ガラル地方ですがジムチャレンジです   作:Dombom

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表舞台に立てる人間はごく一部です。
じゃあ舞台裏の人間は?
彼らがいなければ舞台は舞台じゃありません。


祭りはまだ終わらない

「ご覧ください!ナックルスタジアムから煙と赤い光が!町中のポケモンが次々とダイマックスして暴れています!リーグトレーナーが対応していますが、先日のプラント暴走事故とは桁違いの規模です!」

ナックルシティのあちこちでポケモンが暴れ、しかし事前に察知していたかのように数名のトレーナーが対処に当たっている。

だが、プラントからの閃光は止まらない。ダイマックスポケモンは増えるばかりだ。

「これが、これがローズ委員長の言っていたブラックナイトなのでしょうか?ナックルシティは、いや、ガラルは滅びを迎えてッ!きゃあっ!」

報道カメラの映像が乱れる。ダイマックスしたアーマーガアが報道ヘリに襲い掛かってきたのだ。

「まずいぞ!」

パイロットが慌てて姿勢を制御しようとするが、ハガネの体を持つアーマーガアの突撃を受ければ墜落は免れない。

旋回し、こちらに向かってきたアーマーガアにその時、赤い流星が突き刺さった。

炎に包まれたアーマーガアは通常のサイズに戻り、ふと我に返ったかのようにワイルドエリアに向かって飛び去った。

入れ替わりにギャラドスの背にエースバーンを従えたトレーナーが飛来した。

「あれは!先日セミファイナル・トーナメントに出場していた選手です!ありがとうございます!」

トレーナーはエースバーンをボールに戻し、今のうちに離脱するようハンドサインを出してナックルスタジアムへ飛び込んでいった。

 

「ああっ!ダストダス!とまって、止まりなさい!」

社長秘書のオリーヴがダイマックスした自分のポケモンに気を取られているうちに、一人のリーグトレーナーがマクロコスモスの警備をすりぬけてエネルギープラントへ降りた。

地下階の警備はあってないようなものだった。走り抜けた先、大広間のメインプラントに居たのはローズ委員長。

そして、

「ギィイガガッ!」

腹の底に冷水を流し込まれるかの如く異質な、もはや鳴き声と呼ぶべきなのかどうかすら分からぬ異音を放つ存在が、そこに居た。

ポケモン、なのだろうか?その存在自体が許されざる者は、プラントの中央で薔薇の花弁のように多数の回転するリングに囚われていた。

「美しいだろう。これがかつてガラルを滅ぼしかけたブラックナイトの正体。」

 

「ムゲンダイナ」だ。

 

ローズ委員長は私の方を振り返りながらそう呟いた。

「チャンピオンにしては早いと思ったが、そうか。君か」

 

「父上がお亡くなりになった時以来だね。」

 

ローズ委員長は柔和な、しかし張り付けた仮面のような顔をしていた。

 

「嘗て私がポケモンリーグに挑んだ時、最後の戦いとなったあの光景は今でも、そう今でも思い出すよ。」

 

ローズ委員長は手に持ったハイパーボールを握り、しかしホルダーに収めた。

 

「全てにおいて私の方が勝っていた。運も、実力も、格も!」

 

「それに比べて、君のお父上の運のなさは極めつけだった。」

 

昂ぶりを抑えるかのように委員長はため息を吐く。

 

「だが、その不運すらも君の御父上は味方につけた。私のダイオウドウは君の御父上のポケモンを倒し、最後の一匹もその勢いで踏みつぶせるはずだった。」

 

「その時、君の御父上はみちづれを選んだね。何をバカな!と私は嗤ったのだよ。だが、不運が君の御父上に味方した。私のダイオウドウの攻撃が予期せずきゅうしょに当たり、私は敗北した。」

 

ワイルドエリアであっけなく死に、家庭を顧みることのなかった元チャンピオン。幼いトレーナーはその死後、かつての父の戦いの全てを脳裏に焼き付けていた。

色褪せたフィルムに写る呆然として崩れ落ちる男。それがローズ委員長だった。

 

「その日から、私は呪われた。がむしゃらに働き、一分一秒を惜しんでガラルのために尽くした!今やマクロコスモスはガラル1、いや世界有数の企業体となった!そして私はその頂点に君臨している」

 

バキッ!

ムゲンダイナを捕らえていた制御装置に亀裂が走る。

 

「だが、どうだ。」

 

ミシッ!

ムゲンダイナの腕が制御装置のフレームをゆがませる。

 

「私は何時まで経っても一番に成れない」

 

メキッメキッ!

今やムゲンダイナの半身が制御装置を破壊しながら外に出ようとしている。

 

「私は君の御父上に負けた。その事実と失った栄光は一生戻らない」

 

ギイイギャアアア!

装置を粉々に砕いたムゲンダイナは口から天に向かって閃光を放ち、プラント全体を揺るがす咆哮は一撃ですべての隔壁を打ち砕いた。

 

「それを君にも分かって欲しかった」

 

ムゲンダイナはローズ委員長と小さなトレーナーに見向きもせず、悠々と飛び去った。ガラルを滅ぼすべく、世を絶望で覆うべく。

 

「どうだね?私のショーは。君は不本意な事故から不調をきたし、栄光あるチャンピオンの弟に敗れた取るに足らぬトレーナーとして貶められた」

 

ローズ委員長は両手を広げて見せた。

 

「それが、ご覧のありさまだ」

 

その眼は、憐れみと、自嘲と、諦念とをはらみ、そして何も見ていなかった。

 

「君は「私は、」

 

「私は、特別じゃない。物語の主人公じゃない。だけど、」

 

幼いトレーナーは永遠の敗北者の横を通り過ぎていく。

 

「止めておきなさい。多少の被害は出るだろうが、数刻もせずにチャンピオンが到着し、ムゲンダイナを鎮めるだろう」

 

「君の出る幕じゃない「私は!

 

「私のしたいことを」

 

「する」

 

一瞬、ごく一瞬だが振り返ったローズ委員長の目に幼いトレーナーの姿が映った。何事にもがむしゃらで、敗北をもばねに突き進む。己のパートナーであるダイオウドウのようなかつての自分の姿を。

 

「来い!ギャラドス!」

 

ムゲンダイナによって黒く覆われた空、そこに一筋の蒼の竜が昇って行った。

 




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