準決勝のプラウダ戦まで後2日後に迫る中、戦車格納庫では以前探索で発見した「ルノーB1 bis』が自動車部によってレストアが終了して置かれていた。
「戻ったわね、私達のティーゲルに」
「この白塗りのティーゲルこそが、俺たちの象徴だからな」
と秋人達は自分達の乗るティーガー改を見てそう言う。ティーガー改は、それまでずっとダークイエローや三色迷彩をしていたが次のプラウダ戦は雪上との事でそれに合わせて純白に塗装され「ホワイトタイガー』の姿へと戻った。車体前面と砲塔側面に予備履帯が追加されていた。
みほ達が乗るⅣ号戦車も、短砲身の主砲から先の探索で発見した『75mm kwk40』に砲身が置き換えられD型からF2へとバージョンアップしている。
「長砲身付けたついでに、外観も変えておきました」
「F2ぽく見えますね」
「そうでしょ、砲身やその他のコンポーネントがF2仕様になってて、バランスも良くなっています」
「ありがとうございました。自動車部の皆さん」
みほが自動車部のメンバーにお礼を言うとナカジマは、
「いえいえ、まぁ大変だったけどすごくやり甲斐がありました」
と改装されたⅣ号戦車を見て、小山と河嶋は
「砲身が変わって、新しい戦車が一両」
「そこそこ、戦力の補強が出来たな」
と二人がそう言うと
「あ、あの・・・・・ルノーに乗るチームは?」
「それなら、新たに補充要員が入りましたので紹介します」
「おーい、出ていいぞー」
とそうみほが聞くと小山が次の準決勝で新しいメンバーが入ると言い補充員と言う言葉にみんな首を傾げ、角谷が声を掛けるとおかっぱ頭の三人娘がやって来た。
「今日から参加する事になりました。風紀委員の園みどり子、金春希美、後藤モヨ子です。よろしくお願いします」
風紀委員メンバーだった。風紀委員三人はお辞儀をし、その三人の隣に角谷が立ち
「略して、そど子と仲間達だ。いろいろ教えてやってね〜」
「会長!名前を略さないで下さい!!」
角谷ね名前を略されあだ名で呼ばれたのが癪に触り、園は角谷にそう言う。
「ルノーを任せようと思うからさー、何チームにしよっか。隊長?」
そんな園の言葉を気にせず角谷は、みほの方を向きそう聞くとみほは、B1戦車を見て
「B1ってカモっぽくないですか?」
とみほがそう言う。そうだろうか?
「じょあカモにけってーい」
「カモですか!?」
角谷の言葉にみどり子は声を上げる。ちょっとは、向こうの意見を聞いてあげてもいいのでは?
「戦車の操縦は冷泉さん、指導してあげてね」
と小山が操縦の指導に冷泉を指名する。まあ、確かに冷泉がこの中で適任かも知らない。
「私が冷泉さんに!?」
「わかった」
冷泉さんは、嫌なそぶり見せずに承諾する。
「成績がいいからって、いい気にならないでよね!」
冷泉に歩み寄りながらみどり子は、そう言い放つ。それを見て冷泉は、呆れて溜息を吐きながら言い放つ、
「じゃあ、自分で教本見て練習するんだな」
「ふざけないでよ!何無責任な事言ってるの!ちゃんとわかりやすく懇切丁寧に教えなさいよ!」
「はいはい」
「はいは一回でいいのよ!」
「は〜い」
と言い争っている、冷泉さんも面倒な人に捕まったな。ああして、いがみあっているが友達の少ない冷泉には貴重な話し相手なのだろう。
「いいか!腰抜けども!次はいよいよ準決勝!しかも相手は去年の優勝校プラウダ高校だ。これからの練習は更に厳しくいく!絶対に勝つぞ、負けたら終わりなんだからな!」
河嶋が次のプラウダ戦に向けて、そう言うと
「どうしてですか?」
「負けても次があるじゃないですか?」
「相手は去年の優勝校だし」
「そうそう胸を借りるつもりで」
と一年生メンバーがそう言う。もっともな意見である。勝つ事も大事だが、負けてそこから学ぶ事もある。
「それではダメなんだ!!」
河嶋の一言で全体が静まり返る。河嶋の様子から見るに勝たなければ後がないみたいに聞こえる。
「勝たなきゃダメなんだよね」
いつも陽気な角谷も今回は違い真剣な表情でそう言う。格納庫内に静寂が支配した。やはり、生徒会は俺たちに何か隠しているな。
「西住、指揮」
「あ・・・はい!では、練習開始します!」
『はい!』
みほの号令で本日の練習が始まる。すると、
「西住ちゃん、日向君」
「何ですか?」
角谷がみほと秋人に声を掛ける。
「後で、大事な話があるから生徒会室に来て」
「・・・・別に構いませんけど?」
訳も分からず取り敢えず承諾する。
その後、練習が終わり雪の降る夜に秋人とみほは、角谷に生徒会室に連れて来られ、秋人とみほは部屋の真ん中に炬燵置かれた、机上には角谷が作ったと言うあんこう鍋が置かれていた。ガスコンロの火を受けて、鍋の中身がグツグツと音を立てていた。
「さあさあ、二人ともそんな所で突っ立てないで炬燵入りなよ!」
