ガールズ&パンツァー 蘇る宿命の砲火   作:人斬り抜刀斎

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家元は素直じゃないです!

表彰式を終えた秋人は、観客席の方を歩いているとそこには西住流師範にして、あの西住姉妹の母親西住しほと島田流の師範で愛里寿の母親の島田千代がいた。その二人の隣にはお手伝いさんの菊代と千代の娘の愛里寿が居た。

 

「やはり試合…見に来てたんですねしほさん。千代さんも見に来ていたんですね」

 

「…えぇ」

 

「えぇ、日向くんの活躍みせてもらったわ」

 

と秋人は、軽く挨拶をする。

 

「…やはり、あの子は西住流に相応しくないわ」

 

しほは、勝利してもみほの事を西住流に相応しくないと言うと

 

「あら、さっきまで拍手してなかったかしら?」

 

「蚊が居たのよ」

 

と煽る千代に対してしほは蚊が居たのだと誤魔化す。

 

「…そうですか、夏ですね。それにしても、みほさんが西住流には相応しくないですか」

 

「えぇ、あの子の戦いを西住流と呼ぶ訳にはいかないわ」

 

確かに、みほの西住流の王者の戦いとはほど遠い。他にやり方が無かったとはいえ、煙幕やらなんやら使える物はなんでも使った。西住流の戦い方とはかけ離れたやり方だ。どう言葉を取り繕っても、あれを西住流とは呼べないだろう。

 

「でもーーー」

 

でも、だがそれでも。この人が認めなくても一つの事実はここにある。

 

「でも、勝ったのはみほね」

 

「………」

 

驚いた。秋人が言おうとするより先に、しほさんは答えたのだ。

 

「…どうかしたのかしら?」

 

「え?あ…いや、すいません、意外だったんで」

 

よくよく考えたら失礼な返答ではあるが、それだけ驚いていたのだろう。

 

「私はただ事実を口にしただけよ。優勝したのは大洗女子学園、それだけよ」

 

「もうしぽりん、素直じゃないだからねぇ〜」

 

「しぽりん、言うなちよきち!」

 

「ちょっと!!ちよきち言わないでって言ってるでしょ!!」

 

(仲良いんだな、この二人)

 

あだ名で呼び合う二人を苦笑いで見る秋人。その言葉を、この人から聞けただけで充分だ。

 

「日向くん」

 

「はい」

 

「みほは…来年も戦車道を続けるつもり?」

 

「続けますよ、必ず」

 

もちろん、それを決めるのはみほだ。だからこれは秋人の勝手な憶測になるが、今のみほが戦車道から離れる事はないだろう。

 

「…そう」

 

それだけ聞いて、しほは短い返事を返す。表情もほぼ変わらない。そう…ほぼだ。その僅かな変化は、まほが微笑んだ時の柔らかい表情に良く似ている。

 

「(つくづく親子なんだなと思う)…嬉しそうですね」

 

だからか、それを茶化すつもりはなく、素直に感想を口にしてしまった。

 

「えぇ。来年、あの子の居る大洗を黒森峰が倒さないと意味が無いもの」

 

本当、素直じゃねぇなこの人。しかもサラリととんでもない事言ってくれるし。

 

「もちろん、あなたも居るわよね?」

 

「さぁ、どうでしょうね?俺たちは、大洗から衣食住を保障してもらう事を条件に戦車道に入っていますから、大洗が優勝し廃校の危機から脱した今・・・・・・もう、大洗に俺たちは必要ないんじゃないんですかね」

 

「けど、みほの今の戦車道にはあなたも居る。だったら…あなたが居ない大洗を倒しても意味が無いもの。それに私はまだ、あなたの事を諦めたわけじゃないから」

 

としほは、秋人がいない大洗を倒しても意味ないと言う。更に黒森峰に勝った事でまほとの婚約は破棄になったが、それでもしほは秋人をまほと婚約させて西住流に引き入れる事を諦めていない様だ。

