ガールズ&パンツァー 蘇る宿命の砲火   作:人斬り抜刀斎

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親子と門出

「華さん」

 

「お母様」

 

「よかったわ。元気そう、こちらの皆さんは?」

 

五十鈴の母が尋ぬて来た。

 

「同じクラスの武部さんと西住さん」

 

「「こんにちは」」

 

五十鈴に紹介されたみほと武部が五十鈴母に挨拶をする。そして、五十鈴母は、秋人の方を見る。

 

「華さん、そちらの方は?」

 

「はいこの人は、日向秋人さんと言ってわたくしの新しく出来たお友達です。日向さんは、ずっと海外で暮らしていたんですけど、最近こちらに引っ越して来られたので大洗の町を案内している所なんです」

 

「どうも日向秋人です」

 

五十鈴は、嘘にならない程度に秋人の事を母に紹介する。秋人はお辞儀をしながら挨拶をする。そして、秋山が、

 

「私はクラス違いますが、戦車道の授業で・・・」

 

「戦車道?」

 

と五十鈴母は、戦車道と言う単語に眉をひそめる。

 

「はい、今日試合だったんです!」

 

「華さん・・・・どういうこと?」

 

「お母様・・・」

 

(あ、これは地雷踏んだな)

 

五十鈴は気不味そうな顔になり、秋山は触れてはいけない事に触れてしまったと思い両手で口を塞ぐ。すると、五十鈴母は、五十鈴の手を取って臭いを嗅ぐ。

 

「鉄と油の臭い!あなた、もしや戦車道を!?」

 

五十鈴の手に残っている微かな鉄と油の臭いを嗅ぎ取り五十鈴に問いただす五十鈴母に五十鈴は、

 

「・・・はい」

 

と気まずそうに答える。五十鈴母の顔は更に険しくなり

 

「花を活ける繊細な手で、戦車に触れるなんて・・・・はうっ・・・・」

 

五十鈴母は、娘が戦車道をしている事を知るとあまりの興奮と混乱状態に白目を向いて失神して倒れてしまう。秋人は、急いで地面に倒れる寸前で五十鈴母を受け止める。

 

『お母(奥)様!』

 

五十鈴や新三郎は勿論武部達も突然の事に狼狽える。五十鈴母は、急いで自宅へと運ばれた。

 

 

◇五十鈴宅

倒れた五十鈴母を自宅に運んだ後、俺たちは客間で待っていた。秋人は、今までヨーロッパで暮らしていたので初めて見る日本家屋に慣れない正座をしながら当たりを見渡していた。みほは、掛け軸の下に飾ってある生け花を見ていた。

 

「すみません。私が口を滑らせたばっかりに・・・」

 

「そんな、わたくしが母にちゃんと話していなかったのがいけなかったんです」

 

秋山が申し訳なさそうに言うと五十鈴が首を横に振り秋山にそう言うがその顔は何やら思い詰めていた。あんな戦車道に否定的な母なら言いづらいだろう。そんな時、襖が開いて新三郎が入って来た。

 

「お嬢、奥様が目を覚まされました。お話があるそうです」

 

「わたくし、もう戻らないと・・・・」

 

と五十鈴は首を振ってそう言う。

 

「お嬢!」

 

「お母様には、申し訳ないけど・・・・」

 

「差し出がましい様ですが、お嬢のお気持ちちゃんと奥様にお伝えした方がよろしいと思います」

 

新三郎はそう言うが、五十鈴は悩んだ。このままにしておく訳にはいかないだろう。

 

「五十鈴さん、俺もそうした方がいいと思う。自分の気持ちを伝えるべきだ、親子なんだから話せば分かってもらえる筈だ。思いを伝えなきゃいつかきっと後悔する事になる」

 

「日向さん・・・・」

 

「わがまま言っていいんだ。子供が親に自分の進みたい道くらいわがまま言わないでどうする!」

 

「・・・・分かりました。お母様と話をして来ます」

 

そう言うと五十鈴は、客間を出ると母親の所へと向かう。

 

