遡る事数ヶ月前
「廃校?」
「学園艦は維持費も運営費も掛かりますので、全体数を見直し、統廃合する事に決定しました。特に、成果の無い学校から廃止します」
此処は、『文部科学省 学園艦教育局』そこにいるのは、大洗女子学園生徒会メンバー三人が文科省に呼び出された事がきっかけだった。そして、文科省の眼鏡掛けた七三の役人は何の感情もなく彼女達に大洗女子学園を廃校にすると言うのだ。
「つまり・・・・私達の学校が無くなると言う事ですか?」
「納得出来ない!!」
「今、納得出来なかったとしても本年度中に納得して頂ければこちらとしては結構です」
「じゃあ来年度には・・・・」
「はい」
「急すぎる!!」
「大洗女子学園は近年、生徒数も減少してますし、目立った活動もありません。昔は、戦車道が盛んだった様ですが」
「ん〜じゃあ・・・・戦車道やろっか?」
文部科学省の役人から告げられた廃校宣言を前に、大洗女子学園生徒会長角谷杏は答える。
「「えぇ!?」」
「戦車道をですか!?」
まさかの言葉に驚く河嶋と小山は驚くが角谷は、
「まさか、優勝校を廃校にしないよね〜?」
と角谷は、役人にそう言ったのだ。
時は戻り、現在
「文科省から学園艦の維持運営コストの関係で、大洗女子学園を廃校だって言われちゃってね・・・・」
「だけど、戦車道の全国大会で優勝したら考え直すって、会長が言質を取ったの・・・・」
「それで戦車道を復活させたんですか・・・・」
理由を聞いたみほは、納得した様に呟く。
「戦車道をやれば、助成金も出るって聞いてたし、それに学園艦の運営費にも回せるしね」
「もしかして、俺達に毎月援助して貰っている生活費って、まさか?」
「うん、助成金から出している」
と秋人の言葉に角谷は、頷く。秋人達は、毎月約20万円ずつ支払われているので、ただでさえ維持費のかかる学園艦の運営費を削ってまで毎月秋人達に支払っていたので、秋人にしてみれば尚更負けられなかった。
「じょあ、世界大会と言うのは嘘だったんですか!?」
「それは、本当だ」
「でも、いきなり優勝なんて無理ですよ」
梓が驚いて訊くと、河嶋が答えると梓が声を上げる。
「いやぁ〜、昔は大洗でも戦車道が盛んだったんなら、もっと良い戦車があると思って・・・・・・だけど、予算が無くて良いのはみんな売っちゃったらしいんだよねぇ〜」
角谷からの衝撃的な発言に、一同は一瞬押し黙る。
「では、ここにあるのは!?」
「うん、みんな買い手がつかなくて売れ残ったやつ」
秋山が訊ねると、角谷がしれっとした調子で答える。
「そんな!それでは、優勝など到底不可能では?」
「だが、他に考え付かなかったんだ。古いってだけで、何も特徴もない学園が生き残るには・・・・学校の廃校を防ぐどんな手があったと言うんだ!」
カエサルがそう言うと、河嶋が肩を落として言う。
「まあ、無謀だったかも知れないけどさぁ・・・・・・後一年残った時間を泣いて学校生活を送るより希望持ちたかったんだよ・・・・」
河嶋に続いて、角谷も弱々しい笑みを浮かべてそう言う。
「みんな・・・・黙っていてごめんなさい・・・・」
そう言って、小山が頭を下げて謝る。
「そんな・・・・・じゃあ、西住殿や日向殿を勧誘したのって・・・・・」
「うん。少しでも優勝出来る可能性を・・・・・廃校を回避出来る可能性を大きくしたかったんだよ。・・・・・・・西住ちゃん、日向君ごめんね・・・・」
と角谷は申し訳無さそうに二人に謝る。それを聞いていたみほは、複雑そうな顔をするが秋人はただ黙っているだけだった。
「この学校なくなったら、いよいよ俺たち路頭に迷うって事だよな・・・」
「そうなるね、今まで学園側から生活費を貰っていたわけだから・・・」
「いよいよ私達、浮浪者になるのかぁ〜」
