岡田にも引けない理由がある。
岡田はゆっくりと目を開ける。
「貴様の判断は正しいかもしれん。しかし、私には艦隊を預かる責任がある」
亮介を睨み付けると、通信士が叫ぶ。
「中将!接近する高速艇から緊急通信です!」
通信士が所属不明の高速艇を捉える。
識別は信号は........。
「何だと!?どこの所属だ」
岡田は確認を急がせる中、三春は口にする。
「まさか........イズハ?」
佐世保鎮守府は待機命令が出されている。
「つ、通信繋ぎます!」
通信士が所属不明の高速艇との通信を繋ぐ。
「佐世保鎮守府所属、イズハ中尉だ。これより防衛作戦にて援護する」
接近する所属不明の高速艇は、佐世保鎮守府のものだった。
「何を勝手に........!」
イズハは命令を無視してまで、海域に侵入して来た。
「レ級はまだ斥候だ!早期に撃破しなければ、主力艦隊が来るぞ!!」
イズハの言葉にその場にいる者達が困惑する。
前線艦隊からは、レ級二隻以外の報告はない。
だが、イズハの目は後方で待機する艦隊を捉えていた。
イズハの把握能力で捉えた情報だ。
イズハの疑惑が確信へと変わる。
地図上にはっきりと赤い点で映し出されていた。
「岡田中将!彼の言う通りなら、これ以上戦力を削ぐわけにはいかないはずです!」
亮介が叫ぶ。
第二防衛ラインの戦力まで失えば、後方で待機しているであろう主力艦隊を防ぐ事はできない。
横須賀鎮守府襲撃事件よりも、悲惨な結果が待ち受けている事は明白だ。
「根拠のない妄言など、聞き入れる訳にはいかない!」
岡田は怒鳴り返す。
「信じてくれ!このままじゃ、貴方の艦隊は全滅するぞ!」
無線越しにイズハが叫ぶが、岡田の耳には届かない。
縛られた規律。
以前のように自身の判断を誤れば、部下達にまで責任が押し付けられてしまう。
断固として首を縦に振ろうとはしない。
すると。
ゴンッ.......。
という鈍い音が鳴った。
岡田は力無く床に倒れた。
「........はぁ........はぁ........」
三春は深い深い溜め息をついた。
岡田の頭を椅子で思いっきり、殴ったのだ。
「三春........」
亮介は拳銃を下ろす。
「ふぅ........」
三春は息を吸い込み、命令する。
「第三、第四防衛ラインを第二に回しなさい!レ級二隻をここで沈める!」
「り、了解です!」
通信士や他の提督達は戸惑いながらも、艦隊に命令する。
「イズハ中尉!応援感謝するわ」
「あ、ああ」
イズハは無線機越しに何があったのか、大体察した。
「イズハ、準備出来たわよ!」
叢雲が顔を覗かせる。
「分かった。佐世保艦隊!出撃する」
佐世保鎮守府の合流!
砲雷撃戦開始!