そして、廃村の途中の稜線地帯に待機して待機してある秋人達のティーガー改は、いつでも出撃できる様準備していた。エンジンを始動させ、みほ達が動くのを待った。
「みほさん達が敵の分厚い防御網を突破したら、敵の目を撹乱しつつ主力部隊が反転し、さっきの廃村に戻り敵のフラッグ車を叩く。残りは、全力でフラッグ車である八九式の護衛に当たる訳だが」
「護衛に回せる戦車の数が足りないって言いたいんでしょ。それくらい分かるわよ」
と秋人が言葉を濁らせるとミーナがそう言った。
「あぁ、八九式を護衛するのは、M3とB1だ・・・・まぁ、俺達のやる事は決まっている」
「私は、敵本隊の攻撃でしょ」
そう言うと秋人が頷く。
「ねぇ、プラウダの隊長さぁ。冷泉さんの偵察班がプラウダに見つかったって言ってたじゃない。突然の陣形の変更とかしない?」
「いや、それはないなぁ。あの傲慢な性格だ、自分の作戦に絶対の自信を持っている。だから、偵察されたとしても自分の作戦が失敗する筈がないとか言ってるに決まってる」
「あぁ、成る程。なんか納得」
カチューシャの性格を考えればもっともな事だと思った。
一方その頃角谷達カメさんチームの38(t)を先頭に、Ⅳ号と三突。その次にアヒルさんチームの八九式が配置され、その背後を守る様にM3とB1が配置された。
「小山、行くぞ」
「はいっ!」
角谷がそう言うと、小山はゆっくりと38(t)を前進させ、他の戦車も後に続き、ゆっくり前進する。そして出口が目の前に迫った時、
「突撃」
角谷の掛け声と共に小山はギアを入れて速度を上げて、教会から勢い良く飛び出す。
その途端、包囲していたプラウダの戦車隊からの集中攻撃が始まる。容赦ない攻撃に晒されながらも、大洗チームは防御の薄い地点へと向かう。
「フフフ予想通りね、流石私」
自分の作戦が成功したと思っているカチューシャは、得意気に自画自賛するが・・・・
「・・・・・・・ん?」
なんと、防御が緩くなっている場所へと向かっていた大洗チームは突然方針転換し、フラッグ車である八九式を隊列の真ん中に配置して守る様な陣形を組むと、自分達がいる場所・・・・つまり、一番戦力が集中している場所に突っ込んで来た。
「こっち!?馬鹿じゃないの!?敢えて分厚いトコ来るなんて!?」
大洗チームが自分の考えた作戦に乗らず予想外の行動に驚き、そんな事を呟きながら、カチューシャはヘルメットを被る。
その瞬間、今までの仕返しと言わんばかりに大洗から砲撃が始まる。
「返り討ちよ!」
そう叫ぶと、カチューシャは直様車内に引っ込み、撃ち返す。
「河嶋、代われ」
「はっ!」
そんな中、角谷は河嶋に砲手を代われと言い出し、河嶋は席を空けて装填手へと移る。
角谷は、砲手の席に座り、スコープを覗く。
「やっぱ37mmじゃ、まともにやっても中々抜けないよねぇ〜。小山!ちょっと危ないけど、ギリまで近づいちゃって!」
「はい!」
角谷の指示を受けた小山は38(t)の速度を上げ、向かってくるプラウダ戦車に突っ込んで行った。そして、プラウダからの集中砲火が来る。
「ほぉ〜、怖えぇ〜、よ〜し」
すると、1輌のT-34/85の砲塔が、38(t)に向けられる。砲身がゆっくり下され38(t)へと狙いが定まった時・・・・
「くるぞ!」
その言葉と共に、小山は38(t)を左に流して砲弾を避け、相手が怯んでいる内に接近すると、角谷が相手の砲塔目掛けて発砲し、行動不能にする。
その隙に、大洗の戦車が次々と向かって来ると、プラウダの防衛ラインを突破する。
「やったな!後続、何が何でも阻止!」
頭に血が上り冷静さを失ったカチューシャはインカムに向かってそう叫ぶのであった。
