砲撃はマウスのスリットに直撃…、白旗を上げさせた。
「「「「うおおぉおぉおおおお!!」」」」
観客席から歓声が上がる。そりゃそうだ、こんな大物を倒したのだから。
「すごい!マウスを仕留めました!!」
「私達も今度やろうかしら、マークⅥで」
興奮して叫ぶオレンジペコとは対照的に、ダージリンは落ち着いているような様子を見せているものの、マグカップを置いた事によって空いた右手は固く握られ、彼女も先程の光景に興奮しているのが窺えた。
「凄いわね。まさか、あんなやり方でマウスを撃破するなんて………………」
千代もこれには驚いたのか、口許を押さえて目を見開いている。まさか、ヘッツァーを下敷きにして、さらにそれを足蹴にして車体に別の戦車を乗せて動きを完全に封じ、その隙に撃破に持ち込むとは思わなかったのだろう。
「あんな作戦を考えた西住流の隊長も凄いけど………………やっぱり、お兄ちゃんの戦車が一番凄い。あんな挙動、そう簡単には出来ない」
愛里寿は、大洗の作戦よりも秋人のチームの操縦技術に驚いていた。
「ブラボー!すごいじゃない!!」
「凄い。あのマウスを撃破するなんて………………!」
別のエリアで観戦しているサンダースでは、アズサがそう呟いていた。
「恐らく、あの作戦を考えたのはみほね………………excitingよ!それにアッキーの戦車も、中々にcrazyな動きを見せてくれるじゃない!やっぱり、アッキーが加わった大洗の試合は、見てて退屈しないわね!」
ポップコーンを口に放り込みながら、ケイはそう言った。
「………………ハラショーの一言に尽きるわね、アレ」
プラウダでも、あの光景には驚きを隠せずにいた。流石に、戦車を下敷きにするなんて作戦、誰も考え付かないだろう。ノンナに肩車されているカチューシャは、淡々と呟いた。
その頃、市街地へ踏み込もうとしている黒森峰本隊には、マウスの車長から、撃破されたとの報告を受けていた。通信を受けたエリカは有り得ないと言わんばかりの表情を浮かべる。
「マウスが・・・・市街地へ急げ!」
エリカが叫ぶと、黒森峰の戦車隊は加速して、市街地へと急行した。そんな中丘の上から双眼鏡で黒森峰の動向を監視していた梓からの無線が入る。
『西住隊長・・・・黒森峰、あと三分で到着します!』
それが俺たちの最終決戦の始まりを告げる合図だった。
「分かりました、みなさん。黒森峰主力が近付いてます、この場を離れ次の行動に移ってください!」
『はい!』
『ほーい』
『ヤー』
みほからの指示に、他のチームから次々と返事が返される。未だにマウスの下敷きになっているカメさんチームのヘッツァーも、ゆっくりと後退してマウスの下から出る。
「カメさんチームボロボロだね・・・・」
「うーん・・・・でも何とか動いてますね・・・・」
沙織と優花里も心配する中、ヘッツァーが着地の衝撃でドスンと大きな音を立てるマウスを他所に、みほ達に続こうとしたのだが、エンジン部分から何かが派手に壊れたような大きな音を立てながら、ヘッツァーは速度を落としていく。
「あっ!?冷泉さん、戦車停止して下さい!」
「どうした?」
みほが後ろを振り向き驚くと、冷泉に即座に戦車を止める様指示する。
「西住殿?・・・あっ!ヘッツァーが!?」
「カメさんチームが・・・・・」
突然の事に優花里は、装填手ヨウハッチから顔を出すとヘッツァー完全に動きを止めてしまい。エンジンからは黒煙が上がり、遂には行動不能を示す白旗が飛び出す。
「ふぅ………良くやってくれたな、此処まで……………」
先に車外に顔を出した桃が、その上面装甲を撫でながらそう呟いた。
「うん」
「我々の役目は、終わりだな」
その後、柚子と杏も出てきてそう言った。
「西住隊長!」
柚子と杏の呟きにそう返し、桃はⅣ号から降りたみほに声をかけた。
「すみません………………」
「謝る必要無いよ!」
「良い作戦だった!」
申し訳なさそうに言うみほを、柚子と杏が励ます。
「後は、任せたよ!!」
「頼むぞ!」
「ファイト!」
「はい!」
最後に言った杏、桃、柚子に、みほはそう返してⅣ号に乗り込み、前進の指示を出す。戦車が続々と動き出すのを見て、秋人もティーガー改を発進させようとするが
「日向君!」
其処で、杏に呼び止められた。
「何です?」
呼び止められた秋人は、ミーナに未だティーガー改を発進させないように指示を出し、そのまま振り向いた。杏は、暫く躊躇うような仕草を見せるものの、やがて決心したのか、大声で言った。
「西住ちゃん達の事、お願いね!」
「………………」
そう言われ、秋人は少し唖然としたような表情を浮かべていたが、やがて、不敵な笑みを浮かべた。
「任せてください、みんなで優勝だろ」
「ッ!」
そう言って微笑みながらサムズアップをすると、杏の顔が赤くなるのを無視して、秋人はティーガー改を発進させる。少しで遅れたため、ミーナは速度を上げて本隊を追い掛け、何とか合流を果たした。みほは、その場に大洗チームの残りの戦車全てが居るのを確認すると、全車両に通信を入れた。
「此方は5輌です、相手はまだ14輌。ですが、フラッグ車はどちらとも1輌です。向こうの狙いはフラッグ車である私達あんこうチームです」
みほの言葉に、メンバーの間で緊張が走る。
自分達の戦車が撃破されても試合は続くが、フラッグ車であるⅣ号が撃破されれば、試合は終わってしまうのだ。そうともなれば、嫌でも緊張すると言うものだ。
「みなさんは、敵主力を市街地に誘い込み相手の戦力を出来る限り分散にして下さい」
『みんな、敵を挑発しまくるよ!』
『『『はい!』』』
今度はレオポンチームに向けて言った。
「あんこうは敵フラッグ車との1対1の状況を窺います。レオポンさんの協力が不可欠です!」
『心得たれ』
『燃えるねぇ~!』
「前方はもちろんですが、後続のヤークトティーガーや特にエレファントの火力にも十分に注意してください」
『隊長、後続の方任せてもらっていいですか?』
「お願いさします」
『『『『よっしゃーーーッ!!!』』』』
梓達一年チームにそう言い
「ワシさんチームは、独立行動を許可します。その場の状況に応じて、此方の戦車の援護を。そして可能なら、レオポンチームの援護をお願いします!」
『Ich verstehe!!』
ティーガー改の車長である秋人達からの返事を得る。みほが次々に他のやつらに役割を与えていく。
「麻子さん、袋小路に気を付けて相手を撹乱して下さい」
「OK」
「沙織さん、互いの位置の把握情報を密にして下さい」
「了解!」
「華さん、優花里さん、HS0017地点までは極力発砲を避けて下さい」
「「はい!」」
「それでこれより最後の作戦『ふらふら作戦』を開始します!!」
『『『『『『はい!』』』』』』』
みほが言うと、他のチームのメンバー全員からの返事が返される。いよいよ決勝戦も大詰めを迎えてきた、果たして『ふらふら作戦』とは一体?そして、大洗は優勝する事が出来るのか?