【完結】まちカドまぞく/陽夏木ミカン攻略RTA   作:兼六園

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新年初投稿です。



part9

 

 杏里ちゃんの二日酔いごせんぞを撫でる手つきがいやらし魔族(代名詞)過ぎるゲームのRTAはーじまーるよー。

 

 前回は恋心がはいっちゃっ、たぁ! な楓くんが運命の相手と出会ったところで終わりましたね。今回はその後日にシャミ子や杏里ちゃんとゴミ掃除している辺りから始まります。

 

 早速ですが段々と悲劇のヒロインロードを爆走しつつある杏里ちゃんが体育祭実行委員の為に呼び出されて離脱します。

 その捨てられた子犬のような眼差しは心がぐらつくからやめないか! 

 

 

 ……もうさ、今からタイトル変えてさ、ハーレムルートにして終わりで良いんじゃない? 多分視聴者(どくしゃ)のホモたちもそっちの方が見たいと思うんですよ、僕は思いませんけど。

 

 まあやりませんが。記録を競ってる最中に唐突にレギュレーションと走る内容を切り替えるとか、いくら偉大なる父のガバ遺伝子を継いでるとしても流石にやらんわ。

 

 

 他ヒロイン攻略orハーレムルートのRTAは後続の走者兄貴姉貴たちに任せるとしまして、杏里ちゃんが行った直後にミカン姉貴が現れます。

 転校の手続きをする書類を受け取りに来たようですが、桃とはぐれてしまったらしいです。

 

 今よりも早く来てしまったら杏里ちゃんと鉢合わせて変なイベントが始まりそうだったのでタイミングが何時も通りで助かりました。何故私は浮気がバレそうでひやひやしている二股男のような気分を味わっているのでしょうね。

 

 やめてよね、本気の修羅場になったら楓くんが杏里ちゃんとミカン姉貴に敵う筈ないだろ(クソザコーディネイター)。

 

 

 ──シャミ子と楓くんは掃除が終わってからなら手伝えるということで、ミカン姉貴もゴミを纏めるのを手伝ってくれるそうです。ミカンママは神的にいい人だから!(ピネガキ)

 

 ミカン姉貴はシャミ子や楓くんからいい人だのマトモだのと誉められていますが、当の本人は不服そうですね。

 ミカン姉貴曰く、今頃桃は自分の力のせいで職質不可避の格好をさせられているかもしれないらしいのですが……。

 

 その理由は後述されるとある『呪い』のせいなのですけれども、この呪いの片鱗はこちらにも向いてきます。ゴミを袋に詰めている横からどんどん他の人が別のゴミを持ってきていました。

 しかも杏里ちゃんの友達でC組の小倉ァ!! までゴミを持ってきます。楓くんを見たって変な汗しか出ませんよ。

 

 小倉ァ! は主人公くんに対して『魔族と魔法少女の両方と仲のいい妙な奴』という認識を持っているので、敵対ルートだと解剖されます。吉田家に危害を加えない限りは敵対しませんが。

 あと『妙な奴』に関してはお前が言うな。

 

 眼鏡の奥にある深淵がごとき眼光に呑まれそうになりつつ、集まってきたゴミ袋を積み重ねます。ゴミが増えるなんて妙だな……(二回目)。

 

 不思議に思っているのは楓くんだけではないようで、これも呪いのせいだとミカン姉貴が言いましたね。しかも段々ゴミ袋が膨らんでます。

 

 

 皆下がれ! 早く! ゴミ袋司令官が爆発する! ホォォォォォォ!!(被弾ボイス)

 

 

 目の前でパーン☆したゴミ袋に巻き込まれてゴミの山にぶっ倒れます。うわ今ので体力が2割吹っ飛んだ。威力がDKSGる。

 

 異変を察知して来てくれたもんもぉ……の手を借りて立ち上がり、何事なのかと聞くとミカン姉貴から説明を受けます。

 ミカン姉貴の呪いというのは『動揺したりすると他人にささやかな困難が降り注ぐ』とかいう傍迷惑極まりない力なんですね。

 

 桃も今朝から生コンに埋まったり老いた老人から常にこちら(画面)側を見てくる謎の鳥を託されたりしていたようです。

 この呪いは喜怒哀楽のいずれかで感情が高ぶると出てしまうらしいので、嬉しくても発動してしまうことになりますね。

 

 現にシャミ桃にフォローを入れられてるのに呪いが発動してますし。

 

 ────えっ、なんか帰ろうとしていた筈の桃から急に好物を聞かれたんですが。

 なんだこのテキスト!? よさぬかベイマックス、ワシはこんな会話知らんぞ! 

