大洗の祝勝を祝った大宴会は盛り上がりを見せていた。そして、杏達生徒会が大洗みんなの方を向き
「まずこの全国大会の優勝に貢献した事に対して大洗女子を代表して、お礼を言いたい。ありがとうね」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
杏と桃、柚子が大洗のみんなに頭を下げる。
「そして他校のみんなに1つ隠していた事を話すよ、河嶋」
「はい」
今度は杏に変わって河嶋が前に出る。
「あなた達に隠していた事はそれは日向達の正体だ」
河嶋が入った瞬間周りはざわめきが起きる。
「信じられないと思うけど話はしっかり聞いてほしい」
河嶋が秋人達が今から70年前の第二次世界大戦のナチスドイツの軍人で過去からタイムスリップして来た者だと話、日向達は大洗で衣食住を保証する見返りに大洗を優勝させる取り引きをした事などを伝える。秋人達も杏らと相談した上で自分達の正体を明かす事を決めたのだ。
「これが日向達の正体だ。あなた達に隠していたのはまだこの事実を知ってるのは我々大洗の選手と戦車道連盟のほんの一部の人間だけしか知らないからあなた達に話せなかった」
「簡単に言うとアッキーは過去の時代の人間って事!?」
「一応そう言う事になるな」
ケイの問いに秋人が答える。
「俺達は東部戦線の独ソ戦に参加してた。そして俺達はティーガー改に乗っててソ連赤軍との戦闘の末に一度戦死している」
『!』
秋人の一度は死んでるって言葉に他校の生徒達は驚愕する。
「敵艦に体当たりして死んだはずにも関わらず何故か俺はこの世界へ来てしまったようだが俺は生きてる。そしてみんなには正体を隠していてすまなかった」
秋人達がみんなに深々と頭を下げる。
「頭を上げてください秋人さん」
ダージリンに言われ秋人らは頭を上げる。
「秋人さんに助けられた人もいます。それに私達は貴方と言う目標が出来ました。こんな事で私達はあなたの事を責めません。そうだよねみんな」
ダージリンが後ろを向いてみんなを見ると全員がダージリンと同意見だと言う顔をする。
「お前ら…」
「アキーシャこれからもこのカチューシャと戦車道をするのよ」
「あぁ、そうだな」
秋人達は、聖グロリアーナ、サンダース、アンツィオ、プラウダ、黒森峰に自分達の正体を言えて、気が楽になり、その後みんなから質問攻めにあった。それから秋人は飲み物を持ってその場を離れて、近くにあった大きな石に座って休んでいた。
「ふぅ……………これで大洗女子学園は廃校にならないで済むんだよな…………」
「ありがとね日向くん」
すると杏がやって来て秋人に対してお礼を言ってきたのだ。
「会長?みんなと話さなくていいんですか?」
「大会を優勝することが出来たのは日向くんおかげだからね。しっかりとお礼は言わないと」
「別にいいですよ。俺が守りたかったから守っただけです」
「日向くんのお陰だよ、素直にお礼を受け取って欲しいな」
「…………そうすっね」
「改めてありがとう」
「どういたしまして」
杏は改めて秋人にお礼を言う。
「それで角谷会長。俺たちの今後についてなんだが、大洗女子を優勝させて廃校の危機が去った今俺たちと会長の契約が解除されましたね」
「あぁ、その事なんだけどね。日向くん達には引き続き此処で、戦車道をやっててもらいたいんだ〜」
「はあ?」
「いやねぇ〜、廃校は去ったけどさこれからも日向くん達にはここで戦車道してほしいんだよね。だって、日向くん達あっての大洗戦車道だからさ!それに、何より君に此処にいてほしい子達がいるからねぇ」
「え?」
「それじゃあ西住ちゃんに代わるねー」
「はい?」
「あ、秋人さん……………」
杏の後ろにはみほが立っていたのだ。
「どうしたみほさん、なんか用でもあったか?折角アンチョビが宴会を開いてくれたんだから話してこいよ。」
「…………どうしてこっちを見てくれないの?」
「………………」
そう、秋人は杏と話している時も振り返っていなかったのだ。
「…………別に理由なんかねぇよ。ただ空を見てただけだ」
「じゃあ質問を変えるね。どうして宴会場からここに来たの?空を見るだけならあそこでも良かったよね。」
「……………はぁ。」
秋人はため息を着くと、軍帽を脱ぐと血の滲んだガーゼが貼られていた。
「大丈夫なの!」
「あの時、単身で黒森峰に突っ込んだ時砲弾の破片が飛んで来て古傷が開いちまったんだ」
「どうして無茶したの!?」
「これは予想外だ。まぁ時間が経てば治るだろ。」
