一方、その頃大学選抜チーム側の集合地点では………イギリスの戦後第一世代主力戦車センチュリオン1輌、M26パーシング中戦車、M24チャーフィー軽戦車、合計30輌がいた。
「どうします?隊長」
「高校生とはいえ、相手はかなりの戦力を有しています」
「まずはプラウダと黒森峰の重戦車を倒す。アズミとルミの中隊は私とともに、広く長い一列横隊を形成してゆっくり前進、側面からの強襲に注意しろ。偵察車は敵と遭遇しても攻撃するな」
『了解』
愛里寿がそう命令すると、チャーフィーを偵察隊は先行して向かう。
M24は戦闘よりスピードを重視して作られた軽戦車だ。アドナ・R・チャーフィーJr.。アメリカ陸軍における機甲戦力の父と呼ばれた男の名前を冠したのがM24、主砲は50口径75mm砲、装甲の厚さは25mm。大戦中では、敵戦車との戦闘を想定されていなかったが信頼性は抜群で実際にドイツ軍のⅣ号戦車を撃破した事もあり、これまでのアメリカ戦車とは異なりそのスマートさからドイツ軍のパンター戦車と誤認され友軍からは誤射される事態もあった。そのため一部の兵士達からは「子豹」と呼ばれた。また、戦後の日本の警察予備隊にも供与され「戦車」ではなく「特車」と名で小柄な日本人からの評判も良かった。
M26パーシングは戦車戦のために開発された戦車だ。主砲は50口径90mm砲、装甲の厚さは100mm。エンジンはシャーマンと同じ物を使用して整地であればシャーマンと変わらない速度だが、不整地になると、機動性は落ち「M4で登れる坂を登れない」と言う屈辱を味わう事になった。第二次世界大戦中、アメリカ軍はM4シャーマンを使用していたが、ドイツのパンターとティーガーと比べると力不足なのは明らかだった。アメリカ軍にも重戦車は存在していたが歩兵戦車の様な代物しか無く、前線を突破できる様な物ではなかった。しかし、軍の上層部は「シャーマンで十分」と言う考えを中々変える事がなく前線部隊の損害は増える一方だった。次第にシャーマンでは力不足と言う事が明らかになり幾つかの改良を重ねてM26パーシングとして完成した。
「各車前進」
「こちらルミ、了解」
「アズミ、了解しました。前進開始」
「メグミ、中隊を併進させます」
そして遂に、大学選抜機甲部隊が行動を開始した。
「接触は早くて20分後」
愛里寿はタブレットを見ながら大洗チームと接触時間を予測する。
………
一方、大洗チームは草原を横一列になり、駆け抜けていた。
「こちら、大隊長車!相手の動きはまだ確認出来ていません。慎重に行動してください!では、三隊に分かれて所定の進路を取ってください。パンツァーフォー!」
大隊長車、西住からの通信が入ってくる。
『えぇっと……あの、秋人さん?』
「あっと…悪い、了解だみほさん」
秋人からの返事が無かったのが気になったのか、名指しで声をかけられた。まぁ他の車長が返事してるのに1両だけ無視してたら無線の不備も疑われるしな。
『…えっへへへ、うん!!』
「ん?、急にどうした?」
『あ…ごめんね、またこうして秋人さんと一緒に戦車道が出来るのが嬉しくて』
ただなんかすっごく嬉しそうに言うのはちょっと気恥ずかしくて仕方がない。
そして、先行隊としてアンツィオ高校のCV-33が高地を登って行く。
「うう・・・・・・ドゥーチェ。ツインテールが邪魔です」
「本来なら二人乗りなのに、これじゃ前見えないっすよ」
「だったら、ペパロニ降りろ」
車内では、本来二人乗りのCV-33にペパロニ、カルパチョにアンチョビまで乗っているのでアンチョビの両脇にいるカルパチョやペパロニにアンチョビのツインテールが顔に当たっているのだ。
