一方、『どんぐり小隊』が典子達の作戦殺人レシーブの準備をしている頃、カールを護衛しているパーシングでは
「あ〜〜〜あ、いいわね本隊は〜〜〜勝手に戦えて」
「こらー、文句言わないの。こっちだって大事な任務よ」
パーシングの車長がそんな風に愚痴をこぼしていた。
「どうしたのよ」
「いやさ〜〜〜戦車道・・・・どこまで続けようとか考えたことある?」
「選抜チームってさ、プロリーグを見据えた編成だっていうじゃん。メンバーに選ばれた時は嬉しかったけどさ、訓練では隊長にボコボコにされるわ。今やってることなんてほぼ留守番だし、これって競技としてプロしたとしても私たちはお呼びじゃないってことだよね」
「そ、そんなことは・・・・・」
「昔はそんなこと気にせず戦車乗れてたのにさ、考えちゃうよね〜」
そんな風に話していると、森の中からBT-42が飛び出して来た!!
「「「!?」」」
護衛パーシングの車長達が驚きを露わにしているとBT-42はそのまま窪地を飛び越えてカールが居る場所に着地!そのまま独楽の様に回転したかと思うと、至近距離からエンジン部を1撃し、護衛パーシング1輌を撃破!!そして逃げる様に窪地内へ降りて行った!!
「くっ・・・・・・・小隊、追うぞ!!」
護衛パーシング2輌は、BT-42を追い、窪地に降りて行った。
「これは人生にとって必要な戦いなの?」
「恐らくね………人は誰もが幸せを求めて生きている」
「幸せになるために戦ってるって事?」
「そうかもね」
次弾を装填しながら問うアキに、ミカはそう返す。その間に、車体後部の上にCV33を乗せた八九式が、ヘッツァーを連れてカールが居る高所に通じている石橋に向かった。
「今だっ!!」
そして、アンチョビの合図で、石橋を渡り始める!
「しまったぁ!」
護衛パーシングの片方の車長がそれに気づき、声を挙げる。
「大丈夫!木っ端微塵にしてやるわ!」
しかし、カール担当砲兵達は、カールを旋回させ、水平射撃でアンチョビ達を狙おうとする。
「う”わ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”~~~~~~~~っ!? こっち見てるぞおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」
「ドゥーチェ(総帥)、そろそろ中に入ってください。当たったらツインテールだけになっちゃいますよ〜〜」
60センチの砲門に狙われ、アンチョビが思わず濁声気味な悲鳴を挙げる。カルパッチョは、危ないかは顔を引っ込める様に言うが、60cmの砲弾をまともに喰らってツインテールだけ残る訳がない。その直後にカールが発砲。60センチ砲弾がアンチョビ達に向かう!!だが、咄嗟の事で狙いが甘かったのか………砲弾は外れて、アンチョビ達が通り過ぎた後の石橋に命中した。
「うわああっ!?」
それでも後方から凄まじい爆風が襲って来て、アンチョビが思わず声を挙げる。するとそこで………カールの砲弾が命中した石橋の下へと、BT-42が向かった。石橋の破片が瓦礫となって降り注いで来る中を、構わず疾走するBT-42。そして、瓦礫と瓦礫の間に僅かに空いていた隙間を通り抜ける。護衛パーシング1輌がその後を追おうとしたが、車幅の違いから引っ掛かってしまう。
『どうしたの!?』
「もう、なによこれ!瓦礫に挟まれて動けーー」
すぐに後退しようとした護衛パーシングだったが、直後に砲身目掛けて瓦礫が落下。砲身が潰れて圧し折れ、護衛パーシングは白旗を上げる。
「残り1輌!」
とうとう護衛パーシングが残り1輌となり、アキが砲塔を旋回させながら声を挙げる。
「ミッコ!左!」
だがそこで、ミカが叫んだ通り、残る1輌の護衛パーシングが、何時の間にかBT-42の左側から迫って来ていた!
