そして、大洗女子に追われているアリサのM4M1の車内では、
「このタフなシャーマンがやられる訳が無いわ!」
砲弾が次々とシャーマンの近くに着弾する中、アリサはそう言う。
「何せ5万両も作られた大ベストセラーよ!!丈夫で壊れにくいし、おまけに居住性も高い!!バカでも乗れるくらい操縦が簡単で、バカでも扱えるマニュアル付きよ!!」
とアリサは狂ったかのように自身が乗るシャーマンを称賛する。しかし、今そんな事言ったてどうしようも無いしそれどころでは無いはずだ。
「お言葉ですが自慢になってません!!」
「うるさいわよ!!」
とツッコミを入れる砲手の子にアリサは怒鳴り散らす。
一方、黒森峰の観客席では、
「ある意味予想外の展開ですね」
「・・・・・・・・」
とエリカは、大洗の優位に意外と言わんばりで、隣のまほは何も言わずに黙ってモニターを見ていた。
「なんであんなしょぼくれた戦車に追い回される訳!?其処、右!私達の学校はあんた達とは格が違うのよ!!撃て!!」
と言って砲弾が放たれるが見事に交わされた。
「何よ、その戦車!小さ過ぎて的にもならないじゃ無い!当たればイチコロなのに!!修正、右3度!!装填急いで!!」
とアリサはあれやこれやと同乗者の子達に指示し、装填手の子は精神的に参ったのか溜息を吐きながら砲弾を取る。
「全くなんなのあの子達!?力もない癖にこんな所出て来て、どうせ直ぐ廃校になる癖に!!さっさと潰れちゃえばいいのよ!!」
と喚き散らすアリサに同乗者の子達は、一同溜息を漏らし半ば諦め状態だった。すると、フラッグ車のシャーマンを追いかけるみほと秋人達は、M4M1の砲塔のハッチからアリサが自分達に向かって何か叫んでいるのが見えた。
「何か喚きながら逃げてません?」
「目標との距離詰まって来てます!!60秒後攻撃を再開予定、順次発砲を許可します!!前方に上り坂、迂回しながら目標に接近して下さい」
「分かってる」
とみほは、無線でそう指示する。
「結局彼女は、何がしたかったんだ?」
「さぁ?」
「綾乃ここからは、任意で撃て!」
「わかったわ!」
キューポラと操縦手用の窓から前方を見ていた秋人とミーナは、アリサの行動が理解不能だったようだ。秋人は、砲撃のタイミングは綾乃に任せる事にした。
「柚子遅れるな!!」
「分かってるよ桃ちゃん!」
「頑張れ〜」
と河嶋は操縦士の柚子にそう言い角谷は、相変わらず干し芋を食べて軽く応援すると言ういつものやりとりだった。
一方、M4M1の車内では、
「何でタカシはあの子が好きなの?どうして私の気持ちに気付かないのよぉーっ!!」
と最早アリサは精神崩壊を引き起こし、頭を抱えながら意味不明な事を口走っていた。車内では、同乗者の子達は諦めムードと化していた。そんな時、試合会場の草原一帯に凄まじい爆音が響き渡る。明らかに大洗のものとは違う。
「今のは・・・・」
「ファイアフライ17ポンド砲です!!」
「なんか凄い音だったよ!」
みほと秋山は砲塔ハッチから顔を出して辺りを見渡すと遠くの小高い丘に数で劣る大洗戦車隊にとって一番遭遇したくない相手が居た。シャーマン・ファイアフライは、M4シャーマンを基にイギリスが独自に発展させたモデルだ。前面の装甲は50mガソリンエンジンは425馬力を有するだが、なんと言っても脅威なのが130mmの装甲を貫く長砲身の主砲の17ポンド砲(76.2mm)で砲弾の射出速度が上がるそうデザインされ3000m近い最大射程を誇る。長い鼻とも呼ばれ、ティーガーの最も厚い100mmの前面装甲ですら撃ち抜く事ができるのだ。
「どうやらサンダース御一行様のご到着かあのファイアフライの主砲の17ポンド砲厄介だな」
秋人は、キューポラから顔を出して双眼鏡で小高い丘の上を見てそう言う。
「5両だけ・・・」
小高い丘の上に砲口から白煙を上げるファイアフライとシャーマン4両がこっちに向かって来ていた。
「距離約5000m」
「ファイアフライの有効射程は3000m、まだ大丈夫です!」
とみほは、無線でチーム全員に言うがフラッグ車がサンダース本体と合流を果たした事によりこれは大洗は苦戦を強いられることになる。
「来たぁぁぁぁーーっ!!」
と味方が来た事を知るや否や先までの自棄に成っていたアリサとは打って変わって歓喜の声を上げた。
「今まで散々やってくれたわね!やられた分は百倍返しで反撃よ!」
調子を取り戻したアリサは、大洗戦車への反撃を命じM4M1は砲撃を開始する。後方からもサンダースの一団に砲撃され嵐の様に砲弾が降り注ぐ。
「どうするみぽりん?」
と武部が声を上げるとみほは、他のチームへの指示を出す。
「ウサギさん、アヒルさんは、後方をお願いします!カバさんとワシさんチームそして我々あんこうチームは引き続きフラッグ車を攻撃します!」
その指示を受けて、フラッグ車の38(t)を中心に後ろを八九式とM3が、左右を三突とⅣ号がそして、前方をティーガー改が守る輪形陣で進む。
「今度は、逃げないから!」
「「「「うん!」」」」
ウサギさんチームのM3中戦車の車長の澤梓がそう言うと、他のウサギさんチームのメンバーも一斉に返事をする。