「前衛突破!!」
「皆さん注意して!前方敵4輌!」
武部が前衛の防衛を突破したと言い、Ⅳ号のキューポラから前方を見ていたみほがそう叫ぶ。
すると、最後尾の後ろを見ていたそど子から通信が入った。
『こちら最後尾、後方からも4台来ています!それ以上かも!』
「挟まれる前に隊形乱さない様、10時の方向に旋回して下さい!」
みほがそう言うと、今度は角谷から通信が入った。
『正面の4輌引き受けたよ!上手く行ったら後で、合流するね!』
「分かりました。気を付けて!」
『そっちもね〜』
そう言いみほ達は、展開するが38(t)は前から来ている4輌目掛けて突っ込んで行き、その様子をみほは心配そうに見ていた。
「T-34/76に85にスターリンか・・・・硬そうで参っちゃうなぁ〜・・・・・38(t)でも、ゼロ距離ならなんとか」
そう呟きながらも、角谷は自分の相方に指示を飛ばした。
「小山!ねちっこくへばりついて!」
「はいっ!」
「河嶋!装填早めにね!」
「はいっ!」
角谷の言葉に二人は返事をし、その言葉を合図に38(t)が4輌のプラウダ戦車に襲い掛かった。
1輌のT-34/76が砲撃を仕掛けてくるが、小回りの効く軽戦車ならではの特性を活かして難なく避けると、逆に至近距離からの砲撃を喰らわせて撃破する。
今度はIS-2を標的に定めて引き金を引くものの、自分も相手も動いていたためか、狙いが外れ、後部のフェンダーに弾かれてしまう。
「失敗、もういっちょ!」
「はい」
すると、今度は他のT-34/76を標的としたに角谷は河嶋が次の砲弾を装填し終えた直後、狙いを定めて引き金を引き、片方のマフラーを吹き飛ばす。
「もう一丁!」
「はいっ!」
河嶋が早く装填し終え、小山が巧みに操縦桿を動かし車体を回転させて相手からの砲撃を避け、そして角谷が次々と攻撃を仕掛けて行く。
あるT-34は履帯と転輪を吹き飛ばされ、悪足掻きとばかりに攻撃するものの、小山の操縦で避けられた後、至近距離からの砲撃を喰らって撃破される。まさに三人の息が合ってないと出来ない芸当だった。そしてカメさんチームは、敵戦車4輌の内、T-34を2輌撃破した。
「よーし、こんぐらいでいいだろ、撤収ぅ〜」
「お見事です!」
大洗チームの本体に合流しようと、その場を離れようとした瞬間、突如として横から砲撃を受け、38(t)は粉々に吹き飛ばされた履帯と転輪の破片をぶちまけながら派手に吹っ飛ばされると、逆さになって動きを止める。
そして、底部から行動不能を示す白旗が飛び出した。
角谷の38(t)を撃破したのはノンナの乗るT-34/85だった。角谷は、彼女の狙いにより撃破されたのだ。
「動ける車輌は速やかに、合流しなさい」
『はい!』
ノンナの指示に、生き残ったプラウダの戦車の車長は返事を返し、本隊に合流しようと動き出すのであった。
生徒会チームの38(t)は健闘しだが、相手も甘くなかった。応援に来たノンナに38(t)は撃破されてしまったのだ。
『いや〜、ごめ〜ん。2輌しかやつけられなかったうえに、やられちゃった。後は、よろしくね』
その頃、反転する為の場所へと移動している大洗本隊、あんこうチームには、角谷から通信が入っていた。
「分かりました。ありがとうございます」
『頼んだぞ、西住!』
『お願いね!』
みほがお礼を言うと、河嶋と小山からの激励も入った。
「この窪地を脱出します!全車、あんこうに着いて来てください!」
「「「「「はい!」」」」」
みほの指示に、その場にいる全チームからの返事が返され、速度も上がって行った。勝利の女神はどちらに微笑むのか、未だ天秤はどちらにも傾いていない。