逃げる八九式の盾になりながら、砲塔を後ろに旋回させて37mm砲と7.62mm機銃で応戦する。
「鬱陶しいわね、払いのけなさい!!」
『はい』
だがカチューシャもすぐに周りの車両に指示を送る、真っ先に動いたノンナが砲撃を放ってウサギさんチームに直撃させれウサギさんチームのM3リーは白旗をあげる。
『まず、1輌・・・・』
「その調子よ、ノンナ!あんなへっぽこ戦車当たれば終わるんだからっ!しらみつぶしよっ!」
『Как и ожидалось, г-н Нонна(流石です、ノンナさま)』
『Нет, ничего страшного в этом。Коллара(いいえ、大した事ではありません。クラーラ)』
「だからちゃんと日本語で話しなさいって言ってるでしょ!!」
フラッグ車の盾となっていた、M3を撃破したノンナにカチューシャが賞賛の声を上げる。そして、相変わらずロシア語でやり取りを続けるノンナとクラーラの二人にカチューシャが怒鳴る。
『Похоже, вы еще не заметили повязку на голову.(どうやらまだカチューシャは気付いてないみたいですね)』
それは自分の日本語による指示を理解して真っ先にクラーラが動いた事についてである。
『Такое оголовье тоже милое. Теперь поехали. Нонна-сама(そんなカチューシャさまも可愛いです。さあ、行きましょう、ノンナさま)』
ほっこりとした表情を浮かべながらもクラーラはノンナにまたロシア語で語りかける。
「Я знаю, я определенно выиграю за Катюшу.(わかってます、カチューシャの為にも必ず勝ちます)』
『Нонна-сама, на этот раз я буду полезен Катюше-саме. Я не проиграю(ノンナさま、今回カチューシャさまのお役に立つのは私です。負けませんよ!)』
とクラーラからそう言われたノンナは何とも言えない表情をして再びスコープから逃げる大洗をとらえる、先行するフラッグ車とその後ろについて盾になっているカモさんチームのルノーだ。
「ウサギチーム、走行不能!」
M3の車長梓が、みほ達あんこうチームに通信を入れた。
『皆さん、無事ですか!?』
「「「「大丈夫てーす!!」」」」
「眼鏡割れちゃったけど、大丈夫です!」
心配そうに怪我人の有無を聞く武部に、M3のメンバーからの返事が返される。
「カモさん、アヒルさんをお願いします!」
『了解したわ!』
梓がカモさんチームに通信を入れると、みどり子から力強い返事が返された。
「ゴモヨ、パゾミ!風紀委員の腕の見せ所よ!」
「「はい!」」
ウサギさんチームの役割を受け継いだかの様に、ゴモヨはB1を八九式の真後ろについて盾になった。
一方、カチューシャ率いるプラウダ本隊にも通信が入っていた。
『カチューシャ隊長!此方フラッグ、発見されちゃいました!どうしましょう!?』
廃村エリアでずっと待機していたプラウダのフラッグ車の車長が、口調に若干の田舎訛りを含ませながら、切羽詰まった様な声色で叫んでいた。
『そちらに、合流しても良いですか!?てか合流させて下さい!』
「Нет(いいえ)!単独で広い雪原に出たら、いい的に成るだけよ!!」
『ほんの少しの時間さえ頂けたら、必ず仕留めて見せます』
「と言うわけだから、外に出ずにチャカチャカ逃げ回って時間稼ぎして!頼れる同志の前に引き摺り出したって良いんだから!」
ノンナの言葉を聞いたカチューシャはフラッグ車にそう指示を送る。彼女はノンナの実力を信頼している。カチューシャがそう言うと、強制的に通信を切られる。そう、プラウダのフラッグ車にはKV-2を護衛に付けている、そう簡単にはやられない筈だ。
カチューシャからの通信を受けたプラウダのフラッグ車は廃村の中を逃げ回る。
車長はとある別の戦車の車長に通信を入れると、T-34/76が通り過ぎた後に、1輌の巨大な砲塔を持つ戦車KV-2重戦車が現れ、先へは行かせないとばかりに街道の真ん中に躍り出て仁王立ちする。
「来た、KV-2(ギガント)だ!」
「大丈夫!初速は遅いから、落ち着いて避けて!」