「ちょっとまだ決まってないでしょ!」
ミーナ達がそんな話をしている一方で、
「バレー部復活どころか学校が無くなるなんて・・・・」
「ヒドイ・・・」
「無条件降伏・・・」
「そんな、事情があったなんて・・・・」
「この学校が無くなったら、わたくし達バラバラに成るんでしょうか?」
「そんなの嫌だよ」
五十鈴が漏らした結末の言葉に武部が嫌だと声を上げて答える。彼女達は学生だ、学園が廃校になれば、各高校に編入する事になるだろう。だが、全員が全員、都合よく同じ高校に編入するのは不可能だろう。
「単位習得は、夢のまた夢か・・・・」
と冷泉が空を仰いでそう呟き、みんなの表情は絶望した雰囲気が大洗チームに重くのしかかる。ウサギさんチームのみんなは泣いていた。そんな時、
「白旗を上げるには、まだ早いんじゃないか?」
と秋人がみんなに向かってそう問いただすと
「俺達にはあるだろ、どこよりも負けないものが?最後まで諦めない気持ちが!聖グロリアーナと戦った時からそうだった、サンダースの時も、アンツィオの時も諦めなかったからここまで来たんだろ!!人が本気で挑戦して努力して成せないことなんて、この世に何一つない。欲しい未来があるのなら、全身全霊戦え!戦って現実をねじ伏せろ!勝利の女神は最後まで諦めない奴に微笑むんだ。幸い撃破された車両はない、少し修理すれば戦線復帰は出来るし、反撃の策も練れる」
「日向君・・・・」
「秋人さん・・・・」
「最後まで諦めないのが大洗の戦車道だろ」
秋人は、みんなにそう言うと、みほの方を向き、しばし視線を合わせる。後のことはみほに引き継がせる事にした。そして、
「秋人さんの言う通りまだ、試合は終わってません。まだ負けた訳じゃありません」
「西住ちゃん・・・・」
「隊長・・・・」
「頑張るしか無いです。だって、来年もこの学校で戦車道やりたいから・・・・・みんなと」
みほが、そう言うと
「そうです!私達はまだ負けてません!私も、西住殿と同じ気持ちです!」
「そうだよ・・・とことんやろうよ!諦めたら終わりじゃん、戦車も恋も!!」
「まだ、戦えます」
「うん」
「転んでも」
「「タダでは起きぬ大洗っ!」」
みほの言葉にあんこうチームの秋山、武部、五十鈴、冷泉、そしてカバさんチームのカエサル、エルヴィン、左衛門左がそう答える。
他の各チームのメンバーも顔を上げ、その表情は先程までの暗い表情と打って変わって前を見据えていた。
「会長さん、降伏はしません。最後まで戦い抜きます。ただし、みんなが怪我しないよう冷静に判断しながら最後まで戦い抜きます!」
「分かったよ、西住ちゃん・・・・」
みほがそう言うと角谷はそう言って頷く、まだ試合は終わっていない、まだ戦える。
「修理を続けて下さい、三突は足周り、M3は副砲、寒さでエンジンが掛かりにくくなっている車両は、エンジンルームを温めて下さい、時間はありませんが落ち着いて」
「「「「「はい!」」」」」
みほは、各チームに修理する様指示を出す。自動車部の娘達からの直伝の修理術を披露する時、そして河嶋は目から溢れ出る涙を拭い
「・・・・我々は、作戦会議だ!」
と、すぐに作戦会議を始める。幸いにもプラウダは降伏の猶予として、三時間もの時間をくれた。残された時間で大洗の劣勢を覆す逆転の策を練らなければならない。
(やれやれ、みほさんの勘当を阻止するどころか、学校の命運まで背負う事になるとはな・・・・・学園艦がなくなると言う事で、みほさん達の学校どころか・・・・秋山さん達の住んでいる家さえ無くなると言う事・・・・・これは、何がなんでも負けられない。ここまで来たら、もう徹底的にやるしかない)
と秋人は、腕を組んでそう呟く。みほの勘当と学園の廃校の阻止と言う二重の重荷を背負い。