ガールズ&パンツァー 蘇る宿命の砲火   作:人斬り抜刀斎

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ノリと勢いは負けない!

来る二回戦に向けて大洗女子が気合いを入れて練習に励む中、二回戦の対戦校であるここアンツィオ高校では、スペイン階段風階段"通称"スペインぽい階段の前でアンツィオ高校の戦車道チームメンバーが集合していた。

 

「全員、気を付け!」

 

その声の主の女子生徒の掛け声で、チームメンバー全員が一斉に気を付けをして、自分達の目の前の階段の上に立つドリルツインテールの髪型に黒いリボンを付け黒いマントを付けた女生徒統帥アンチョビこと安斎千代美に注目する。アンチョビは手にしていた鞭を掲げて

 

「きっと奴等は言っている!ノリと勢いだけはある調子に乗ると手強い!」

 

アンチョビが高らかにそう言うとチームメンバー全員から歓喜の声があがる。

 

「おおおっー強いって!」

 

「照れるな〜」

 

「でも、姐さん。だけってどう言う意味すか?」

 

周りの生徒が喜びの声を出す中で一人の生徒が疑問の声をあげた。

 

「つまり、こう言う事だ。ノリと勢い以外は何も無い。調子が無ければ総崩れ」

 

とアンチョビがそう言うと先まで舞い上がっていた雰囲気から一変してメンバー全員が青筋浮かべて怒り出した。

 

「なんだと〜!!」

 

「舐めやがって!!」

 

「言わせといて良いんすか!!」

 

「戦車でカチコミ行きましょ!!」

 

と口々にそう言うっていると、副官と思わしき金髪の生徒カルパッチョが

 

「皆、落ち着いて。実際言われた訳じゃないから」

 

そう言い、彼女と反対方向にいる黒髪ショートヘアのくせっ毛に左のもみあげを三つ編みにした特徴的な生徒ペパロニが

 

「あくまで、統帥(ドゥーチェ)による冷静な分析だ」

 

そう副官2人がそう言うとアンチョビが頷き

 

「そう、私の想像だ」

 

「なんだ〜」

 

「あ〜びっくりした」

 

アンチョビがそう言うとメンバー全員が安堵し胸を撫で下ろす。

 

「いいか、お前達。根も歯もない噂にいちいち惑わされるな。私達は、あの防衛戦術に長けたマジノ女学園に勝ったんだぞ!」

 

「おおおーそうだった!」

 

そう言うってアンチョビが一回戦での勝利を思い返させ皆嬉しそうに言うと副官二人が

 

「苦戦しましたけどね・・・・」

 

「勝ちは勝ちだ」

 

「ノリと勢いは何も悪い意味だけじゃない。このノリと勢いを二回戦に持って行くぞ!次は、あの西住流率いる大洗女子だ!」

 

アンチョビが高らかにそう言うとメンバー全員の反応は微々たるものだった。

 

「西住流って何かやばくないすか?」

 

「それに、大洗に強力な助っ人が入ったって話すよ」

 

「勝てる気しないす」

 

口々に不安な声が出る中で、アンチョビは

 

「心配するな、いや、ちょっとしろ。何の為に三度のおやつを二度にして、コツコツ倹約して貯金したと思っている?」

 

「何ででしたけ?」

 

「さぁ?」

 

「前に話しただろ!?それは、秘密兵器を買う為だ!!」

 

『おおおっー!!』

 

秘密兵器と聞いてメンバー全員が歓声を上げて、

 

「秘密兵器と諸君の持っているノリと勢い、そして少しの考える頭があれば必ず我ら悲願の三回戦出場を果たせるだろう!!この勝利の先に我等の悲願である優勝を掴み取る!」

 

とアンチョビはそう言って鞭を緑色のシートに向けてメンバー全員が振り向くと、そこには緑色のシートを両端を持っていたペパロニとカルパッチョがシートを取り払う態勢に入っていた。

 

「みんな驚け!これが我がアンツィオ校の必殺秘密兵器だ・・・・」

 

とアンチョビが言いかけたその時、学校の大時計の鐘が鳴り響く。これはお昼休みを告げるチャイムだった。

 

「昼御飯!ご飯、ご飯!」

 

「パスタ!パスタ!」

 

「あ、こら!お前らそれでいいのか!?」

 

チャイムが鳴った途端、その場にいたメンバー全員が校舎へと走り出しって行きアンチョビの静止も聞かず

 

「今の季節食堂のランチ売り切れ早いすよ!!」

 

「姐さん達も早く行った方がいいすよ!」

 

遂には、アンチョビと副官のペパロニとカルパッチョだけが残される事に

 

「はぁ〜ま、自分の気持ちに素直な子が多いのがこの学校のいい所なんだけどな・・・・」

 

そう呟いて肩を落とすアンチョビ。

 

「みんなのあのやる気が少しでも戦車道に回して欲しいものだなぁ・・・仕方ない秘密兵器のお披露目はまた次回にするとしよう・・・・ペパロニ、カルパッチョ私達も学食行こう・・・」

 

「は、はいっす。アンチョビ姐さん」

 

「元気出して下さい。総帥(ドゥーチェ)今日のランチメニューは私が奢りますから」

 

「あぁ、すまないカルパッチョ」

 

とペパロニとカルパッチョに慰められながらアンチョビは、食堂へと向かっていく。

 