 ……まあフレーバー設定通りに蜜柑と答えますか────ア゜ッ゛!!(被弾ボイス)

 

 

 …………(高速wiki閲覧)

 

 

 アーナル程。これは桃の友情度が4以上の時に他のヒロインを攻略してる際発生する対象ヒロインの友情度上昇プチイベントですね。

 楓くんの「蜜柑が好き」をミカン姉貴が「ミカンが好き」と勘違いしたせいで、動揺してしまい呪いが発動したようです。

 

 似たような事を昔シャミ子の攻略中に言われたような気がしましたが、シャミ子と桃の攻略は血反吐ぶちまけて死ぬ寸前! (KBTIT)のままやったので拒絶反応で記憶消し飛んでました。

 

 そんなこんなで緊張しない方法を探る作戦会議をすると言って去って行く二人を見送ったところで今partはここまで。

 そろそろミカン姉貴の赤面スクショで容量が埋まりそうですわよ。

 

 

 ◆

 

 

 桃とはぐれて数分、外回りを歩いていると──この間出会った魔族とそのお友達の二人が掃除している後ろ姿を見つけた。

 

「優子! 貴女優子よね? そっちは楓くんでしょ?」

 

「……優子…………?」

「君のことだぞシャミ子」

 

 呼び掛けてから振り向いた優子は頭に疑問符を浮かべる。横に居た楓くんに指摘されて、文字通り思い出したように返してきた。

 

「あ、私の名前ですね! ここ最近お母さん以外に呼ばれた覚えが無いので忘れかけてました!」

 

「ああ良かった! また私の勘違いかと思っちゃったわよ、こんにちは二人とも」

 

 箒とちりとりを手にしている二人は、傍らのゴミ袋に落ち葉などを纏めている。

 

「それでそちらは……ミカンさんでしたよね? 今日はどうしたんですか」

 

「実は転校の手続きをする書類を受け取りに来たんだけど、桃とはぐれてしまったのよ」

 

「それは大変ですね……私と楓くんはこのように掃除中なので、終わってからなら手伝えますよ?」

 

「あらそうなの? なら私も手伝うわ、ゴミを探せばいいのよね」

 

 さっさと終らせてしまおうと思いながらゴミを探す。なぜなら今、凄く緊張しているから。早くしないと桃が大変なことになってしまうわ。

 

 ──ふと、箒で地面を擦る優子とゴミを分別してそれぞれを違う袋に入れている楓くんが視界に入る。楓くんは時折優子を見ては、やけに優しい眼差しを向けていた。

 

「……楓くんと優子って、兄妹なのかしら?」

「違うけど。ミカンは変なことを言うね」

「だって、優子を見る顔が優しいんだもの」

 

 不思議そうに眉を潜める楓くんは、私と顔を合わせるとパッと目を逸らしてしまう。…………どうしてかしら? 

 

「シャミ子とは同じアパート暮らしで、今より体が弱い頃を知ってるから」

 

「……そうだったの」

 

「前までは、たまにシャミ子を背負って早退することもあったからね……。普通に動けているシャミ子を見てると、自然とこうなるんだよ」

 

 頬と目尻が緩んでいるその顔を、だらしないとは言えなかった。本当に嬉しそうに話している楓くんを、優子が手を振って注意する。

 

「楓くん! ちゃんと掃除してくださーい!」

「わかってるよー」

 

 軽い口調だけど楓くんが掃除を再開しているのを見て私も手伝う。

 黙々と落ちてるペットボトルなんかを拾っていたら、急に優子に話し掛けられた。

 

「ミカンさん、ミカンさんはダンベルとお花のどっちが好きですか!?」

 

「ええ……どうしたのよ急に。まあ、お花だけど」

 

「──普通だ……!」

「なにが!?」

 

 もしかして私まで桃みたいな筋トレ好きだと思っていたの!? ……目頭を指で押さえながらため息をつき、優子の発言に返す。

 

「私が普通に見えるのは、そういう風に振る舞っているからよ。

 それに、下手したら今頃桃は職質不可避な格好を往来でしている可能性があるわ」

 

「どういうことなんだ……」

「桃にいったい何が!?」

 

「私には制御できない力があるの。そのせいで今まで何度か大変な目に遭ってきてて……」

 

 話すべきかしら──と悩んでいると、奥から台車でシュレッダーのゴミを持ってきた教員に捨てるのを任される。更には別の生徒が……よく分からないゴミを持ってきた。

 優子に対して薬がどうとか効き目がどうとか言っている。

 

「……あ、貴方は楓くんだよね? 魔族と魔法少女の両方と仲が良い妙な人! 

 杏里ちゃんから聞いていたけど本当だったんだぁ。へぇ、ふぅん……?」

 

「……はぁ」

 

 じろじろ見ながら妙な人と言うのはやめた方がいいと思うわ。そのマントとゴミ袋の鳥の羽はなんなのよ……。

 楓くんが困惑してるのにさっさと行ってしまうあの子は妙に気配が独特で、袖の下で私の肌がピリついていた。

 

 そして視界の端で積み上がっているゴミ袋を見て、確実に私の力が原因でこうなっていると悟る。

 

「やっぱり呪いが抑えられていないみたいね……」

「えっ、呪い? ……とは?」

「待てシャミ子、何か変だぞ」

 

 周囲のゴミ袋がざわざわと蠢き、徐々に膨らんで行く。心拍数が上がって、自分の耳に響くくらい大きくなっている。

 

