しほとまほを乗せたヘリが飛び去ったその後、出払っていた武部達が戻って来た。武部達はみほと話していたが、直ぐに秋人の方にやって来た。
「ねぇ、日向さん。結局、みぽりんの親と何話したの?」
「そうですよ、日向殿」
「みほさんに聞いても、教えて貰えないものですから」
「みほさん、なんで隠してるんだ?」
「……秋人さんが言っていいなら大丈夫だと思うよ?」
みほは秋人が関係していたから言わないでいてくれていた。確かに、婿養子云々は俺とまほさんの問題でもあるしな。どのみちみほが言っても問題ないだろう。
そして武部たちが早く教えなさいよばりにこちらを見てくる。
「俺が呼ばれた理由は・・・・・・西住流の婿養子にならないかって言われたんだよ」
「ちょっと!婿養子ってどういうこと!?」
秋人が婿養子になると言ったら何か、みんなが殺気立っている。何故だろう?
「どういうこともなにもそのまんまの意味だ」
「じゃ、じゃあ、日向殿は西住殿と結婚してしまうんですか?」
「いや、みほさんの方じゃない、その姉のまほさんの方だ」
それを聞いて、武部達はルクレールであったみほの姉のまほの事を思い出す。
「……まほさん?いつの間に名前呼びに?」
「別に深い意味はない」
秋人が、そう言うが全員がジト目で見てくる。
「へぇー、深い意味はない……ね」
「本当にそうか・・・・・」
「私達は名字呼びなのにですか……?」
「理由は本当にないんですか?」
「名字だと、混同してややこしいからだけだ」
武部、冷泉、秋山、五十鈴が秋人を見つめてそう言ってくる。何なんだろうか。
「あのぉ……。それで結局、日向殿は結婚してしまうんですか?」
「いや、まだそれは決まってないな」
「まだ?それはどういう・・・・・」
「黒森峰と西住流に宣戦布告して来たからな。もし決勝戦で大洗が負けたら俺は西住流の婿養子に成る」
「え?宣戦布告!?ど、どういうことなの!?なんでそうなったの?」
「それは、・・・・・家元が戦車道から逃げ西住流を汚すみほさんを勘当するとか言ってたからな」
秋人の口からみほの勘当と言う言葉が出て、武部達は大洗が廃校になると聞かされた時と同じぐらい衝撃を受けた。
「西住殿を勘当だなんて・・・・」
「そんなのあんまりだよ!」
「酷過ぎます!」
「五十鈴の母の時よりも理不尽な理由だな・・・・・」
など、武部達がみほの勘当に納得が出来ずに思い声を上げる。
「どのみち俺たちは負けられないんだから言おうが言うまいが同じ事だ」
「そ、それはそうだけど……」
「心配すんなよ!ヤバくなったらオレがなんとかしてやっからよ!」
そう言って秋人は、その場を後にした。その後、他の戦車道メンバー達と合流して最後の訓練が始まる。メンバー達は、戦車格納庫前で整列していた。
「さあ〜、明日はいよいよ決勝戦だよ!!目標は優勝だからね!!」
「大それた目標なのは分かっている。だが、我々にはもう後がない。負ければ・・・・我々の双肩には学園の未来が懸かっている!みんなの為にも!あと一戦!全力で挑んでもらいたい!」
「んじゃ、西住ちゃんも何か一言!」
「え!?」
「ほら」
ほらこっちに来な、と会長が手招きする。西住は一瞬躊躇ったが、苦笑混じりに前にでる。
「明日対戦する黒森峰女学院は・・・・私の居た学校です。でも、今はこの大洗女学園が私の大切な母校でだがら・・・私も一生懸命落ち着いて、冷静に頑張りますので・・・・みなさんも頑張りましょう!!」
『『『『おおーーーっ!!』』』』
みほの掛け声に、全員が声を上げる。誰ひとりとして暗い顔をしてるものなどいなかった。
「西住ちゃんらしい士気の上げ方だねー」
「それってほめられてるんですか?」
そう言っていると、角谷が今度は秋人にみんなに一言言う様手招きしながら言ってくる。
