6年後。
宿毛湾泊地。
武中正義、28歳。
「ちっ…何だかんだで、軍に戻っちまったなぁ……」
俺は、深い溜め息を零し、月を眺める。
太陽と月だけは、いつも通りだな…。
大日本帝国海軍内部でいざこざがあり、前体制が崩壊後、新体制が確立され、軍へと連れ戻された。
総司令官である有本元帥は、いざこざの詳しい実情について、語ってはくれなかった。
もし、俺が手を貸していたのなら、何があったのか知る事が出来ただろう。
知ったところで、何をするか…。
決まってる。
俺は自分の身を顧みず、ぶっ殺しに行くだけだ。
だが、知らなくて良かったような気がしない訳でもない。
復讐心なんて、一生纒わり付くもんだ。
復讐の果てに待ち受けるものは破滅。
俺が手を貸したとして、戦ったとしよう。
待っているのは無駄死にだという結果だけ。
散って行ったあいつらが、何て言うかは分からねぇ。
誇りも忠誠心もぶん投げた俺が言える事は、
忘れる事が一番だってことだ。
夢にまで見る俺が言うのもおかしい話だ。
過去にばかり囚われてりゃ、何もできねぇ、出来んのは過去の思い出に縋るってことだけだ。
死んだ仲間は、戻って来ねぇんだから。
俺に出来る事は、
意地汚く足掻いてひたすら前に進んで、あいつらの分まで生きるって事だ。
この宿毛湾泊地に、配属が決まった時、左遷されたとは思ってねぇ。
むしろ、居心地が良いくらいだ。
提督は俺一人。
清々しいくらいの良い気持ちさえ覚える。
他の鎮守府に配属されたとなれば、目の敵にしている奴らが大勢いる。
悪口や陰湿な虐めが起きる事は容易に想像できるし、されたとしても気にしねぇ。
業務の邪魔されるってなら、いちいち相手にするのがめんどくせぇってだけだ。
俺は柱時計に目をやる。
午前2時か…。
そろそろ寝ねぇとな。
明日早ぇし。
もう今日だけど。
「あら、また眠れないの?」
下着姿にパーカーを羽織っている、腰辺りまである黒色様な緑髪の女に声を掛けられる。
「いんや…目が覚めただけだ。すぐに寝るさ。瑞鶴も早く寝ろよ?」
俺はそう言って、ベッドに横になる。
彼女は、秘書艦を務めている、
翔鶴型航空母艦2番艦、瑞鶴だ。
「言われなくても寝るわよ」
瑞鶴は俺の上に跨り、顔を近付けて来た。
「寝るって…そっちかよ」
「当然でしょ?」
俺は深い溜め息を零す。
瑞鶴は髪を耳に掛け、唇を重ねる。
※※※※※
小鳥の囀りが聞こえ、目の下のクマを擦りながら、外へと視線を移す。
天気は良いが、体調はよろしくない。
瑞鶴は俺の横で、憎たらしいくらいの幸せそうな表情で眠っている。
「はぁ…」
結局寝てねぇ……。
止まらず、ひたすら前へ進め!!