「いっ!?」
ミッコが思わず声を挙げた瞬間に、BT-42は護衛パーシングに激突!重量差からBT-42の方が弾き飛ばされ、転がって履帯が千切れ飛ぶ。
そのまま、窪んでいた場所に落ち込むBT-42。
「ようやく仕留められた・・・・・・翻弄されっぱなしだったわ・・・・・・」
パーシングの車長がBT-42を撃破して安心し切っていた、だがBT-42の操縦席に居たミッコが、車のステアリング………所謂ハンドルの様な部品を取り出したかと思うと、それを操縦席にセットした!
すると………
BT-42の起動輪と転輪が回転を始め、再び息を吹き返して走り出した。
「何っ!?履帯無しなのにーっ!?」
その様子に仰天の声を挙げる護衛パーシングの車長。
「天下のクリスティー式! 舐めんなよぉっ!!」
そう言いながらハンドルを切るミッコ。
「なによ、あれ・・・・・・!?もう!しぶといわね!」
彼女達の乗るBT-42は、元はフィンランド軍がソ連軍から鹵獲したBT-7を改造したモノである。
そしてこのBTシリーズと呼ばれる戦車は、アメリカの発明家………
『ジョン・W・クリスティー』が考案した『クリスティー式サスペンション』と呼ばれる懸架装置が使用されている。
この懸架装置の最大の特徴は、最後部の接地転輪と起動輪がチェーンで接続されており、履帯を外しても走行が可能と言う事なのである。
そして、カールの砲撃を如何にか凌ぎ、突撃を続けていた八九式が………
「行っけええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
忍の叫びと共に、前方が浮き上がるまでに加速する八九式!
「必殺っ!!」
「「「「殺人!レシーブッ!!」」」」
そして急ブレーキを踏んだかと思うと、慣性の法則で、後部に乗っけていたCV33が、ボールの様にカールへと飛んだ!
「やったーっ!」
「賢いねー、私達っ!!」
作戦が上手く言った事で、歓声を挙げる妙子とあけび。
「今だっ!マズルを狙えーっ!!」
そして、空中に文字通り投げ出されたCV33が、カールの砲口を狙って8ミリ機銃を連射する。
しかし、幾らカールが装甲の薄い自走砲と言えど、8ミリ機銃程度で撃破出来る筈もなく、CV33は石橋の崩れている手前の部分に落ちて逆さまになった。
「アレ?」
それを見て、典子が首を傾げるのだった。
一方、BT-42と残る1輌の護衛パーシングは、石橋の橋桁を中心に、その周りを回る様に追い掛けっこを展開していた。
「このままじゃ埒が明かない・・・・・・」
『ここから離れますか!?』
「・・・・・・いや、このまま追い立てる!あんだけ頭でっかちの砲塔なんだから、直ぐにバランスを崩して転倒するわ!」
パーシングの車長は、BT-42
「よーい」
と、砲塔を後方へと向けていたBT-42のハッチから顔を覗かせていたミカがそう言い放つと、護衛パーシングに向かって砲撃が飛ぶ。しかし、護衛パーシングの砲塔正面の装甲を貫けず、火花を散らして弾かれる。
直後に反撃にと護衛パーシングが発砲するが、BT-42は素早く橋桁の陰に隠れる。そしてすぐさまバックで、橋桁と護衛パーシングの間の僅かな隙間を擦り抜けて行った。
引っ繰り返ったCV33にトドメを刺そうと、カールが近づいて来る。
「折角踏み台になったのにー」
「作戦失敗だ、撤退しろーっ!!」
妙子が残念そうにそう言うと、桃が喚き散らし、蛍が宥める。
「クソーッ!」
「チョビ子! 履帯を回転させろっ!!」
引っ繰り返ったままのCV33の中でアンチョビが悔しそうにしていると、杏からそう通信が入る。
「命令するな! 私を誰だと思って………」
「干し芋パスタを作ってやるからさー」
「パスタッ!!」
「マジっすかっ!?」
反抗しようとしたアンチョビだったが、パスタと言う言葉を聞いて一瞬で気を変え、言う通りに引っ繰り返ったままのCV33の履帯を回転させる。
「よし!」
すると、そのCV33に向かってヘッツァーが突撃する!
「飛べーっ!!」
そして八九式の脇を擦り抜けると、CV33を踏み台にして、勢い良くジャンプした!