 

 

「良いのかな?」

 

「偵察よ!偵察!!」

 

俺達は、五十鈴と母親の部屋の襖の前にいる。正直これは、五十鈴家の家の問題で他人である俺達が首を突っ込んでいい問題では無いが五十鈴の事が心配でこっそり来てしまったのだ。襖を少しだけ開けて聞き耳を立てる。部屋の中では五十鈴と母親が正座して向かい合って話していた。

 

「申し訳ありません・・・・」

 

「如何してなの?華道が嫌になったの?」

 

「そんな事は・・・・」

 

「じゃあ、何か不満でも?」

 

「そうじゃないんです・・・・」

 

「だったら如何して!?」

 

「わたくし、活けても活けても、何が足りない様な気がするのです」

 

「そんな事ないわ、あなたの花は可憐で清楚、五十鈴流そのものよ」

 

「・・・・でも、わたくしは、もっと力強い花を活けたいです!」

 

と五十鈴は、自分の追い求める華道を母親に伝える。五十鈴さんには五十鈴さんなりに自分自身の華道について考えていた様だ。"力強い花"それが五十鈴さんの目指す目標の華道。すると、その言葉に五十鈴母は又もやショックを受ける。

 

「あぁ・・・」

 

「お母様!」

 

「素直で優しいあなたはどこへ行ってしまったの?これも、戦車道の所為なの?戦車なんて・・・・野蛮で不恰好で五月蝿いだけじゃない!戦車なんて・・・みんな鉄クズになってしまえばいいんだわ!」

 

と五十鈴母がそう言うと襖の前で聞いていた秋山が、

 

「鉄クズ!?」

 

「落ち着け秋山さん」

 

と五十鈴母の放った暴言に戦車を愛する秋山はカチンと来た。秋人は、秋山を落ち着かせる。自分の娘が戦車道で怪我などをしたりする事を心配しているんだろう。そして、五十鈴母のあの言葉には戦車に対する憎しみが感じる・・・恐らく花を活ける五十鈴さんを汚す憎悪の対象なのだろう。

 

「ごめんなさいお母様。でも、わたくし・・・・戦車道は辞めません!」

 

五十鈴は、母親に真剣な目でまっすぐ向き合ってそう宣言する。五十鈴さんの目からは断固とした決意と覚悟を感じる。

 

「分かりました。だったらもううちの敷居は跨がないで頂戴」

 

と五十鈴母は娘に勘当を言い渡した。正気か?実の子をそう簡単に親子の縁を切るのか?

 

「奥様!それは・・・」

 

「新三郎はお黙り!」

 

新三郎は、何か言おうとしたが五十鈴母に黙殺されてしまう。すると、今まで黙って聞いていた秋人は、突然襖を開けてる。

 

「ひ、日向さん!?」

 

「日向殿!?」

 

「日向さん!?」

 

そして、部屋の中に入って行き驚くみほ達。

 

「ちょ、ちょっと君!?」

 

秋人は、新三郎の制止を無視して五十鈴と五十鈴母の前に出る。

 

「日向さん・・・・?」

 

五十鈴と五十鈴母も突然の乱入者に驚いた。そして、秋人は五十鈴の隣に来ると腰を下ろし正座して五十鈴母と向き合う。

 

「五十鈴家の問題に突然の乱入した無作法をお詫びします。ですが、この場を借りて敢えて言わせて下さい。貴方にとって五十鈴さんは、戦車道をしていると言うだけで簡単に親子の縁を切ってしまう程度なんですか?自分の思い通りに成らなければそうやって平気で自分の娘を捨てるんですか?」

 

「そんな訳ない!華さんは・・・私のたった一人の娘、掛け替えの無い家族です!」

 

「だったら・・・・だったら何故敷居を跨ぐなと言ったんです。親なら子を信じてその思いに応えてあげるべきでしょ!!どうして五十鈴さんを信じてやれない!どうして五十鈴さんの思いに応えてあげようとしない!!五十鈴さんがどんな気持ちで貴女に思いを告げたのか・・・どうしてそんな残酷な事が出来るんですか!!」