「そりゃないっすよ〜」
「だったら耐えろ!」
「外せばいいじゃないっすか、そのウイッグ」
「地毛だ!」
「そうだったんすか」
「痛っ!・・・・・・いたっ!敵集団発見!ゆっくり横一列で進んできている!」
丘に上に辿り着いたCV-33のキューポラから顔を出したアンチョビは双眼鏡で辺りを見渡すとM26パーシングの集団を発見してひまわりチームに報告する。
高地の麓、集結しているひまわりチーム
「了解した。大隊長、ひまわりは高地麓に達した、今先遣隊を送っている」
『頂上に敵はいないみたいだよ』
その言葉通り、先発隊の指揮を執っていたヘッツァーの杏からそう報告が入って来る。
「だったら、すぐに取るべきよ」
「大隊長の判断を請う」
カチューシャは即座に高地の奪取を決めるが、まほはみほに指示を求める。
『ワナかもしらませんから十分に警戒して下さい。退路を確保しつつ散開しながら前進、敵に遭遇した場合は、無理をしない様にお願いします』
みほは高地奪取を決め、罠などを警戒せよと命じる。
「有利だが、包囲殲滅される危険が有る。他のチームとの連携が取れなくなるかも知れない」
「M26なんて登るの遅いし、ココは行くしかないわよ!」
「取れば戦術的に優位になりますね」
慎重を期するまほに対し、強気に攻めようとするカチューシャとそれに同意するノンナ。
「確かに優位だが、わざと山頂を空けているのかも知れない」
「大丈夫よ! 貴方、何だかんだ言って妹の事信じてないのね?」
「…………」
飽く迄強気なカチューシャの言葉に、まほは黙り込む。
「ノンナなんてどれだけ私の事信じてるか。私が雪を黒いと言えば、ノンナも黒いって言うくらいよ。んねっ!?」
「はい」
「信じるのと崇拝するのは違う。どんな関係性であろうと盲目的に従うのではなく、自分でも常に考えるべきだ」
「うっ………!」
まほにそう返されて今度はカチューシャが黙り込む。
「確かに試合が長引くと経験の多い相手が有利だ。序盤で戦果を上げておきたい、行くか」
「はい!」
「…………」
カチューシャがそう言うと、まほはあっけらかんとそう返す。
「さぁ、行くわよ。二〇三高地よ!」
『おっ、203高地ですか!』
『プラウダはどんな戦いか、知っているのか?』
『負ける気か?』
カチューシャが勇ましくそう言うが、203高地の戦いの事を知る絹代、エルヴィン、カエサルからは呆れた声が挙がる。
「あさがおは、ひまわり左翼をそのまま前進してください!」
『OK!』
『わたくし達は?』
「たんぽぽは、ひまわりの右翼の高地脇を前進。ひまわりの援護をお願いします!退路を確保しつつ、散開しながら前進」
「成功は大胆不敵の子供、最初から勝負に出るのね」
初手格言から始まるダージリンの言葉通り、みほなら初動からぶちかます筈だ。
「定石通りの展開だと思うのですが、ダージリン様」
「その分、相手も対策を立てやすい、みほさんはそれを承知の上で挑んでいるのよ。ペコは大洗廃校の件、あちらの隊員たちが知っていると思う?」
「どうでしょうか?でも、知っているならさぞ戦意も振るわない事だろうと思います」
ダージリンは、今回の試合での大洗の廃校の件を大学選抜チームが知っているかとオレンジペコに問う。
「知らされていないとしたら?」
「ただの練習試合として臨んでいるのではないでしょうか」
「大洗の情報は私達にとって重圧にもなるけど、きっと皆に最後まで挫けない粘り強さももたらしてくれる。大洗のために急な呼び掛けに皆が応じてくれた。誰かの為に生きてこそ、人生には価値がある。まあ、いつもより優雅さに欠けるけれど、ぶちかまして差し上げましょう」