「会長!お願いしますっ!!」
その砲弾が装填されているカールの砲口目掛けてヘッツァーが発砲!砲弾は砲口に飛び込み、装填されていた砲弾に命中!!着地と砲撃はほぼ同時に、そして砲煙と共にカール自走臼砲が白旗を上げた事を確認した。
「やった!」
「お見事です、会長!」
「大洗(ウチ)っぽかっただろ?」
カールを撃破できた事にガッツポーズを取る杏だった。
「西住ちゃーん、おっきいのはかたづいたよ〜」
『ありがとうございます、会長!』
無線でみほにカールを撃破した事を伝えて、感謝を伝えるみほ。
BT-42と護衛パーシングの戦いにも決着が着こうとしていた………逃げる護衛パーシングを、BT-42が追う形となっている。
「いい音だ、ミッコ。合わせるから好きに動いていいよ」
「戦車は面白いね、目的の達成だけを追求した乗り物、徹底した合理性の塊」
「それのどこが面白いの?どの車輌も勝利を求めて走ってるのに出来上がってきた形は、こんなにも違うんだから」
いよいよBT-42が、護衛パーシングのエンジン部に狙いを定める。
だが、その瞬間!!
護衛パーシングが急ブレーキを掛けた!!その速度が仇となり、護衛パーシングを追い越してしまうBT-42。すぐに反転しようとしたが、それよりも早く護衛パーシングが発砲!!BT-42の左側の車輪が全て吹き飛ばされる!
「やった!」
とパーシングの車長が撃破したと歓喜した。
………しかし!!
何とBT-42は、残る右側の車輪だけで片輪走行!!
「あんなことがてきるの・・・・・・・?まるで・・・・まるで踊っているみたいじゃない・・・・・・・!」
と片方の車輪だけで走行するBT-42の姿をそう表現した。
「幸せになると言う目的は一緒なのにそうなるための奏で方が、こんなにも違うんだから人は面白いね。奏でてみたい音でいっぱいだ」
砲塔を傾けながら護衛パーシングへと向かった!!
「トゥータッ!!」
そして、ミカのフィンランド語での撃ての号令が掛かると、アキが発砲!放たれた砲弾は、粗零距離で護衛パーシングのエンジン部に命中!!発砲の衝撃で、BT-42の残っていた右側の車輪も全て脱落し、車体が地面に埋まると、白旗を上げる。だが、護衛パーシングからは既に白旗が上がっている。
「皆さんの健闘を祈ります!」
ミカは、そう言うとカンテレを鳴らしたのだった。
「これで、終わりか〜〜、もうちょっと役に立ちたかったんだけど」
「楽しかったなー!ミカも来てよかっただろ」
「そうだね。やっぱり旅はいい、思いもよらない音に出会わせてくれる。それに、彼にはこの間のチョコの借りも返せたからね」
アキはここでリタイアした事に少し残念そうだった。ミカは、この前のエキシビジョンの後に秋人からチョコレートをもらったその借りを返せた事に満足そうだった。
「じゃあ、ここからは大洗の応援だね」
「しないよ、そんなものに意味はないからね」
「も〜〜〜、いつもそればっかり」
「まあ、いいじゃん」
「ミッコもミカに甘いよね」
「ミカは自由にさせないと演奏に元気がなくなるからな、ミカの奏でる音は、いつもみんなが踊りたくなる」
「ミカ〜、今ちょっとテレてるでしょ」
「そんなことはないよ」
アキからそう言われて少し顔を赤くしてそう言うミカだった。
一方で、撃破されたパーシングの車長達もまた、
『完敗ね』
「まったく、私たちすっかりいい面の皮だわ」
『小さかった』
「ええ、あんな戦力なのにしてやられたわ」
『違うわよ、私』
「まだ、終われないわね」
『そうね』
とそう言って、どこか寂しげな表情をして
一方、湿地地帯………
長距離砲撃部隊を壊滅させ、大学選抜チームを一時退かせた大洗は、たんぽぽチームが居たこの場所に集結していた。
「BT-42、パンター2輌、T-34、IS-2、KV-2、チハ新旧1輌ずつ、合計8輌が撃破されました」
