黒森峰の戦車大多数が撃破されたと言うアナウンスを聞いてまほは、エリカに無線で連絡を取っていた。
『!エリカ、日向秋人に見つかったのか!?』
「はい隊長、こちらに向かって攻撃をしています!こちらも反撃をしたのですがーー」
『やられたのか・・・・・・』
「はい・・・・私と小梅を除いて」
『…………もう半分以上もやられたか。』
まほはエリカからの報告を聞いて、自分達がたった一人の男、秋人に追い詰められていることを知った。
「小梅!」
「はい!」
エリカに呼ばれた小梅のパンターは、秋人達のティーガー改に照準を合わせようとしていた。秋人達も先の爆発の衝撃で脳が揺れて少しふらつく状態だがこっちに照準を合わせようとするパンターに急いで照準を合わせようとする。
「「撃って!!」」
そして、両者同時に発射。発射された二つの砲弾は互いに僅かに接触すると軌道がずれて明日の彼方へと飛んでった。
「ミーナ、全速でパンターに突進する。俺の合図で攻撃を交わせ!良、装填しろ。」
「了解、装填!」
秋人に言われ良は、徹甲弾を装填する。
「出来るだけ、敵に接近してから発射する。絶対に成功させる!」
「サーカスの見せ物なら完璧な演出ってところかな?」
「スターになろう。前進!」
秋人がそう指示すると、ミーナはティーガー改を発進させパンターに向かって行く。
「前進!」
小梅のパンターも秋人達ティーガー改に向かって前進する。
「停止!」
小梅がそう言うとパンターは、停車して砲撃しようとしていた。それを見た秋人は、
「右だ!!」
と叫び、ミーナは右にハンドルを切る。それと同時にパンターの主砲が火を吹き砲弾が発射された。発射された砲弾は、ティーガー改の左砲塔を掠め中に居る秋人達に振動が伝わって来た。
「前進!」
再びパンターが前進を開始する。
「左だ!」
と秋人が言うとミーナは左にハンドルを切る。
「停止!」
小梅の指示でパンターは、ティーガー改に照準を合わせようとしていた。
「右だ!!」
それを見た秋人は、右にハンドルを切る様に指示する。ティーガー改が右に曲がると同時にパンターから砲弾が発射され、砲弾はティーガー改の前面装甲下部に設置された予備履帯に命中し、予備履帯を吹き飛ばす。そして、ある程度距離が迫った所でティーガー改の照準はパンターの砲塔と車体の間の溝に狙いを定める。
「ティーガーの足元に!」
パンターもティーガー改の左の履帯に狙いを定める。
「喰らえ!悪魔め!!」
「「撃て!!」」
と同時にティーガー改とパンターから同時に砲弾が発射された。発射された互いの砲弾はティーガー改の砲弾は見事に命中し、勢いを失いながら前進する。パンターから放たれた砲弾はティーガー改が右に曲がろうとしていた事で履帯には当たらず側面装甲に命中したが側面でも100mmで空間装甲を採用しており、撃破まではいかなかった。
「突進しろ!」
「「「「うぉぉー!!」」」」
「行け!!」
ティーガー改はパンターの真横にドリフトすると前進してパンターに体当たりを喰らわし廃校の壁にパンターを激突させる。そして、激突されたパンターから撃破判定のフラグが上がる。
『黒森峰、パンター走行不能!』
パンター撃破のアナウンスが流れる。
一方、時は少し遡り秋人が黒森峰の軍団に突撃をしている頃、みほ達はまほと一騎打ちをしていた。
「冷泉さん、左へ!」
「了解!」
「次弾装填!」
「砲塔右に旋回!」
「次撃ちます」
ティーガーとⅣ号は建物を両側を挟む形で走行しながら、建物の脇道に差し掛かると、お互いに同時発射をする。
「次弾装填!」
「撃てっ!」
脇道に差し掛かっては砲撃を繰り返していた。
「次弾装填」
「麻子さん、ブレーキ!・・・・くっ!全速っ!」
