『試合終了!大洗女子学園の勝利!』
『『『『『『『『ワァァァァァアアアアアアアッ!!!』』』』』』』』
アナウンスが流れると同時に、観客席では歓声と拍手喝采が上がる
勝利の理由はプラウダのフラッグ車が角を曲がった瞬間。雪の中に隠れていたカバさんチームの三突に至近距離で砲撃されたからだった。
大洗勝利のアナウンスを聞いて
「「勝った!」」
カバさんチーム、
「「「「バンザーイッ!!」」」」
ウサギさんチーム、
「よくやったぞーっ!!」
とカメさんチームがやって来て、角谷はVサインで褒め小山は"ありがとう"とお礼を言い、河嶋は何も言わずにお辞儀をする。
「やりましたね!」
「すごーい!やったねーみぽりーん!」
「西住殿、すごいです!やりましたね!」
「優花里さん、喜びすぎ!」
とあんこうチームのみんなもⅣ号から降りて抱き合ったり、涙を流して勝利を喜んだ。
一方、観客席ではモニターの画面からチームみんなで勝利を喜ぶみほの姿を見るみほの母親西住しほと姉の西住まほが居た。
「『よく勝った』と言ったところかしら。勝ったのはプラウダに慢心があったとは言え運も味方につけたようね・・・・」
「いえ、大洗には実力があります」
「実力?」
「みほは、マニュアルに囚われず臨機応変に事態を対処する力があります。みほの判断と心を合わせて戦ったチームの勝利です」
まほがみほの戦い方を称賛すると・・・・
「そんな物は、邪道。・・・・我が娘ながら、一度は戦車道から身を引いた者が・・・・今度は西住流の敵となるか・・・・『西住流』は戦車道の『力の象徴』そして、西住流こそが『戦車道』西住流の名を冠する事は、戦車道を体現するも同じ。まほ、決勝戦では王者の戦いを見せてやりなさい。この世に『西住流』は2つもいりません」
「・・・・はい、わたしの西住流の名に掛けて、必ず叩き潰します」
そう言いまほはモニターに映るみほを見る。その目は姉としての目ではない。ライバルを見る西住流の戦車乗りとしての目であった。
一方、その頃カチューシャはT-34のキューボラから見ていたカチューシャは、未だ信じられないと言わんばかりの表情を浮かべて唖然としていた。
だが、だんだんとはっきりした。自分は負けたのだと・・・・・
「………クッ!………うぅ………」
その事実を知ると悔しさがこみ上げ、カチューシャは目尻に涙を浮かべる。
「どうぞ………」
その時、何時の間にかT-34の車体の上に居たノンナが、カチューシャにハンカチを差し出す。
「な、泣いてないわよ!」
そう言って強がりながら、カチューシャは差し出されたハンカチで鼻をかむ。
「それにしても、こっ酷くやられたわね………………」
そう言って、カチューシャは後ろを見やった。共に振り返ったノンナも、ただ無言で頷く。彼女等の視線の先には、クラーラが乗っていたT-34と、自分達の他の戦車の全車両が白旗を上げ全滅だった。その光景は、正に台風の後だった。
「負けて悔しいけど・・・・何だか清々しいわね・・・」
と、ぽつりと呟く。その言葉には負けて悔しいくもあるが清々しい気分でもあった。
「カチューシャ?」
「なんでもないわ!それより行くわよノンナ、クラーラ!」
そう言いカチューシャはノンナ、クラーラを連れてどこかへと向かうのだった。
一方、カチューシャ率いるプラウダ本隊を全滅させた秋人達は、
「勝ったの?私達・・・・」
「あぁどうにか、首の皮一枚繋がったって所だ」
ティーガー改のハッチから上半身を乗り出して前方を見ていた。そして、秋人達は戦車を止めると降りて雪原を走り、みほ達が集まる場所へと行った。
「へぇ、フラッグ車の行動パターンを見抜くとはやるなみほさん」
「ううん。私だけの力じゃないよ」
「まぁ何にせよ、良くやってところかな」
大洗の集合場所に戻った一行は、試合後の挨拶を終え、今回の試合の事で盛り上がりを見せていた。
「今回の試合も、西住ちゃんと日向君の活躍あってのものだね。ありがとう」
杏がそう言うと、続いて桃も頭を下げる。