大洗のために呼び掛けをした張本人であるダージリンは、格言を言いながらいつもの優雅さとはかけ離れた言葉を放つのだった。
一方、あさがおチームの方では、
『ヘイ、アッキー!私達は森に入るわよ』
「了解だ、ケイ」
あさがおの進む左翼は森林地帯だ、平原、高地、森林、更には遊園地跡もあったり、今回の試合会場は戦車道全国大会の決勝戦会場よりもさらに広い上に多種多様なフィールドが用意されている。
しかし、その中でも今回ひまわりチームが目指している高地山頂は露骨だな…、いかにもここに陣取れば有利になりますと言っている気がする。
「あさがおチーム、隊長は良いんだけど…あっちは大丈夫なのかしら?」
「あー…うん、そうだよなぁ」
ミーナの言う隊長はケイの事だ、あっちというのは…。
「日向さん!同じ小隊メンバーとして、こうして共に戦える事を光栄に思います!!」
「お、おう…」
大洗女子学園廃校の危機にこうして、しかも結果的にその大半が待機とはなったが戦車の大部隊を連れて救援に駆け付けてくれた彼女達の事をあまり悪く言いたくはないんだが。
…言いたくは無いんだが、先のエキシビションマッチで命令無視からの戦局崩壊をやらかしたのもまた彼女達なのだ。多少不安に思うくらいだ。
「そして!共に突撃できる誉れを我々知波単学園は生涯忘れないでしょう!!」
「戦車道界初の男子との初突撃…に、西隊長!こんな名誉な事があって良いんですか!!」
「男子と共に散る!こ、これは我々知波単学園初の快挙でもあります!!」
「西隊長!早く突撃の指示を!!」
「私、最早辛抱なりません!!」
「みんな落ち着け」
と早まる知波単の隊員達を西は静止する。さすが隊長なだけあって西はまだわかってくれているみたいだな。
「ちゃんと突撃の指示を待つのだ、それに日向さんにも心の準備というものがあるだろう」
あぁ、前言撤回。この人も大概だった。
「突撃するの?」
「いや、しないからな。あのバンザイアタックの精神をどうにか抑えられないもんかね」
と呟く秋人、以前のエキシビジョンでの独断での突撃を敢行して大洗と知波単連合の戦力の半数が失われた事があるので、やる気があるのはいいがあの吶喊したがる所をどうにかして欲しいと願う。
「ずううぇったい勝つ」
『絶対って・・・・・・勝負事にそう言うの持ち込むなっていつも言ってるの隊長じゃないですか」
「今日はいいの」
突然ケイが、普段は言わなそうな言葉を今回は例外として言い、ケイは懐から一枚の紙を取り出す。それは、梓達が描いた『サンダース』と書かれ、サンダースの校章とギャラクシー、シャーマン戦車をバックにケイ、アリサ、ナオミの三人の絵が描かれた。それを嬉しそうに同乗者に見せびらかす。
「なんですか、それ?」
「アズサからもらっちゃった。ホントは、自分のお守りにするつもりだったんだって」
『隊長いつになく力入ってますね』
『入り込み過ぎにならなきゃいいけど』
「アリサ、知波単の様子はどう?」
ケイは、アリサに同じチームの知波単学園の戦車隊の様子を伺う。
『まったく物怖じしてないです。その分勝手な動きをされない様、こっちでもフォローしないと』
「仲間をちゃんと抑えられるかが、ポイントね。若いチームだからキヌヨも苦労してんじゃないかしら」
『なにせ、やる事が極端ですからね。今日は突撃一辺倒とか勘弁して欲しいですよ』
「うまいこと言うわね」
『え?』
「『キョクタン』な『チハタン』は突撃がいつもの『パターン』・・・・・・・・・・ぷっ、あははははは!!ナイスジョーク!あーははははは!それで仲間は『どっか移動』ってワケね!『北海道』だけに!あはははははは!あーはははははは!!あーお腹!お腹いたーい!あははははは、あーはははははは!!隊長の『ゴクロー』は私たちで『フォロー』あははは・・・・・・・・・・はー、面白かったわねー。ゴメンねー、大事な試合なのに笑っちゃって」