「それじゃあ、日向君も副隊長補佐として何か一言」
「ん?俺もか・・・・・みほさんで纏まったろうに・・・・全く。まずは、戦車道初心者の君達がここまで成長して嬉しく思う。今度の黒森峰との戦いはこれまで以上の相手になる。だが、どんな困難な戦局でも必ず理論的な最適解はある。混乱してヤケになりそうな時ほど、それを忘れるな!俺から言えるのは、皆最後まで全力で頑張ってくれ!!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
秋人の言葉にやる気をみせる戦車道の面々。
「遂に、明日だね」
「ああ………………」
黒森峰との決勝を前にそう言うミーナに秋人が頷く。
そうしてこうして、夕暮れになり決勝戦前の最後の練習が終わった。
「練習終了!やるべき事は全てやった、後は各自明日の決勝に備える様に」
「「「「「「はい!!」」」」」
「では、解散!」
河嶋の言葉に従って、それぞれチーム毎に別れて行くメンバー達。義援金を使えるだけ使って戦力を整え、作戦も練った。戦車の最終整備は自動車部に任せるしかないので現状で、やれる事は全部やっただろう。後は明日の展開次第、黒森峰の戦法によっては今回立てた作戦が全くの無意味になる可能性だって十分にある。が、試合に出ない俺がそれをどうこう出来るはずもない。
「ねぇみぽりん、みぽりんの家でご飯会やらない?」
「沙織さんのご飯、食べたいです!」
「前夜祭ですねっ!」
「祭りじゃないだろ…」
「例えですよ」
どうやら、みほたちは前みたいに集まって飯にするらしい。まぁやれば良いと思うよ、なんたって明日は決戦の日だ。あんこう以外の各チームも各々に集まって話してる所を見るに、この後ご飯にでも行くのだろう。
「秋人さん」
「…うん?」
そんな様子を見ながらミーナ達と帰ろうとすると、みほに声をかけられた。
「えと…、秋人さんも一緒にご飯食べないかなって?」
「いや、俺はいい」
みほが遠慮がちに声をかけてきた時からなんとなく察してましたからね、すんなり返事を返す。
「えー、日向殿も一緒に食べましょうよ!」
「どうですか?日向さん」
ナチュラルに俺も含めてくれるの?時々思うけど、みんなちょっと危機感足りなくない?男を家に誘うって
「俺は、いいからお前たちだけで楽しめ」
そう秋人が言ってみほ達の誘いを遠慮していると
「秋人、行って来な」
「ミーナ・・・・」
「私達の事はいいから、折角の女の子からの誘いなのよ。その思いを無下にしないの」
ミーナからそう言われて秋人は、みほ達の誘いに乗ってみほの家でご飯を食べる事になった。
みほの家に行く前に店に寄り、肉や野菜など材料をを買っていく。武部の手元を見るに豚ロース、今日はカツか…縁起を担いでいるのだろう。
食材を買い込み、みほの家に。
「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」
練習が終わってみんなでご飯を食べる事になったから、その後夕食の買い物をしてみんなでみほの家に集まった。秋人が居る為、みほが新たに買った小さなテーブルを元からあるテーブルにくっつけて、6人が座れる様にする。
「あむっ…、おいしー!」
「カラッと揚がってますね」
「いつでもお嫁に行けますよ」
今日の夕食はみんなで相談してトンカツをメインにした。ちょっとした験担ぎみたいなものだった。
揚げ物も得意なのか、武部が揚げたカツは良い揚がり具合だった。ほとんど沙織さんに作ってもらって…、沙織さんすごいなぁ…、今度私もお料理、教えて貰おうかな。本当に女子力高いのに、何でこれでモテないんだろうな…。
「重大な発表があります・・・・実は私・・・・」
そう思っていたら、沙織さんが改まって箸を開いた。…なんだろう?
