優子「何、人の事をジロジロと見てるの。失礼よ……。あれ、もしかして何か付いてる?」
今日の業務は来週辺りに行われる学園祭の準備だ。ん、準備だよね?あれ、違ったっけ。僕は何をしているんだ?どうして下校していないんだ?あれ、僕は一体、僕は誰なんだ。僕は…誰なのら?
「ちょ、遊佐。副会長がブツブツと意味わからない事を自問自答してるんだけど。…言語も可笑しいし」
「『はひふへほ』のあとは『らりるれろ』。ぼくの名前はまみむめも……だびょん」
遊佐「だびょん?だぴょんの方が語尾としては可愛いですよ副会長」
「いや、そういう問題じゃなくて、ホラ副会長もいい加減戻ってきなさい(ドォッッ)」
「にゃっはっ!!?………か、会長、ビンタでなる音じゃなかったですが……あれ、僕は一体何をして」
「もっかいビンタいっとく?」
「生徒会副会長吉井明久!!さあ、業務に取りかかるぞぉ!!!」
あら、そう……。と何故か残念がる会長も机の上にある書類に目を通し始める。
「一週間後の学園祭だけど、副会長は何をするのかしら?」
「え、僕らですか」
「ええ、ちなみに私たちはメイド喫茶になったのだけれど……」
会長は不満そうに遊佐さんを見る。
「え、えーー、メイド喫茶楽しそうじゃないですか!!」
「そう……楽しそうね。遊佐や愛子が推してこなきゃコスプレなんてしなかったのに……」
「だって、メイド服なんて今しか着れないじゃないですか」
「それはそうだけど……」それで副会長は……。と会長が再び僕の方へ視線をうつす。
「まだ決めてないですよ。というか一週間後だったなんて……」
「え、それヤバイですよ副会長」諸々の準備があるので……。と遊佐さんが心配そうに言う。
でも、学園祭が一週間後なんて雄二は勿論、秀吉もムッツリーニも誰も口にしてなかったような。
てことは、先生が伝え忘れているのでは……!?
きっと、そうだ!!!
「あの鉄人西村がぁ……!!」
どこからか『(俺はお前らにちゃんと言ったぞぉ)』とブサイクな声が反響している気がしたが、気のせいだろう。全く、職務怠慢だよ。
それに、しても……。
「やっぱし、男子の多いFクラスは男らしい屋台をやったり、学園祭ならではの女装をしたほうが面白いと思いますよ」
「女装なんてしたら、いい加減うちの弟がふざけたことになりそうだからヤメテほしいけどね」
今日行われたAクラスとの一騎討ちについては触れてこないようだ。僕としてはありがたいようで、どこか心に刺さる。
「売り上げで何か欲しいものあります?」
「Aクラスには何でもあるし、これ以上の向上は必要ないわよね」
「え、学園祭のクラスの売り上げって僕たちにまわって来るんですか」
「知らなかったのね副会長……。学園祭の売り上げで自分たちのクラスの設備の向上や、学業に関わる何かだったら売り上げで買えたりと、Fクラスにはもってこいのイベントなのよ」
「あとは、学園祭二日目恒例の召喚獣大会もありますよ!」
「召喚獣大会?」
「好きにペアを作って出れる召喚獣の大会のことですよ!私は会長と一緒に出たいんですが……」
「Aクラス代表としてうちの代表と出なきゃダメなんだから……だから、そんな顔しないの遊佐」
「……と、いうわけで私はペアが決まってないわけですが…副会長はどうします?」
「え、何が?」
「だから、生徒会の代表として私と出ないかというお願いですよ!」
「な、なるほど。でも、それってイメージ的にダメじゃないかな」
「イメージですか?」
「だって、AクラスとFクラスの生徒会ペアだと、その、生徒会の評判が……」
ああ、と会長と遊佐さんは頷く。
「まあ、大丈夫じゃないかしら。Fクラスはあれだけど、副会長はそこそこ……ね?」
「評判は、、、きっと大丈夫だと思いますよ」
二人に間があったのだけれど、悲しくなるだけなので突っ込むのはやめとこう。
「ただ、まあ『今日』みたいな感じで出てしまってはイメージ的にアウトなのは確かね」
「そ、そうですね」
「副会長はFクラスみたいに堕落せず、しっかりとするのよ?」
「………りょ、了解です」
気まずそうにこちらを見ている遊佐さんが言いたいことは大体わかっている。そう、これは誰でもない、僕の問題である。少し、一騎討ちでの僕と雄二の点数の言い訳を言いたくなったが、きっと、これ以上に惨めな気持ちになるのは僕でもわかった。
「少しFクラスと話し合って決めてみるね遊佐さん」
「ええ、ご返事期待してますよ!」
「それで、この議題だけれど……~
「それはそうと、Aクラスの要望、お願いって何でしたっけ?」
日が沈み、生徒会メンバーは玄関で靴を履き替えている。
「ああ、勝った時のお願いのことね。それなら、今頃うちの代表が……」
また、どこからか声がする。赤毛のゴリラ男のようなブサイクな雄叫びが何故か山びこのように反響しているような気がした。
「副会長、これは女の子の秘密ですよ!」
「ま、同じクラスなら明日にでもわかるんじゃない?」
それはきっと、負けた僕たちFクラスにとって、慈悲深いようなお願いだったのだろうと、明日に想いをはせて、帰宅するのであった。
明日にはわかるのだろうか……。