ラストスパートなので初投稿です。
part27
恋愛ゲームを楽しむには主人公も好きになれなきゃ楽しめねぇ。つまり主人公を好きになった時点で読者もまたヒロインの一人ということになるんじゃねえか? なRTAはーじまーるよー。
いえ、貴方は読者の一人です(無慈悲)
──part26.5の投稿に一週間近く掛かった理由はなんだ? 弁明を述べよ!
……
という茶番はさておき、今回から単行本5巻すなわち最後の戦いとなっています。
前回は楓くんが病院に行ったところで終わりましたね。今回はウガルルの仕事探しの為に喫茶店あすらに向かうイベントから再開です。
ミカンママの体から出てくるまでの十年間外の様子を見られなかったウガルルは、とりあえずとばんだ荘の門番を任されていますが……そもそもこの町は襲撃とかされないのでね。
やることねぇ! 仕事くれ! となっているわけです。近頃の若者(生後数日)にしては根性ありますねウガルルちゃん。
シャミ子が喫茶店に電話をしますが出ないとのことで、ウガルルの話なので保護者としてミカンママも同行します。ママではないと否定しますが、リリスが言うには『魔力で魂的なものを育んだらそれは魂のママ』だとか。
そうして10歳の娘がいる15歳ママ魔法少女が爆誕したわけです。字面だけ見ると大分おかしいことになってますね。認知して♡
──到着して店の前に来ると、扉に臨時休業の看板がぶら下がっています。
何事かと中に入って二人に話を聞くとどうやらリコくんにスランプがやってきたらしいですね。ウガルル召喚の時に本気の魔力料理を作って以来、何を作っても魔力を込めすぎて客がガンギマってしまうとか。えっなにそれは(困惑)
リコくんが作った料理は冷蔵庫に保管されてあとで店長に食わせるようですが、なんか当然のように発光してるんですけど……。
ちなみに楓くんがこれを食べたら死にます。
それはさておき、早速ウガルルの仕事っぷりを見てみることになりました。
ですがそもそもの話として、ウガルルは文字が読めないし数字も弱いです。
楓くんがフリー行動をウガルルの教育に費やすと平仮名と片仮名くらいは読み書き出来るようになるんですけどね、ついこの前病院行ったしまだ湿布貼ってるからね。仕方ないね♂
んだらば料理はどうかとキッチンに移りましたね。しかしウガルル、まだ人間らしい手の動かし方を勉強中のため包丁を逆手で握るメシマズヒロインムーブを取ります。その持ち方はわりとマジでヤメロォ!(本音)
大慌てで店長と一緒に止めて事なきをえ、得ますよ……。
ウガルルは爪の方が慣れてると言って玉ねぎをぶった斬りますが、風圧で髪の毛を数本切断されました。ハゲならノーダメだったのに。
あのねリコくん『ええ切れ味やわ~』じゃねンだわ。じゃあなんすか、楓くんが禿げてもいいって言うんすか? 禿げたイケメンが許されるのはステイサムくらいなんですよ。
──話を戻しまして。
ミカンママ迫真の助言が光ります。何がしたいかで自分を語れよ!(ドン)とのことですが元使い魔としての奉仕精神が抜けきっておらず、ウガルルは自分のしたい事が無いんですね。
あえて言うなら腹減ったと。
それは願望じゃなくて欲望やねんな……メダル入れるぞ(グリード並感)
そんなウガルルの食欲に反応したのか、冷蔵庫が突然爆発します。何事かと思っている楓くんたちの元に、触手めいた何かで移動している冷蔵庫が現れるという謎のイベントが発生しました。
リコくんが言うには中の魔力料理が共食いした結果、強力な呪いとなって冷蔵庫を突き動かしているらしいですね。TDN蠱毒じゃねーか。
スランプになったのではなく頂きに登り詰めたのだとウキウキのリコくんですが、今にも襲い掛かってきそうな冷蔵庫にそんな事言ってる暇は無いのでどうにかしてくだち…………なんで触手が楓くんの足に伸びてるんですか。
──オゴォ!?(後頭部強打)
──ンアーッ!(吊り上げられる)
(まちカドまぞく)流行らせコラ、(RTA)流行らせコラ! んーにゃーごお前!
離せコラ! お前ら触手なんかに負けるわけねーだろお前オォン!