「ああヤバい……緊張してきた……! 優子、楓くん! 力が暴発する前に早く逃げて!」

 

「ええっ!?」

「うおおっ!?」

 

 しかし時既に遅く、辺りのゴミ袋が膨らみ破裂してゴミが撒き散らされた。

 

「……何か起こった後だったか」

「ももぉ……」

「──口の中に羽が……」

 

 葉っぱや羽が雪のように降り注ぐ光景を余所に、愉快な格好をした桃が現れた。

 羽の山に上半身が埋まっている楓くんを掘り返して、改めて散らかったゴミを片付けながら何が起こったのかを問いただしに来る。

 呪いの事は私から話さないといけないだろうと思って、桃に代わって私が口を開く。

 

「私は、昔巻き込まれた事件の後遺症で動揺すると『関わった人にささやかな困難が降り注ぐ呪い』にかかっているの。

 焦ったり緊張すると──つまり感情が高ぶると発動してしまうのよ」

 

「それでもミカンは気が利くし強いから」

 

「で、でも! 呪いのせいで桃は今朝から生コンに埋まったり老いた老人から愛鳥を託されたりしてたじゃない! 挙げ句にそんな愉快な格好まで……!」

 

 襷を身に付け鳥かごを片手にコーンハットを被る桃が渋い顔をする。それでも尚桃は私を誉めるし、優子にもフォローされてしまう。ただそれだけで呪いが再発して、暴風が集めたゴミを巻き上げて散らした。

 また箒で集めていると、黙っていた楓くんが小さく呟くように言った。

 

「大変だな」

「……え?」

 

「呪いから逃げずにいるのは、大変だな。ミカンはすごいと思うぞ」

 

 優子に向けていたような眼差しが自分に向いている。唐突な誉める言動は、容易く私の動揺を誘った。

 

「あ、う……ほ、誉められても呪いが出ちゃうからそう言うのは禁止よ!?」

 

「ああそうか、嬉しくても発動するのか…………うごごごごご!?」

 

 魔法少女仲間ですら恐れて一歩下がるこの呪いに何故か踏み込むように関わってくる楓くんが、目の前でゴミ袋に埋もれている。

 桃と優子に救出される楓くんは制服の埃を払って戻ってきた。

 

「……中々、難儀だな」

 

「今日はいつもより強く呪いが出てしまっているの、思ったより緊張しているのね」

 

 頭の葉っぱを取り除くと、楓くんは箒を手にゴミ掃除を再開する。やっぱり、こういう優しい人はあまり私に関わるべきではないわね。

 

 緊張しない作戦を考える為にも一旦帰ろうとしてしたその時、ふと桃が振り返り楓くんに言う。

 

「そういえば、楓も柑橘類が好きなんだよね」

「……突然だな。まあ、そうだけど」

 

 楓くんって柑橘類が好きなのね。

 どういう種類が好きなのかしら。オレンジ? ベルガモット? それともブンタンとかレモン辺り? グレープフルーツも良いわね……。

 

「楓は何が好きなんだっけ」

「──蜜柑が好きだな」

「……ミカンさんが?」

「は? 何を言ってるんだ?」

 

 ……蜜柑……ミカン!? 

 いえ、違うわよね。フルーツの方に決まってるのに何を勘違いしてるのかしら! 

 

「ミカンじゃなくて蜜柑だって。特に好きなのは愛媛の温州みかんが……あ、なるほど」

「自分で聞いてなんだけど、これはちょっとまずいかな。不用意だった……!」

 

 ああ、いけない、動揺して呪いが……! 

 

 

 ……ボンッと音がして、ゴミ袋がまた爆発した。これに関しては私は悪くないと思うのだけど、未だに心臓がバクバクとうるさく鳴っている。

 

 勘違いとはいえ、男の子からの好きと言う言葉は私の呪いを引き出した。ばつが悪そうにしている楓くんが頭を下げて謝罪してくる。

 

「ごめん、今のは俺が悪い」

「あー……い、良いのよ楓くん。でも珍しいのね、柑橘類が好きだなんて」

「小さい頃からそうだったんだよ。よくスーパーで蜜柑を買ってたんだ」

 

 変な勘違いをした私とさせた楓くんは、お互いに頬が赤く熱くなっている。

 数分置いて落ち着いた頃に桃の家に帰ることにしたのだけど、それまでずっと、楓くんは優子と共に黙々と掃除をしていた。

 

 この先もまた、優子たちに呪いで迷惑をかけてしまうかもしれない。

 けれども、どこか──これからが楽しみな自分がいるのは気のせいなのだろうか。

 

「桃、さっきあのタイミングであんなことを聞いたの、もしかしてわざとなの?」

「──さあ?」

 

 

 …………まったくもう! 

 





ヒロインの楓くんへの友愛度

・シャミ子
友/5
愛/0

・ちよもも
友/5
愛/0

・ミカン姉貴
友/2
愛/0

・小倉ァ!
友/0
愛/0

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