天龍の要望通り、第6駆逐隊を宥めた後、俺は執務室に向かう。
プリンの取り合い…か。
そういえば、プリンとは何だ?
食べたこともないしな。
黄色っぽくて、黒の液体がかかったやつだったか…。
後で不知火にでも聞いてみるか。
そんなことを考えていると、何やら騒がしい声が聞こえる。
今度はなんだ…。
「おい、どうした?」
俺が声をかけると、見たことも無い艦娘が声を荒らげていた。
京谷の艦娘か。
「司令官! どうしてここに深海棲艦がいるんですか!」
灰色の髪にツインテール。
資料の通りだと、天津風だったか。
天津風が深海棲艦のレ級を指差す。
「ん、居ては悪いのか?」
「当然でしょ! 艦娘の敵じゃない!」
それもそうか。
「しかし、敵意がないだろ? 天津風、艤装をしまえ。非常時以外の展開は禁止だ」
「その命令は聞けない!」
「イズハ、ソイツ、敵意アルカラ倒スネ」
戦艦レ級は、艤装を展開させる。
「こいつ……ッ!!」
ちっ。
ドォォォォォンッ。
爆発音が鳴り響く。
他の艦娘達は悲鳴を上げる。
「な、何があった!!」
京谷も駆けつける。
「ど、どうしたの!?」
三春も駆けつけ、ぞろぞろと人集りが出来る。
天津風は身体を震わせ、床に尻もちをつく。
「…ったく…下らない事で争うな」
俺は右手で天津風の砲撃を、左手で戦艦レ級の砲撃を防いだ。
辺りには肉片が飛び散っているが、大した致命傷にならない。
「レ級。ここに来た時、約束したよな?」
俺が睨みつけると、レ級は落ち込んだ様子だ。
艦娘達と争わないよう、キツく言いかせたつもりだったが。
「天津風、ここでは深海棲艦も暮らしてる。理由を説明してない俺も悪いが……」
俺の配慮不足が招いた結果だ。
三春の艦娘や亮介の艦娘、俺の艦娘は事情を知っているからいいが、京谷の艦娘は事情を知らないのだから、こうなって当然だ。
「おい…イズハ、大丈夫なのか!?」
「そう、慌てるな。たかが両手が吹き飛んだだけだ」
この程度、何ともない。
「わ、私は…私は……」
俺は天津風の頭を撫でる。
「安心しろ。この程度じゃ、俺は死なない。死にたくてもな」
「え……? そんな…手が……」
再生した俺の両手を見て驚いている。
「レ級、ここは敵地じゃないから安心しろ」
レ級の頭を撫でる。
言っても、ついこの間まで命のやり取りをしていた存在。
受け入れるにも時間はかかるだろう。
とりあえず…、とりあえずだ。
どう報告するかな…。
直さなきゃいけないし。
野田大佐が出張中で良かった。
鬼の居ぬ間に洗濯という言葉もあるくらいだ。
穏便に済ませるか…。
野田大佐がいたら、どんな事になっていたのやら。