ツェルトバーンのテントの設置を終え
「………結局ツェルトバーンのテントを建てたな」
「良いじゃないの、私達にとってはいつも通りでもあの子達にとっては新鮮のようだし」
秋人は、ツェルトバーンを使ったテントだらけの宿営地を見て呟くがミーナがそう言う。ようやく完成したテントを見て杏と桃と柚子がやって来た。
「おぉ、出来た様だな」
「綺麗に出来てますね」
「やっと私の準備体操も終わったぞ」
だが、杏はみほ達がテントを建て終わるまでずっと準備体操をやっていたと言うのだ。
「会長、今まで準備体操してたんだ」
「意外と念入りですね」
「て言うか、まだやってない?」
「みたいですね」
まだ準備体操を続けている杏の姿を見て、沙織と華がそう言い合う。
「じゃあ!水遊びにレッツラゴー!!」
と言って杏は浮き輪を携え、川へダイブして行く。
「レッツラゴー?」
「レッツラゴーって?」
「さぁ?」
「でも、なんか可愛いいレッツラゴーだって!」
「レッツラゴー!!」
「「「「レッツラゴー!!!」」」」
と、それに梓達、1年生チームが続いて行く。
「桃ちゃんが笑ってる」
「笑ってない!!」
「笑ってる」
「笑ってないったら笑ってない!!」
桃は、そう言って川に飛び込んだ。
「いいのか?俺達って戦車道の合宿に来ているのに」
早速遊び始めようとする面々に見て、秋人がそう呟く。
「まあまあ、秋人。良いじゃない」
そう言いながらミーナが、秋人の傍に現れる。
「ミーナ」
「一回戦の試合で苦戦したんだし、多少なりと士気の落ちている者も居る。それに何より、角谷さんが言ってたでしょ親睦を深めるって」
「ハア………まぁ、少し羽を伸ばすのもいいかもな」
ミーナにそう言われ、秋人も返す言葉を無く納得する。
「それそれっ!」
「わあっ! 冷たい~!」
「気持ち良いですね~」
「ヒヤッホォォォウッ! 最高だぜぇぇぇぇっ!!」
とそこでそう言う声が聞こえて来たので水着姿で水の掛け合いをしているみほ、沙織、華、優花里の姿が秋人の目に入る。他にも何時ぞやの機雷型ボールでバレーをやっているバレー部チーム。水鉄砲の撃ち合いをしている歴女チーム。浮き輪を使ってウォータースライダーごっこをしている生徒会チーム。息止め競争をやっている梓、あゆみ、優希、あや、桂利奈。そして、川の流れに身を任せて流れている麻子と紗希の姿も在った。
「………少し気を入れ過ぎたか」
そんな一同の姿を見て、秋人はそう反省するとそんなみんなが水遊びしている側で秋人は釣竿を持って河岸で釣りをする事にした。
そして時は流れ、お腹も減って来た一同は食事の準備に掛かるのだった。調理場の傍にて
「カレーかな?バーベキューかな?」
用意されている食材を見て、みほがそう言う。
「キャンプと言えばバーベキューだ」
するとそこで、杏がそう言って来る。
「そうなんですか?」
「あぁ、カレーやシチューを大量に作るも確かに美味しい」
「うんうん」
「それらを食べようと思えば何処でも食べられる」
「うんうん」
「それに比べてバーベキューは、こう言った屋外じゃないと楽しめないからな」
柚子がいちいち頷きを入れる中、杏がそう言い放つ。
「ほ~う?」
「へぇ、そうなんだ」
「成る程、一理あるな」
その杏の言葉を聞いた優花里、みほ、秋人が同意する様にそう呟く。
「そんな事ないと思いますよ」
「バーベキューだとお店で食べられるから」
「シャラーップッ!!会長がバーベキューと言ったらバーベキューなんだ!」
華と沙織が否定的な意見を出したが桃が怒鳴って黙らす。
「じゃあ、バーベキューにしましょう」
「へーい」
そんな桃を、当の杏が取り押さえるとみほがそう言い、沙織も若干不満そうな声を出しながらも返事を返す。
「そうと決まれば!」