「婚約したんですか!?」
「彼氏も居ないのに?」
婚約とか出てくる辺り、武部さんのキャラが伺えるな。
「違うわよ!じゃん!!」
武部が嬉しそうに見せてくれはのはアマチュア無線の免許証だった。
「アマチュア無線二級に合格しましたー!」
しかも2級である、これは確かに重大発表だ。
「まぁ!!」
「すごい、四級どころか二級なんて」
「二級って結構難しいんじゃ?」
武部が、アマチュア無線2級に合格したと聞いてみほ達が武部にみほ達は褒め称える。
「いやー、大変だったよぉ。日向さんに問題集作ってもらったり、麻子にも勉強付き合って貰って」
「教える方が大変だった…、日向さんも苦労したんだな」
「麻子ひどい!!」
「でもすごいよ、武部さん」
「通信手の鑑ですね」
「明日の連絡指示は任せて、どんな所でも電波飛ばしちゃうから」
嬉しそうに笑う武部にみぼも嬉しくなった。しかし、本当にすごいと思う。
「まさか、そんな免許を取っていたなんて。重大発表がこんな事だとは思いませんでした」
「うん、婚約発表はないと思ってたけど…」
「あー!みぽりん何気に酷い!!」
「え?あっと、えっと・・・あの・・・」
でも私達まだ高校生だし、そういうのってよくわかんないけど早いんじゃないかな…?
「分かった、試合に勝ったら私、婚約してみせる!日向さんと!」
と武部が宣言した。その発言を聞いて秋人は手に持っていた箸を落とした。
「なんで俺なんだ…」
「だって私の周りで親しい男子なんて日向さんだけだし、結構ライバルも多いじゃん!だから私も!」
「どーいう理屈なんだ…それ」
冷泉さんのツッコミが頼もしい。
「そう言うみぽりんこそ、彼氏の一人でも作ってみなさいよ。好きな男とか居ないの?」
「え?」
まさか自分がその手の話をするとは思わなくて、少し驚いてしまいました。
「私は…」
…よくわからない、というのが本当の気持ちです。今までそんな事考えた事もありませんでした。黒森峰も今の大洗も女子校だし、同世代の男の子で仲の良い子なんてずっと居なかったから。
「私は…みんなと一緒に居るのが、今すごく楽しいから」
「沙織さん、華さん、麻子さん、優花里さん、そして秋人さん、皆の事が大好きだから…」
大洗に転校して、みんなに出会えて本当に良かったと思います。その気持ちは大事にしたいと、そう思います。
「西住殿に告られましたー!!」
「嬉しいけど、みぽりん欲張りだねぇ日向さんまで好きだなんて…」
「あ、ち、違くて、そうじゃなくてね!えと…それは」
秋人さんは、大洗での…、ううん、私の初めての男の子の友達。
無愛想で、他人と距離を取ろうとしたり、でも…とっても不器用な優しい男の子。
「俺も好きだぞ」
秋人は、微笑みながらそう言う。友達として好きって事だろう。
「躊躇ないな」
「というか、世の中の女性ノックアウトの笑顔です!!」
「なんだか私がすごく恥ずかしい」
「ね、ね、じゃあどれくらいみぽりんの事好きなの?(日向さんって意外と天然な所があるし・・・・)」
(真面目な日向さんの事ですからきっと模範的な・・・・)
と冷泉が呆れ、秋山がそう言い、みほは顔を赤くし武部と五十鈴は、秋人がどんな回答をするのか少しワクワクしてた。
「そうだな・・・・・・・・・・あ、すこすこのすこだ」
『日向さん!!!?』
「何その滅茶苦茶な文法!?」
「絶対教えたのねこにゃーさんあたりでしょ!!」
笑い声が響く部屋の中、夜は過ぎていく。皆それぞれの思いを抱え、それぞれの決意と共に、明日に向かって。