どちらかが片方を呑み込みかねないほどの砲撃戦!どちらも絶対に退けない意地の張りだった。まさに一進一退の攻防、細いロープを渡るかの様な意地の張り合いだった。そして両者共に最初の広場に戻って来た。
「こちらレオポン。なんかねぇクロ校が無理矢理乗り越えて来たから気をつけてね、ってゆーかあんた達強引だって!!」
激しい砲撃戦の末に中央広場に戻ってきた二両の隊長車だが、レオポンチームからのその通信に状況は一変した。
「みぽりん!敵が近付いているから急いで!!」
「やっぱり一撃をかわしてその隙に距離を詰めるしか…」
こうなると、もう撃ち合いを続ける猶予は無い。時間をかければ、それだけ黒森峰の増援がこの中央広場にやって来る。
「優花里さん!装填時間、さらに短縮って可能ですか!?」
「はい!任せて下さい!!」
西住みほの言葉に秋山は間髪入れず答える。
「行進間射撃でも可能ですが、0.5秒でも良いので停止射撃の時間を下さい、確実に撃破してみせます」
その意図に気付いた五十鈴の言葉に西住みほは頷いた。
「麻子さん、全速力で正面から一気に後部まで回り込めますか?」
「履帯切れるぞ」
西住みほの指示に冷泉は答える。出来る出来ないの話ではなく、それをやってしまえば履帯がもたない、そうなるともう戦えなくなる。
「大丈夫、ここで決めるから」
「わかった」
西住みほは再びキューポラから上半身を出す。どのような結果になろうと、次の攻撃が最後になる。
「今、行きますから待ってて下さい!!隊長!!」
全速力でまほの下へと向かっていた。西住流は、たとえなにがあっても前に進む流派だ。それが王者であり、黒森峰であり、彼女の信念だ。
そして、彼女はこの決着の舞台に間に合った。西住みほを再びその視界にとらえる事ができた。
「今度はもう…逃がさないわよ!!」
もはや射程範囲内だ、この距離なら砲撃は確実に届く。手が届く。あの…西住みほに。
ここまで全速力で、何があろうと突き進んでこれた彼女だからこそ、この状況に至った。だが、そう思い通りにはならない。突然、前の建物が爆発したかと思うと
「な、何っ!?」
エリカの走っていたルートが瓦礫で塞がれてしまったのだ。
「…ッ!!」
逸見エリカの目前から彼女が、西住みほが遠ざかって行く。
「待っーーー」
手を伸ばしても届く事はなく。エリカが後ろを振り返ればいつの間にか追い付いていた秋人達ティーガー改だった。
「…ッ!!」
「うちの隊長の邪魔をするな!これは二人の勝負だ、野暮な真似は無しだ!」
「あなたがここに居るって事は・・・・・小梅もやられたみたいね・・・・・」
秋人がここに居る事は、赤星小梅もやられたと言う事だ。すると、秋人は左手の手袋を外して投げ捨てる。決闘の申し出だった。
「一騎打ちって訳ね、受けてたとうじゃない!」
エリカも秋人の申し出を受けて立つ事にした。そうして、両者正面を向いて距離を取る。秋人はクラッシュキャップを深く被り、一旦車内に身を引っ込め前を向いた。
「………………ティーゲル改操縦手、紅月ミーナ」
「えぇ」
秋人の呼び掛けに、ミーナは操縦桿を握りながら答える。
「砲手、香坂綾乃」
「うん、秋人」
引き金に指をかけたままにしながらも、スコープから顔を離した綾乃が振り向いて答える。
「装填手、佐山良」
「おう」
そして何時でも装填出来るようにと、弾薬庫から88mm砲弾を取り出して構えていた良も答えた。長年共に戦ってきた親友達の顔を順に見終え、秋人は最後にある人物の名を呼んだ。
「無線者、成瀬幸也」
「うん」
「ドイツ国防陸軍戦車大隊隊長兼大洗女子学園戦車道特別助っ人ティーゲル改車長として命じる、敵戦車を粉砕しろ………………これが、この試合での最後の命令だ!」
その言葉に、他の4人は互いに顔を見合わせる。そして頷き合うと、一斉に言った。共に独ソ戦と言う地獄の戦場を戦い抜いて来た戦友だ。