とケイは自分の考えたジョークに爆笑し、無線越しに聞いていたナオミとアリサの二人はチベットスナギツネみたいな表情になっていた。アリサ自身、別にシャレを言ったつもりはないのだが、ケイの笑いのツボに入ったみたいだ。
『ええ、気をつけてもらわないと』
「選抜は序盤からどう出て来ますかね?向こうの編成はウチと似てますけど」
「ん〜〜、編成はまあウチの上位互換ってところかしら」
『え〜〜』
ケイが言う様にサンダースの編成はM4シャーマンが中心だ。対して、大学選抜の編成はM26 パーシングが大多数だ。火力や防御もパーシングの方が優っている。
「ただ中身の方は突っついてみないとわからないかな」
『中身ですか?』
「アリサ、ウチの強みは?」
『戦力の平均化による汎用性と対応力』
「そ、ある程度経験を積んだ指揮官さえいれば幅広い戦術と安定した地力が出せるわ」
『隊長が沈んでも私やナオミが代わりを務められますしね。その為に指揮権委譲の順番も決めてますし』
とサンダースの強みを言う、サンダースにとって科学と同じなのだ。正しい手順で正しく動けばだれもが同じ結果をだせるという思想に基図いている。戦闘法は一から百まで軍事教範に明記され、現場指揮官に求められるのは正しい方法で戦うことだけ。
「つまりウチはチームでミスや不測の事態をカバー出来る」
『確かに後を託せる想定ができるなら思い切った行動も取れます』
「相手はそう言う所有車両にあったチームコンセプトをどこまで確立させているかってことね。今回の件は向こうにどういう事情があろうと許される事じゃない。大洗が勝つべきだわ、ミホ達の為に捨て石になってでも名シーンを演出するわよ。物語はいつもハッピーエンドでなくっちゃ!」
とケイは、大洗が勝つ為に自分たちが捨て身になってでもと言う覚悟が伝わり、物語の王道のパッピーエンドにしようと言うのだ。
一方、ドンドンと高地を昇って行くひまわりチーム。
「ちょっと、ニーナ!」
「すみませ~ん」
途中、その重量故に登坂スピードが遅かったニーナのKV-2に、カチューシャのT-34-85がぶつかると言ったトラブルもあったが、順調に登って行っている。
「う〜〜ん・・・・・おりょう、先に出よう。右側から登ってくれ、おっと、もっと右に、もっとだ」
「ん?ああ」
重量故に登るスピードが遅いプラウダ戦車に後続の三突のエルヴィンは痺れを切らしたのか?操縦手のおりょうに脇にされてプラウダ戦車を追い越そうとした。そんな中で、エリカは後ろを振り向き後続車のもたつきに苛立ちを覚える。
「ったく、なにモタモタしてるのよ!」
『焦るな、エリカ』
そんな苛つくエリカを諭すまほ。
「ですが、両翼の部隊では相手との戦力に差がありすぎます。我々が迅速に展開して主導権を握らないと」
『まだ見えるものだけに捕らわれるな、戦車だけに目を向けるならエリカの言う通りだろう。だが、それを扱う選手達はどうだ?大学選抜としての連携がどれほどかは未知数だが、今、乗車しているのは母校のチームで乗り慣れているものとは違う。別の車輌、隣で戦うのは普段とは違う他校の仲間、その違和感が最も強まる瞬間はいつだ?」
「際場」
「そうだ。純粋な戦力で勝敗が決まるものではないと言う事を我々も大洗から学んだはずだ。引き摺り込んでやれ、喰いちぎるぞ」
全国大会での大洗の試合で学んだ強力な戦車や数で勝つだけでなく、みほ達の奇抜な戦術による物と、
「敵中隊、高地北上中!頂上到達まで推定5分!」