「この状況は、アラスの戦いに似ている!」
「いや、甲州勝沼の戦いだ」
「天王寺の戦いだろう」
「「「それだ!!」」」
とカバさんチームの三号突撃砲の歴女達は、今の現状を自分の推しの歴史上での戦いの名前で例える。
「ここで負ける訳にはいかんのだ!」
とそう言って38(t)の砲手の河嶋が砲塔を後ろに旋回させて追って来るシャーマンに向けて発砲するが砲弾は大きく逸れて外れた。
「桃ちゃん当たってない」
「うるさい!!」
小山は、苦笑いしながらツッコミを入れるが河嶋に怒鳴り返される。
「壮絶な撃ち合いだね〜」
と干し芋を頬張りながら呑気に言う角谷。
一方、小高い丘の上の観客席エリアでは試合を観戦している聖グロリアーナ二人ダージリンとオレンジペコは、
「大洗女子ピンチですね?やはりティーガーを有していてもシャーマン多数相手では厳しかったですかね」
「所で、ペコは知ってるかしら?サンドイッチはね、パンよりも中のキュウリが一番美味しいの」
「はい?それは、どう言う・・・・?」
「挟まれた方がいい味出すのよ。勝負はまだついていないわ。今は、ピンチでもみほさんなら切り抜けて見せるわ。それに彼ならきっと大洗を勝利へと導いてくれるはずよ」
とモニターの大画面に映るキューポラから顔を出した秋人の姿が映し出されていた。それを見たペコは、
「成る程、そう言う事ですか。ダージリン様のハートを射抜いた殿方ならきっと勝ちますもんね」
「なああああっ!何を言うの、ペコ!」
とオレンジペコが言うと、ダージリンはぼん!と、音がしそうなくらい、ダージリンが顔を真っ赤にする。ペコは、またひとり笑みをもらしていた。
「撃てぇーッ!」
「「「アタック!!」」」
とアヒルさんチームの八九式が砲塔を後ろに旋回させて追って来るシャーマンに向けて砲撃した直後
「「「「きゃぁああああーっ!!」」」」
八九式の後部にファイアフライの放った17ポンド砲弾が命中 エンジンから黒煙を上げて徐々にスピードを落として行き最終的に岩に衝突し停車する。
「あっ!?」
みほが気付いた時には時既に遅く八九式から白旗が上がっていた。
「アヒルチーム怪我人は!?」
『『『『大丈夫です!!』』』』
『すみません、戦闘不能です!』
と通信から皆無事な事が確認されて安堵するも、それも一瞬の束の間だった。ファイアフライの砲手ナオミが次の標的をウサギさんチームのM3中戦車に合わせる。ナオミは、表情を変える事なくガムを噛みながらスコープを覗いて照準を八九式と同じくM3中戦車のエンジン部分に狙いを定め狙いをつけるとナオミは引き金を引いて砲弾を発射する。放たれた砲弾はナオミの狙い通りM3のエンジンに命中して大きな爆発を起こしM3はスピードを落として行きM3は、砲弾で出来た穴に嵌った。
『すみません、鼻が長いのにやられました!』
「ファイアフライですね・・・・」
「M3も・・・・」
2両もファイアフライの餌食に成り、残る戦車は4両となった。
「大洗が負けるのも、もう時間の問題ですね。まぁ、無名校にしてはサンダース相手によく頑張ったと言うところでしょうね」
「・・・・まだ、大洗が負けると決まった訳じゃない。勝負の結果は誰にも分からないんだ」
「!?・・・はい」
黒森峰の観客席エリアでは、エリカがそう言うと、まほが淡々とした表情でそう言うと少し驚いた顔をしてモニターに向き直る。
「八九式に続いてM3もやられたか、あのファイアフライの砲手中々いい腕をしているじゃないか」
「秋人、敵を誉めている場合じゃないでしょ!こっちが先にヤンキーの戦車を全滅させるかフラッグ車を叩かない限り勝てないのよ!」
「わかってるよ」
とナオミの腕を称賛する秋人に、ミーナがそう言う。八九式、M3と相次いで撃破されて行きサンダースに攻撃が激しさを増して行く中、大洗戦車隊では、
「もうダメなの?」
と武部の言葉に車内は意気消沈と静まり返り、一方のアリサは
「ほ〜ら見なさい!あんた達なんか蟻よ蟻!!呆気なく象に踏み潰されるねぇ!!所詮蟻が象に敵うわけないのよ!!そもそも無名校が私達サンダースに挑む事自体間違っているのよ!!」
とアリサは味方が助けに来たからってすっかり調子に乗ってそう言う。そして、大洗の皆はこの状況に諦めの雰囲気が漂っていた。カバさんチームでは、
「弁慶の立ち往生の様だ・・・」
「最早これまで・・・」
「蟻の巣に、されてボコボコ、さようなら」
「辞世の句を読むな!!」
すっかり諦めのムードが広がっていた。フラッグ車の38(t)の車内では、
「もう終わりだ・・・・」
と河嶋が絶望した表情そう言う。38(t)以外にも、
『ダメェーッ!!近づいて来た!!』
『追いつかれるぞ!』
『ダメだぁ!!やられたぁー!!』
と各車から通信で諦めの声が響き渡りチームの士気が落ちて行く。
(どうしたら・・・・もうここまでなの・・・・打つ手はないの・・・)
Ⅳ号では、みほが無意識に震えている左手を右手で握りそう考えていると、
『まだ終わってねぇぇぇ!!』
と一人の声が通信から入って来た。それは、秋人の声だ。