「「「「Ich verstehe!!」」」」
その言葉に満足げに頷くと、秋人は4人の気合いを入れ直す。
「さてと…………逸見エリカ、お前は俺が叩き潰してやる。みほさんの友達だろうがみほさんのことをバカにしてたんだ。それなりの覚悟はあるだろ。」
「さぁ来なさい。日向秋人!勝負よッ!!」
その声と共に、両者が走り出す。
「貫徹させてやる」
そして、ある程度近づいてきた時………………
「悪いがお前には負けねぇよ?」
「「撃てェ!!!」」
2人の車長が、同時に砲撃命令を出す。そして、同時に放たれ、Iティーガー改から放たれた88㎜砲弾は、ティーガーⅡの砲塔と車体の間の溝へ、ティーガーⅡから放たれた88㎜砲弾は、ティーガー改の履帯に命中する。互いに至近距離で発砲したからか、砲弾は両者共に命中する。
「きゃあああ!!」
それによって、エリカのティーガーⅡの車内が軽いパニック状態に陥っている。爆発音と共に黒煙を噴き上げ、エリカのティーガーⅡから撃破を示す白旗が飛び出した。一方のティーガー改は砲弾が命中し、片方の履帯が外れてその場でぐるぐる回転し始める。
『黒森峰女学園、ティーガーⅡ行動不能!」
そんなアナウンスが響いた直後、今度は中央広場から爆発音が響き渡る。余程凄まじい爆発だったのか、中央広場の方から爆発によるものなのであろう黒煙が噴き出ていた。そして、運命のアナウンスが、その場に居る者全員の耳へと入ってくるのだ………………
『黒森峰女学園フラッグ車、行動不能。よって………………大洗女子学園の勝利!』
秋人がエリカに決闘を挑んで決着をつけている頃みほ達あんこうチームは、
「この一撃は、皆の思いを込めた一撃………………ッ!」
スコープを覗いた華が、そう呟く。
「前進!」
そして、みほの指示と共に、操縦手の麻子はⅣ号を急発進させ、銅像の周囲を走らせる。そう。彼女等はグロリアーナとの試合で、ダージリンのチャーチルを仕留めようとした時と同じやり方で決着を着けようとしているのだ。
みほの考えている事を察したのか、まほはティーガーⅠの操縦手に指示を出し、背後を取らせないように超信地旋回させる。
「グロリアーナでは失敗したけど、今度は必ず………………ッ!」
超信旋回によって、88mm砲の砲口を此方へと向けるティーガーⅠを睨みながら、みほはそう呟く。そして、麻子の操作でⅣ号が横滑りを始めた時………………
「撃て!」
その指示を受け、華は75㎜砲弾をティーガーの車体前部の左側に叩き込む。
「撃て!」
それに続いてまほも指示を出し、放たれた88㎜砲弾は、残されていた砲塔左側のシュルツェンを吹き飛ばす。そして、横滑りしたままティーガーの背後を取ろうとするⅣ号の履帯と地面との接地部からは火花が飛び散り、挙げ句には右の履帯が千切れ飛び、案内輪も幾つか外れて飛んでいく。超信地旋回では追い付かないと悟ったまほは、今度は砲手に指示を出して砲塔を後ろへと回させる。
そして、Ⅳ号がティーガーの背後を取り、エンジングリルに砲口を突き付け、まほのティーガーが、Ⅳ号の車体前部の装甲へ砲口を突き付けた直後、両者共に発砲。爆発音が響き渡ると共に、辺りを黒煙が包み込む。そして、その黒煙が晴れようとしている中、ジリジリと、何かが焼けるような焼けるような音が聞こえ始める。黒煙が完全に晴れると、被弾部から発火しているⅣ号とティーガーの姿が鮮明に映る。結果を見る勇気が無いのか、みほがキューポラに顔の半分を引っ込めている中、対照的に上半身を乗り出しているまほは、暫くの沈黙の後、その目を閉じた。みほが車外に身を乗り出すと、ティーガーの車体後部から白旗が出ているのが見えた。
『黒森峰女学園フラッグ車、行動不能。よって………………大洗女子学園の勝利!』