈夫です。試合では実弾も使いますけど、充分安全に配慮されてますから」
俺の前でそれを言う!?秋山さん・・・・それは俺達に対しての当て擦りなのか?と顔には出ていないがそう思っていた。そして、みほは店内に設置してあるテレビに目を向ける。未来のテレビは本体が薄くカラー映像で鮮明に映し出される様だ。
『・・・・次は、戦車道の話題です。高校生大会で昨年MVPに選ばれて国際強化選手となった西住まほ選手にインタビューしてみました』
と画面に出て来たのはドイツ軍のパンツァージャケットを模様した戦車服を着た茶髪の女性が映る。
(西住?そう言えば西住さんと同じ名字だな。西住さんの身内か?)
どこか西住さんに似ているそして、みほと同じ西住の姓である事から身内かと秋人はそう推測する。
『戦車道の勝利の秘訣とは何ですか?』
『諦めないこと。そしてどんな状況でも逃げ出さない事ですね』
アナウンサーが西住まほにインタビューをしまほは、カメラに向かってそう言う。みほは、ニュースを見て暗い顔になる。
「大丈夫か、西住さん?顔色が優れない様だが」
「うんうん何でもない。大丈夫だよ」
すると、武部がみほの落ち込んでいるのを見て察したのか。
「そうだ!みほの部屋遊びに行っていい?」
「私もお邪魔したいです」
「うん!」
とみほは嬉しげに頷く。
「あの・・・」
と秋山が恐る恐る手を挙げる。
「秋山さんもどうですか?」
「ありがとうございます!!」
と盛り上がる女子達。如何やら俺は場違いな様だな。あとの事は女性同士に任せるとしてお邪魔虫はとっとと寮へと退散するとしますかな?と思っていると急にみほに呼び止められる。
「あの!日向さんもよかったら一緒にどうですか?」
「え!?・・・・いいのか過去から来た得体の知れない男の俺なんかを家に招いて?」
「そんな事無いです!例え日向さんが過去から来た人だとしても日向さんは日向さんですそれに、日向さんは悪い人じゃ無いと思うんです。よく知りもしない相手を見た目で判断するのは良くないです!知った上でも他人が人を判断する事は間違ってます。無理か如何かを決めるのは自分だけです」
「そうだよ。こんなにイケメンの悪い人が居るわけないよ。だからさ日向さんも一緒に行こうよ」
「私も日向殿達が悪い人では無いと信じています」
「わたくしもそう思います」
と秋人は、この時みほが得体の知れない男を家に誘うなど警戒心がないので警戒心を匂わせる言葉を言う。散々戦場で、多くのソ連兵やパルチザンやゲリラやレジスタンスを殺して来た俺達をいい人呼ばわりか・・・。と秋人は思っていた。後、武部さん世の中には優しい言葉と綺麗な顔で近づいてきて女性を騙す男も居るんだぞ。一方のみほは、他人と距離を取る秋人に心を開かせようと試みるそして、武部や秋山や五十鈴も追随する。
「それに、日向さん、今日の晩ご飯はどうするつもりなんですか?」
「一応、戦闘食があるから今日はそれで済まれるつもりだが?」
「ダメですよ!それじゃぁ栄養が取れないですよ。ちゃんとご飯を食べないと!!」
と晩ご飯を軍用食で読ませようとする秋人に、みほは軍用食だけでは栄養のバランスが取れないと言って尚更秋人を誘って来る。
「やれやれ俺の負けだよ。わかったそれじゃあお言葉に甘えさせて貰おう」
とこの時ばかりは秋人も流石に折れみほ達の誘いに下ることにした。まぁそれに俺達が食べる食事なんてあのクソマズいレーションしか食べるものが無いから食事会に誘われて若干嬉しい気もする。