するとそこで、優花里がそう声を挙げたかと思うと、持って来た荷物の中に在った、段ボール箱の中身をシートの上に広げる。
「じゃっじゃ~ん! じゃんじゃかじゃんじゃんじゃ~ん!」
「優花里先輩、何ですかそれ?」
「これって・・・・・」
意気揚々としている優花里に梓がそう尋ね、秋人が優花里が広げた物に見覚えを感じる。
「私の秘蔵コレクション各国レーションです!」
「ゆかりん、今バーベキューにするって言ったよね!?今!!」
優花里が自慢する様にそう言うと、沙織のツッコミが飛ぶ。
「ねぇねぇ、レーションって何?」
「あれじゃない?趣味レーションとかって言うじゃない?」
レーションと言う言葉の意味が分からなかったあゆみがそう尋ね、優希が的外れな推測を述べる。
「そうそう、趣味のレーション」
「それは、シュミレーション」
「どこが違うの?」
「何処もかしくも違うよ!」
更にあや、梓、桂利奈のそう言う会話が続くと、みほがツッコミの様に声を挙げる。
「レーションとは戦闘食とか野戦糧食とも言って、軍事行動中に食べる食糧の事です」
「あ、ミリ飯ってやつですね」
「知ってる、ランチョンミートでしょ!」
「あのゴーヤチャンプルとかに入ってるやつ?」
「おにぎりにもなってるよ」
優花里の説明を聞いた梓達がそう言い合っている。
「たまごとOパム」
「たまごとベーコンとOパム」
「たまごとベーコンとソーセージとOパム」
「OパムOパムOパムOパムたまごOパム」
「「「OパムOパムOパムOパム、おいしいOパムおいしいOパム」」
「うるさーい!!うるさい!!うるさーい!!うるさーい!!」
あゆみ、あや、桂利奈の3人が、イギリスのコメディ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』のエピソード『スパム』の一部を再現し始め、梓から煩いと連呼された。
「これ、全部がそうなんですか?」
「違うよ、色な食べ物が入っているの。チョコとかガムもあるよ」
そこで、優希がそう尋ねると、優花里がそう答えた。
「え?お菓子も入ってるんですか?」
「わぁ、食べたい!食べたい!」
それを聞いたあやと桂利奈が、スパムコントを止めてそう言って来る。
「それ、大丈夫なの?」
「えーと、通常入手出来るのはコレクション用と言う名目なので本来喫食は自己判断なんですが」
「喫食って何?」
「食べるって意味みたいですけど?」
「普通に言えばいいのに」
と優花里の言葉に沙織と華がそう言い合っていると、バーベキュー用の金網にうつ伏せになって寝ていた麻子が起きてそう言って来る。
「麻子起きた」
「お腹すいた」
如何やら空腹で目を覚ました様である。
「自己判断」
「自己責任」
「自業自得」
一方、1年生チームは躊躇の様子を見せている。
「大丈夫、ここにあるのは特別ルートで入手した物なので全部安全に食べられます」
「「「「「わあ~~~っ!」」」」」
しかし、優花里がそう言うと途端に目を輝かせる。
「本当に食べられるんですか?」
「本当です!」
「「「「「わ~!やったやったやった~っ!!」」」」」
大はしゃぎの1年生チーム。
「盛り上がっている様だな………」
「うん………」
そんな一同を、秋人とみほを初めとした一同は温かい視線で見守る。
「先輩!これいくらするんですか?」
するとそこで、桂利奈とあゆみが、優花里に手に取ったレーションを見せながらそう尋ねる。
「それが一つ五千円」
「えっ?………」
「そっちは一万五千円」
「これ一つで!?」
優花里から値段を聞いた二人は途端に仰天して固まる。
「やっぱり食用可能なレーションとなればそれぐらいはするか………」
「そんだけあったら、他にもっと美味いものが沢山食べられるじゃん」
秋人がそう指摘し、ミーナがそうツッコミを入れる。
「…………」