 

「準決勝の時とはずいぶん印象が違うわね、今のあなたからは覇気を感じられない」

 

「そうでしょうか?」

 

「しっかりなさい、それでは認められないわ」

 

「…認められないって何をですか?」

 

「…なんでもないわ、菊代」

 

「はい、奥様」

 

しほは、呼ばれた菊代が返事をする。

 

「帰るわよ」

 

「わかりました。では日向さん、少しだけよろしいですか?」

 

しほに言葉を返して頷くと、菊代はちょいちょいと秋人に手招きする。

 

「みほお嬢様との事、頑張って下さいね」

 

「…何がですか?」

 

と惚けてみると菊代は、ん~と口元に人差し指を当てて考える。

 

「もしかして…まほお嬢様ですか?」

 

「いや!?だから何がですか!?」

 

「わかりませんか?でも…これはわかっているはずですよ。今あなたが本当に居るべき場所は、こんな所ではないはずです」

 

「………」

 

表彰式が終わって本当なら居るべき場所はそこであるべきだ。

 

「ふふっ、心配はいらないようですね。では日向さん、またお会いしましょう」

 

菊代はペコリと頭を下げて後ろで待っていたしほさんの所へ向かう、しほは秋人と菊代の様子を無言で見つめていた。そのまま帰る二人の背中を目で追う、いきなりの出会いではあったがおかげで気持ちも固まった。

 

しほと菊代が去って行き、残された秋人と島田親子、

 

「お兄ちゃん!!」

 

すると、愛里寿が秋人の方に駆け寄って来た。秋人は、駆け寄って来た愛里寿を抱き止める。秋人に抱き付いた愛里寿は幸せそうな笑みを浮かべていた。

 

「久しぶりね、日向君。優勝おめでとう」

 

「ありがとうございます。千代さん」

 

「ところで日向君、貴方愛里寿の婿養子にならない?」

 

と千代から婿養子にならないかと誘いが来た。おそらく、千代もしほ同様娘の愛里寿と結婚させて島田流に引き入れ様とする魂胆だろう。

 

「ごめんなさい、千代さんその話は断らせて頂きたいです」

 

秋人の俯き千代からの誘いをきっぱりと断った。

 

「どうして、愛里寿は優良物件よ?かわいいし、次期島田流の当主だし、大学でも評判の美人よ?・・・・・・それとも日向君の事情?」

 

「いえ、要領物件とか関係なく……それは愛里寿ちゃんが決めることです。千代さんももうご存知と思いますが、俺は過去からタイムスリップして来た人間で本来この時代にいちゃいけない・・・・・・なにより俺はあの戦争で多くの人間を殺めて来たそんな俺が人を幸せに出来るのか、幸せになっていいのか・・・・・・仮に愛里寿ちゃんがそれでも俺と結婚を望んでいるなら話は別ですが・・・・・・」

 

千代は戦車道連盟の理事長である。秋人の事も調べてある、日本戦車道連盟でしほとの顔合わせの時に秋人の話題になった時蝶野がうっかり漏らしてしまい千代に問い詰められたしほも観念して話してしまった。

 

「何としてでも貴方と愛里寿を婚約させてみるわ!!」

 

「いや、話聞いてました!?俺は愛里寿ちゃんと付き合う気はありませんから!」

 

「言っておくけど、貴方の才能が欲しいからじゃあなく、日向秋人君・・・・・・貴方自身が欲しいからよ?こればかりは愛里寿に頑張ってもらうから」

 

「ほえ?」

 

「将来、愛里寿の隣に貴方がいることを楽しみにしているわ」

 

と千代からそう言われた秋人は放心状態になったが、愛里寿が秋人の服を引っ張る。

 

「お兄ちゃん、目閉じて屈んで・・・・・・」

 