エルヴィンの言葉に、みほはそう返す。
砲塔の前面装甲が110mmもあるKV-2。主砲の152mm榴弾砲は主に陣地攻撃用だはあるものの、当たれば大洗の戦車はひとたまりもない・・・でも!KV-2はその砲弾の大きさの為、次弾の装填には時間がかかる。
その直後にKV-2が発砲するが、みほの言葉通り、初速の遅さ故に軽々と避けられる。
「停止!」
みほの指示で、Ⅳ号と三突が横一列で停車する。
「KV-2は、次の装填まで時間があるから落ち着いて!」
「はい」
みほの言葉にそう返し、華はスコープを覗いて照準を合わせようとする。
「最も装甲が弱い所を狙って・・・・」
『こちらカバさんチーム!何時でも撃てるぞ!』
華とエルヴィンから、そんな声が飛ぶ。狙うはウィークポイント、
「撃て!」
その指示と共に2輌の主砲が火を噴き、2つの砲弾はKV-2に真っ直ぐ叩き込まれて行動不能にし、
「追撃します!」
みほ達は、再びフラッグ車を撃破する為追撃を開始する。これで残るはフラッグ車だけ。
「あと一つ・・・・」
フラッグ車の盾となっていたカモチームのルノーを撃破したノンナはそのままアヒルさんチームの八九式を狙う。ノンナだけではない、カチューシャも、クラーラも、プラウダの車両が次々と八九式に砲撃を放っていく。
「カモチーム撃破されました!アヒルさんチームの皆さん!健闘を祈る!」
『『『はい!』』』
最後の護衛であるカモさんのルノーB1まで、やられてしまいフラッグ車の単独だけになってしまった。
「みぽりん!急がないと!あとは、アヒルさんだけだよ!」
「・・・・うん」
だが、向こうもウサギさんチームとカモさんチームがやられ、これでフラッグ車の防衛は居なくなってしまった。
「グルグル街を周っているだけ、だったら・・・・」
みほは覚悟を決めて最後の攻勢にでる。あんこうチームとカバさんチームが偵察に出た秋山から得た情報を元にフラッグ車を発見、現在こちらも追走中である。先ほどから砲撃を続けてはいるが相手フラッグ車の操縦はかなりのもので集落を駆け回る。
「くそ!」
「回る砲塔が欲しい!!」
突撃砲の宿命か、固定砲塔の三突ではなおさら捉える事が難しくエルヴィンとカエサルが不満を漏らしている。
「カバさんチーム、追撃を中止して下さい!」
『何?』
「敵フラッグ車の追撃をあんこうのみで行います!」
とみほがカバチームに追撃をやめさせ、あんこうだけで追撃すると指示する。
「もうダメかもぉ・・・・」
「泣くな!涙はバレー部が復活したその日の為にとっておけ!」
「はい」
そのあまりの状況に弱音を吐いてしまうあけびにキャプテンの磯部が鼓舞する。
「大丈夫!こんな攻撃強豪校の殺人スパイクに比べたら全然よね」
「そうね・・・・でも、今はここが私達にとっての東京体育館、或いは代々木第一体育館!!」
「「「「そーれそれそれそれ!!」」」」
再び気合いを入れ直したバレー部の彼女達はプラウダの砲撃の嵐から孤軍奮闘逃げるが、7vs1と言う圧倒的に不利な状態に変わりは無く。アヒルさんチームは為す術も無く、ただひたすらに逃げ回るしかなかった。
「フフンッ!これで勝ちは決まったようなものね、勝利もアキーシャもカチューシャが貰ったわ!さてと、楽しい鬼ごっこも、そろそろお終いにしてあげようかしらね」
勝利確信し余裕のカチューシャ。だが、彼女はまだ知る由も無かった。ここから悪夢が始まろうとしている事に
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その悪夢は、突然訪れて来た。
『・・・・・次で仕留めますーー!』
走り回る八九式を捉えたノンナは引き金に指を掛けようとした、その時カチューシャの隣を走っていたT-34/85が突如爆発し、本隊から脱落し走行不能を示す白旗が上がった。
「「「「っ!?」」」」
「なに!?」
突然の事に驚くカチューシャやプラウダ一同、そしてカチューシャが目を凝らしてる見ると、雪が吹雪く暗闇の中から見えるシルエット、白くて角張った車体に長砲身を備えた秋人達が乗るティーガー改だった。
「行くぞ!お前たち!!」
『おう!!』
秋人の問いにミーナ達が即答し、雄叫びを上げて団結する。