「「は、はぁ・・・・」」
角谷にそう言われて、二人は炬燵に入る。
「炬燵暑くない?」
「あ、いえ・・・・」
「大丈夫です・・・」
「いや〜寒くなって来たね。こういう寒い時はやっぱ鍋に限るよね〜」
ちゃんちゃんこを着て袖をふりふり揺らしながら角谷がそう言う。
「北緯50度を超えましたからね」
「次の会場は北ですもんね」
「まったく、試合会場をルーレットで決めるのはやめてほしい」
河嶋がそう言う。次のプラウダ戦の試合会場は雪原ステージなので学園艦は北へ北上していた。
「あの・・・・話って?」
みほは、生徒会室に呼ばれた理由を聞こうとするが
「まあまあ、あんこう鍋でも食べて体を温めようよ」
「会長の作るあんこう鍋は絶品なのよ」
「『西のふぐに東のあんこう』って言われ、あんこうは安く手に入るから地元の庶民的な鍋ですね」
「へぇ〜、よく知ってるね日向君」
「えぇ、まぁ」
何故かあんこう鍋へと話を逸らされる。納得のいかない秋人は、
「あの、角谷さん。結局俺とみほさんに話したい事って?」
「まぁまぁ・・・・・まずは鍋でしょ。もう煮えてるからさ!食べよ食べよ、私もうお腹ペコペコだからさ!」
秋人も角谷達に尋ねてもはぐらかされる。小山は、お椀に具をよそって各々に配って行く。
「はい、日向君、西住さんも」
「・・・・じゃあ、遠慮なくいただきます」
秋人は、渡されたお椀を受け取り、あん肝を口にする。
「美味しいです」
「そうでしょ!まず、最初にね!あんきをよく炒めると良いんだよ。そこに、味噌を入れて・・・」
「いや、鍋の作り方はいいですから・・・・」
話を切り出そうとしない角谷達
「みほさん、取り敢えず食べよう角谷さん達が作って用意してくれたんだ。話は食べた後でもいいだろ話はそれからでも遅くはない」
「秋人さん・・・・はい」
みほは、秋人に言われてお椀に箸をつけて具を口に運ぶ。すると、角谷が
「ところで、日向君さ」
「何ですか?」
「日向君は、このチームに入って何か不満とかない?」
「何ですか、急に?」
突然の角谷の質問に秋人は、唖然とした。
「日向君達がこの時代にタイムスリップして来て、戦争で辛い思いをした日向君達の気持ちを考えずに私達の都合で戦車道に入ってなんて無茶を言ってチームに入って、試合に参加してくれたじゃん。・・・・怒ったりしてない?」
その言葉に秋人は少し言葉が詰まったが、
「・・・・以前にも言ったが、確かに戦車道に思う所はありますし、戦車は戦争の、人殺しの兵器と言う考えも変わりません。・・・・ですが、俺たちはみほさん達や角谷さん達に命を救ってもらい衣食住の恩があります。だから、俺は心に誓った必ずこの学園をテッペンに押し上げると」
「そうか〜、ありがとうね日向君」
と秋人の言葉を聞いて、角谷はお礼を言うと
「あ、珍しいものがあるんだよ。これ」
と角谷は、アルバムを取り出し広げる。最初のページには、校門前で生徒会メンバー3人が笑顔でピースサインをしている写真だった。
「ほら、河嶋が笑ってる!」
「そんな物見せないで下さいよ!」
他にも、体育祭や校外学習、学園祭、合唱コンクール、修学旅行、はたまた何かの行事なのか?、泥んこプロレス大会と言う競技で角谷に技を決められている河嶋、海に遊びに行ったのか、バズーカ砲の様な特大水鉄砲で角谷が小山に大量の水を浴びせ、その後ろでは大波に吹き飛ばされている河嶋が写っている写真が続々と出て来た。様々なな表情が写っていたが、どれも全員が楽しそうなのが伝わって来た。
「楽しそうですね」
「青春を謳歌してますね」
とみほと秋人が写真を見てそう言うと
「うん、楽しかった・・・・」
「本当に楽しかったですね・・・・」
「あの頃は・・・・」
と角谷、小山、河嶋の三人は写真をみてとても懐かしむ顔をしてそう言う。秋人も写真を見て微笑ましく口角を吊り上げる。その後、食事を続け鍋は空になりその場で解散となり、結局角谷達から大事な話は聞けなかった。秋人とみほの二人は校門を出て家路に着いていた。
「結局何だったんだろう・・・・話って?」
「さぁ、けど、人には言えない事の一つや二つぐらいある。隠している事無理矢理聞き出すより角谷さん達が話したくなるまで待ってやろう、それが仲間ってやつだろ」
「うん、そうだね」
その後、二人は寮に着くとそれぞれ自分の部屋に入って行った。
「言えなかったじゃないですか・・・・あの事」
二人が帰ってから、生徒会室でお茶を飲みながら河嶋がそう言う。
「これで良いんだよ、転校して来たばかりの西住ちゃんとタイムスリップして来た日向くんに重荷背負わせるのもなんだし」
「ですが・・・・」
「二人には事実を知って萎縮するより、伸び伸び試合してほしいからさ」
そう言う角谷に、河嶋と小山の二人は頷く。