カチューシャとノンナの二人がプラウダ陣地に帰ったと同じく、大洗陣地では、
「大丈夫ですよ!あんなのには負けませんから!」
「わたし達の隊長をバカにしてっ!」
「2回も勝ってるんだし、まぐれじゃないって所見せてやりましょーよっ!」
「撃ちてし止まん!」
とアヒルさんチームの磯辺と河西、ウサギさんチームの梓、カバさんチームのカエサルがそう言って顔の優れないみほを励ます。
「う、うん・・・」
それに対してみほは、苦笑いで返事をする。そして、集まったメンバーの前でみほが作戦を伝える。
「兎に角、今回の相手の車輌数は15輌、車輌の数に呑まれないで、T-34/76が7両、T-34/85が6両、KV-2が1両、IS-2が1両、どの車輌も強敵で正面からやり合えば勝ち目はありません・・・・皆さん冷静に行動して下さい。包囲されないようにフラッグ車を守りながら、ゆっくり前進して、相手の動きを見ましょう」
とみほが、提案するが
「ゆっくり慎重なのもいいが・・・・ここは一気に攻めたらどうだろう?」
「え?でも失敗したら・・・・・」
そこに、カバさんチームのカエサルが話を切り出し、みほの考えた作戦とは相対する発言に、みほは戸惑う。
「うむ」
「妙案だ」
「先手必勝ぜよ」
そんな中、左衛門左、エルヴィン、おりょうの三人がカエサルの案に賛同する声を上げる。
「気持ちは分かりますが、リスクが・・・」
実際にプラウダ高校の戦法を知っているみほはそう言うが、
「大丈夫ですよ!」
「私もそう思います!」
「勢いは大事です!」
「是非、クイックアタックで!」
みほの言葉を遮り、アヒルさんチームのメンバーが声を上げる。
「なんだか、負ける気がしません!それに、敵は私達の事舐めてます!」
「ぎゃふんと言わせてやりましょうよ!」
「え!いいね、ぎゃふーん!」
「ぎゃふんだよね!」
「ぎゃふん!」
ウサギさんチームからもそんな声が上がる。
「よし!それで決まりだな」
「勢いも大切ですもんね」
おまけに生徒会の河嶋と小山も賛成的だった。
「分かりました、一気に攻めます」
そんな時、みほが作戦を変え、カエサルが提案した作戦へと変更した。それを聞いた秋山と五十鈴が心配そうにみほを見る。
「いいですか?」
「慎重に行く、作戦だったんじゃ?」
「そうよ、二人の言う通りよ西住さん!本当にそれでいいの、考え直した方が良いんじゃない?
秋山と五十鈴、ミーナがそう言うがみほは変えるつもりはない。
「長引けば、雪上の戦いに慣れた向こうの方が有利かもしれないですし、それに八九式の履帯は雪上走行に向いてないし・・・・それにみんなが勢いに乗ってるんだったら」
「・・・・・本当にそれでいいだな?」
秋人のその言葉に、みほは頷く
「・・・・・わかった。みほさんがそうするってなら、俺等は従うだけだ」
ミーナが秋人に歩み寄って話しかけて来た。
「秋人はそれでいいの?」
「実際、あの子達にプラウダ校の戦法を体験させるいい機会だ。そうすれば、いやでも思い知るだろう」
「成る程ね、了解したわ」
彼女達が準決勝まで勝ち続けて来た故の慢心、ここでプラウダひいてはソ連赤軍の戦法を学ばせるいい機会だと思った。
「孫子も言ってるしな、『兵は拙速なるも聞くも、いまだこれを巧みにして久しくするをみざるなり』ダラダラ戦うのは、国家国民の為に良くない。戦いは、ちゃっちゃと集中してやる方がいいんだよ!ね?西住ちゃん」
そう言って、角谷はみほにウインクする。それを見たみほは頷き、再びメンバーに向き直った。
「はい!相手は強敵ですが、頑張りましょう」
『『『『『おーっ!!』』』』』
みほの言葉に、大洗のメンバーは拳を突き上げる。
その頃、観客席近くの小高い丘では、
「この寒さ、プラウダより圧倒的に劣る車輌、これでどうやって勝つつもりでしょう?」
丘の上に陣取っている聖グロリアーナの一人、オレンジペコがエキシビジョンに映し出される大洗の様子を見て心配そうに言う。
直ぐ横で紅茶を飲んでいたダージリンは、落ち着き払った様子で言った。
「確かに、大洗は数も練度の質ではプラウダより遥かに劣っている・・・・でも、そんなハンデを覆してくるのが彼女等よ。それに彼もいるから尚更ね」
そう言って、ダージリンはティーガー改に乗り込む秋人を見る。
(さて・・・・秋人さんは一体どんな試合を見せてくれるのでしょうね?)
そう内心呟きダージリンは微笑む。
一方同じ頃観客席では、母千代と一緒に大洗とプラウダの準決勝を見に来てた島田愛里寿がモニターに映るエキシビションを見ていた。
「秋人・・・・お兄ちゃん・・・・」
「愛里寿!勝手に先に行ったらまた、迷子になるでしょ!!」
そこへ愛里寿の母、千代がやって来た。
「もう、目を離したら直ぐに居なくなるんだから」
「うぅ・・・・ごめんなさい・・・・」
呆れた様に言う千代に、愛里寿は俯く。そして、千代は愛里寿に注意をし、観客席に腰掛け愛里寿も千代の隣に座る。
「大洗、勝てるかしらねぇ?」
「秋人お兄ちゃんがいるから・・・・絶対に勝つ!」
千代が心配そうに言うと、愛里寿は秋人から譲り受けたボコのぬいぐるみを強く抱き締めながらそう言う。
それから暫くして、
『大洗女子対プラウダ校準決勝、試合開始!』
試合開始のアナウンスが会場一帯に響き渡り、両陣営の戦車隊が一斉に動き出した。
暗闇と静寂が支配する雪原に、地響きと野太い音が響き渡る。その雪原では、15輌の白塗りされたプラウダ高校の戦車が進撃していた。
T-34/85が7輌に、T-34/76 1943型が6輌、KV-2とIS-2がそれぞれ1輌ずつで、編成されたプラウダ高校戦車道チームの戦車隊は、フラッグ車である1輌のT-34/76とその後に続くKV-2とIS-2を、残りのT-34/85、76で守る様な形で、矢印状の隊列を組んで進撃していた。
「良い!彼奴らにやられた車輌は、全員シベリア送り25ルーブルよ!!」
「・・・・日の当たらない教室で、25日間の補習って事ですね」
隣を走る同車のキューポラから上半身を乗り出したノンナが、カチューシャの言葉を要約する。
「行くわよ!敢えてフラッグ車とティーガー戦車だけ残して、あとはみんな殲滅してやる・・・・・・力の違いを見せつけてやるんだから!」
『『『『ypaaaーーー!!』』』』
カチューシャの言葉に、プラウダ全車両の乗員から雄叫びが上がる。それから一行は、スターリン政権下のソ連で1938年の大粛清の時代に作られロシア民謡として、有名な『カチューシャ』を歌い出し、士気が最高潮にまで上がり詰める勢いで進撃を続けるのであった。