あの後、秋山は一足先にコロッセオに向かって行き、秋人はのんびり行く事にした目的の場所はわかっていたので焦る必要はなかった。
(秋山さんも、先行ったし俺も少しペースを上げて歩いた方がいいかな?)
そんな事を考えそうしてのんびり歩いていた。
一方、秋人から少し離れた後方では、
(いかん、つい恋愛小説を読み耽って遅くなってしまった。早くコロッセオに行かないと!今日は、漸く買えた秘密兵器のお披露目だ。遅れてはドゥーチェとしてみんなに示しがつかなかい)
とそう言っておさげにラウンド眼鏡の少女がコロッセオに向かって無我夢中で走っているとドーンと少女に衝撃が走り尻もちをついた。
「大丈夫か、怪我はないか?すまないよそ見をしていた」
(どうやら誰かとぶつかったらしい。しかし、この声男か?なんで女子校に男が、観光客か?)
するとぶつかった相手は手を差し伸べできたので彼女は手を借りて立ち上がる。
「痛っっ、大丈夫だ。こちこそすまない。急いでいたものだから・・・・あれっ?」
「どうかしたか?」
「め、眼鏡を落として・・・」
彼女がおどおどして眼鏡を探していると
「はい、これ」
と秋人は、そばに落ちていた彼女の眼鏡を拾って手渡す。
「ありがとう」
と彼女は、お礼を言って眼鏡をかけると、
「あ、レンズが割れてる。どうしよう・・・」
「落とした時に割れてしまったんだな。すまない、その眼鏡の修理代は俺が出す」
彼女の眼鏡がぶつかって地面に落ちた拍子に片目レンズにヒビが入ってしまった。それを見て秋人は彼女に頭を下げて謝る。
「そんな、あんたが悪い訳じゃ・・・」
「いや、俺にも責任がある。弁償させてくれ」
と秋人は、そういっそう言って彼女に眼鏡の修理代を手渡す。彼女は、何度も受け取りを拒否しようとしていたが最終的に受け取る事にした。
「ところで、あんた急いでんだろ?」
「あっ、そうだった。だが・・・・」
と急いでいたのを思い出した彼女だったが、片目レンズだけとは言え視界が上手く効かないだろう。このまま放っておく訳にもいかない。
「どこに行くんつもりだったんだ?」
「え、コロッセオだけど・・・?」
すると、秋人は彼女に手を差し出して
「目が見えなくて危ないだろ?コロッセオに行くんだろ?ちょうど俺もコロッセオの所に用があるからエスコートしてやるよ」
「だ、だが・・・・」
突然の事に彼女は、手を出す事に少し戸惑ってしまうが、目が見えない事は事実であり、このままこうしている訳にいかないので彼女は秋人の手を握る。
「行くぞ」
「あっ」
秋人は、先頭に立って彼女の手を引いてコロッセオに向かって歩いて行く。
(これは、まるで恋愛小説みたいなシチュエーションではないか・・・・)
(彼女の顔が赤いな、熱でもあるのか?)
そして、彼女は顔を赤くしながらしばらく秋人にエスコートされながら対抗する歩行者や障害物を避け歩いてコロッセオの所までやって来た。コロッセオの前まで来ると彼女が、『ここで大丈夫だ』と言って来た。
「本当にここでいいのか?」
「ああ、ありがとう。ここまで来ればもう大丈夫だ」
「いいって、困ったときはお互い様だ。じゃあ、俺はこれで失礼するよ」
とそう言って、秋人は行こうとしていた。
「あっ、待って!あなたの名前は・・・」
「名乗るほどのものじゃない。ただの通りすがりの観光客さ」
「あっ、ちょっと・・・」
と秋人は、それだけ言って彼女の静止も聞かずに行ってしまった。
「行ってしまった・・・・何だか胸がまだドキドキするな、これが恋という奴なのか?いかんいかん、早く行かなくては(また、彼に会うことがあったらちゃんと礼をしたいな)」
高鳴る鼓動を振り払い彼女は更衣室へと向かいアンツィオ校の制服から軍服に着替え眼鏡を外してコンタクトにしおさげだった髪を所々乱れた髪をブラシで整えるとツイン縦巻きロールにして黒リボンで留める。
「さぁ、ドゥーチェアンチョビ!出陣だ!」
彼女こそ、衰退したアンツィオ高校戦車道を再建する為に愛知県の学校からスカウトされ、履修生も殆ど残っていないなか、現在のチームを作り上げたアンツィオ高校の隊長アンチョビだった。アンチョビが更衣室を出るとそこには、副官のカルパッチョが出迎える。