「フラッグ車を撃破したのはみほさん達なんだ。俺はプラウダの連中に殴り込みしただけだよ」
「謙遜しちゃって~」
笑みを浮かべながら言う秋人を角谷がからかっていると、其所へ、肩車をしているからか、1つに合わさったように見える2つの人影と、独立した1つの人影が近づいてきた。
「せっかく包囲網の一部を緩くして、そこに引き付けてぶっ叩くつもりだったのに、まさか正面突破されるとは思わなかったわ」
カチューシャとノンナ、そしてクラーラだった。例によってカチューシャはノンナに肩車されている。
「私もです」
「…え?」
「あそこで一気に攻撃されてたら…負けてたかも」
「それはどうかしら、もしかしたら…と、とにかく、こんなへっぽこ戦車ばかりなのにあなた達なかなかのもんよ!言っとくけど、悔しくなんてないんだからね!」
完全なツンデレ台詞に、大洗のメンバーは唖然とした表情を浮かべる。
「ノンナ!」
「はい………………」
それを余所に、カチューシャはノンナの肩車から降りてみほの前に立つと、無言で右手を差し出した。
「あっ………………」
その行動に、一瞬戸惑いを見せたみほだが、やがてその表情に笑みを浮かべて右手を取り、握手を交わした。
「決勝戦は見に行くわ!カチューシャをガッカリさせないでよね!優勝しなかったら、許さないんだから」
「はいっ!」
その激励に、みほはしっかりとした返事を返した。
「それと、忘れないでよね!アキーシャはカチューシャの物なの!今はまだ、あなた達に預けとくけど、次は絶対カチューシャが貰うんだらね!!そして永遠のシベリア送りなんだからっ!」
「プラウダで卒業まで過ごす権利を与えるとの事です、良かったですね。日向さん、お部屋を用意しておきますね」
とカチューシャがそう言うとノンナが補足する。それを聞いてみんな苦笑いを浮かべたいる。良くねぇです、それって編入させられるって事じゃないですか。あと、何の部屋だよ。
すると、クラーラが秋人の所へ近づいて来た。
「日向さん、大事なお話がありますので2人きりでお話いいですか?」
「良いが、此処じゃ話せないのか?」
「はい、向こうで話します」
「・・・・・わかった」
と秋人は、クラーラに連れられて廃村の建物の陰へと入って行く。その様子を見ていた女子達は、
「クラーラ、アキーシャに話ってなんなのかしら?」
カチューシャがそう言うと、武部がハッとして
「もしかして、クラーラさん!!日向さんに告白するんじゃない!?」
「また言ってるのか、沙織」
「だって、2人きりで大事な話なんて告白しかないじゃん!!」
「でも、意外と似合うかも」
「そうだよね〜」
(秋人さんも、やっぱりああ言う人の方がタイプなのかな?・・・・・)
告白を期待する武部やウサギチームの一年が頬を赤くして騒いでいるなかでみほは、自分なんかよりも美人でスレンダーな異性の方が好みなんだろうかと思いながら2人が行った廃村の方を見ていた。
一方、廃村裏に連れて来られた秋人は、
「それで、態々こんな所で話したい事ってのは何だ?」
そう言うと、クラーラは振り返りロシア語で話して来た。
『日向さん、あなた・・・・・一体何者ですか?』
『言った筈だ、日向秋人大洗女子学園戦車道の助っ人だ』
『惚けないでください!あなたがただの助っ人の筈がありません。あの、操縦技術、容赦のない一撃必殺の砲撃技術・・・・・私だって祖父からホワイトタイガーの伝説は聞いているわ、あなたの名も知っているわ・・・・!そうでしょ・・・・『白い悪魔』ッ!!!』
『ッ!?』
クラーラから放たれた久しぶりに呼ばれたその異名に、秋人は驚いた。まさか、この時代になってもロシアで秋人の武功が轟いていたとは。そして、目の前の少女に自分の正体がバレるとは思いもしなかった。
『70年も前に戦死したとされたあなたがなぜ此処に、そして現代に・・・・・』
クラーラのその問いに対して秋人は、
『やれやれ、まさかそれだけで正体を見抜かれるとはね』
『では、やはり・・・・・』
