舞鶴鎮守府総司令官岡田中将は、大規模な防衛作戦を展開する。
1
舞鶴鎮守府では、三春と亮介が帰還し、岡田中将に報告を済ませる。
三春は足早に執務室を後にする。
「三浦。これを見てくれ」
岡田は舞鶴鎮守府付近海域が記されている地図を渡す。
亮介が確認すると、赤い丸で囲まれていた。
「朝方、深海棲艦を付近で確認したとの報告があった」
朝の4時頃、近海を偵察していた舞鶴鎮守府所属の提督の艦隊がイ級二隻を確認したとの事だった。
現在、大日本帝国海軍は、深海棲艦との睨み合いの状況が続いている。
まともに深海棲艦と戦闘を繰り広げられているのは、横須賀鎮守府しかない。
「この状況をお前はどう見る?」
「普通であれば、深海棲艦側も偵察に出ていたと思いますが........」
亮介は似たような状況を体験していた。
「3年前の事件と同じですね」
「やはりか」
岡田中将は表情を曇らせる。
横須賀鎮守府襲撃事件と酷似しているのだ。
3年前、民間人3人を含め、死傷者30人を出したと言われている横須賀鎮守府襲撃事件。
朝方にイ級二隻が横須賀鎮守府付近で確認され、翌日にレ級を筆頭とする深海棲艦に襲撃された。
当時、世間から大日本帝国海軍の怠慢だと叩かれた忌まわしい事件の1つだ。
「今、舞鶴鎮守府は横須賀鎮守府に次ぐ戦力になっています。となれば........」
「深海棲艦が攻めて来る........か」
岡田中将は、舞鶴鎮守府所属の提督達を招集し、大規模な防衛作戦を展開することを決定した。
2
舞鶴鎮守府防衛作戦は、連合艦隊である佐世保鎮守府にも通達された。
しかし、作戦には参加せず、待機命令だ。
「舞鶴鎮守府防衛作戦だって?」
イズハは不知火から伝えられる。
慌てて過去の資料を漁り、横須賀鎮守府襲撃事件に関する情報を集める。
「深海棲艦イ級10隻、チ級2隻、リ級5隻、ヲ級1隻........」
イズハは資料を読み進める。
「そして、正体不明とされていたレ級1隻か」
戦艦級の強さを誇る深海棲艦。
横須賀鎮守府の軍用設備を単身で壊滅させるほどの化け物。
イズハは考える。
「不知火。舞鶴鎮守府の戦力は?」
「はい。横須賀鎮守府に次ぐ戦力だと聞いています」
「今の横須賀鎮守府は、3年前とは比べ物にならない程の戦力だ。となれば........」
イズハは嫌な予感がしていた。
「舞鶴鎮守府も精鋭です。負けるはずが........」
「そうじゃない。横須賀鎮守府を襲った目的は、軍用設備じゃないとしたら?」
「と、言いますと?」
「当時、レ級は正体不明艦。情報がないまま戦った結果が最悪の事態を招いた。つまり、レ級の戦力を測るために仕向けたとしたら?」
「レ級を使った戦術が........あ........」
不知火は気付く。
舞鶴鎮守府が展開する作戦はレ級を倒すために展開された戦術に過ぎない。
「これに、大日本帝国海軍が把握していない深海棲艦が来たらどうなる?」
「横須賀鎮守府と同じ結果になる........」
「そうだ。いや、前よりも最悪の事態になる」
防衛ラインを形成するという事は、相手の戦力に対応するだけの戦力がなければ実現しない。
不測の事態に対応するためだ。
しかし、今の舞鶴鎮守府の防衛作戦では、不測の事態に対応できない。
イズハも経験していた。
過去に掃除屋部隊と呼ばれるパンドラを扱う部隊。
たった6人で、シェルタ帝国軍4万の戦力を壊滅させた部隊。
彼らが攻め込んで来た際、舞鶴鎮守府と同じような防衛作戦を展開した。
しかし、相手の戦力は予想を遥かに上回っていたのだ。
防衛ラインは次々と突破され、撃退させるにしても4万以上の戦力が壊滅的打撃を受けた。
もし、深海棲艦がレ級のような正体不明艦が出現すれば壊滅は必須だ。
「不知火、舞鶴鎮守府に連絡を取ってくれ」
「は、はい!」
イズハは、不知火が準備している間に、イズハは軽く作戦をまとめ直す。
「司令........」
「繋がったか!?」
「それが........」
不知火は俯く。
イズハが電話を代わる。
「あ、おたくが佐世保鎮守府の提督さん?」
「はい。イズハ中尉です」
「あっそう」
やる気のない声だ。
「み、木川大尉か、三浦中尉は........」
「今、作戦会議中なんで、出れないですよ」
電話対応の提督は、耳穴をほじる。
「至急の要件です。今回の作戦についてなのですが」
「何すか?今回の作戦に不満でもあるんですか?」
イズハが今回の作戦にひと通り説明する。
これを聞けば、重要性に気付くはずだ。
「で?」
予想外の返答にイズハは、言葉を失ってしまう。
「で?........は?」
「つまり、今回の作戦に不満があるって事っすよねぇ?おたくさぁ。舞鶴鎮守府に演習勝ったからって調子に乗ってるでしょ?」
「な........」
「連合艦隊のお誘いも頂いて。あ、もしかして、作戦立案の手柄も取りたいって腹でしょ?いるんですよねぇ。そういう........」
「ふざけるな!舞鶴鎮守府が危機的状況にあるのが分からないのか!? 」
イズハは受話器越しで怒鳴る。
「でも、おたくの想像でしょ?そんなの聞く耳持たないですって」
確かに言う通り、想像だと言われれば、それまでだ。
後ろ盾もないイズハにとって、発言権すらない。
「じゃ、切りますね」
提督は通話を切ると、他の提督に話し掛けられた。
「どうした?」
「ただのいちゃもんっすよ」
と、片付けてしまい、三春達の耳に入る事はなかった。
通話が終了し、イズハは受話器を叩き付ける。
「ふざけやがって........」
イズハは肩の力を抜く。
「司令........」
「今は、舞鶴鎮守府を信じるしかない」
「じゃ、じゃあ........」
「いや、こっちはこっちのやり方でやらせてもらう」
イズハは、艦娘達を招集し、作戦を言い渡す。
舞鶴鎮守府防衛作戦が展開される中、最悪の事態を防ごうとする佐世保鎮守府にまさかの障害が。
イズハは艦娘を招集し、作戦を告げる。