イズハ提督が着任しました。   作:DELUHI

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大本営では、停戦協定が可決。

新たな体制が敷かれることとなる。


新体制
今後とも


 大本営にて、総司令官である有本恒星と各鎮守府の総司令官が集結していた。

 

 横須賀鎮守府、舞鶴鎮守府、呉鎮守府、佐世保鎮守府の総司令官達は、重々しい雰囲気で有本から告げられる停戦協定について、未だに信じられないといった様子だ。

 

「以上が深海棲艦と結んだ協定じゃ.......」

 

 有本は、一息付きながら椅子に深く腰掛ける。

 

「馬鹿な........深海棲艦に沈んだ艦娘がいるだと?」

 

 横須賀鎮守府提督、春馬元成(はるま もとなり)は面を食らったような表情だ。

 

「信じられないだろうが、事実じゃ。イズハ君」

 

 有本が指示すると、イズハは頷く。

 

「彼女達は、深海棲艦といえど、艦娘の記憶を持っています」

 

 イズハは、軍服に身を包む彼女、深海棲艦を2人紹介する。

 

「軽巡棲鬼と戦艦レ級です。彼女らには戦闘の意思はなく、ただ静かに暮らしたいだけとの事です」

 

 2人は頭を下げる。

 

「な!?深海棲艦を連れてきたのか!?正気か!?」

 

 春馬が驚きの声を上げると、他の鎮守府の秘書艦が身構える。

 

 大本営に敵を易々と連れ込んだのだから。

 

「落ち着いて下さい。春馬提督、彼女らに敵意はありません」

 

 イズハが淡々と説明すると、呉鎮守府提督秋山幸輝(あきやま こうき)が怒鳴る。

 

「総司令官!これは反逆行為では!?今すぐイズハ提督に処罰を........」

 

「落ち着け秋山君。ワシが呼んだのじゃ」

 

「しかし........!」

 

「落ち着いた方がよろしいのでは?品が損なわれますよ」

 

 小馬鹿にするように、舞鶴鎮守府提督、木川三春がクスリと笑う。

 

「三春。余計な事を言うな」

 

 イズハが睨むと三春は黙る。

 

 余計な口論は避けたい。

 

 謹慎明けでもあり、岡田提督の代理出席だ。

 

 言動には慎んでほしいところだ。

 

「敵意がない彼女らを侵略するとなれば、虐殺と変わりない........俺はそれだけはしたくない」

 

「甘ったれたことを........!そいつらにどれだけの艦娘が沈んだと思っている!!」

 

 春馬は机を叩き付ける。

 

「それはお互い様でしょう。それに、春馬提督。軽巡棲鬼は横須賀の海で沈んだそうですよ」

 

「それが何だと言うんだ!」

 

「沈んだのは、一昨年の春頃。誰を秘書艦にしていましたか?」

 

 春馬は恐る恐る軽巡棲鬼に目を向ける。

 

「ま........さか........」

 

 軽巡棲鬼が頭を深々と下げる。

 

「那珂........那珂なのか........?」

 

 春馬は軽巡棲鬼にふらふらと近付く。

 

「オ久シブリデス........。テイトク........」

 

 申し訳なさそうに、軽巡棲鬼は笑みを浮かべる。

 

「そんな........どういう事だ........!」

 

 春馬はあまりの衝撃に、頭を抑える。

 

「横須賀鎮守府は、激戦区。秘書艦である那珂を戦闘に投入。海域を制覇したものの那珂は轟沈........ですよね?」

 

「なぜ........お前が知っている?」

 

「軽巡棲鬼........那珂から直接聞きました」

 

 春馬はそのまま泣き崩れてしまった。

 

 大切だった那珂が目の前にいる。

 

 春馬には、妹がいた。

 

 笑顔を絶やさず、支えてくれる存在だ。

 

 しかし、病気を患っているとは思わさせないほど、笑顔だった。

 

 病死した妹の葬儀の後、那珂と出会った。

 

 妹と重ねてしまった春馬は、那珂を秘書艦に心の拠り所を得た。

 

 激戦区である横須賀鎮守府で、那珂を失い、心に大きな傷を負った。

 

「深海棲艦は、沈んだ艦娘........。この軽巡棲鬼のように艦娘だった頃の記憶を持った者もいるという事です。どうか、深海棲艦との停戦をお願いします」

 

 イズハは、頭を下げる。

 

「にわかに信じ難いが........。事実のようだ。分かった、すぐにとはいかないが考えておこう。では、解散」

 

 イズハは三春と深海棲艦とともに、帰る支度をしていると、春馬が呼び止める。

 

「待ってくれ。イズハ提督。那珂と話をさせてくれ」

 

「構いませんよ」

 

「那珂。あの時はすまなかった........俺が未熟だったばっかりに........」

 

 春馬は脱帽し、土下座をする。

 

 軽巡棲鬼は慌てふためく。

 

「アレハテイトクノセイジャナイ!ワタシガワルイ」

 

「いいや。俺が悪い........だから、償わせてくれ........!横須賀鎮守府に戻ってきてくれないか?」

 

 春馬は軽巡棲鬼の手を取るが、丁重に断られる。

 

「イマ、アタラシイ仲間イル。ダカラ、イケナイ........」

 

「そうか........そうだよな........」

 

 春馬は、落ち込んだ様子だったが、イズハが声をかける。

 

「那珂は、しばらく俺の鎮守府にいるので、良かったらいつでも来てください」

 

「ああ........行かせてもらおう........」

 

「マッテマス........!テイトク」

 

 軽巡棲鬼は、満面の笑みを浮かべる。

 

 車両に乗り込み、走り出した。

 

「良かったのか?君が望むなら、横須賀鎮守府へ手配するが」

 

 イズハは、軽巡棲鬼に問いかける。

 

「ベツ二イイ。マタ、会エル」

 

「ならいいが........」

 

 イズハは、運転に集中すると、座席を蹴られる。

 

「お腹空いたから、どこか寄らない?」

 

「そうしたいところだが、任務中だ。鎮守府まで我慢してくれ」

 

 と、しばらく口喧嘩を続けながら、車を走らせた。

 

 

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