『君の言う通り、俺は独ソ戦での伝説の戦車兵。白い悪魔とは俺の事だ』
そして、秋人はクラーラに全てを話した。1944年の戦闘で負傷し気絶している時に現代の大洗にタイムスリップしたこと、大洗女子学園で負傷している所を保護・手当てしてもらい更に衣食住なども保証してくれる代わりに戦車道に入って手を貸す取引をした事などを話した。それを聞いて、クラーラは驚いていた。それそれそうだそんなSFみたいな事が起きるなんて、
『それでどうする、祖国の仇として俺に復讐するか?』
秋人のその問いに対して、クラーラは首を横に振り
『いいえ、あなたも国の為、家族の為に戦った、あなたを責めるのは筋違いという物です。それに、今私の目の前にいるのはファシスト・ドイツの白い悪魔ではなく、大洗女子学園戦車道の日向秋人よ』
そう言うと、クラーラは手を差し出して来た。秋人もそれに応える様にクラーラの手を握り握手を交わす。話を終えた秋人とクラーラの2人は、みんなの所へと戻って行く。それから時間は過ぎていき、学園艦に戻る時間になった。
「アキーシャ、携帯貸しなさい!」
「携帯?」
「いいから!」
カチューシャがそう言って来たので、秋人はポケットに入れていた携帯を取り出してカチューシャに渡す。そして、自身のアドレスと交換する。
「これで、いつでもカチューシャに連絡して来なさい!」
「あぁ、ありがとう」
「それじゃ、私達は失礼するわ。じゃなあね、ピロシキ」
「「До свидания(さようなら)」」
そうして、カチューシャとノンナと共にプラウダへと帰って行く。
「それで、クラーラ、アキーシャと結局何を話していたの?」
「世間話ですよ、カチューシャさま」
とシレっと誤魔化す。三人は、そのままプラウダの学園艦へと向かって行った。
戦車も回収され、大洗のみんなが先に学園艦に戻っている中、秋人が最後に学園艦へと戻ろうとしていた時、
「秋人お兄ちゃん………ッ!」
「ん?」
聞き覚えのある声に呼び止められた。振り向くと、そこにはサイドアップの髪型の少女が駆け寄ってきた。そう、島田愛里寿だった。
「愛里寿ちゃん、今日の試合見に来てくれてたのか!」
秋人が声をかけると愛里寿は嬉しそうに微笑み、頷いた。
「うん。秋人お兄ちゃん達が出てるから、お母様も連れてきた」
そう言うと、前方から母親の島田千代が息を切らして走ってきた。
「愛里寿!勝手に離れないでって言ったじゃない!」
「あう………ゴメンナサイ………」
その光景に秋人は苦笑を浮かべるが、千代は直ぐ様視線を秋人に向けた。
「貴方が、日向秋人君よね?」
「え、はい」
そう答えると、千代は微笑んで言った。
「愛里寿の母の島田千代です。先日は、家の娘が大変お世話になりました」
「いえ、自分はそんな大層なことはしていません。自分は、ごく当然の事をしただけですから」
頭を下げた千代に、秋人は微笑みながら返した。
「貴方に会ってから、この子が『大洗の試合を見に行きたい』って聞かなくて」
「そうだったんですか」
秋人が嬉しそうな微笑みを浮かべる傍らで、愛里寿は恥ずかしそうに秋人に抱きついて顔を埋めていた。秋人も、それ受け止める様に左手を愛里寿の背中に回し、右手で頭を優しく撫でる。愛里寿は、気持ち良さそうに目を細める。
「あらあら、人見知りなこの子がこんなにも懐くなんてね………………」
そう言いながら、千代は箱の菓子を差し出した。
「つまらないものだけど、お礼にどうぞ」
「これはどうも、態々すみません」
そうしていると、愛里寿がアドレス交換を頼んできた。どうやら、あの後携帯を買ってもらったらしい、そして秋人は快く応じた。
「お兄ちゃん、今度は家に来て。いっぱい遊んだり、お話しよ」
「あぁ、分かった。約束だ」
と愛里寿と指切りをする秋人。
「それじゃ、俺はそろそろ行くから。それじゃ、またな!愛里寿ちゃん」
「うん!」
そう言って、秋人は学園艦へと歩みを進める。その間、愛里寿は秋人の背が見えなくなるまで手を振って見送り続けてくれた。