「でもでも、こっちはカールとパーシング5輌を撃破したよ」
「これで、22対24ですね」
「随分減ったな」
「いや、よく持ち堪えた方だ」
「継続さんが頑張ってくれましたよね」
カール自走臼砲とパーシング3輌を撃破した杏達どんぐり小隊はそのままたんぽぽ本隊と合流。上からのカール自走臼砲の脅威が消えた事であさがお部隊とも無事に合流できた。
「うちもな」
「もちろんです!」
「バレー部さんと会長さんたちのおかげです」
とⅣ号の右隣を並行するCV-33のアンチョビ達に敬礼する優花里
「西住さん、我が校は2輌も戦列を離れてしまい、誠に申し訳ございません!」
「いえいえ」
更に左隣では絹代のチハが並行し、絹代は知波単学園の車輌が独断で行動を起こし、挙句撃破されてしまった事を詫び、みほに頭を下げて謝罪する。みほは、苦笑いを浮かべて気にしてない様に振る舞った。
「うちはカチューシャだけになっちゃった…」
「大丈夫。まだ、貴方が残っているわ。カチューシャ」
「…わかってるわよ!アキーシャに命令よ、プラウダは負けないって事を証明しなさい!!」
「…なんで俺がプラウダの看板背負わされたんだ?」
「あら、アキーシャはカチューシャのものなんだからもうプラウダみたいなもんでしょ、戦車がロシア製じゃないのは残念だけどね」
「俺、いつの間にプラウダの生徒扱いになってたんだ」
「ほいほい他の戦車に乗り換えちゃうあんたには相応しいんじゃないかしらねぇ!!」
プラウダ高校のメンバーは、カチューシャを残してノンナ、クラーラ、ニーナ達は撃破されてしまった。俯き寂しそうにそう呟くカチューシャにダージリンがそう言うと、カチューシャはプラウダの生徒でもないのに秋人は自分の所有物だから実質プラウダの生徒扱いと言う極論を言う。
「すみません、私の責任です。互角に持ち込めると思ったんですけど」
「定石通り、やりすぎたな。らしくもない・・・・・みほの戦いをすればいいんだ」
「あっ!」
みほが、責任は自分にあるとして謝罪するが、まほは物事は最善とされる手順で進んでいるとして責めず、自分らしく戦えばいいと言う。
「ここからの作戦は?大隊長」
「局地戦に持ち込んで個々の特徴を生かしてチームワークで戦いましょう」
「急造チームでチームワーク?」
何を言ってるんだとばかりにエリカが冷笑するが………
「急造でもチームはチームだ」
「ぐ………」
まほにピシャリとそう言われて、黙り込む。
「あれれ?天下の黒森峰さんともあろうお方が、急造チームじゃチームワークなんて出来ないとはねぇ、なんて泣き言を言うの?いや、恐れ入ったわ。確かに急造のチームだったが、そこにチームワークが生まれない理由にはならないだろう。まぁバカはそういうの苦手そうだしな、誰かに合わせるとか嫌いなタイプだろ」
するとそこで、秋人がエリカを嘲る様にそう言い放つ。
「ちょっと!!今ハッキリバカって言ったでしょ!?馬鹿にするんじゃないわよ! やってやろうじゃないの!急造でもチームワークぐらい出来るわよ!!」
「砲身のチェックはどうだ?」
「うん、今するから」
と秋人はキューポラに潜って砲手の綾野に砲身のチェックを命令していた。
「あっ、誤魔化すんじゃないわよ!無視すんじゃないわよ!!」
秋人の態度にツッコミを入れるエリカを他所に
「お互いに足りないところを補い合って戦うしかない」
「チームを再編成してあそこを目指します」
「OK」
「あの中だと、遭遇戦がやりやすくなります」
「確かにそうね」
「でも背水の陣になるわ」
「そう言う戦い得意だよ、うちは!」
「アンツィオも得意だ」
「そっすか?」
「では、パンツァーフォー」
と気を取り直して、みほ達大洗は合流したチームを再編して、次の場所を目指すのだった。その場所は『遊園地跡』だった。