「そう言う問題じゃないよ!」
みほはそう言って秋人に近付いてから様子を見てきた。
「そんなに近づかないくていいだろ。それに俺があそこからここに来た理由も分かっただろ。あんま心配かけたく無いから早く戻っーーー」
「好きな人がこんなことになっててほっとけるわけないよ!」
みほのその言葉が周りに響いた。秋人は目をぱちくりとして、みほは何を言ったのか理解したのか顔を真っ赤にしていき
「あ…………………」
「…………好きな人って俺でいいのか?勘違いとかじゃなくて?」
「…………………コクッ。」
秋人はそれを聞くとホッとしたような顔をして
「実はさっき島田流の島田愛里寿からも告白されたんだよな……………返事は保留にしてる。告白されててどうするか考えてるんだ。流石にみんなを選ぶ訳にもいかないからな。しばらくは戦車道に集中するから返事は出来んが。」
「…………ならまだ私にもチャンスはあるんだよね?」
「まぁそういうことになるのかーーーーんん!!??」
「ちゅ」
秋人がそう言うとみほが秋人にキスをしてきた。
「お、お前!?」
「えへへ。これからアプローチしていくからね?」
「愛里寿よりもおっかないかもな………みほさんは」
「ん〜」
「ほらほら、拗ねない。まぁ取り敢えず俺はここから動きたくない」
「じゃあ二人で空でも見てよ?」
「……二人きりになるのは久しぶりだな」
秋人はそのまま寝転んで空を見上げていた。
「あの戦争で殺し殺されの人生の中で只々死ぬだけだった俺は、この現代の日本・・・・・いや大洗女子学園に来て俺は全てが変わったんだ……………いや、みほさんに出会わなかったら変わってなかったか。」
「え?」
「俺がどうして学園を守りたかったのか教えておく。俺は学園って言うよりもみほさんの居場所を守りたかった。みほさんの事情を知ってだからこそな」
「…………ううん。私が居なくても助けてたでしょ?麻子さんも居るし会長の為って言って動いてたよ。」
「どうだろうな……………でもこれで学園が守れたんだ。一度休みたいな……………」
「あ、会長がお祝いにこの後、旅館に泊まるって言ってたよ。皆も連れてね!」
「それは豪勢だな。」
秋人はそう言うと手を空に向けて伸ばして
「…………俺が戦車道をするのは間違っていないよな。」
「うん!私は秋人さんと戦車道をしてて楽しかったよ!」
その後は一泊して翌日、電車で大洗の街まで戻ってきた。昨日は大変だった、マスコミに俺が戦車道初の男性選手である日向秋人であると気付かれて質問責めに遭った。
全て隊長であるみほと、頑張った生徒達の功績ですと俺は自分の責務を全うしただけと。輸送車両から戦車を降ろし、一息つくメンバー達。自動車部、本当に一晩で全部直しちゃったよ。
「隊長、なんか言え」
帰ってきてそうそうの会長の無茶振り。皆がみほを見つめる中、注目されて困ったみほはわたわたした後、元気に『パンツァーフォー!』と叫んだ。それに唱和するメンバー達の声が、大洗の駅前に元気に響き渡った。大洗の街中を戦車で凱旋する大洗女子学園チーム。秋人はあんこうチームの戦車に乗せてもらい、優勝旗を手にして軽く振る。風に靡く優勝旗の重さが、今は心地いい。
やっぱりあれかな、みほ達とだからこう感じるのだろう。信号を曲がると、そこには沿道に詰め掛けた大洗の人達。皆がおめでとうと叫び、手を振ってくれている。
その中には五十鈴さんの母親やあの時の車夫がまた号泣してる。秋山さんの両親や、冷泉さんのお婆さんの姿もある、なんかお婆さんが凄い巧みなステップ踏んでる、元気過ぎる。
沙織は街のお年寄り達に笑顔で手を振っている、本当に同年代以外にはモテモテなんだよな武部さん。
俺が手にした優勝旗を振ると、歓声が一層大きくなる。
「ねぇ、帰ったら何する?」
「お風呂入って…」
「アイス食べて…」
「それからぁ…」
「戦車乗ろうか!」
「うん…!」
みほ達の会話に、思わず笑みが溢れる。
本当に、ここは居心地が良い…。今ここに居られる事を、改めて俺は、存在するのか分からないが神に感謝した。そんな事を思いながら秋人はふと空を見上げた。
『生きろ秋人』
(俺は、生きてるよ爺ちゃん。爺ちゃんが言っていたやるべき事がわかったのかも知れない、そうだろ)
祖父に言われた自分がやるべき事がわかった気がする、みほ達の優しく暖かく清々しい戦車道をやるのが、大好きになっていた。
これからも、見守っていけたら……何も言うことはないな。大洗の学園艦が正面に見える、帰って来たのだ。守れた場所に帰ってきた。