「そう言えばアンチョビ姐さん、知ってましたか?」

 

「何がだ?」

 

「最近何か観光客が急に増えて来て、屋台の売り上げが上がったんすよ」

 

「そうなのか?うちの学校、何か面白い物とかあったか?」

 

「特にないっすよね〜」

 

「そうですね、何の特色もない普通の学校ですから」

 

とアンツィオ高校の生徒達にはイマイチかも知れないが、アンツィオ高校の学園祭施設艦には、先も述べた通りスペイン階段風階段、三神変形合体教会、トレヴィーナの泉、ポンペイの巨大宮殿の柱、パンテオン、コロッセオなど日本に居ながらイタリア・ローマの建築物を観れると言う事で観光客からの人気が高く、特にデートスポットと言う事でカップルにも人気が高い。学園長曰く【ローマよりもローマ】との事。また【中学生が進学したい高校No.1】にもなっている。

またイタリア風と言うだけあって美食に関しても一切の妥協も許さず、宴会では豪勢に振る舞う。

 

「まぁ、食事にはちょっとうるさいけど・・・・そっちもなぁ?」

 

「ですよね〜、うちに来る観光の人達の大半はカップルみたいっすけど」

 

「何!?そうなのか!!・・・・カップルだと」

 

「ドゥーチェ!?」

 

「あ、いや、すまん。そうだ、この機会にカップル層向けの新商品を開発して売り上げアップを目指そう!」

 

とアンチョビが提案する。

 

「良いっすね!さすが、アンチョビ姐さん!・・・でもうちら彼氏なんていないから恋人向けの商品って何か分かんないっすね」

 

「まぁ、女子校ですから・・・」

 

「安心しろ、実はこの前クラスメイトからカップルに関する雑誌を借りてはそれを参考にして行く!」

 

「さすがっす!アンチョビ姐さん」

 

そう言いながら3人は食堂へと直行して行く。

 

(いつか私にも素敵な相手が出来るといいな)

 

とアンチョビは顔を赤らめながら言う。

 

大洗女子学園生徒会室では、みほ達や生徒会チームによる、アンツィオ高校との対策会議が開かれている。

 

「河嶋、次のステージどこ?」

 

「はっ!アンツィオとの対戦は、山岳と荒地ステージに決まりました」

 

「はーい!質問、アンツィオってどんな学校?」

 

「あぁ〜、確か創始者がイタリア人だった筈」

 

と角谷がざっくりと説明する。

 

「イタリアの文化を日本に伝えようとしたイタリア風の学校だ。だから戦車道もイタリアの戦車が中心。先の一回戦で使用した車両は、CV33とセモヴェンテM41」

 

と河嶋がホワイトボードに貼られたアンツィオ高校のCV33とセモヴェンテM41のイラストの説明をする。

 

CV33は、1933年にイギリスのガーデンロイドタンケッテを基にイタリアで開発された豆戦車。全長3.17m、全幅1.4m、全高1.3m、重量3t、乗員2名。エンジンは、フィアットSPA直列4気筒ガソリンエンジンを搭載最大速度42km/hと機動性に優れていた。装甲は溶接接合で、前面14mm、側面8.5mm、上面6mm。武装はフィアットレベリM1935重機関銃又は、ブレダM38車載機関銃2挺を装備。第二次世界大戦でイタリアが保有する殆どの戦車がこのCV33だった。イギリス軍との戦闘では無力でただやられるだけで余りにやられまくるのでイタリア兵達はCV33を『走る棺桶』などと揶揄した。一度乗ったら二度と生きては戻れないと言う意味で付けられた。

 

セモヴェンテM41は、第二次世界大戦のイタリアで開発された突撃砲で、先に開発されたM13/40・M14/41中戦車の車体を流用して造られた車両である。全長4.92mm、全幅2.2mm、全高1.85mm、重量14.4t、乗員3名。エンジンは、フィアットSPAディーゼルエンジンを搭載し時速32km/h。装甲は、前面50mm、側面25mm、天板5〜26mm。武装は18口径75mm砲と副武装ブレダM38機関銃を搭載。

 

「CV33ってわたくし大好きです!小さくて可愛くてお花を活ける花器にピッタリです!」

 

幾ら豆戦車と言っても本当に花器にしたりしないよね?

 

「幾らなんでも花器には大きすぎない?ひまわりでも活けるの?」

 

「新型戦車が入ったと聞いたが?」

 

「どんなの?」

 

「ちょっとわからないです」

 

「一回戦には出なかったもんね」

 

「だからこその秘密兵器か・・・・。ま、いっか。そのうち分かるし」

 

と角谷がそう言うと

 

「え?何で分かるの?」

 

と武部が角谷に尋ねようとしたと同時に生徒会室の扉が勢い良く開いた。

 

「秋山優花里、ただいま戻りました!」

 

「ただいま」

 

そこにはコンビニの制服を着た秋山と秋人が入って来た。

 

「おかえりー」

 

「おお、待っていたぞ」

 

「お疲れ様〜」

 

生徒会チームは、待ってましたと言わんばかりの態度で出迎え

 

「その格好!?」

 

「優花里さん、秋人さんひょっとしてまた・・・」

 

武部とみほは、秋山達のコンビニの制服を見て唖然とする。

 

「はい!」

 

「まぁね」

 

と秋山はポケットからビデオカメラのメモリーカードを取り出す。

 


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