生きて帰れるのか!?
京谷大は固唾を呑む。
「な、なあ........。鳳翔、本当に手伝ったんだよな?」
京谷は顔を引き攣りながら、鳳翔に尋ねる。
「え、ええ。そのはずなのですが........」
息を呑む。
三春に頼まれて、鳳翔に比叡の料理を手伝わせたのだが、食卓に並べられたカレーの色は紫色でとても食べられそうにない。
しかも、比叡は満足気な表情だ。
他の艦娘達も固まっている。
長門なんて、戦艦らしく堂々とした佇まいだが、冷や汗に小刻みに震えている。
特殊な訓練を受けたところで、
手を付けたら最後........。
生きて帰れない気がする。
と、大は心の中で項垂れる。
炊きたての白いごはん。
口に頬ばれば、ふっくらとした食感に、ご飯だけでも箸が進むだろう。
しかし、比叡のカレーが、そのご飯を台無しにしているのだ。
恐怖のあまり、カレーから、
「クエ、クエ、クエ、クエ」
と、訴えかけてるようにも見える。
三春は、比叡にだけは料理はさせないようにしていたのだが、イズハが全員を当番制にしたため、作ることとなってしまった。
「うぅ……」
三春は半泣きだ。
心境的には、処刑場に立っているかのようだからだ。
そして、舞鶴鎮守府の頃に、亮介が食していたのを見たことがあるため、トラウマが勝る。
タイミングが悪く、脳裏に蘇った。
「比叡のカレーを味見? ふむ…大した感想を言えないが、良いだろう」
亮介は、比叡のカレーを口にする。
「ふむふむ…。中々、刺激的な味だ」
甘い、辛い、苦い、しょっぱい。
味が何だか分からないほど。
正直言って不味い。
亮介も人柄な一面もあり、比叡に笑顔で答える。
「三春も食べるかい?」
そう問い掛けた時だった。
亮介の顔は真っ青になり、鼻血が零れ落ち、極寒の地にいるかのように震え出した。
白目を剥いて、亮介は倒れたのだ。
どうなったのか、知るまでもない。
そのため、三春は比叡のカレーはトラウマとともに忘れ去ろうとしていた。
が、簡単に忘れられる記憶でもない。
「どうしたんだ? 早く食べないと冷めるぞ」
イズハはそう言って、カレーを頬張る。
「前より上手くなったな比叡。すごく美味いぞ」
イズハはカレーをあっという間に平らげる。
「では私も頂こう」
亮介は、イズハの言葉を信じて、カレーを一口食べる。
「うむ。悪くない」
一瞬、表情が固まった気もするが、亮介は応える。
悪くない。
ということは、どちらでもないとも取れる。
見た目ほど不味くないのでは?
……と、大は恐る恐るカレーを口に運ぶ。
もうどうにでもなれ!
カレーを頬張る。
口の中は刺激的な味覚ではなく、ほんのりと甘い。
(食べれる........食べられるぞ!)
ひと安心だ。
その様子を見ていた、艦娘達も手を付けて、おかわりをする。
「鳳翔さん! ありがとうございます!!」
比叡は嬉しさのあまり、鳳翔に抱きついている。
こうして、事なきを得るのだった。
見た目で料理を判断しない。