愛里寿からそう言われた秋人は、言われたまま愛里寿の背丈まで屈んで瞼をどじると唇に柔らかい感触が伝わって来た。秋人が気になって目を開けると愛里寿が秋人にキスをしてきた。秋人は愛里寿の行動に目を見開き、後ろにいた千代はあらあらと言った感じで手を口添えて見ていた。

 

「…………これでお兄ちゃんは私の。マーキングしたからね?」

 

「ちょ、愛里寿ちゃん!?」

 

「お兄ちゃんは私とキスするの嫌だった……………?こうすればお兄ちゃんと結婚出来るってお母様が…………」

 

「(千代さん………本気ですか………)あのな?結婚ってのは好きな奴とするんだぞ。何も俺だけじゃない。」

 

秋人は愛里寿にそう言うと

 

「わ、私はお兄ちゃんの事が好きだよ……………?」

 

「!!」

 

愛里寿は上目遣いでそんなことを言ってきた。秋人は生まれてハッキリと言われたのは初めてだった。

 

「……………愛里寿ちゃん。その気持ちは嬉しい。だけどまだ心の準備が整ってないんだ。だから返事は待っててくれないか?」

 

「…………うん。」

 

愛里寿は頷くとそのまま秋人に抱き着いて離れなかった。その後、愛里寿は千代に連れて行かれていた。そして、誰も居なくなると突然携帯が鳴り出した。画面を見て発信元を見ると

 

【アンチョビさん】

 

発信元はアンチョビだった。きっと優勝のお祝いの事だろうと思い電話に出てみると

 

『すまん日向!』

 

開口一番、謝られた。突然の謝罪に秋人は困惑する。

 

「な、なんだ?急に謝って?」

 

事情を聞くと、どうやら昨晩に特等席を確保する為に早く来たはいいけど、時間に余裕がある為その後そのまま宴会を開き早朝までどんちゃん騒ぎをした後全員そのまま爆睡してしまい目が覚めたときにはもう決勝戦が終わってしまっていて完全に寝過ごしてしまったのだと言う。

 

「ま、まぁ、残念だったな。誰かビデオ撮っている奴がいたら見せてもらえよ」

 

『う、うん。・・・・・・それと優勝おめでとう!!見過ごしてしまったお詫びとして喜べ日向!これから宴会だ!!』

 

「宴会か?」

 

『そうだ、大洗の優勝を祝しての祝勝会だぞ!大洗が居なくてどうする?』

 

とアンチョビが優勝した大洗を祝して宴会を開くと言うのだ。秋人としても祝われるのは悪い気はしない。

 

「それはいいが、表彰式終わったからみんな帰ると思うんですが?」

 

『それなら大丈夫だ、角谷にもう言ってある。奴ノリノリだったぞ』

 

杏がやると決めたらそれは、もう決定事項だ。もうテコでも動かない。

 

『それでな、日向に頼みがある』

 

「ん?何だ?」

 

『黒森峰を誘ってくれ、聖グロリアーナとサンダース、プラウダにはもう声をかけてある』

 

「…………黒森峰を大洗の祝勝会にか?」

 

『あぁ、そうだ。簡単だろ?』

 

勝った相手の祝勝会に負けた相手チームを参加させるなんてどんな神経してんだよって秋人なら言ってやってるところだ。

 

「いや、黒森峰は無理じゃないか?負けたその日に相手を祝う気にはなれないだろ?むしろ傷口に塩を塗る行為だろ」

 

『そうか?もちろん負けたのは悔しいが、それだけ相手が強かったんだ。素直に祝福するものだろ・・・・・ついでに黒森峰の残念会も兼ねての宴会にするか!!』

 

「いや、それだとなんか大洗の優勝が残念みたいになっちゃうぞ」

 

決して混ぜちゃいけない2つである。混ぜるな危険!【祝勝会兼残念会】とか字面だけでもわかるこの酷さ。

 

『とにかく任せたぞ!私達は宴会の準備があるからな、アーヴァンティッ!!』

 

「………」

 

とそう言ってアンチョビは電話を切った。

 

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