「ホラ! 高いんだから、勝手に弄らない!」
と興味を持ったのか、紗希がシートの上に有ったレーションを指で突いていると梓が注意する。
「それ1個300円だから気にしないで良いよ」
「!?ええっ!?」
「何でそんなに値段違うんだ?」
先程までとは打って変わって格安な値段のレーションが有り、梓が驚くと、麻子がそう尋ねて来る。
「さあ?」
「不思議ですね」
「不思議です~」
「基本的に一般流通に乗らない物なのと欧州のは味も良いから、如何しても高くなるんです」
沙織、華、優希がそう言っていると、優花里がそう説明する。
「欧州って………って事は英国も?」
「あ~、あそこはレーションの評価は高いらしいですから、大丈夫だと思いますけど………」
するとそこで、ミーナが料理が美味しくない事で有名なイギリスの名前を出してそう尋ね、優花里は若干明後日の方向を向きながらそう返す。
「じゃあ、コレは何で安いの?」
沙織が優花里が安いと言った中に含まれていたパッケージに『MRE』と書かれたレーションを手に取りそう尋ねる。
「マズイから」
「それ以外無いだろ」
そこで麻子がバッサリとそう言い放ち、秋人も同意する。
「えへへ………」
「そんなにマズイんですか?」
「まあ、『MRE』………ああ、コレ『MRE』って言うんだけど、一部ではMeals Rejected by the Enemyの略って言われてますし………」
「如何言う意味?」
優花里の言った英語の意味が分からず、首を傾げる沙織。
「ミールは食べ物、エネミーは敵って意味だ」
「リジェクトは破棄するとか、拒絶するって意味ですから………」
「敵も拒絶する、食事?………」
秋人と華がそう訳すると、梓が顔を若干引き攣らせながらそう呟く。
「そんなにマズイんだ………」
「各国軍人がレーション交換会やって、米軍のは大量に残ったと言うのを聞いた事がある」
「そんなに美味しくないのはちょっと気になりますね」
「止めておけ、あまりおすすめはしないぞ・・・・」
麻子の言葉に華がMREに興味を持つが、秋人が警告する様にそう言う。
「日向殿。食べた事があるのですか?」
「何度かな」
優花里が尋ねると、秋人はうんざりした様な表情をする。
「それで、如何だったの?」
「不味過ぎるな。余程の極限状態でもなければ食べようと思えないな」
沙織の問いに力説する様にそう答える秋人。
「さっき秋山さんが敵も拒否した食い物だと言ったが、他にも補給が途絶え単調な食事を余儀なくされたドイツ・イタリア軍の戦闘食はドイツ兵は老人を意味する『アルターマン』ってあだ名をつけ、イタリア兵は『ムッソリーニのケツ』と呼んだ、一緒に配給されるビスケットも徹底的に水分を飛ばしているから腐らないが歯が折れる程凄く硬いから水やスープに浸さないと食べられなかった。そして極め付けは『冷えるとまずさで人を殺せるスープ』なんて物もある」
「そ、そうなんだ………」
自分が食べてきたレーションへの不満をタラッタラに述べる秋人に、沙織は若干引く。
「余りにも不味すぎるたり物資不足だったから俺たちは、ソ連で熊やトナカイなんかを狩って食べてたり、敵の物資を奪っていたな」
「熊やトナカイって………」
「狩人・・・・」
熊やトナカイを狩って食べたと平然と言い放った秋人に梓が顔を引き攣らせ、麻子がそんな事を言う。
「ま、まあ、それでも此処に有るのは割と美味しいメーカーのですから」
「えっ? メーカーで味が違うんですか?」
「うん! 有名メーカーが3つ在って………」
「ハイハイ! バーベキューの準備しちゃいましょう!」
とコレ以上語られては堪らないと思ったのか、みほが優花里を押さえて一同にそう呼び掛けるのだった。
「「「「「は~いっ!」」」」」
1年生チームが返事を返すと、エプロンを装着して食事の準備に掛かる。