ある時、サンダースフラッグ車のM4M1シャーマン中戦車の車長アリサが無線傍受機のチャンネルを回して、大洗の通信を拾った。
『全車〇九八号の道路を南進!ジャンクソンまで移動して!敵は、ジャンクソンを北上して来る筈なので通り過ぎた所を左右から狙って!』
『了解です!』
『こっちも了解!』
とみほの指示を出し、チーム皆が返答する。無線内容を聞いたアリサは、ニヤリとほくそ笑みながら隊長のケイに連絡する。
「目標は、ジャンクソン左右に伏せてるわ。囮を北上させて本隊はその左右から包囲!」
『OK!OK!でも何でそんな事まで分かっちゃうわけ?』
「女の感です」
『アハハハッ!それは頼もしい!!』
とアリサが伝えた情報が無線傍受で得た情報だと知らずに笑うケイ。ケイは、直ぐにアリサから伝えられた地点に戦車を向かわせる。
その頃、少し高い丘に到着した大洗チーム。ティーゲル改のキューポラから身体を出した秋人は、双眼鏡で辺りを見渡しシャーマンを捕捉する。
「北から3両、南から3両、そして西からは2両か。計画通りだ。みほさんそろそろ始めようか?」
『うん・・・よし、囲まれた!!全車後退!!』
そうみほが支持すると茂みに隠れていた八九式が後ろをロープで括り付けている丸太を引き摺りながら全速力で走り出して土煙を上げる。土煙を上げることによって大洗のチームがそこに居ると思わせる作戦だ。土煙を見たシャーマン2両が土煙が上がっている方へと向かう。
『見つかった!みんなバラバラになって退避!38(t)は、C1024R地点に隠れてください!』
一方、みほの通信を傍受しているアリサは、内容を聞くとニヤリとほくそ笑み
「38(t)、敵のフラッグ車・・・・貰った!チャーリー、ドック、C1024R地点に急行!見つけ次第攻撃!」
『はい!』
とアリサの指示を受けて、他のシャーマンの車長が返事を返す。そして、指示を受けた場所に到着したシャーマン2両は砲塔を旋回させてフラッグ車の38(t)を探す。すると、シャーマンの砲手が茂みで何かを見つけた。スコープでよく見るとそれは、お目当ての38(t)などではなくカバさんチームのⅢ号突撃砲の75mm砲口がこちらに狙いを定めていたのだ。
「Jesus!」
「撃てぇぇぇい!」
とエルヴィンの号令と共に三突が砲撃を開始し、同時に丘に潜んでいたM3とⅣ号も砲撃を開始する。そのうちの一発がシャーマンに命中し撃破判定の白旗が上がる。
「撤退しろ!!撤退!!」
ロックチームが撃破された事で、チャーリーチームの車長がそう言ってシャーマンは一目散に撤退する。
「逃げちゃうよ!」
「撃て!撃て!」
「えい!」
逃げるシャーマンにM3は、逃がさんとばかりに砲撃するが外れた。このまま逃げられると思われたが、そのシャーマンに照準を定めようとしている戦車が居た。それは、秋人達のティーゲル改だった。
「綾乃、敵方角12時30分!距離300m!良、徹甲弾装填!」
「装填完了!」
「方角よし!」
「撃て!」
発射された砲弾は、高速でシャーマンに向かって飛んでいき、砲弾は戦車にとって心臓とも言うべきエンジンに命中した。大きな爆発を起こしたシャーマンから白旗が上がる。
「命中効果あり!」
秋人は、スコープでシャーマンを撃破した事を確認する。大洗はサンダースの戦車10両中2両を撃破した。
「ロックチーム行動不能!」
「こちらチャーリー、エンジンをやられて行動不能!」
「ええっ!?」
「何!?」
「ホワーイ!?」
この知らせを受けたアリサ、ナオミ、ケイの3人は驚きの声を上げる。これこそご大洗が無線傍受を逆手に取った作戦なのだ。
「無線じゃなくて携帯で連絡してたんだもん」
「やりましたわね」
「ええ」
実は、無線での会話は偽の指示であり、本物の指示は武部がチーム全員に携帯から指示を出していたのだ。まさにミイラ取りがミイラになるだな。無線が傍受されるのならそれ以外の通信機器を使えばいい単純な話だ。
「大洗女子が2両撃破!?」
「その様よね」
モニターで観戦していた黒森峰は、逸見エリカは大洗の2両撃破に唖然として、西住まほは、淡々としていた。
「さあ、面白くなってきたわね」
とケイは驚きつつもケイの勝負魂に火が付いた様だ。
一方、サンダースの無線傍受を逆手に取ってシャーマン2両を撃破した大洗のチームは、
「西住殿、日向殿、やりましたね!!」
「まさかわたくし達が先に相手を出来はできるなんて」
と秋山と五十鈴がそう言う。
「うん、上手くいったね秋人さん」
「あぁ、みほさんも俺と同じ事を考えていたとはな。この作戦でシャーマン2両を撃破できた事は大きいが、この試合は幾ら多く敵戦車を倒してもフラッグ車を倒さない限り意味がない」
とみほがⅣ号の隣に鎮座するティーゲル改の秋人に上手くいった事に笑顔でそう言い秋人も微笑んでそう言う。
「でも、日向さんの言う通りこの大会ってフラッグ車を叩いた方が勝ちなんでしょ?」
「次はどうする?」
「うん、次は・・・」
大洗が次の作戦を開始しようとしている頃、竹林の中にシャーマン1両が止まっておりその中ではアリサがこりもせずに未だ無線傍受をしていた。
「良い気になるなよ・・・」
アリサは、そう言いながら傍受機のダイヤルを回していく。そして、またみほの受信を傍受して聞き耳を立てる。
『全車、128高地に集合して下さい。ファイアフライが居る限りこちらに勝ち目はありません。危険ではありますが128高地に陣取って上からファイアフライを一気に叩きます!』
「ク・・・ク、ク、ク、アハハハ!!捨て身の作戦に出たわね!!でも丘に上がったら良い標的になるだけよ」
とみほの無線を聞くとアリサは、突然高笑いをして同車しているシャーマンの乗員が驚く。そして、アリサは直ぐにケイに連絡する。
「128高地に向かって下さい!」
「どう言うこと?」
「敵の全車両が集まる模様です」
「ちょっとアリサ、それ本当!?どうして分かっちゃうわけ?」
とアリサは、ケイに128高地に向かう様進言するが、ケイは勘と言っても余りにも具体的過ぎる内容にケイはアリサに疑いの声を掛ける。
「私の情報は確実です!」
と自信満々に言うアリサにケイは目を見開くそして、
「OK!全車、Go ahead!」
そう言ってケイは通信で他のシャーマンに128高地に向かう様に指示する。サンダースのシャーマン軍団はケイの乗るシャーマンを先頭に128高地へと向かって草原を駆け抜ける。