と、その様子をカモフラージュを施した状態で観測している大学選抜チームのM24チャーフィーを中心とした偵察小隊。
「攻撃しますか?」
『取らせておけ』
愛里寿に指示を仰ぐが、愛里寿は高地は捨て置けと返す。
『アズミ隊、高地西の森林を全速で前進。敵部隊と遭遇した場合はコレを突破し、中央集団の後方を脅かせ』
『了解。全部隊、全速前進』
そしてアズミの部隊へとそう指示を飛ばす。
『ルミ部隊、麓東方を湿原まで前進。接敵した場合は、突破せず相手を釘付けにしろ』
『中隊!隊形を横隊から斜行陣へ!」
続いてルミの部隊へそう指示すると、ルミが指パッチンをしながらそう言うのだった。
高地西側の森林地帯………その場所をサンダース、知波の混成部隊があさがおが進んでいる。
「こちらアリサ。前方に異常無し」
前衛を務めるあさがおの中で、偵察の為に先行していたアリサがそう報告する。
「了解。ケイ車より西車へ。そっちは如何?」
その報告を受けたケイが、後続の絹代に尋ねる。
「こちら知波単部隊!我が部隊は順調に進撃中!右翼には敵影はなし!」
返事を返していた途中、絹代がそう叫ぶと3時方向から砲弾が飛んで来た。
「3時方向より敵襲!」
「CQ、CQ!あさがお、敵と遭遇!」
すぐさまケイは、大隊長のみほを含めた全部隊に報告を送る。
『こちらダージリン。敵戦車発見、方位10時、距離240ヤード』
すると、ダージリンのたんぽぽからも報告が挙がった。
『たんぽぽ各車!微速後退しつつ応戦!』
「狙いはあさがおとたんぽぽか…」
ひまわりチームに主力である黒森峰とプラウダの重戦車を編成してる事くらい、向こうもお見通しなのだろう。
『向こうはまず、たんぽぽとあさがおを潰しに来た!?」
『11時の方向、パーシング』
更に典子も新たな敵戦車を発見し、報告を挙げる。遂に戦闘が始まり、みほの顔に若干の緊張が走りる。
『敵戦力増大中!』
『みほさん、指示を!』
ダージリンがみほに指示を求める。
『大隊長車よりたんぽぽ各車へ!前後に移動を行って相手の射線に入らない様にして下さい!高地の上にひまわりが到着するまで耐えましょう。西さん!無理な突撃は極力避けるようにお願いします』
「え?あー、かしこまりました!」
みほからの指示に、絹代が勇ましく答える。
『それと秋人さん、知波単学園の皆さんの事をお願いします』
相手からの砲撃、えぐれる地面と土煙、前後を繰り返す戦車、状況はすこぶる悪い。
「秋人、どうするの!」
「応戦は最低限でとにかく被弾は避ける、相手がこっちに戦力を集中させてんならひまわりも山頂を取りやすい」
「了解」
ひまわりが山頂を取ってくれればこちらも挟み撃ち、応戦はそこからでも遅くはないだろう。
一方、その頃、ひまわりは、いよいよ高地頂上へと到達していた。
「こちらひまわり、高地頂上に達した」
「203奪取よっ!!」
「「「「「「「「「「ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
まほが報告し、カチューシャがそう言い放つと、プラウダの部隊員達が歓声を挙げる。
『みぽりん!』
『やりましたね!』
報告を聞いた沙織と優花里が歓声を挙げる。
『ひまわりは二手に分かれて、上からあさがおとたんぽぽの援護をお願いします』
「了解、北に敵集団を確認。警戒しつつ支援にあたる」
まほがみほの指示を受け止める。あさがお中隊はピンチだ。
再び、ひまわりチームの方は………
「攻撃開始っ!!」
ケイの号令で、サンダース、知波単のあさがお一斉に攻撃を開始する。大学選抜アズミ部隊は、反撃を受けながらも冷静に対処し、足を止めたあさがおに向かって接近を開始する。