「ドゥーチェアンチョビ、いよいよ3日後に大洗女子との対戦ですね」
「皆の士気はどうだ?カルパッチョ」
「みんなノリと勢いがあれば新参者には負けないと息巻いてます」
「ふん、それでいい!戦車道西住流の家元西住みほ、戦車道に背を向けたお前に我々は絶対に負けないぞ」
とそう言ってコロッセオの中央広場へと向かう二人。
一方の秋人は、秋山と合流を果たして共にコロッセオの中へと入って行く。
「うわぁ、コロッセオの中広いですね」
秋人と秋山がコロッセオの中に入るとコロッセオの中央にはシートに隠された秘密兵器であろう戦車の周りにアンツィオ校の生徒がいて
「ドゥーチェはまだ〜?」
「寝坊かな?」
「まさかカチコミ・・・」
アンツィオの生徒達が隊長がいない事に騒ついていると
「よーし!お前達静まれー!ドゥーチェに注目だー!」
「ドゥーチェ!」
「ドゥーチェいつの間に」
とシートに隠された戦車の横に軍服を着用した薄緑色のツイン縦巻きロールの少女が現れた。彼女がアンツィオ校の隊長らしい、しかし彼女どこかで見た様な顔だな?彼女の左右には金髪の子と先屋台でパスタを作って秋人達にP40のことを自慢していた黒髪の子がいた。
「全員揃いましたドゥーチェ!」
「ドゥーチェに注目!」
「よろしい!では、本日の議題を発表する。みんなも知っての通りだが、我らの悲願である三回戦出場為に、大洗との二回戦に向け痛切な思いでコツコツと貯金してやっとの思いで秘密兵器を買った。みんな見ろこれが、我々の秘密兵器だ」
そう言うと掛けられていたシートが下されて秘密兵器の姿を現した。装甲がリベット溶接の古めかしいが、被弾経始が成され長砲身の戦車だった。
「おお!!P40の本物!初めて見ました!」
「あのP40戦車の傾斜装甲に長砲身、どこかT-34に似ているな。この戦車もパンターと同じT-34を参考にした戦車だな」
アンツィオの秘密兵器のP40がお披露目された。イタリアで、1940年に開発が始まったP40型重戦車の試作は、ソビエト軍のT-34の影響を受けて大幅にデザインを変更し、国産で始めて傾斜装甲を採用、厚さ50mmの装甲と強力な34口径75mm砲を搭載し、イタリア最強の戦車として誕生した。しかしエンジン生産の遅延から1943年9月の休戦まで、わずか21両が生産されただけだった。しかし、イタリア社会共和国ファシスト政権下で生産が続けられて、ドイツ国防軍にも配備され連合軍と戦火を交えた。アンチョビは、戦車の砲塔の上に登り鞭を掲げポーズをとる。秋山は、アンツィオ隊長アンチョビの前で堂々とビデオ撮影をする。秋山や秋人もアンツィオの戦車の情報収集にここぞとばかりシャッターを押していた。
「まぁ、これさえあれば大洗など、軽く一捻りだ」
『ドゥーチェ!!』
アンチョビは、そう言ってカメラを向けているアンツィオ校の生徒に向かってピースをする。
「現場は大変な盛り上がりです」
「あぁ、そうだな」
「「「ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!」」」
そして、ドゥーチェコールが始まりよりアンツィオの生徒達は一層盛り上がって行く。
「以上、秋山優花里と日向殿がお送りしました」
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とエンドロールが入り、角谷が呑気に干し芋を食べていると
「ちょっと強そうですね」
「ちょっとじゃないだろ」
と五十鈴がそう言うと河嶋がツッコミを入れる。
「私、P40初めて見ました」
「それは、俺も同じ事だ。東部戦線で数々の戦車を見て来たがイタリア戦車に至っては皆無だ」
みほと秋人がそう言う。P40は中々稀な戦車でみほや独ソ戦を戦った秋人でも実物を見た事がない。
「こりゃ、もう少しガッツリ考えないとダメだね〜」
と角谷が呑気に言う。当時、P40を間近で見たドイツ国防軍はほぼ皆無、全容はベールに包まれている。二回戦までにP40の情報収集に全力を注いでいく事になる。