……あ、危ない。咄嗟に受け身は取れたので、ダメージは最小限で済みました……。
左腕だけじゃなくて頭まで怪我しちゃったらヒロインたちに監禁介護されちゃうよダヴァイダヴァイ……(ロシア語)
冷蔵庫の魔物に襲われ、楓くんは逆さで宙吊りにされました。あ~ダメダメダメ!(西田敏行)楓くんのヘソチラはえっち過ぎます!
よりによって一般人をピンポイントで狙われたので、ミカンママが『守護らねば』と言わんばかりに矢を向けます。しかしリコくんがウチの子を殺すのはNGと邪魔してきました。
ママ同士で争ってないで助けて……助けてクレメンス……(切実)
ミカンママがリコくんを説得してる裏で、ウガルルはシャミ子に冷蔵庫の呪いが自分と同じだと説明しています。望まれて生まれたけど、形が変になっているせいで暴走していると。
冷蔵庫を鎮める為にも料理として食ってやると言い、リコくんからも食べるならええでと言われたのでウガルルは爪を向けます。
万が一にも楓くんに当たったら体力が消し飛ぶので気を付けてほしいですね。
──ウガルルの攻撃が瞬く間に冷蔵庫をバラバラにしました。落下する楓くんを、なんとミカンママではなくリコくんが受け止めます。
やだ……かっこいい……(トゥンク)
……なんか楓くんってお姫様抱っこされてるの妙に似合ってますね。
しかもリコくんから『永久就職せぇへん?』とか言われてますし。その言葉の意味は結婚してくれ的な意味であってこの店でずっと働いてくれって意味じゃ無いですからね?
尤も愛情度が一つも増えてない以上、今の発言は単なる冗談ですけど。
ミカンママやシャミ子が慌てる反応を見て楽しむために、わざと感情を逆撫でするムーブをナチュラルにやるんですよこの子。
それではウガルルがバラバラにした冷蔵庫を食べているところで今partはここまで。
喫茶店のあちこちが甚大な被害を負いましたが、それはいわゆるコラテラルダメージに過ぎない。RTA完走のための致し方ない犠牲だ。
◆
ウガルルの新しい仕事を探すために、私たちは喫茶店あすらに向かっていた。
シャミ子が連絡をしても留守電だったのだけど、何かあったのかしら。
臨時休業の看板が吊られている扉を開けると、いつぞやのバクのまぞくと狐のまぞくの白澤店長とリコさんが普通に居た。
どうやらリコさんがウガルルを召喚するときに本気で魔力料理を作ったことが原因でスランプに陥ってしまったのだとか。
……確かにあれだけ魔力が込められている料理を食べたら、ガンギマ──じゃなくて倒れたりしてもおかしくないわね。
早速とウガルルがバイト体験を始めようとしたけれど、メニュー表の文字が読めなかったようだった。完全に柑橘類関連の漢字を教えたのは間違いだったかもしれない。
「まずは平仮名と片仮名からだな」
「そうね……」
出されたお冷やを一口飲んだ楓くんが静かに言う。その顔を見て、咄嗟に逸らしてしまった。最近、楓くんを直視できない時がある。
原因は単純で、ウガルルを召喚してから杏里やシャミ子がしょっちゅう私をママだミカンママだとからかうんだもの。こう何度も言われると、嫌でも考えてしまう。
──私がママなら、パパは誰?
──該当者なんて、一人しか居ない。
「…………はぁ」
「どうした?」
「……ううん、なんでもない」
本当に時々だけど、この心底優しい顔が腹立たしく感じるのは仕方ないと思うの。
席からウガルルの様子を見ていたら、今度はキッチンで玉ねぎを切ろうとしていた。でもその持ち方は危ないからやめなさい!?