 

「そ、それは・・・」

 

「貴女は、怖かっただけだよ。彼女が五十鈴流から離れていくのがな、ただそうやって逃げて大切な娘に『頑張れ』の一言も言えないで目を背けるのか!笑わせんな!一緒に戦おうとはしねえのか!?そうまでして五十鈴流の看板を守りたいですか?」

 

「わ、私は五十鈴流家元として・・・」

 

「確かに家元として伝統と仕来りを守るのは大切です。しかし、五十鈴さんは、貴女が守ろうとする五十鈴流華道に新たな蕾を開花させようとしてるんです!戦車道には、確かに危険はあり貴女が心配するのも分かります。ですが、それをやるかやらないかは五十鈴さん次第!五十鈴さんは、貴女の言いなりに動くだけの操り人形じゃないんだ!!一度口にした言葉は、もう元には戻せないんだ。言葉は刃物なんだ。使い方を間違えると厄介な凶器になる。言葉のすれ違いで、一生の大切な人を失う事だってあるんだ。一度すれ違ったら二度と会えなくなってしまうかもしれないだ。・・・・どうか、彼女を認めて下さい」

 

「・・・・・」

 

秋人は、五十鈴母に喝を入れた後畳に額を擦り付けて五十鈴母に嘆願する。五十鈴母も含めて周りは秋人に唖然とした。すると、諭された様に五十鈴母が口を開く。

 

「華さん、私は先程言った事を取り消すつもりはありません。・・・・ですが、もしそれでも貴女がうちの敷居を跨ぐと言うなら証明しなさい。そして、いつか華さんが納得のいく力強く可憐で清楚な花を活けることが出来たら帰って来なさい。私は、それまでずっと華さんの帰りを待っています」

 

「・・・・はい、お母様!いつか必ずお母様の納得するわたくし自身の華道をお母様に証明します!」

 

と母の言葉に五十鈴は、覚悟の籠った目で宣言する。勘当撤廃は上手くいかなかったが家族崩壊は免れた。後ろでは、みほ達が笑顔を浮かべ新三郎は涙を流していた。

 

「失礼します」

 

五十鈴が一礼して立ち上がり秋人も立ち上がろうとすると、

 

「貴方、お名前は?」

 

「日向、日向秋人です」

 

五十鈴母が秋人に名を聞いて来たので名乗ると五十鈴母は頭を下げて来た。

 

「ありがとうございます。貴方のお陰で私は、危うく大切な娘を失うところでした。華さんも、貴女の事を思ってくれる殿方に出会えた様で・・・・日向さん、どうか華さんを、娘をよろしくお願いします」

 

「分かりました」

 

そして俺と五十鈴は襖の前で待っていたみほ達の所に行った。

 

「帰りましょうか」

 

「お嬢ッ!」

 

「笑いなさい新三郎・・・これは新しい門出なんだから、わたくし、頑張るわ」

 

「はいっ!」

 

と五十鈴が言い新三郎は更に大泣きする。そんな五十鈴にみほが声を掛ける。

 

「五十鈴さん・・・」

 

「はい?」

 

「私も頑張る」

 

「・・・ふふっ」

 

とそう言うみほに五十鈴は笑みを浮かべる。

 

 

その後、玄関を出ると辺りはすっかり暗くなっていた。時計を見れば学園艦の出港時間に迫っていた。そして、俺達は、新三郎さんの引く人力車に5人で乗り港まで乗せて行ってもらった。しかも、5人だからかなり狭く大分詰めて乗っているので苦しい。

 

「いつまでも待っています!お嬢様ぁ〜!!」

 

新三郎は、涙を流しながら五人が乗る人力車を引っ張り走る。しかも、途中鼻水を垂らす。途中までは良かったのに、この人いまいち決まらないな・・・

 

「顔は良いんだけどな・・・・」

 

武部は小声でそう言う。秋人達は、そのまま人力車で学園艦が停泊する大洗港まで直行する。

 

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