単なるおまけ的番外編なので(ほんへとはなんの関係も)ないです。くっそ短いです。
オラッ!かえシャミ!プレイヤー兄貴特効!うおっ急にすげえ吐血……死ぬのかな?
ハミ出せ!まちカドまぞく ~かえシャミ編~
ある時楓の部屋に遊びに来ていたシャミ子は、突然テレビのCMを見て動きを止める。
視線の先で流れているのは祭りの際に着る浴衣のレンタルを告知する旨のCMだった。
そう言えば、と楓はシャミ子がリコの幻術で化かした浴衣を着て商店街を歩いていたのを思い出す。目──もしくは感覚が特殊なのか、楓にはリコの幻術が効かなかったのだ。
そのせいでリコから力を借り、
思い返せば、シャミ子と──桃とミカンも同じように葉っぱ一枚で商店街を歩き回っていたのかと思考する。楓はあれから、一度も浴衣の話題を出していなかった。
シャミ子の隣に座ってぼんやりとドラマの再放送が流れているテレビを眺める楓の体に、細い紐のようなものが絡まってきた。
「……シャミ子?」
「かえで、くん」
右隣にいるシャミ子と楓の背中を回って、左腕に尻尾が絡み付いている。
「かえでくん」
頬が紅潮し、楓を見上げて瞳が潤む。震えた唇から、愛らしくも鈴のような声が漏れた。
「──リコさんに着付けてもらった浴衣が葉っぱだったんです」
「……ん?」
「洗って返した浴衣が葉っぱだったんです。私、あのお祭りでずっと葉っぱ一枚で歩いてたんですよ!?」
「……なるほど」
「これじゃほんとに露出まぞくじゃないですか! 葉っぱ一枚って、私はリンゴは食べませんよ!」
浴衣のCMで思い出したのだろう、鼻を鳴らして静かに泣いている。気がつけば足の間にすっぽりと収まっていたシャミ子の背中を叩いて慰める楓は、片手で伊達眼鏡のフレームを突いた。
──ここで幻術が効かない体質の話をしたら、嫌われるどころか殺されるかもしれないと考えるのも仕方がないのだろう。
誤魔化すように背中から畳に倒れ、シャミ子を自分の体に乗せて横たわらせる。それでも尚、あまりの軽さに楓は内心で戦慄した。
「なあ、シャミ子」
「……なんですか?」
胸元に顔を
──黙っていようとした罪悪感からか、楓の言葉は不思議とすらすら出てくる。
リコの幻術を見破れること。シャミ子の浴衣が葉っぱに見えていたこと。伊達眼鏡に幻術対策の力が込められていること。
全てを話した時、仰向けの楓の上に乗るシャミ子はあっけらかんとした顔で言った。
「楓くん、私の裸なら見慣れてますよね? まぞくに覚醒する前から、看病の時に何度か汗を拭いてもらったの覚えてますよ」
なんなら着替えを手伝ってくれたこともあるじゃないですかー、と言ってクスクス笑う。気にしていないというよりは、照れを誤魔化している。
「……ねぇ、楓くん」
紅潮した頬の赤みが増し、うつ伏せで楓と向き合うシャミ子の背中の上で尻尾が怪しく揺らめいている。今まで見たことのない顔に、楓は動けない。
「本当に申し訳ないと思っているなら、私と……私、と──」
尻尾が激しく動き回る。
良心の呵責に胸を痛めるかのようにモゴモゴ呻くと、気の抜けた声で言った。
「…………お、お昼寝しましょう」
「──まあ、いいけど」
腹から降りて、楓の横に寝転がるシャミ子。角で頭を痛めないように楓が腕を横に伸ばすと、それを枕に使って楓と向き合う。
「えへへへ……」
「楽しそうだね」
自身の胸元で両手を合わせ、楓に体を更に寄せる。シャミ子の背中に片手を回すと、楓は優しく抱き寄せた。
「ぁぅ」
「シャミ子は暖かいね。子供体温かな?」
「──ひとこと多いです」
ぐり、と角が二の腕に刺さった。
ごめんごめんと謝る楓が背中をさすると、シャミ子は楓の胸に耳を当てる。
トクトクと心音が一定のリズムを刻んで、奇妙な安心感を生む。
気付けばシャミ子の意識は暗闇に落ちていた。夢を見ることは無かったが、不思議とそれを怖いとは思わなかった。
自分を包み込む大きな何かが、背中や頭を優しく撫でていたからである。
「…………んが」
パチ、と楓の目が覚める。
辺りは真っ暗で、日が完全に落ちていた。
腕の重みと気配からしてまだシャミ子は寝ているのだろう。
起こさないように腕だけを伸ばしてちゃぶ台に置いていた携帯を慎重に手に取ると、楓は時間を確認して驚愕する。
「────22時……!?」
昼寝をしたのは13時だった筈だと考えて、ぼんやりとした頭が冷めて行く。
「……晩飯……いや吉田家に連絡……! シャミ子、ちょっ、起きてシャミ子!」
「んにゃ……タワー……パンケーキ」
「夢で食べるな! 今度連れてってあげるから起きなさい!」
吉田家や桃たちから連絡が来ていない事に違和感を覚えながら、楓はシャミ子を揺すって必死に起こそうとしていた。
ほんへ(RTA)とはなんの関係もないんだからミカン姉貴以外といちゃついたっていいだろお前恋愛ゲームだぞ。