「ウガルル君、その持ち方はやめたまえ!」
「こらこら、そんな持ち方は駄目だよ」
「んが、すまン。人間の手の動きは勉強中ダ」
つい席を立ちそうになった私に代わって、店長と楓くんが包丁を変な持ち方で握ったウガルルを止めた。子供の想定外の動きに慌てるこの感覚──親というのは、こんな感じなのかしら。
──その場合10歳の子供が居る15歳の女子高生という色々と酷い矛盾が発生するのだけど。
──結局、ウガルルの出来ることは無さそうだった。まだ召喚から数日なのだから、出来ないことの方が多いのは当たり前。
「……ウガルルは向いてる仕事よりも自分のやりたいことを考えてみたら?」
「んん……よくわからン。今はとにかく腹減ったゾ……エネルギー不足ダ」
「それは願望ってーか欲望ね」
「食欲も大事だけどな。というか食べられる物はあるのか? あの魔力料理ならウガルルでも──」
楓くんが言いきる前に、突如としてキッチンから爆発音が響いた。
「な、何事ですか!?」
「あら~冷蔵庫が爆発したみたいやわぁ」
「冷蔵庫が爆発ってなんですか……?」
シャミ子のごもっともな質問を余所に、キッチンの奥からおどろおどろしい謎の魔力を纏った冷蔵庫が独りでに動いて現れた。
「マジで何!?」
「あれは──冷蔵庫の中で純度の高い魔力料理が共食いをした結果、強力な呪いとなって冷蔵庫を乗っ取っているみたいなの」
「……説明が頭に入らなかったのだが」
「それについては私もよ、楓くん」
突然の怪現象に頭を痛める。
リコさんはスランプじゃなく更なる高みに登ったのだと言って喜んでいるけど、独りでに動く呪いということは暴走状態ということになる。
危ないなんてものじゃない。それは私が一番よくわかっている。私のせいで怪我をした事を私自身が知るのが遅れたのに尚怒らず、寧ろ許してくれた楓くんに何かあってからじゃ────
「……ん?」
「えっ?」
横から楓くんの声がして、視線を辿って下を見る。冷蔵庫にまとわりついていた影のような魔力が、何故か楓くんの足首に巻き付いていた。
「──ぅぉおぉおおおッ!?」
「楓くん!」
足を引っ張られて背中から床に倒れた楓くんは、右手を後頭部と床の間に差し込んで受け身を取っていた。後頭部の強打は免れたけど──影に持ち上げられて逆さまのまま宙吊りになる。
「っ──今助けるわね」
「あかーん!」
「えっ、ちょっと……!」
「あれはウチの子も同然なんや、殺生だけは堪忍してぇ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!?」
腕の上に魔力の矢を浮かべた私にリコさんが飛び付く。言いたいことはわかる。でも、それとこれとは話が別なのよ……!
「楓くんは怪我をしてるの、だから早く助けないといけない。
お願いだからリコさんもわかって?」
「……うぅ」
耳が垂れて、ショックを受けている。
葛藤するように尻尾を揺らすリコさんに、不意にウガルルが叫んだ。
「リコ先輩、こいつ食ってもいいよナ!」
「──! 食べてくれるんならええよ~!」
……なるほど。ウガルルなら、魔力料理を食べても問題は無いわね。
「残さズ、食らウ!」
一瞬の内に、楓くんに当たらないように振るった爪が冷蔵庫をバラバラにする。
支えを失って落下を始めた楓くんを、いつの間にか私から離れていたリコさんが受け止めた。
「おっ、ぐぅ……!」
「楓はん、大丈夫?」
「……だ、大丈夫」
治りかけの腕に響いたのか、楓くんは表情を僅かに曇らせながら言った。
「──なぁなぁ楓はん、ウチらんとこに永久就職せぇへん? 給料は弾むの」
「……はい?」
──今、なんて?
受け止めた体勢で抱き抱えられたままの楓くんに、楽しそうな顔をしてリコさんは言う。困惑した顔の楓くんからこっちに視線を向けて、ニヤリと笑った。
挑発だと理解はしても、口は既に動いている。否定の言葉が不思議とシャミ子と被っていた。
「駄目よ!」
「駄目です!」
……シャミ子と目が合う。なんで駄目なん? と聞いてくるリコさんにシャミ子は慌てた様子で楓くんは配下だから云々と言っていた。
でも、私は?
どうして否定をしたの?
私に楓くんのやることを否定する理由も権利もないのに、楓くんとリコさんの距離が近付いてしまうと思ったら、すんなりと口を衝いて出た。
左腕をさすって確かめている楓くんを見て、シャミ子とリコさんを見て、ウガルルを見る。
──心の奥に、ドロドロとしたものが渦巻くのを感じる。胸がズキリと痛んで、嫌でも理解させられてしまう。
楓くんのことが、愛おしくて仕方がないのだ。こんなにも醜く、焦がれた感情を──果たして恋や愛と呼べるのかはわからないけれど。
ヒロインの楓くんへの友愛度
・シャミ子
友/8
愛/3
・ミカンママ
友/10
愛/5
・ウガルル
友/5
愛/0
・リコくん
友/4
愛/0