「うおっ! こっち来たっ!?」
「1歩たりとも通すな!撃てぇ!」
玉田が声を挙げると、絹代が吼え、知波単のチハ達が一斉に砲撃する。しかし、新旧どちらの砲塔のチハでも、パーシングの装甲を抜く事は叶わず、アズミ部隊のパーシング達は構わず前進。
「アリサ!ナオミ!ラビット!チハタンズの脇から突破する気よ!前へ出て守るわよ!!」
それを見たケイは、敵は知波単機甲部隊を突破して高地へ向かう気だと見抜き、そう指示する。
「了解。自分が………!」
火力に優れるファイアフライのナオミが援護しようとするが、そこへ敵の激しい攻撃が襲って来る。
「敵火力集中!」
「進めませんっ!」
「援護不能っ!! 援護不能っ!!」
「SHIT!!」
ナオミの報告を聞いたケイが、思わずペリスコープを叩き回す。
「俺が前に出る!」
するとそこで、秋人のティーガー改が前に出る。
パーシングの攻撃が襲い掛かって来るが、装甲厚最大250mmの自慢の装甲で弾き飛ばす。
「お前ら、俺に続いて下さいっ!!」
「サンキューッ!!アッキー!」
秋人がそう言うと、ケイはお礼を言い
『おのれぇ!』
『突撃!」
『負けるか!』
『あ、コラ!突撃はまだ早い!』
「…は?」
慌てて知波単部隊の方を見ると一両隊列を離れて大学選抜チームに突撃していく新砲塔チハが見えて、そのまま撃破され白旗を上げた。
『池田車、不覚にも被弾により行動不能!』
『名倉車、善戦するも撃破されました!』
『チハ新旧一両ずつ撃破されました!面目次第もございません!!』
『西隊長!我々で名倉の仇を討ちましょう!!』
『今こそ突撃の許可を!!』
次々と撃破される知波単戦車を見て、仇を取る為にさらに突撃を敢行しようとしている。
《秋人さん、知波単学園の皆さんの事をお願いします》
と秋人は無線でのみほとの会話を思い出す。
今は西がなんとか宥めてくれているが、いつまた暴走するかわからない。
「ちょっ!?あの子達何やらかしてんのよぉ!!」
「幸也、すぐに知波単にプライベート回線飛ばしてくれ!!」
「わかった!」
秋人は直ぐに、無線手の幸也に知波単戦車にプライベート回線を繋がせる。これは、一か八かの賭けだ。
「知波単各部隊聞こえるか?9時方面より敵襲だ」
「ちょっ!?秋人あんた、この状況で何を」
「そっちには何も居いないよ?」
「わかっている」
だから混乱を避ける為にわざわざプライベート回線を飛ばした訳だ。これは、戦力低下を防ぐ為の苦肉の策だ
「全車両、直ちに転身して突撃」
『『『『了解!!』』』』
大学選抜チームへと向かう知波単部隊は颯爽と転身し、逆方向へ…そのあまりの手際の良さに練度の高さは確かに伺える、だが当然そこに相手が居るはずもなく。形的に敵前逃亡のようにはなるんだが、今はそんな事は言っていられない少しでも戦力を残しておかなくては、
『やるじゃない、アッキー』
「…どうも」
だが、結果的にこれで知波単部隊が守っていた所が空になってしまった。つまりは、
「敵に突破されました」
大学選抜チームの部隊はそのままひまわりへ向かうようだ。
「…惨敗だね、これは」
相手車両は一つも落とせないまま突破され、こちらは一両失い、残った車両も立て直すには時間がかかるだろう。
初陣としてはなかなかどうして、厳しい結果だと言えるだろう。
「でも、残りのチハタンズはあなたに救われたわ。この先、あの子達が試合をひっくり返す事だってあるかもしれない」
ケイんがキューポラから顔を出してニカッと微笑んでくれる。
「まだまだ試合はこれからよ!!」
「あぁ!」
とりあえずここは初戦を生き残っただけでも良しとするべきなんだろう。