ムゲンダイナは紫色の竜の骨格とその胸部にうずまく銀河のような核をもったおよそ生物とは言い難い見た目をした存在だ。
そしてその首筋に負った傷がみるみるうちに復元してゆく。ガラル中から無尽蔵に供給されるダイマックスエネルギー。それが尽きぬ限り、ムゲンダイナを倒すことは不可能だろう。
今、ムゲンダイナの胸部の核が鳴動し、活性化したエネルギーがその骨格を砲身として放たれようとしている。
相対するギャラドスは傷を負い、りゅうのまいによる強化を失った今では先ほどのような速度も、力も出すことは出来ない。
ジェネレーターの隔壁を吹き飛ばした一撃が、ギャラドスをトレーナーごと吹き飛ばさんと迫った。
「ギャラドス!」
トレーナーの指示に従い、ギャラドスはごくコンパクトに、しかし力強く「たきのぼり」を行った。
「まもる!」
うずまく水のエネルギーがムゲンダイナのダイマックスほうを受け流し、散開させた。
ガガガンッ!と、ダイマックスほうの余波を受けたナックルスタジアム頂上の柱が崩落する。
その柱は、ある種の受信装置の役割を果たしていたのだろうか。トレーナーはムゲンダイナに流入するエネルギーが若干弱まるのを感じた。
ムゲンダイナの姿が掻き消えた。トレーナーの前にギャラドスが立ちふさがり、ムゲンダイナの攻撃を受け止めた。
「ギャラァラン!」
ギャラドスの腹部にムゲンダイナのツメが突き刺さった。
ギャラドスは苦し紛れにかみつこうとする。ムゲンダイナはギャラドスの反撃を悠々と躱し、後退した。
ギャラドスはトレーナーに頷く。倒れるギャラドスはモンスターボールに吸い込まれた。
「!?」
ムゲンダイナは計られたことを察知した。この操り人は何らかの手段で複数体の現地生物を従えている。今留めを刺さねば!
ムゲンダイナが繰り出した毒の突きはしかし、ハガネの外皮に阻まれた。
「ナットレイ!」
ハガネの殻からツタ状の腕を伸ばしたポケモン、ナットレイがムゲンダイナの前に立ちはだかった。
おもしろい。
ムゲンダイナはそう感じた。
嘗て己を引き裂いた二体の現地生物。それには及ばないものの、それなりのパワーを感じる。そしてそれを操る非力な生物。しかし、何よりも豪胆だ。
ポケモン。自らに出会い、おびえ逃げまどっていた矮小な生物、取るに足らぬ存在であるはずなのに、この少女と共にあるだけで彼らの如何に強きことか!
数万年にもおよぶ宇宙の旅、悠久の虚無の中では決して味わうことのできない高揚感!ムゲンダイナは己の力を取り戻すことよりも、今を楽しむことに夢中になっていた。
さあどうだ!次はどうだ!叩くと痛い!結構!
ぬ、しびれる!ほう!いやなところにじゃれついてくるな!
この振動波は動きが鈍るな!ハハハッ!ギリギリまで近づいての格闘戦か!
あのハガネは毒を通さぬ!高い防御力を生かした弾丸のような突撃!
ほう!炎を纏って加速したか!流星のような火球!いいぞ!宇宙を思い出す!
さあ!さあ!さあ!
もっと!もっと!もっとだ!
・・・
ムゲンダイナは己の体に流れ込むエネルギーがずいぶんと目減りしていることに気付いた。
そして目の前には倒れ伏した炎を使うポケモン。かろうじて立っているトレーナーの姿だった。
終わりか。
高揚感が寂寥感に変わり、急速に戦いの熱と敵対存在への興味が失われていくのを感じた。
ムゲンダイナはそして、目の前の挑戦者を屠るべく力をためた。
567:名もなき論者
もう見てられんぞ!リーグは何をしているんですか!このままでは人が死ぬばかりではすみませんよ!
568:名もなきリーグトレーナー
だめだ!さっきよりかなりマシになったが近づくだけでポケモンが暴走しそうだ!
569:名もなきルーキー
ヘリも戦いが激しすぎて撤退してしまいましたし、スタジアムの屋上は一体どうなってるんですか?!
570:名もなきベテラントレーナー
残念だが我々には我々の出来ることしかできん。もどかしいが!
571:名もなきブリーダー
静かになった。マズいぞ!
ムゲンダイナのダイマックスほう!
エースバーンは、ギャラドスは、ナットレイは、オーロンゲは、ローブシンは、アーマーガアは動けない!
ポケモントレーナーは目の前がまっしろになった!
「キングシールド!」
トレーナーの前に強力な光の壁が現れ、ムゲンダイナのダイマックスほうを完全に打ち防いだ。
「すまない。遅くなった。」
「リザーッ!」
その姿は、ガラル最強。無敵の頂点、チャンピオンのダンデだった。
「ここからは、チャンピオンタイムだ!」
私は、小さなトレーナーは、ふっと全身の力が抜けていくのを感じた。だがこらえた。
伝えなくては。
「ムゲンダイナは・・・ダイマックスエネルギーを吸収してる。ナックルスタジアムの頂上の柱を壊して、弱ったところを捕獲して。じゃないと、無限に再生する。」
「ッ?!そうか、わかった。」
ダンデは激しい戦いの余波で破壊されたナックルスタジアムの頂上を見た。
この小さな挑戦者は、己一人でそこまで、この同じ空気を吸うだけで身がすくむような存在を相手に戦い抜いたのか。
俺に、それができるだろうか?・・・いや、俺はチャンピオンだ。
「まかせておけ!ここからは、チャンピオンタイムだ!」
ダンデは足を踏みしめ、最速のドラパルトに一人でガラルを守ったトレーナーを預けた。
ダンデは己を値踏みするようにこちらを伺うムゲンダイナを見つめ返した。
「待たせたな。俺とこの子で『チャンピオンチーム』だ。連戦だが悪く思うなよ!」
夜更かしは悪い。とりあえず寝るのが良いよ。