「戦車道?何だそれ初めて聞くぜ?」
「私も聞いた事がない?」
と初めて聞く単語に秋人達は?を浮かべると角谷が戦車道について説明する。
「戦車道ってのは、その名の通り戦車を用いて行われてる武道だよ。今じゃあマイナーな武芸となっているけど、昔は華道や茶道と並び称される程の伝統的な文化で、世界中で女子の嗜みとして受け継がれて来たんだよ。礼節のある、淑やか慎ましく、凛々しい婦女子を育成する事を目指した武芸なんだよ〜」
「戦車で、婦女子を育成かぁなんか全然結び付かないなぁ。俺達が居なかった戦後では世界はそこまで様変わりしていたんだなぁ」
と戦車道と言う初めて行く武道に秋人達は、人殺しの兵器である戦車が今では、スポーツの一環という事に驚いたがちょっと納得がいかない様だった。それから秋人達は、角谷から戦車道と言うものを色々聞かされ、そして数年後に日本で行われる世界大会に向けて文部科学省から全国の高校や大学へ戦車道へ力を入れるよう要請があり、これにより大洗女子学園がかつて存在した戦車道を復活させる事や、戦車道の履修者への特典や優遇措置の約束をした事や戦車道の西住流の名門家の西住みほ戦車道に入ってもらって近く開催される全国大会に出場する事などを話した。
「成る程話は大体は分かった。だが、解せない事がある。何故俺達に好条件を出してまでその戦車道に参加して欲しいんだ?人数や戦車の数も揃ってしかも戦車道の名門の西住みほさんが居るのに?そもそも戦車道の履修者を集めるにしてもこの高待遇は異常だ!角谷会長あなた他に何か隠しているんじゃないか?」
「いや〜ちょっとそれは言えないんだよね〜。事情は後々説明するからぁ、だからここは取り敢えず納得して貰えないかな?」
「まぁ人には言えない事が一つや二つありますから、これ以上の詮索はしませんが」
「そうしてくれると助かるよ」
と頬を掻く角谷を見て秋人は、これ以上の詮索はやめとく事にした。角谷は、笑って誤魔化してはいたが何処となく真剣な目をしていたのでこれは、ただ事ではない重大な事があると秋人は悟った。
(いいんですかこの学園の事を言わなくて?会長、もし言えば彼等が協力してくるかも知れないですよ?)
(それもそうだけど、あの子達の目もあるしさぁ〜その際であの子達に余計な心配や重い責任を負わせたくないし)
と耳打ちしてくる河嶋を他所に杏は、後ろのみほ達の方を見る。当のみほ達は、高待遇の訳にそこまで気にしている気配はなかった。
「まぁ、そう言うわけで君達も私達も一緒に全国大会で出場して優勝すれば、全国から人気者になれるかも知れないし楽しいしと思うよ〜。それに戦車道に男性がやっちゃいけないってルールもないし大丈夫だよ」
と角谷はそう言って干し芋を食べる。それを聞いて秋人は、ある一言を角谷達に問い質してみた。
「楽しいねぇ・・・・・。なぁ、あんた達は・・・・人を殺した事があるか?」
『え!?』
「ないよー」
「ある訳ないだろ!!何を聴いてくるんだ貴様!!」
「私もありませんよ!」
と真顔で答える杏や怒号する河嶋や困った顔する小山がそれぞれ否定して、
「ふぇっー!?いや・・・あのその・・・・あ、ありません!」
「自分もそんな事はしませんよ!」
「わたくしもありませんわ!」
「ある訳ないよ!そんなの!!」
とみほ達も否定する。突然秋人から思わぬ事を言われて最初皆戸惑うがノーと答えた。
「そうか、俺達は別に殺人狂な訳じゃないし好き好んで殺していた訳でもない。ただあんた達と違う事は・・・・・この軍服を着てるって事さ。命令・・・・とあらば殺るのが・・・・俺達軍人だ。だから俺達は、殺られる前に殺る相手が俺達を殺す気なら俺達は躊躇なく相手を殺す!だから、俺達は常にソ連兵を憎み一人でも多くの敵を殺さなければならないそうしなければ自分が殺されてしまうからだ。だから俺たちはずっとそうやって多くのソ連兵を殺して来た。それが俺達軍人の仕事だからだ。何故人を殺すのか?それが兵士に与えられた任務だからだ」
