作戦は決まった........。艦娘達の決意も堅い。
飲まず食わずで三日、俺は叢雲に無理矢理連れられて、食堂に向かった。
出された食事は、見た事のないものだった。
「なあ叢雲。この白いのはなんだ?」
何かの卵か?
「お米よ。見るのも初めてって感じね?」
「まあな。パンが主食だったしな」
恐る恐る、米を口に運ぶ。
温かく、ふっくらしていた。
「うまい........」
面白いほどに、食事が進む。
「ところで、ここに来る前には何をしていたの?」
叢雲の問いに、箸を止めた。
「信じられないだろうが、シェルタ帝国というところで、隊長をやっていた」
「隊長ねぇ........。落ちこぼれって聞いた時、慣れてるって言ってたけど」
「実力主義だったから、能力の低い者は差別を受ける。それに所属した部隊は53部隊。通称ゴミ部隊って呼ばれてた」
「なんだか陰湿な気もするんだけど」
「別に気にしてないさ。ただ、俺はここまで来るのに、多くの仲間を失った」
俺がしっかりしていれば、救えた命は多かったはずだ。
俺のせいで........
「親友も、妹も。みんな死んだ」
「そうだったのね........。なんか悪いこと聞いちゃったわね」
叢雲は、申し訳なさそうにする。
「でも、一人で抱え込んじゃ駄目よ?もっと周りを頼ってね」
「ありがとう。そろそろ訓練に戻ろう」
食事を済ませ、執務室に戻る。
資料を確認し、メンバーを決めた。
暁、雷、電、叢雲、天龍、龍驤、祥鳳しかいないが、最善の策を導き出す。
もう一度、招集し、メンバーを読み上げる。
「暁、雷、電、叢雲、龍驤、祥鳳で臨む」
このメンバーなら勝算がある。
「現在、こちらの戦力は駆逐艦4、軽巡1、軽空母2」
鎮守府と言う割には、戦力が低すぎる。
だが、演習程度なら負けない。
「君達は、落ちこぼれと蔑まれてきた。だが気にすることは無い。這い上がる覚悟はあるか?」
俺は、艦娘達に問う。
「落ちこぼれは、落ちこぼれなりの戦い方がある。しかし、落ちこぼれでいたいなら、それでもいい........。それで君達は満足か?」
「ま、満足なわけないじゃない........!」
暁が口を開く。
だが、他の艦娘達はまだ俯いたままだ。
「君達が以前の日常を取り戻したいなら、戦うしかない。この演習........勝つぞ」
艦娘達は顔を上げ、
「はい!」
と、大きな声で返してくれた。
1週間後。
「それにしても短時間でよく戦略を練られたわね」
叢雲が、俺が目を通している資料を覗き込む。
「まあな。前任者のおかげだ」
俺が目を通している資料の内容は、以前の提督がまとめあげたものだ。
艦娘達、一人一人の成長記録といってもいい。
事細かく、全て記載されている。
「優秀な指揮官だったんだな」
俺は関心していると、叢雲は表情を曇らせる。
「優秀とは言えなかったわよ。いつも一人で悩んでて、相談もなかったし........」
「何か言えない事情があったのかもな。この資料を作るくらいだ。君達の事を日頃から考えてなきゃ作れないだろう」
間違いなく、優秀な提督だったのだろう。
支部の提督が、なぜこの鎮守府を狙う........?
資材でもない、艦娘を引き抜いたのは、ついでだろう。
後、考えられるのは........
「それで、イズハ。そろそろ時間よ」
「そうだな。行くか」
俺は演習の挨拶で、叢雲も連れて相手提督の所へ向かう。
「ふん、逃げずに来たか」
相手の提督は、主力であろう艦娘を10数名連れている。
この佐世保鎮守府にいた、主力の艦娘。
長門、瑞鶴、不知火、高雄達に目をやる。
傷が目立つ。
「改めまして、先日、着任したイズハと言います。よろしくお願いします」
俺は手を差し出すと、相手の提督は鼻で笑う。
「貴様の手など握るか。負け犬になってしまうだろう」
ああ、こういう奴か。
予想通りだな。
「ところで、そちらの艦娘達は........ずいぶんと傷だらけのようですが?」
「当然だろ?艦娘は、我々の道具。傷付こうが死のうが構わん。代わりなど、いくらでもいる」
相手の提督は、不知火の髪を引っ張る。
「な、何し........」
俺は、叢雲を制止させる。
手を出すのは不味い。
「何だその目は?お前もあの駆逐艦どもと一緒に沈みたいか?あ?」
相手の提督が言うと、俺は待機している駆逐艦達に目を向けるが、資料にあった艦娘の数が........そればかりか不知火の他に駆逐艦はいない。
まさか........こいつ........!!
不知火が睨み付けると、相手提督が手をあげそうになる。
「貴様........!」
「いい加減にしろ。その子達は道具じゃない」
「ちっ!まぁいい。行くぞ!!」
不知火は俺を見て、頭を下げて、相手の提督に付いて行った。
「叢雲。徹底的にやるぞ」
流石に俺でもキレる。
「ほぇっほぇっほぇ。この老いぼれにも演習を見学さてもらってもよいかの?」
汚らしい格好の老人が、演習場へ足を踏み入れる。
「構いませんよ」
俺は老人に椅子を用意し、座らせる。
(ちょっと、いいの?関係者以外立ち入り禁止でしょ?)
(別にいいだろ。非公式戦だしな)
(そういう問題?)