イズハ提督が着任しました。   作:DELUHI

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深海棲艦との停戦協定が結ばれ、新たな提督が佐世保鎮守府へと着任する。


転属

 佐世保鎮守府において、若き士官が執務室の前に立つ。

 寝癖を直したつもりが全く直っていない頭に軍帽を被せる。

 

「ちょっと緊張するな…」

 

 俺は息を呑む。

 

「提督。そんな緊張しなくても……」

 

 秘書艦である鳳翔は宥めてくれるが、緊張せざるを得ない。

 

 今、噂になっている佐世保鎮守府への転属を命じられたのだ。

 

 大本営は、深海棲艦と停戦協定を結んだ。

 それで、各鎮守府へ提督が3人配属となった。

 

 一応、イズハ提督とは士官学校で顔を合わせてるけど、気難しそうなんだよな…。

 

「よし…行くか」

 

 俺は執務室へと入室する。

 

「失礼します。呉鎮守府から来ました、京谷大(きょうや ひろ)、並びに秘書艦鳳翔、着任しました!」

 

 って…あれぇ?

 

「司令は次、わたしのお願いを聞いてくれるの!」

 

「違う。わたしと約束していた。そうだよね司令?」

 

 暁に響?…って。

 

 何この状況。

 

「よく来たな。こら…離れないか」

 

 数分後。

 

「見苦しいところを見せたな」

 

「いえ…ちょっとびっくりしましたけど」

 

 俺は緊張しながら、お茶を啜る。

 

「そうかしこまるな。俺とは同期なんだろう?」

 

「そ、そうですけど…」

 

 なんだろう?って。

 

「ああ。俺は士官学校にいた時の記憶はない。失礼な事だがな」

 

 イズハ提督は苦笑いを浮かべる。

 

「へ、へぇ…」

 

 記憶喪失か…。大変だな

 

「報告書だと、艦娘は全部で6人だったか」

 

 イズハ提督は、俺が事前に送った資料に目を通す。

 

 鳳翔、天津風、島風、神通、摩耶、春風だ。

 

「不知火。駆逐艦と軽巡と重巡の部屋の編成を頼んだ」

 

「分かりました」

 

 秘書艦は不知火か。

 

 案外、小さい子好きだったりして。

 

「それにしても助かったよ」

 

 イズハ提督は、ひと息つく。

 

「というと?」

 

「君の秘書艦は、鳳翔だろう?料理が絶品だと聞いてな」

 

 俺は鳳翔に目をやると、鳳翔は笑みを浮かべている。

 

「鳳翔から作られる料理は、最早、芸術品だと他の艦娘が言っていてな。俺も楽しみなんだよ」

 

 鳳翔が顔を赤らめる。

 

 待て待て、この人、なんで俺の秘書艦口説いてるんだよ。

 

「司令。はっきり言い過ぎると、誤解されますよ」

 

 不知火が注意してくれる。

 

「ただ、聞いたことを説明しただけだろ?」

 

「そういうところですよ。全く」

 

 え?素なの?

 

 平気で口説いちゃうの?

 

「とにかく、ゆっくりしていてくれ」

 

 扉が勢いよく、開く。

 

 びっくりした…。

 

「ちょっとイズハ!私のプリン食べたでしょ!」

 

 あれ?

 

 舞鶴鎮守府の木川提督!?

 

 本物だ!

 

 白髪に年齢とは似つかぬ幼女体型で噂の…。

 

 生で見ると可愛いな。

 

 16歳かぁ…良いなぁ…。

 

「プリン?知らないぞ」

 

「嘘でしょ!?」

 

「木川司令。司令は人のプリンを食べるような人ではないです」

 

「うぅ。不知火が言うと説得力が……」

 

「あの……プリンなら、私がお作りしましょうか?」

 

 流石、鳳翔。

 

「え?ほんと?じゃ、お願いしようかな」

 

 木川提督は、鳳翔を連れて執務室を後にする。

 

「騒がしくて悪いな」

 

「そんなことないよ」

 

「ちょっと気になったんだけど、眼帯してるってことは怪我でもしたの?」

 

「ん?ああこれか、怪我じゃないよ」

 

 天龍や木曽みたいな感じか?

 

 すると、あきつ丸が入室する。

 

「失礼するであります、司令官殿。訓練の時間でありますよ…おや、そちらの方は?」

 

「本日付けで、着任した京谷大提督だ」

 

「自分、あきつ丸であります」

 

 と敬礼。

 

 俺も敬礼する。

 

「どうだ?一緒に」

 

「え ?」

 

 なされるがまま、訓練に参加する。

 

「あでででででッ!!」

 

 俺は、あきつ丸に肩を後ろに回され、抑え込まれる。

 外れる外れる外れるって!?

 

「こんなもんでありますな」

 

 いってーっ!!!

 

 イズハ提督は、こんなのと毎日訓練してるのか!?

 

「動きは悪くないな」

 

 感心してないで、助けて。

 

「いてて…。イズハは毎日これを?」

 

「まぁそうだな」

 

 嘘だろ…。

 

「京谷提督、こちらにいましたか」

 

「ん?」

 

 イズハが声の方を向く。

 

「京谷艦隊所属、川内型軽巡洋艦三番艦神通です」

 

 神通が敬礼する。

 

「佐世保鎮守府所属、イズハ少佐だ。よろしく頼む」

 

 イズハも名乗り、敬礼する。

 

「どうだ?手合わせでも」

 

「イズハ、やめといた方がいいよ」

 

 神通は、軽巡だと最強クラスと謳われる。

 

 勝負にならない。

 

「大丈夫だって」

 

「準備はいいでありますな?始め!」

 

 あきつ丸の合図で、手合わせが始まった。

 

 俺には見えなかったが、神通が繰り出した一撃をイズハは受け止めていた。

 

 体術のみとはいえ、神通と渡り合っている。

 

 速すぎて目で捉えるのがやっとだった。

 

「そこまでであります!」

 

 あ、終わった。

 

 嘘だろ……?

 

 相手は艦娘だぞ…。

 

「ふぅ……いい汗かいたな」

 

「こちらも楽しめました」

 

 神通は笑っていた。

 

「イズハ、凄いな……」

 

「別に、普通だぞ」

 

 普通じゃないから........それ。

 

「あ、いたいた!提督!」

 

 天龍か。

 

「どうした?」

 

「ガキどもが、言うこと聞かなくてよ」

 

「分かった、すぐ行く。京谷、また後でな」

 

「お、おう........」

 

 イズハは、着替えて天龍に付いていった。

 

「神通、イズハって何者なんだろうな?」

 

「それは分かりませんけど、艦娘と渡り合える人っていませんよね」

 

 神通に聞いても分かるわけないか。

 

「あきつ丸、イズハって何であんなに戦えるんだ?」

 

 あきつ丸に聞いた方が、何か分かるか。

 

「司令官殿でありますか?んー、自分が教えてもよろしいのですが、司令官殿から知らされていないなら、答える義務はありませんな」

 

 何か深い事情があるのか。

 

 これ以上、聞いても無駄か。

 

 一体、何者なんだろうな……。

 




京谷大…着任!!
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