「貴様らは、人を殺して何も感じないのか!?心が痛まないのか!罪悪感は無いのか!命令だから任務だからと割り切るのか!!」
「なら、聞くがお前達は今まで殺した虫の数を覚えているか?虫を殺して何か感じるか?・・・・例えば、相手の戦車を倒した時、当たったよし!と自分の腕に自惚れ仕事の達成感を感じる瞬間が全くないと言い切れるか?河嶋さん?」
「ッ!・・・・」
と秋人の挑発めいた言葉に河嶋は、苦虫を噛み潰した様な顔をした。
「そんな事引きずって気にしていたらこっちがやられる戦場では、一瞬の迷いが命取りになる。目の前の敵を一瞬でも早く殺した方が生き残る。何も感じないと言えば嘘になるがそれでも俺達はやるしか無かったんだ。死にたく無い、戦いたく無いと思っても相手はこっちの意を汲んでくれない。軍人は、本来国民の生命と財産、国家の主権を守る為に存在している。決して、安直なヒューマニズムによって戦うものではない。戦場はそもそも敵を殺す場所だ。俺達は、その覚悟が合ってこの軍服を着ている。死から目を背けてはならない、殺した人々を忘れてはならない、何故なら、彼らは殺した俺達の事を決して忘れないのだから。話を聞く限りあんた達は、戦車に対する意識が甘く・危機感に疎く・戦車を武道の一環と勘違いしている様だが戦車が活躍するのは人々が狂い殺し合う戦争だ!結局戦車は兵器で人殺しの戦争の道具、戦車の操縦は殺人術どんな綺麗事やお題目も口にしても、それが真実!!戦車は、戦局を左右する兵器だ、奇襲攻撃も決め手となる打撃を与える事も出来る。戦車は祖国を守るために戦い、多くの伝説を残したがその伝説は多くの人々の犠牲の上に成り立っている。あんた達には、戦車を操るという事が人を撃つ事がどういう事かどんな気持ちか分かるか?普通の兵士なら、弾を乱射してその一発が偶然人の命を奪う事もある。けど、戦車は違う引き金を引けば必ず人が死ぬ、原因と結果がこれ程明確に結びついているのは、狙撃兵と戦車兵だけだ。撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ!!あんた達には、その覚悟があるか?戦争と言うのは、若者が経験すべき事じゃない、多勢が戦死し、多勢が捕虜になるんだ。俺達は、出来る限りの事をやった、生き残る為に。よく過ぎた事は忘れろと言うが忘れられるものじゃないその記憶と共に永久に生きるんだ。戦争に勝者も敗者も存在しないただ双方に痛みだけしか残さない。戦争の反省をどう活かし恒久の平和でいられるかを考えるのが今を生きる君達の使命なんじゃないか?」
『・・・・・・・』
と皆が黙り込む、確かに戦車は人を殺す為に造られた殺人マシーンだが、彼女達にとっては一種のステータスに等しい。戦車と言う兵器が及ぼす影響知らず・考えずに乗りこなそうとしている。あの地獄の様な独ソ戦を経験している秋人達にしてみれば兵器を扱うと言う事にどれだけの多くの兵士の命を救うと同時に多くの兵士の命を奪うと言うのか嫌と言うほど経験した。
「秋人落ち着きなよ!気持ちはわかるけど冷静になって」
「すまないミーナ。すみません角谷会長少し熱くなったしまた」
秋人が謝ると角谷は首を左右に振り、
「うんうん。ごめんね。君達の気持ちも考えないで」
「いえ、角谷会長。悪いですけど条件を呑むかどうかは少し仲間達と考えさせてもらえませんか。こっちも色々と気持ちの整理とかもしたいので」
「うん分かったよ〜じゃぁ落ち着いたら生徒会室に来てね。待っているから〜」
と角谷が保健室から退室しようとすると、
「あ・・・あの日向さん、日向さん達はなんで戦うですか?」
とみほが何故戦うのかを聞いて来た。そして、
「西住さんだったけ・・・・簡単だ"死にたくない"ただそれだけさ。理由はいつだって単純だよ」
「そうなんですか」
そう聞くとみほも保健室から退室して行く。